声明・見解

2008年9月10日

【全日本民医連会長声明2008.09.10】医学部定員増を確実に実行しうる大学教育予算の増額と社会保障費削減政策の撤回を求める

2008年9月10日
全日本民主医療機関連合会
会 長  鈴木 篤

 政府は、「引き続き医学部定員の削減に取り組む」(1997年)との閣議決定を撤回し、 「経済財政改革の基本方針2008」において、「早急に過去最大程度まで増員するとともに、さらに今後の必要な医師養成について検討する」との決定を行っ た。これを受け、文科省は8月29日、来年度度予算の概算要求をまとめ、医学部入学定員を「8,560人程度」へ、今年度より760人程増員すると発表し た。あまりにも激しい医療供給体制の崩壊の現実と多くの医師、医療従事者および国民の運動を反映したものであり、遅きに失したとはいえ過去最大の 8,280人を上回る定員を提示したことを一定評価するものである。
 同時に、医師数を「8,560人程度」で頭打ちすることなく、「『安心と希望の医療確保ビジョン』具体化に関する検討会」中間報告が打ち出しているよう に、現行の1.5倍のOECD並医師数をめざして政策化することを強く求める。このままでは、世界の趨勢といっそうかけ離れることとなる。

 政府は医学部定員増を打ち出した一方で、社会保障費を毎年2,200億円削減するという方針に固執し続けている。この方針を撤回しないかぎり、医療崩壊を食い止めることは絶対に出来ない。
 文科省は2009年度概算要求では、医師増員に伴う学部教育の費用として、トレーニング教育機器、解剖実習台等の教育環境整備事業のための費用約70億 円、地域医療等の担い手となる医師養成を行うための取り組みを支援する費用約26億円などを要求している。定員増を行う上で、極めて不十分な予算措置であ る。明確な根拠を示した予算措置とその実行を確実に行わなければならない。
 大幅な医学部定員増を行うには、教職員の増員が不可欠である。にもかかわらず2004年度国立大学の独立法人化以降、大学の教育・研究などの基本的財源 である大学運営費交付金を毎年1%ずつ削減してきた。さらに、財務省は来年度3%減の概算要求基準を提示した。明らかに矛盾する内容である。国立大学協会 も緊急アピールを出して、「‥‥地域における医師等の人材育成機能が低下するだけでなく、学問分野を問わず、基礎研究や萌芽的な研究の芽を潰すな ど、・・・国の高等教育施策とその成果を根底から崩壊させる」として、運営費交付金の大幅削減に強く反対し、増額を要求している。
 全日本民医連は、高等教育そのものを破壊し、医学部定員増に逆行する政策に強く抗議するとともに、国立大学運営費交付金の削減ではなく、大幅な増額を求 める。なお、私学助成のための私立大学等経常費補助の3%削減方針についても強く撤回し、増額を求める。

 財務省からは不足の経費を、学費値上げで対応すれば良いとの考えも出されている。これは まったく世界の流れに逆行するものである。世界の流れは高等教育の無償化であるにも関わらず、さらに学費値上げを行えば、勉学条件はいっそう困難なものと なることは目に見えている。国連は日本政府に対して、世界一高い日本の学費の是正を求め、国連人権規約で定められた無償化条項を早急に批准するよう勧告し ている。政府は勧告のサボタージュを直ちに改めるべきである。全日本民医連はそのことを強く要求する。

以上

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