いつでも元気

2010年4月1日

後期高齢者医療制度 “姥捨て制度”なぜ生かす?  2年越しの怒り、日本中で

 この四月で後期高齢者医療制度が導入されてまる二年になる。制度「廃止」を公約したはずの新政権が廃止を先送りし、この春から保 険料値上げの痛みが直撃する。これは「値上げを抑える予算をつける」という約束を政府が守らなかった結果でもある。最近、各地で同制度廃止を求める集会が 開かれ、多くの人を集めている。「姥捨て制度」そのものへの怒りと、制度を廃止しない政府への怒りの声をふたたび大きくするときだ。

■2度も約束が破られた

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 後期高齢者医療保険料は、後期高齢者の医療費と、人口増に連動して二年ごとに「見直し」されることになっていました。新政権が廃止を四年も先送りしたため、制度は四月を迎え、保険料見直しに直面してしまいました。
 各地の広域連合で新たな保険料が発表されはじめています。左の表は二月末現在の動向です。議会への働きかけなど運動をおこない、値下げや、据え置きをさ せた県もありますが、大半の広域連合が値上げに踏み切りました。
 この背景には公約破りに続く、二つめの新政権の「裏切り」がありました。「すぐに制度を廃止しなければ、保険料値上げの時期を迎え、高齢者はますます困 るではないか」と、国会で追求された厚生労働大臣は、「保険料上昇の負担を抑えるための予算をつける」と、約束していたのです(〇九年一一月九日衆院予算 委員会)。ところが、年明けに発表された二〇一〇年度予算案には一円も盛り込まれませんでした。
 怒りの再燃を示すように、後期高齢者医療制度廃止を求めて開かれている各地の集会や学習会は、多くの人たちを集め、成功しています(写真)。

■世論調査が示す「拒否感」

4月からの保険料、多くが値上げに!
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 「導入から二年たっても国民はこの医療制度を支持できない」…これを端的に示す世論調査も出ました。日本医療政策機構の「日本の医療に関する2010年世論調査」です。
 後期高齢者医療制度について、「高齢者の保険料が上がる仕組み」について問題がある、と考える人が九割にも及びました(図)。また「これまで被扶養者 だった人など一部の高齢者の負担が上がった」「保険料が年金から天引きされる」「年齢で一律に区切っている」「『後期高齢者』という名称」という、すべて の項目で「問題」という意見が「問題でない」を上回りました。
 「多くの国民が同制度に否定的」と、調査のまとめは述べています。

■「保険料上がれば滞納者増える」

 二月六日に兵庫で開かれた学習決起集会(主催:後期高齢者医療制度の即時廃止を求める兵庫県実行委員会)でも、会場はいっぱいに。ここでは民医連の青年職員が、保険料滞納の制裁で、短期証が発行されていた患者さんのことを報告し、廃止への決意を語りました。
 発言したのは東神戸病院の村瀬和人さん(26・事務)。後期高齢の患者さんに短期保険証の調査をしたところ、九人に発行されていたことがわかりました。 うち二人から事情をきくことができました。一人は新たに発生した保険料負担の支払いを理解できていない可能性のある認知症の人、もう一人の滞納とわかって いても払えずにいた患者さんは心臓病でした。  
 「年齢差別の間違った制度を先延ばしするおかしさに加え、保険料の値上げはひどい。保険料が払いきれず、短期証が交付される方が増えたり、資格書になる人が出たりしたら…」と、村瀬さん。

■すでに滞納28万人。医療は?

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後期高齢者医療制度
9割の人が
〝保険料負担に問題〟と

「日本の医療に関する2010年世論調査」より

 すでに、〇八年度に保険料を滞納していた人は全国で二八万人に(厚労省発表・〇九年六月一日時点)。保険料が上がれば、滞納者はさらに増える恐れが。
 村瀬さんたちが見た短期証の有効期限は一月三一日まで。「他院で治療中の方もいました。保険証が切れて治療を中断してしまう可能性は否めない。問題が起 きていないか、追跡する必要も感じています」と、同院事務次長の藤堂圭次さん。
 保険証がない、治療費がない、困った人ほど医療機関は遠い。現在、全日本民医連は、後期高齢の中断患者さんを訪問するなどのとりくみを全事業所に呼びかけています。 (木下直子記者)

 

いつでも元気 2010.4 No.222

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