声明・見解

2007年12月10日

【会長声明2007.12.10】 医療差別を促進し、国民皆保険制度を形骸化させる「混合診療の拡大・容認」に断じて反対する

2007年12月10日
全日本民主医療機関連合会
会 長  肥田 泰

 保険給付が認められていない診療と保険給付の診療の双方を受けた場合に、保険給付部分の診 療分も含めて全額が患者負担になるのは不当だとして、患者が国に対して給付を受ける権利があることの確認を求めた訴訟で、11月7日に東京地裁の定塚誠裁 判長は、「混合診療を禁止する法的な根拠がない」とのべ、原告に保険の受給権があることを認める判決を下した。さらにこの判決後、政府の規制改革会議から も「混合診療の全面解禁」を求める声が強まっている。

 混合診療は「健康保険で受けられる医療はここまで、それ以上の医療は自費で」というもの で、医療保険給付の範囲を制限することを目的としている。事実、政府や経団連は、「軽度医療」や市販類似薬品の保険給付外しや保険免責制度の導入を主張し 続けてきた。また、毎年、米国より日本政府にたいして出される年次改革要望書には、必ず株式会社による医療経営参入及び混合診療の解禁を求めている。市場 原理にゆだねたアメリカの医療の現状はマイケルムーア監督の話題作「シッコ」に示された通りであり、国民皆保険制度を持つ日本にとって断じて容認できない ものである。医療は憲法で保障された基本的人権の大きな要素である。

 混合診療の解禁とその拡大は、保険がきかない医療行為を永続的に容認するものであり、国民皆保険制度を形骸化させるものに他ならず、混合診療拡大によって営利の対象とすべきではない。

 この間の自・公政治によって、貧困と格差が拡大し年収200万円未満の人が1千万人を超 え、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人が400万世帯を超えている。このような状況の中で混合診療を解禁すれば、所得が少ない人は必要な医療 が受けられず、救える命が救えなくなる事態となってしまう。

 もともと保険給付外の治療・薬剤を認めること自体が大問題である。いま必要なことは、混合 診療の解禁などではなく、保険給付対象範囲の拡大と安全性が確認された新規治療や薬剤の承認期間を短縮し、保険収載を速やかに行うことである。保険証一枚 あれば誰もが必要な医療が受けられることが国民皆保険制度の原則であり、現物給付と混合診療禁止は、国民皆保険制度を支える重要な柱である。
 私たち全日本民医連は、国民皆保険制度を形骸化させる「混合診療の拡大・容認」に断固反対するものである。
多くの医療関係者、国民との共同の輪を広げ「医療崩壊」をくい止め、「医療再生」に向けてひきつづき奮闘するものである。

以上

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