いつでも元気

2011年8月1日

特集2 エコノミークラス症候群の予防 適度に身体を動かそう

気軽にできる運動・体操をご紹介

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小島秀之
東京・中野共立病院 理学療法士

 今年も暑い夏になりそうです。
 暑いと外出するのもおっくうになり、自宅でじっとして過ごすことが多くなりがち。屋内であっても熱中症や脱水症状を起こさないよう、注意が必要です。
 「エコノミークラス症候群」も、気をつけたい症状のひとつです。自宅で過ごすことが多い方だけでなく、今回の大震災で避難所生活を余儀なくされた方にも、エコノミークラス症候群の発症が心配されます。
 2004年の中越沖地震では、乗用車に寝泊まりしていた避難生活者が発症したり、避難所生活で発症して死亡される事例がありました(榛沢和彦・新潟大学准教授調べ)。
 今回は、暑さによって高齢で身体を動かすことが少なくなる方や、避難所や仮設住宅などで窮屈な生活をせざるをえない方などに発症しやすい、エコノミークラス症候群の予防について、お話しします。

同じ姿勢や水分不足が原因

 エコノミークラス症候群は、正しくは急性肺動脈血栓症といいます。飛行機のエコノミークラス(料金が安いかわりに座席まわりがせまい)搭乗者に多く発症することから、注目されたものです。「旅行者血栓症」とも呼ばれています。
 長時間、同じ姿勢でいることで、足の静脈(心臓に戻っていく血液が流れる血管)がうっ血(血液が溜まること)したり、水分不足で血液がドロドロになったりすると発症しやすくなります。
 静脈は動脈(心臓から押し出された血液が流れる血管)に比べて、血液の流れる速さがゆっくりなため、血液の流れが滞りやすいのです。飛行機のエコノミー クラス(料金が安いかわりに座席まわりがせまい)搭乗者に多く発症することから、注目されたものです。「旅行者血栓症」とも呼ばれています。
 長時間、同じ姿勢でいることで、足の静脈(心臓に戻っていく血液が流れる血管)がうっ血(血液が溜まること)したり、水分不足で血液がドロドロになったりすると発症しやすくなります。
 静脈は動脈(心臓から押し出された血液が流れる血管)に比べて、血液の流れる速さがゆっくりなため、血液の流れが滞りやすいのです。

たいへん危険な症状も

 このような状態が続くと、静脈に血のかたまり(血栓)ができやすくなります。身体を動かした拍 子に血栓が動き、いちばん最初にたどりつく肺の血管を詰まらせる(閉塞する)ことで、エコノミークラス症候群が起きます。胸痛、失神、呼吸困難、心拍数の 増加、意識消失などの症状を起こします。
 血栓が脳の血管を詰まらせると「脳塞栓」、心臓の血管を詰まらせると「心筋梗塞」となり、周囲の組織が破壊されるきっかけとなりますから、たいへん危険です。

発症しやすいのは…

 エコノミークラス症候群になりやすいのは、(1)肥満の方、(2)40歳以上の女性、(3)糖尿病をもつ方、(4)身長が低い方、(5)足に静脈瘤(血液の流れが滞ってコブのようになる)がある方、(6)喫煙者、などと言われています。
 左足の静脈は、腹部にある動脈により圧迫されているため、右足に比べて血栓ができやすい状態にあります。
 精神的ストレスも血管を収縮させ、血液の流れが悪くなる原因となるため、エコノミークラス症候群の要因となります。

3つの予防方法

 エコノミークラス症候群を予防するには、まず「血栓をつくらない」ことが大事です。予防には大きく3つの方法があります。

■水分補給
 まず1つ目は、水分補給です。
 血栓は、血液がドロドロになることで起きやすくなるのですから、これを逆にサラサラにすることが必要です。
 水分の補給は、熱中症や脱水症状の予防にも有効です。また、水道水やミネラルウォーターよりも、イオン飲料(スポーツドリンク)の方が適していると言われています。利尿作用のあるコーヒーやアルコールの飲み過ぎは、水分不足の原因となるため注意が必要です。

■弾性ストッキングや包帯で
 2つ目は、弾性ストッキングや包帯の利用です。
 水をまくホースを思い浮かべてください。ホースを使う際、ホースを押して水の通り道をせまくすると、勢いよく水が流れますね。これと同じ現象を弾性ストッキングや包帯を使って起こします。
 静脈は、動脈よりも血液の流れる速度が遅いのですが、伸び縮みのあるストッキングや包帯を足に巻いて締めつけることで、血液の流れる速度を速めて、血栓を予防するというわけです。
 包帯を巻くときは、心臓から遠い場所はきつめに、心臓に近い場所はゆるめに巻くのがポイントです。こうすることで心臓に戻る血液の流れを速め、静脈を流れる血液を心臓に向かって勢いよく押し出すことができます。

■運動・体操
 3つ目は、運動や体操です。
 「気軽にできる運動や体操」を紹介していますので、イラストをご参照ください。
 「立ったり座ったりする」「歩く」ということも効果的です。体を動かすと、筋肉が伸び縮みします。この筋肉の収縮運動がポンプのように働いて、静脈内の血液を心臓に向かって押し出し、うっ血を改善するというわけです。

無理をせず体を動かそう

 このたびの東日本大震災でも、避難所生活が続く方々に、エコノミークラス症候群の予防を目的と した体操指導やマッサージなどが、ボランティアによっておこなわれています。自宅でも避難所でも、同じ姿勢で長時間過ごさないように気をつけることが大切 です。座りっぱなしの姿勢だけでなく、立ちっぱなしの姿勢でもこの病気の原因となることがありますから、適度に姿勢を変えたり、身体を動かすように心がけ ましょう。
 今回紹介した運動や体操をおこなうときには、くれぐれも無理をしないように注意しましょう。身体を動かす時は力が入って呼吸を止めてしまいがちですが、 息を止めると血圧が上がります。運動や体操をおこなうときには、息を吐くことを意識しましょう。運動の回数を口に出して数えると効果的です。適度に休憩を とりながら、筋肉・関節の痛みが悪化したり転倒しないよう注意しながら、リラックスしておこなってください。
イラスト・井上ひいろ

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いつでも元気 2011.8 No.238

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