声明・見解

2008年11月15日

【抗議声明2008.11.15】妊婦死亡等に伴う二階経産大臣の「モラルの問題」発言に抗議する

2008年11月15日
全日本民医連 第10回定例理事会

 今回の、「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医師のモラルの問題だと思いますよ。忙し いだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」との二階経済産業大臣の発言は、自らの身を削るようにして現場で献身的に奮闘している産婦人科医に 対する非情なまでの悪罵といわざるをえず、産婦人科医のモチベーションを下げ、さらなる離職増加をもたらすものである。加えて、四半世紀ぶりに医師数抑制 政策をあらためる閣議決定してきた内閣の一員としての自覚のなさを露呈したものであり、お詫びと発言撤回で済むものではない。
 日本の医師数は諸外国と比べても極めて少なく、OECD平均の2/3に止まっている。この絶対的医師不足、とりわけ病院勤務医不足は、地域になくてはな らない医療機関の存続を危機にさらし、病院の閉鎖や診療科の廃止などの事態を招いてきた。中でも「過労死認定レベルを超える長時間勤務」(日本産婦人科学 会調査)など過酷な労働と最も高い訴訟リスクを抱えた産婦人科医の状況は、日々深刻さの度合いを増している。お産のできる施設が急速に減少し、それを上回 るスピードで産婦人科医が減少している。このような過酷な労働環境の中で、墨東病院や杏林病院などの事案が起こったのである。両病院はいずれも総合周産期 母子医療センターであり、母子の命を預かる最後の砦である。墨東病院の場合、産科医は定員割れの慢性的医師不足によって、土日、祝日の当直は1人体制で あった。
 そもそもこういう事態を招いたのは、公的医療費抑制政策と、医学部定員を削減し絶対的医師不足を引き起こした国の失政に根本原因があり、自らの責任を棚 上げし、その責任を現場の医師に転嫁するなどということは言語道断である。また同時に、都立病院の統廃合を進め、さらに独立行政法人化を行おうとしている 都の方針にも問題があることも明らかである。国と都はともに猛省し、この間の政策的誤りを正すことに努力すべきであって、舛添厚生労働大臣と石原都知事が 責任を押し付けあっている場合ではないことをあわせて指摘する。
 二階経産大臣は早々に発言を撤回し、謝罪をしたが、閣僚である現役の国務大臣の発言である以上、撤回・謝罪したからといって看過することはできない。本 当に謝罪する気があるなら、実効ある措置に向けて行動すべきである。ここに改めて抗議し、産科医療、救急医療の再構築、医療崩壊阻止のため公的医療費大幅 増、医師大幅増員、に向け具体的努力を行うことを強く求める。

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