いつでも元気

2010年7月1日

特集1 新政権の10カ月を 読者が採点しました。 参院選を前に

昨年の総選挙、長年続いた自民党政権が終わりました。
あれから一〇カ月…どんな気持ちで政治をご覧になっていますか? 
昨年の総選挙前、読者にきいた「投票の決め手」は、
多い順に「憲法九条守る」「後期高齢者医療制度は廃止」
「消費税増税やめて」「雇用問題の改善」「『政治とカネ』の解決」
「医療崩壊ストップ」でした(09年8月号「私はこれで投票に行く」)。
そう、そう願って投票したのです。首相がかわってもそれは変わらない。
そこで今号では読者一〇〇人が政治を採点! 
あなたなら何点つけますか?

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昨年のアンケート

結果はいかに…100点満点で100人の採点を平均しました

「後期高齢者医療制度を廃止して欲しい」― 

 「だまされた!」という怒りの三点。政権につくまでは「制度廃止」を掲げ、「即廃止して元の制 度に戻せ」という国会質問までした民主党だったが、二〇一三年度まで廃止を先送りすると発表。おかげで、四月から保険料が値上がりした都道府県が半数以上 に。「保険料値上げの分は国が出す」という長妻厚生労働相の約束も果たされなかった。
 なにより「一刻も早く廃止を」という声の切実さは、当の高齢者の暮らしぶりが物語っている。民医連職員が全国でとりくんでいる高齢者訪問では…。

治療中断の86歳 訪問するとうずくまっていて

 全日本民医連の「高齢者の受療権を守るための総訪問行動」は、患者さんの生活に寄り添い、高齢者の受療権を守るために何が必要かを考える活動です。東京・中野共立診療所ではこんな方が…。
 昨年一〇月の受診を最後に診療所に来なくなったAさん(86)。高血圧のほか、ひざや腰の痛みを抱え、歩行が不自由な患者さんでした。職員が訪ねると、なんとAさんが玄関でうずくまっていたのです。
 「ちょっと買い物に出ただけなのにめまいがして」と。二〇〇台の血圧が続き「頭がズキズキ痛む」といいます。その場で車に乗せ、診療所へ急いで搬送しました。
 切れていた高血圧の薬が出されて、Aさんの病状は安定しました。後日、記者がAさんを訪ねると、診療所の迅速な対応に感謝しつつ、「眠れない夜もある」 と不安も口にしました。「家賃は上がるし、医療・介護の保険料も天引き。最近は野菜も値上がりして。ぜいたくはできません」ひとり暮らしで月約三万円の国 民年金が唯一の収入源です。足腰が弱っていてもタクシーを使う余裕はなく、治療を中断したとみられました。
 一〇人兄弟の二女として生まれたAさんは、一四歳から飲食店などで働き詰め。七四歳で胃がんを患って働けなくなりました。一九歳で夫を亡くし、二五歳で 子宮筋腫を患うなど苦労も重ねてきました。「お金のことがいちばん心配。これ以上の保険料や、窓口負担の値上がりは絶対に困る」と。高齢者が医療にかかり にくい現実に、改めて憤りを覚えました。

患者さんのSOSは深刻

 「患者さんのSOSは、深刻かつ切実になっている」と、職員の塚本晴彦さん。「Aさんのほかに も、がんを患いながら母親を介護している男性が、自分の治療費と母親の介護サービス利用料を天秤にかけながら、今月はがん治療、来月は介護という深刻な 『綱渡り』をしている事例があったり、入院をすすめても『自営業なので休めない』と断った六〇代の患者さんがいて…。保険料や窓口負担が重いため、仕事を 休むとすぐ生活に支障が出る悪循環です。この方は、食道静脈瘤が破裂して亡くなってしまいました」
 また、同法人の川島診療所では、訪問しようとしていた患者さんが孤独死していた事例もありました。
(武田力記者)

 後期高齢者医療制度に代わる新制度は議論されているが、六五歳以上の高齢者だけの国保をつく り、独自で運営する案がいまのところ有力視されている。「医療費の負担感は受益者に実感していただく」という、後期高齢者医療制度がつくられたねらいと同 じ! さらに具体的な制度案は参院選挙後に姿を現す予定。

読者のツブヤキ だまされた!!

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この時配られたチラシ

■後期高齢者医療制度はすぐ廃止だと思ったのに、裏切られてしまった。
北海道・北野 雄(61)
■後期高齢者医療制度廃止を即時実行できずにいるのがもどかしい。
青森・工藤敏子(40)
■総選挙前の国会で「後期高齢者医療制度廃止法案」を共同で提出しながら4年間の検討期間を置き65歳に引き下げるなど、言語道断。期待を裏切り続けているので0点。
兵庫・粕川実則(63)
■後期高齢者医療制度廃止をのばし、今度は対象を65歳に引き延ばそうというのはペテンに等しい。
愛知・柴田伸治(67)
■多くの高齢者の方は一縷の望みを持って投票されたと思います。オレオレ詐欺よりも悪質。
長野・綾小路とめ♪

憲法9条を守ろうとしているか 11

 憲法をめぐっても重大な問題が。憲法を変える手続き法「国民投票法」が5月18日に施行。また、民主党は9条の「解釈改憲」につながる国会法改正にも着手しようとしている。
■改憲手続き法を施行
 同法は07年5月に「任期中の改憲」を掲げた安倍首相時代、自民・公明両党が強行採決を繰り返し成立させたもの。「最低投票率の規定がないため、投票率 が低い場合、有権者のたった2割の賛成でも憲法改定できる」「公務員や教育者の運動が規制される」などの問題が、いくつも盛り込まれている。
  施行までに行うとしていた附則「投票年齢は18歳から」「公務員の運動を制限しない」や、有料広告規制の検討など付帯決議にも手をつけないなどの欠陥も。
■解釈改憲への道も
 いままで憲法解釈を担ってきた内閣法制局長官の答弁を禁じ、「政府の憲法解釈は内閣がやる」という国会法「改正」を民主党などが提案した。これは憲法を変えなくても解釈で改憲できる道を開くことになる。
 鳩山前首相をはじめ、民主党議員に改憲派は多い。しかし、新聞各社の世論調査でも明らかなように、国民は平和憲法の改正を望んでいない。

法施行日に、街頭で問題を訴えた

  弁護士・小林善亮さんは…20点

 問題だらけの国民投票法を何もせずに施行した。おまけに、国会法改正は、憲法による政府への縛りを弱める内容です。なのに二〇点もつけたのは、普天間の米軍基地移設問題で、ここまで騒ぎを大きくしてくれたことへの評価です!(笑)

消費税増税への態度 

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 民主党は昨年の衆議院選挙で、「次の衆議院選挙までの4年間は消費税を引き上げない」と公約し、それは連立政権の合意にもなった。
■「4年は上げない」公約はどこに…
 ところが、ご存じのように、消費税増税の議論を急ぐ閣僚の発言があいついでいる。
 「事業仕分け」責任者の仙谷由人国家戦略・行政刷新担当相(当時)は「社会保障を維持するためには消費税(の議論)は避けて通れない」(1月10日会見 で)。菅直人財務・経済財政相(当時)も、消費税を「議論しないとは私も総理もいっていない」と国会で発言(1月21日)したほか、「(消費税を)増税し ても使い方をまちがわなければ景気は良くなる」とまで。
  なお民主党内では、参議院選挙の公約で「次の衆議院選挙後、消費税引き上げをおこなう」と掲げようという動きまである。これは、明らかな公約違反だ。
■「徹底した無駄」削減の後? 「福祉のため」に使ってる?
 新政権は繰り返し「消費税増税は、徹底した無駄削減の後」としてきた。
 ところが、義務のない米軍への思いやり予算(1881億円)は支払い続けているし、今年度の軍事予算を総額162億円増やした(09年度比)。なかでも米軍への在日米軍関係経費は3370億円で、491億円もの増額になる。
 自公政権時代、東京オリンピックを口実に決められた、総工費1兆8000億円、1メートル1億円もする東京・外環道計画(練馬~世田谷間16キロ)などにも手つかずだ。「徹底した無駄削減」にはほど遠いのではないか。
 しかも「福祉のため」といって導入された消費税は、法人税などの減税にあてられた。軍事費や大型公共事業、法人税減税などに踏み込んだ改革が必要だ。

【編集部からの情報提供】

年金問題、対応は?

 全日本年金者組合の森口藤子さんの採点は「二〇点」。消えた年金記録五〇〇〇万件の処理は四月で一四一四万件。「二年間集中的にやる」との公約は四年に伸びたが、解決の見通しはないままだ。
 その前に日本の年金制度には、国連から改善勧告が出るほど問題が。「最低保障」がないこと、そして低年金。満額でも六万六〇〇〇円、平均四万九〇〇〇円 という「基礎年金」のみの受給者は八七八万人。厚生年金もあるが月額一〇万円以下という人は二九九万人。老齢年金受給者の約五割が月一〇万円以下の生活 だ。あわせて六五歳以上の無年金者は一〇〇万人と推定されている。
 「最低保障」を提案する政府は初めてだが、民主党提案の最低保障は現在の高齢者は対象外。またその財源を消費税増税で担おうという。「いまの年金者から 救ってほしい。また、消費税増税だけで保障がないのは、年金料の二重どり」と、森口さんは憤る。

「待機児童」どうなの?

 「子ども手当に五兆円使うなら、保育所を増設してほしい」の声が。保育所に入れない「待機児」は、潜在を含めると一〇〇万人ともいわれている。
 これまで自公政権はもっぱら保育所への子どもの「つめこみ」で対応しようとしてきた。政権交代した民主党がとった対策も、保育所の定員超過制限(年度当 初一一五%、年度途中一二五%)の撤廃という「つめこみ」だ。また、給食の外部委託を認めるなど規制緩和も継続。
 さらに民主党は、「地域主権改革一括法案」を国会に提出。中に、保育所の最低基準撤廃など驚くべき内容も盛り込まれた。園庭の設置義務や避難経路の確 保、防災カーテンの使用など、保育所設置の最低基準はすべて自治体まかせ。子どもの安全・安心が脅かされる事態だ。

 

派遣切りなど雇用改善への態度 12

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「ナットクできない、派遣法『改正』!とりもどそう!働くよろこび、生きる希望」をスローガンに、東京・明治公園に5200人の青年たちが集まった
(5月16日 全国青年大集会2010)

 読者が採点した六つのうち、平均点がいちばん良い項目だった。ワーキングプアや派遣村を出現させた元凶にもなった「労働者派遣法」が改正になると評価された方もいるのだろう。しかし! 改正案の内容には、落胆を通りこして怒りの声があがっている。
■「これでは派遣切りはなくならない」
 いすゞ自動車工場を契約期間中に解雇され、裁判闘争中の元期間工・三浦慶範さん(JMIU)は「マイナス一〇〇点」
 改正案は「雇用の調整弁は必要」という立場でつくられ、労働者を守るものではないからだ。製造業派遣と登録型派遣を「原則禁止」としつつ「専門二六業務」については例外にし、実際は労働者の二割しか守られない大穴があいている。
 おまけに改正案ではこれまであった「派遣期間が三年を超えた場合、派遣先が労働契約を申し込まないといけない」という義務が撤廃されている。派遣から正社員になる道が閉ざされる上、企業は派遣を雇う方が得だと、正社員が減らされ派遣が増える傾向が強まる恐れまで。
 偽装請負や違法派遣があった場合、派遣先への「みなし雇用」制度が盛り込まれたが、これも企業への効力は弱い。派遣の時と労働条件を変えなくていいし、一回の短期雇用でもかまわないからだ。
■「仕事しても生活保護以下」10%も
 働いていても所得が生活保護基準に満たない世帯が、三八九万・就労者世帯の一〇%を超える、と厚生労働省が発表。また、正社員の数が九七年以降減り続 け、〇九年には九七年と比べて四三二万人も減っている。代わりに派遣などの非正規労働者は増え続けてきた。「規制を強化すれば派遣の仕事が奪われ景気が悪 化する」が財界や自民党の弁だが、不安定雇用のワーキングプアが増えれば個人消費もふるわず、景気も冷え込むことになる。

医療崩壊にストップを 10

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医療・介護改善を求めておこなった集会
(2009年10月22日 東京・日比谷 民医連新聞提供)

 地域から病院・診療所の診療科や病院自体がなくなる医療崩壊の大きな原因のひとつが、二〇〇二 年から合計約八%も削減されてきた診療報酬(公的医療保険からの医療機関への支払い)だ。医療機関の経営難、倒産を招いた。新政権のもとで、診療報酬削減 がついにストップした(二〇一〇年度診療報酬改定)。
 ところが、新政権が主張する増額幅は〇・一九%で、削られてきた八%にはまだまだ遠い。しかも表向きの診療報酬額とは別に、「後発品への置き換え」により、薬剤費を六〇〇億円削減するため、実質〇・〇二七%しか増えていない。 
 新政権自ら医療崩壊をすすめる動きも。四月から始まった「事業仕分け第二弾」では、国立病院や労災病院の収益性向上をもとめ、これらの病院の統廃合を決 めた。自公政権は「公立病院改革」で公的病院の統廃合をすすめたが、新政権の「事業仕分け」の結論は、これと軌を一にするものだ。
 一方、自公政権が決めた療養病床(一五万床)削減計画も、民主党は総選挙で「凍結」すると公約。ところが長妻厚生労働相はことしに入り、介護型療養病床の廃止を繰り返し明言した。医療難民・介護難民がいっそう増すのは必至だ。

読者のツブヤキ だまされた!!

■無駄を削れば財源が出てくると言っていたが全然ないどころか、次の総選挙で消費税増税を考えるとは嘘つきの極み。
福岡・ヒデさん(54)
■消費税は上げてはダメです。
北海道・浅利ミツ子(72)
■消費税は生活破壊税。大企業の法人税の穴埋めは許されないぞ。応分の負担を大企業から。
石川・加藤忠男(60)
■財政問題については、大企業や金持ちの税制に手をつけず、消費税に頼ろうとしているのもけしからん。
東京・センム(52)
■普天間基地移転は、日本じゅうどこにも移転先はないんだから、返却となぜいえないのか。
神奈川・女(57)
■沖縄の基地問題で日本の声を代弁できない弱さ。大企業にモノがいえない弱さ。労働者派遣法の大穴。
東京・広瀬友一(63)
■自公政権は、国民の意見を聞く前から蹴散らす、民主党政権は聞いたふりして蹴散らす。
福井・松原信也(68)
■よく見て投票しませう。
静岡・匿名(80)
■新政権が障害者の声を聞いてくれるか心配だったが、自律支援法の強行などゆるせない。
長野・さざえ
■鳩山氏の母親からの1500万円の「子ども手当」(?)と小沢氏のカネの問題。カネにきたなすぎる。
東京・SIR-1000(37)
■政治とカネ、普天間、どれもこれもガッカリです。
北海道・川森市子(61)
■事業仕分けのイベント的なやり方に不安を感じます。
福岡・下川博子(74)
■政権交代以降「不実行」「うそばかり」うんざりの日々。
千葉・小野祥子(80)
■国民の多くが期待して投票したと思うが、ことごとく裏切ってくれて非常にがっかり。
愛知・恒川繁子(57)
■信じてないのでダマされたと思わない。自民党の後始末ごくろうさん、と嫌味はいいたい。ま、まったく片づいていませんが。
青森・館田総子(39)
■国民の立場に立っているようで立っていなかった!
        京都・ぴーす(28)

政治とカネの問題の解決を -3

 想定以上のマイナス採点。通常国会の焦点の一つが鳩山前首相や小沢前民主幹事長のこの問題究明だったはずだったが…。
 鳩山首相は、本人の資金管理団体「友愛政経懇話会」の収入の大半が本人と母親からの資金だったのに、架空の人物の名で虚偽の個人献金やパーティー券収入 として届け出ていた、虚偽献金事件。虚偽記載で元秘書の有罪が確定した。
 また小沢前幹事長は、自らの資金管理団体「陸山会」を通じ巨額の土地取引を行い、政治資金規正法違反に問われた。3人の元秘書が裁判中だが、不起訴に なった小沢氏自身も検察審査会に「起訴相当」を議決され、再捜査された。疑惑はこの政治資金の問題だけでない。資金の出所も、談合で公共工事を受けたゼネ コンなどからの裏献金が疑われている。
 小沢氏は不起訴を理由に、自らの潔白を主張するが、国民の前に説明をする、政治的道義的責任からは逃げられない。
「政治とカネ」の問題を絶つために、企業・団体献金を公約どおり禁止すべき。

長瀬文雄・全日本民医連事務局長にきく

新政権の10カ月、民医連はどうみる?

 すべて「赤点」でしたね。政治を変えるのも要求を実現するのも「政権」ではありません。「よい代官が現れればよい政治になる」のは水戸黄門の世界です(笑)。大事なのは政治の理念で、つぎはぎの公約でもないのです。
 民主党は政権をとるため、総選挙では国民が期待する政策を掲げました。が、政権についてからは、後期高齢者医療制度や沖縄の基地問題が象徴するように、 公約実現どころか、派遣法や障害者自立支援法の「改正」、消費税増税などで国民の願いとは真逆に走っています。「仕分け」でもアメリカ軍の思いやり予算や 大企業の大儲けには手をつけない。「コンクリートから人へ」と首相が施政方針演説で二〇回以上も叫んだフレーズも、出なくなりました。
 一方、母子加算復活などの成果もありましたが、これも国民が黙っていては実現しませんでした。普天間問題でも沖縄は「札束では騙されない」と怒りを燃やしています。ついに首相を辞任にまで追いこみました。
 スウェーデンでは、国政選挙の投票率が三〇年間八割を切ったことがないそうです。政治を良くするのも悪くするのも国民一人一人。「誰がやっても同じ」と 傍観せず、投票に行きましょう! 基軸は憲法九条と二五条です。この思いをあなたのまわりのたくさんの人たちと語り合いましょう。

いつでも元気 2010.7 No.225

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