民医連新聞

2004年5月17日

病院の将来は自分たちの手でつくる “イヤじゃない会議”で元気に

神奈川・川崎協同病院将来構想委員会

 四月一日午後七時、職員食堂に人が集まってきました。毎週木曜日は、神奈川・川崎協同病院(二六七床)の「将来構想委員会」の日。会 議は一六回目を迎えました。参加者は、毎回、三、四〇人。SWの荻野郁子さんは『相談室だより』に委員会のことをこう書きました。「ずっとこんな議論がで きるのを待っていた。あたためてきた考えをぶつけてみる。反応があることが嬉しい」。「こうして医療構想ができるのはおもしろい、夢が膨らむ」というのは 薬剤師の山本千晶さん。「『参画』するってこういうことなんですよね」看護師の八木美智子さん。「イヤじゃない会議」なのだそうです。「ボトムアップ」で 自分たちの医療構想を語りあう職員は元気です。

 この委員会は昨年末、佐々木秀樹院長の招集で発足しました。委員は多くの職種、若手・ベテランなど、あらゆる年代で構成し、重点課題にはワーキン ググループ(以下WG)をつくって作業する運営です。必要に応じて新たなメンバーを自由に補強可能です。会議での発言は「人とお金のことは考えなくて良 い」、「問題解決型で話しあう(後ろ向きの発言はしない)」が約束になりました。

 地域の中で病院や開設予定の近接診療所が担う医療内容を明らかにし、病院と診療所に必要な機能を整理すること、それに基づいた病院改築案をつくること、の三つが大きな目的です。

 発足時の雰囲気は、「大切な『将来構想』をこんなメンツで話し合っていいの?? って感じでした。っていうか、 とりあえず『管理会議』とかでやんなくていいのかなあ、と正直いって心配になったりもしました」と、委員会の状況を伝えるニュースに書かれている通り。 「でも、話したくてうずうずしていた人が多かった」と、運営を担当している江藤眞一次長。「これができれば病院は変われる、という雰囲気が少しずつ広がっ てきたように思います。管理部が考えて方針を出すより、日々患者さんと接している現場の視点には、なんといっても説得力があります」。

地域で必要な医療を客観的につかみ

 また、自分たちの手で、医療圏のデータを集め、地域で必要な医療を客観的につかんだことは、大きな力になっています。

 リハビリ科の村越妙美さんは「とりあえず」で初回の会議に出席し、委員になりました。回復期リハWGで、川崎市 南部のリハビリ医療の実態を調べ、意外な事実を知りました。リハで最高基準の「総合」をとっているのは、川崎協同病院の他一施設のみ。また、回復期リハ病 棟はゼロ。六〇〇床規模の病院でさえやっていない医療を、担っていたとは知りませんでした。「『他がやれないなら』と、採算も試算し、回復期リハの導入を 提案しました」と村越さん。「委員会での話し合いを通じてリハのことだけじゃなく、川崎医療生協全体の医療のあり方をつきつけられた感じ。こんな風に病院 の役割や、働きがいを共有できれば、現状打破できるかもしれない」。

 「病院の将来のことをこんなに話しあうことはなかった。本当の意味でぼくらが地域に目を向けたのは、これが初め て。WGで手分けしてニーズを整理したいま、医療構想答申の中身は『これは地域のニーズなんだから、なんとかしなきゃ』というものなんです」と、和田浄史 医師も振り返ります。「事件以来、病院は地域に求められてるんだ、と言ってがんばってきましたが、その根拠は? というと『患者さんが来る』程度の大ざっ ぱなものだったんですね」。

大きな意味での「チーム医療」

 この半年足らずで、WGの答申作り↓答申論議とすすみ、現在は、「将来構想」と「現実に可能なこと」を調整する 段階に入っています。この日の会議では、過去最高の五六人が参加し、一階・六階スペースをめぐって母子医療構想と血液浄化医療の配置で白熱しました。真っ 向から意見が対立することになっても、「言い争い」にはなりませんし、職種も年齢の違いも誰も気にする様子はありません。

 「僕らは大きな意味でチーム医療をしているつもりです」、ちょっと背筋を伸ばすように語った和田医師の言葉で納 得しました。「他の職種の人たちのことを、すごく見直した。組合員さんの視点の鋭さも知った。本音で話しても大丈夫、こんな会議ができる病院はあまりない だろうって思います」。(木下直子記者)

(民医連新聞 第1332号 2004年5月17日)

 

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