民医連新聞

2004年7月19日

安全・安心の医療をもとめて(25) 長野・老健ふるさと

老健での工夫「滑る歩行器」

 今回は長野・老健ふるさとでの安全の工夫。移動距離の長い施設で、既存の歩行器に手を加え、転倒を予防しながら、利用者の歩行能力も維持しています。理学療法士・井出智子さんの寄稿です。

 老健ふるさとでは、歩くことで活動量が増え、体力がつくよう歩行器を多くとりいれています。使っている歩行器 は、持ち上げ式のものと、滑らせるタイプのものがあります。この「滑らせるタイプ」は独自に手を加えたもの。持ち上げ式(固定式)の歩行器の足先に、市販 の家具移動用の補助具の足ゴム(「カグスベール」ニチアス株式会社)を付けています。

 滑る歩行器なら、床に歩行器の足をつけたまま、押すだけですすんでゆくので、杖や持ち上げ式の歩行器は力がなく て使えない人、キャスター付きの歩行器では、足がついていかない、進行方向のコントロールができない、という人にも使いこなせます。本来ならそういう状態 の人たちは、転倒のおそれがあり車イスで移動せざるをえなくなっていたはずなのですが、この「滑る歩行器」を使うことで自立歩行を維持しています。

 高齢者の歩行の特徴は、腰が曲がっていて前傾姿勢になりやすい、足があがりにくくつまずきやすい、つかまるものがないとよろめいても体勢を直せない、膝痛や腰痛が出やすい、疲れやすい、などです。

 滑る歩行器は、この特徴にもうまくあっています。体重が分散されるため、腰や膝の痛みが軽減し、足も上がりやす く、疲れにくいのです。また、動作も簡単で「歩行器を押して、歩く」ので、「次に出す足は右か左か」と悩まず、痴呆の方にもなじみやすいです。歩行器を持 ち上げなくても方向転換できるのも利点。

 ただ、難点といえるのは装着した足ゴムはすり切れるため、交換が必要なこと。また土埃など床の汚れによっては滑りにくいこと、歩行器の種類で滑り具合や雑音が発生することもある、などです。

 また、家庭の畳やカーペットの上でもスムーズに滑り、在宅でも導入しやすい歩行器です。

(民医連新聞 第1336号 2004年7月19日)

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