民医連新聞

2004年6月21日

私と憲法(5) 被爆体験きき「戦争してはいけない」と

堤 直子(熊本・八代中央クリニック)

 いま被爆者が全国で、原爆症認定の却下を不服とし、正当な補償を求め、集団訴訟をすすめています。

 熊本でも一三人が提訴、私も「支援する会」に入りました。会は、裁判傍聴や、学習会などで支援を広げています。

 先日、原告といっしょに長崎へ現地調査に行きました。そして彼女が被爆した地点に立って、話を聞きました。一四 歳だった彼女の家がここにあり、両親を亡くした場所です。その時の恐怖と悲しみに満ちた体験談に、私にもその惨状が生なましく感じられました。「戦争はし てはいけない」と、この時ほど強く思ったことはありません。

 熊本県には約二〇〇〇人の被爆者がいます。「支援する会」では、そのうち五〇〇人から被爆体験の聴き取り調査をしようと計画しています。六月一二日から始め、一〇月終了の予定です。

 被爆の実態を明らかにし、裁判の資料にすることが目的の一つですが、被爆者の苦しみを記録し、多くの人に知らせ、考えてもらうことも目的です。裁判は、被爆者の思いを「国にわかってもらいたい」からです。

 高齢の被爆者にとって、五八年前の記憶を語る最後の機会かも知れません。心身の苦しみ、葛藤、そのなかで生きてきた姿を知ることは、誰の心にも平和への思いを強くさせる、と思います。だから調査には、新入職員やJBの仲間に、たくさん参加してほしい。

 ある被爆者は、職場にも家族にも被爆者であることを隠してきました。そしていま「これまで何もできなかった分、人の相談にのってあげたい」と言っています。社会の偏見に耐えることも辛かったと思います。

 私が先輩から教わったのは、「正しい知識を広めていくことは、力になる」ということです。被爆や戦争の実態を知ることは、憲法九条を守る力になると思います。戦争の残酷さを知っている日本だからこそ、九条を掲げてきたと思います。

(民医連新聞 第1334号 2004年6月21日)

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