声明・見解

2009年5月15日

【声明2009.05.15】「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」に対する見解

2009年5月15日
全日本民医連理事会

 3月31日「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に上程された。今回の法改正は、「施行3年後の見直し」に基づくものであるが、法案の内容は、同法の廃止を含む抜本的な見直しを求める国民の期待に背くものとなっている。
 2006年4月に施行された障害者自立支援法は、「応益」負担の原則の導入など障害者福祉を大きく変質させる内容のため、障がい者の生活や施設の運営に 深刻な被害をもたらし、「自立阻害法」とさえ言われている。そのためまさに「命をかけた」当事者自身のたたかいにより、国も「特別対策」、「緊急措置」と 2度にわたる利用者負担軽減策を実施せざるをえなかった。このことは「私たちのことは私たちぬきで決めないで!」という多くの障害者団体の声を無視して成 立した現法の根本的な欠陥のためと言える。

 しかし今回の「見直し案」では、

1)

国は‘利用者負担について、応能負担を原則に’と掲げ、「応益負担」の規定 を削除したとしている。しかし法案の内容をみると、費用単価の1割負担を上限とする規定が残っていて、応益負担の考え方が今後復活する可能性を残してい る。もともと支援費制度時代には、ほとんど自己負担がなかったことを考えれば、「見直し案」は障がい者が生きるために必要な支援を受けることを、「益」と みている考え方に変わりはない。実際、自立支援医療の精神通院医療、更正医療では、中間所得層への負担上限措置が取られていないことにもそれは現れてい る。さらに「利用者負担の額」の決め方において、「家計の負担能力をしん酌する」としているが、これは本人以外の家族の収入も認定する余地を残している。 収入判定を「本人収入」と明確にすべきである。

2)

現在の日額制の施設報酬の算出方法になんら改善がない。この間、一部報酬単 価の増額や人材確保等が提案されてきているが、この算出方法は、障害の違いにより通所継続の安定性に違いが生じる現実を無視しており、利用者と事業者との 間に有害な緊張を強いるものとなっている。また、施設報酬の増加は利用者負担に跳ね返ってしまう。各影響調査によれば、施設利用料や食費などの自己負担を 滞納する利用者も多いことが示されているが、こうした問題もそのままとなっている。施設への財政支援を明記し、日額制をもとの月額制にもどすべきである。

3)

現行の障害程度区分は、一次判定評価が著しく低く、二次判定で重い方に変更 せざるをえない事例が頻出し実態に合わないという批判が続いている。今回の見直し案では、「障害支援区分」と名称と定義を変更し、区分そのものも抜本的に 見直すとしている。介護保険と同様の制度設計やこれまでの経過をみると、この区分は、個々の障がい者のケースマネジメントの充実に生かすというよりも、国 がサービス利用の上限を定め、支出をコントロールするために用いられてきている。障害程度区分は、障がい者個々のニーズに対応できる仕組みの中で、活用さ れるように改善が必要である。

4)

そのほかにも今回の法案は障害児支援の強化がうたわれているが、障害児通所 サービスの市町村一元化が、大幅なサービス低下につながらないか、発達障害が自立支援法の対象となることは明記されたがすべての障がい者が対象になってい ないなど、多くの懸念が残り、問題がそのままとなっている。

 以上より今回の「見直し案」は一部の手直しにとどまり、現在の自立支援法の原理原則を見直したとはいえない。そもそも道理のない策定過程を経てきた障害者自立支援法は廃止し、あらたに当事者を主体とした協議会を設置し、総合的な法制度の確立を求めるものである。
 全日本民医連は、こうした見地から真に人権の尊重された障害者福祉制度の改善、社会保障制度の確立のため、引き続き多くの諸団体と共同した取り組みを強めるものである。

(PDF版)

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