いつでも元気

2010年2月1日

後期高齢者医療制度 即時廃止が必要なこれだけの理由

 〇九年八月の総選挙で、後期高齢者医療制度を導入した自公が政権を追われ、制度廃止を公約した新政権が誕生。「これで制度廃止」 と思いきや、新政権は“廃止は四年後”と。話が違うじゃないですか。後期高齢者医療制度は一刻も早く廃止すべき。だって、その理由はこれだけあるのですか ら。 (多田重正記者)

高齢者は4年も待てない!

その1
保険料も急上昇 続けるほど増す激痛

 後期高齢者医療制度の保険料が、全国平均で一三・八%も上がるとの驚くような試算が(一一月一九日、厚労省発表)。
 ことし四月に、二年に一度の保険料改定がおこなわれます。〇九年度の保険料は全国平均で年額約六万二〇〇〇円でした。一三・八%アップなら、全国平均約八五六〇円もの負担増となる計算です。
 東京都の広域連合は、財政措置をとっても、夫婦世帯で平均約一万二〇〇〇円、単身者で平均一万円の増額になると試算。厚労省は保険料の負担増を抑えるた め、各都道府県の剰余金や、制度が禁止した県や市町村からの財政を繰り入れることまで求めましたが、多くの都道府県で「保険料の上昇は避けられない」(北 海道広域連合、一二月一四日の道社保協との懇談)見通しです。
 こんなことになるのは、医療費や高齢者の人口が増えるにしたがって保険料が自動的に上がるしくみだから。制度廃止を公約した政権が、国民に「痛み」を強 いるとは。四年後に廃止するとしても二〇一二年にもう一回、保険料アップが待っています。
 しかも保険料を払えなければ、期限を短くした短期保険証や、いったん医療機関で医療費全額を払わなければならない資格証明書に。短期保険証はすでに二万八〇〇〇人に発行されています(一〇月一日現在)。

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その2
目的は医療費の抑制 健康守れる制度でない

 このような激痛が押しつけられるのは、制度導入の目的が医療費適正化だったから。“医療を必要とする人が多い高齢者をひとまとめにすれば効率よく医療費を抑えられる”と考えられた制度です。診療報酬(医療保険上の医療機関への支払い)でも医療内容を制限しました。
 その上、健康診断まで抑制。市町村にあった健診の義務は、制度実施とともに広域連合にはなくされました。厚労省はさらに、健診対象者を絞り込むよう指 示。多くの広域連合で定期通院中の慢性疾患患者などが対象からはずされ、東京都以外の四六道府県で健診受診率が低下。制度実施の〇八年度と前年度の比較で は、受診率二〇%未満の道府県が一七から二八に。もっとも差が大きかった島根県では五〇・三%から二一・五%にまで落ち込みました(「赤旗」調べ)。
 新政権は総選挙前、元の制度(老人保健制度。以下、老健制度)に戻すことについて、共産党もふくめた旧野党四党で合意していました。ところが政権につい たとたん、老健制度に「クエスチョンがある」(長妻厚労相、一一月九日参議院予算委員会)と、元に戻すことを拒否。
 しかし老健制度は「国民の老後における健康の保持」(老人保健法第1条)」が目的です。かたや後期高齢者医療制度は、「医療費の適正化を推進する」(高 齢者の医療の確保に関する法律第1条)」ことが第一の目的で、社会保障とは呼べません。後期高齢者医療制度は医療を権利からサービスに、病気も自己責任だ という考えにもとづく制度。こうした制度はまっ先にやめるべきです。

その3
制度ある限り年齢差別はつづく

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制度廃止を求める署名につぎつぎと(12月15日、東京・御茶ノ水駅前の行動で)

 医療費適正化の手段が高齢者差別。それまで加入していた医療保険を強制的に脱退させ、七五歳以上をひとまとめにして、保険料も年金から天引きに。「年齢差別だ」と国民の怒りをかいました。
 新政権は制度について「七五歳で人を区別するなど、信じられない発想」(鳩山首相、一一月九日参院予算委)としながら、「(四年後まで)後期高齢者医療 制度が抱える問題を極力解消」(長妻厚労相、同予算委)すると述べています。
 しかし多くの高齢者にとって、なぜ七五歳で区別されなければならないのか、これが最大の怒りの的。差別は制度を廃止しなければ「解消」されません。
 一日約四〇〇〇人が七五歳に。制度を先延ばしにするほど、「国に見捨てられた」と感じる高齢者は増えていきます。

その4
「一元化」の見通しは不透明

 新政権が制度廃止を延ばす理由にしているのが公的医療保険「一元化」。「後期高齢者医療制度廃止に時間がかかる。時間がかかるなら、一元化をいっしょにやりたい。だから廃止は四年後に」と。
 しかし社会保険には事業主負担がありますが、国民健康保険にはありません。種類のことなる公的保険をどう統合するのかという問題が。保険料も国保の方が 高く、社会保険でも「協会けんぽ」と健康保険組合などでは保険料が違います。一元化は異論が噴出し、自公政権も実現できなかった経緯があります。
 しかも一元化は制度の具体的な構想はまだなく、四年で実現できる保障はありません。逆に元の老人保健制度には、制度や行政のシステムの原型があります。 元に戻す方が簡単です。その上で国民が求める医療制度に改善していくのが筋です。一元化は、国民の合意でもありません。

 新政権発足後はじめての国会は、期待しているだけでは、国民の願いの実現は難しいことを証明しました。
 制度廃止に向け、いっそう運動を強めるとき。やはり国民のたたかいあってこそです。

いつでも元気 2010.2 No.220

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