いつでも元気

2011年3月1日

障がい者の充実した生活を 取り残される農村、貧困層 ベトナム・タイニン省 尾崎 望(京都民医連中央病院小児科医)

 「ベトナムタイニン省の地域リハビリテーションを支援する会」は、ベトナム南部のタイニン省とかかわって九年。昨年秋もタイニン省を訪れました。今後五年間の支援活動について、タイニン省リハビリテーションセンターの幹部と方針を確認することがいちばんの目的でした。

地域でワーカーを育成

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障がいを持つ高齢者宅を訪問。血圧を測るのは看護学生

 私たちはCBRの支援を目的としてタイニン省とかかわってきました。CBR(community-based rehabilitation)とは、設備・スタッフに恵まれない地域で、障がい者の健康で充実した生活を支えるために、地域で日常的に生活指導やリハビ リテーションを指導するワーカーと呼ばれる人たちを育て、その力で障がいを克服していこうというものです。実際に活動するワーカーに技術指導、相談、経済 援助などをおこなってきました。
 ベトナムでCBRのモデル地域といわれるベンチェ省に、タイニン省から一〇人のワーカーを送り、研修を受けてもらうなどの活動もしてきました。
 また、毎年医師やリハビリ技術者でグループをくみ、タイニン省リハビリテーションセンターを訪問、訓練士に技術指導をしてきました。
 いま、リハビリテーションセンターの訓練士たちの力量は向上し、ワーカーさんたちも明らかに成長しました。地域の信頼も得て、以前なら寝たきりで放置されていたと思われる脳卒中の方が歩行するまでに回復した例も出てきています。

不十分な医療・福祉・教育

 私たちがタイニン省に支援に入った当初は、脳卒中、交通事故、地雷など戦争の後遺症、先天性障がいなど多くの障がい者に出会いましたが、大部分が十分な治療・リハビリテーションを受けられず、教育の恩恵も受けていないことに、大きな衝撃を受けました。
 しかも人口一〇〇万人のタイニン省に総合病院が一つ、リハビリテーション施設も一つしかない上、いずれも設備・スタッフが不足していました。社会主義国家ベトナムにおいても、貧富の差とくに都市部と農村の格差は大きいのです。
 フランスの植民地支配からの独立の戦いに始まり、約三〇年間にわたった戦争は、ベトナム経済をドン底にまでたたき落とした感があります。復興の過程で も、都市産業の基盤整備を中心に国家予算が配分されました。戦争に貢献した兵士とその遺族に対しても手厚い報償がおこなわれ、いまも続いています。こうし た支出が優先されるため、医療や福祉、教育が不十分になっています。戦争被害は戦闘の直接的被害だけでなく、このような形でも庶民に影響を遺しているので す。

職業訓練施設建設にご協力を

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農作業などで忙しい家庭では障がい児を見る余裕がない。1日を金網の中で過ごす子どもも

 タイニン省では障がいを持った子どもたちは基本的に学校に行けません。通学は拒否されませんが、進級できないために退学せざるを得ないのです。
 家事を手伝う子もいますが、何もできず日々を過ごす子もいます。障がいが家族の手におえない場合は金網の部屋に閉じ込められ、鎖につながれている子もいます。成人しても働く場所はありません。
 庭先で一日中いすに座って過ごす脳卒中のお年寄りなどをよく見かけます。食事も着替えも家族の役割です。
 私たちの次の課題は、障がい者がおかれたこのような現状への対応です。今回の訪問では、タイニン省リハビリテーションセンターの院長をはじめとする幹部 と話し合いを持ち、障がい者の作業所機能を持った職業訓練センターを建設することで意見が一致しました。障がいがあれば社会生活からは縁を切るのが当然 で、障がいを持ちながらどうやって自立するかなどという考えとは無縁だった以前のベトナム社会とは、雲泥の差といっていい変化です。
 日本側の支援規模は、日本円で五〇〇万円です。ご協力をお願いします。

■カンパ送金先
特定非営利活動法人ベトナムタイニン省の地域リハビリテーションを支援する会
郵便振替口座 00900-4-316176

いつでも元気 2011.3 No.233

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