いつでも元気

2009年9月1日

「民医連綱領」ここに力の秘密あり2 今回のキーワード■安心して住みつづけられるまちづくり 地元スーパーと協力して 滋賀・ぜぜ診療所健康友の会

 民医連の事業所は現在一七五四カ所、七万人を超える職員が全国で医療・介護をおこなっています。地域や規模は違っても、同じ 「心」でつながって…それを表すのが「民医連綱領」です。一九六一年に決定されてから半世紀近く経て、さらなるバージョンアップを計画中。この機会に読者 の皆さんに知らせたい民医連の姿を、綱領のキーワードから追う連載。二回目は「安心して住みつづけられるまちづくり」を。

 「安心して住みつづけられるまちづくり」は、一九九九年に北海道・洞爺湖で開かれた第五回共同 組織活動交流集会のスローガンとして初めて掲げられました。その後この言葉は、民医連と共同組織の活動方針として深く根付き、現在討議中の綱領改定案にも り込まれています。地域とともに将来のまちづくりを語りあい、模索し続けている滋賀・ぜぜ診療所健康友の会(大津市)を取材しました。

友の会事務所がスーパーの2階に

 膳所駅から歩いて一〇分ほど。友の会の事務所は、地元スーパー「生鮮館きょーえぇ」の二階にあります。
 「診療所が開設されたのは一九七一年。友の会の事務所はもともと、診療所近くの『膳所在宅ケアステーション陽だまり』の中にありました。そこに近所のきょーえぇさんから声がかかり、四年前に滋賀県連事務局と一緒に移ってきたんですよ」
 こういって笑顔で出迎えてくれたのは、友の会事務局長の松村恒夫さんです。
 それにしても、店舗の二階を民医連と友の会に提供するなんて、この発想はどこからきたのでしょう。「きょーえぇ」社長の馬杉光則さんに話を聞きました。
 「地域にお年寄りが増え、何か貢献できないかと考えていた矢先でした。はじめは店の二階を介護のグループホームにでも改装しようかと考えていたんですわ。でも介護報酬が引き下げられて、運営はむずかしいという話になり、民医連さんに借りてもらうことにしたんです」
 普段も診療所にかかっているという馬杉さん。先代から続くスーパーの経営を守りつづける傍ら、「目と鼻の先にある診療所をずっと見続けてきた」といいます。
 「診療所の職員や友の会のみなさんとは、『どうや、最近?』と声をかけあう仲。親しみがわく存在ですね」
 取材中、お店の前に友の会が運営している「巡回バス」がとまりました。診療所を利用する患者さんが対象。きょーえぇと協力、連携したサービスです。

診療所の帰りに買い物も

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松村さん(左)と竹内さん

 「巡回バス」を利用している竹内かづさんは「診察のとき、お店も利用しています。私は足が不自由なので買い物もひと苦労。ホントに便利です」とうれしそう。
 電話一本で利用者宅までいく、「ボランティア送迎かざぐるま号」(事前予約制)も、診療所の帰りに買い物ができると好評です。かざぐるま号は診療所に隣接した「ボランティア喫茶かざぐるま」などでも使える、共通チケットを購入して利用します。
 夫が入院中で、身の回りの事を一人でこなさなければいけないという川瀬洋子さんもかざぐるま号の利用客。「手術をしてから調子が悪く、最近はよく使います。連絡するとすぐ来てくれ、助かっています。いつも帰りに、きょーえぇさんで買い物してから車に乗りますよ」と。

“診療所・友の会はパートナー”

 月一回の特売日にあわせて店の前を借り、友の会がおこなう「青空健康チェック」も定番に。毎回、買い物客も含めてあふれかえります。
「友の会の企画はもちろん、地域のお祭りや行事があるときは、店のお弁当などをよく利用してもらいます。診療所や友の会は、『まちづくりにおけるパート ナー』という存在。この地域になくてはならない診療所、なくてはならないスーパーなんです。どっちがなくなっても困る」と、馬杉さんは力を込めます。
 店の二階には大ホールや会議室もあり、連日予約でいっぱいです。友の会の班会や地域のサークル活動の拠点に。
 「移転前の事務所よりも人が集まるようになった。私たちの役割は居場所づくり。地域住民みんなが集える場所があることが、『安心して住みつづけられるまちづくり』には欠かせませんね」と松村さん。

つながり大切に、手をとりあい

 一昨年、隣町に「大型ショッピングモール」の出店計画が。「このままでは地元の商店がつぶれてしまう」と、診療所やスーパー、地元の建設会社などで「ま ちづくり協議会」を結成しました。大型スーパーは開店してしまいましたが、これがきっかけで「友の会と一緒に、まちづくりについて真剣に話しあうように なった」と馬杉さんは語ります。
 苦しいことも多く、何度も店をたたもうと思った馬杉さん。「今日よかったら、えぇやないか…」という気持ちで前向きに考え、乗り越えてきました。これがいまの店の名前の由来にもなっています。
 「私たちにいま必要なのは、やっぱり『人の輪』やね。人と人のつながりをつくること。診療所や友の会とは、何かあったら助けあえるという強い信頼関係が ある。私は地域の人が集まれる場所を提供したい。そうすれば、新しいつながりもできるやろ。なんにもせぇへんかったら、きっと店も街もなくなってしまう。 『安心して住みつづけられるまちづくり』は、医療だけ、店だけでは完結しない。身構えていたらあかん、地域に入り、地域を巻き込んでいかないとね」と、馬 杉さんはまちづくりへの思いを熱く語ります。
 「きょーえぇさんとは何でもいいあえる。ときには厳しい指摘もあるが、ともにまちづくりをしていくパートナー。地域でもうひとまわり共同組織を大きくしたい」と、松村さんの期待は膨らみます。
文・井ノ口創記者
写真・豆塚猛

いつでも元気 2009.9 No.215

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