Dr.小池の世直し奮戦記

2011年12月1日

Dr.小池の世直し奮戦記 農業も医療も壊す“毒薬”入りのTPP

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10月26日に開かれた東京・日比谷でのTPP反対集会には全国農業組合中央会(JA中央)のほか、日本医師会、漁業関係者、消費者団体など3000人が集まった

 TPP(環太平洋連携協定)をめぐって熱い議論が交わされています。
 なんと言っても、TPPの第一の問題は、関税を原則撤廃し、農産物の輸入を完全に自由化することです。農林水産業と国民の食料に大打撃をあたえます。日 本の食料自給率は三九%から一三%まで低下。国産のコメは一割以下に。東北の産業の柱でもある農林水産業を直撃し、被災地復興の希望を奪うことにもなり、 許されません。
 もう一つの大問題が「非関税障壁を撤廃する」と称して、関税以外のルールもすべて取り払うことです。他の参加国が「貿易の障壁だ」と言えば、国民生活の さまざまな分野で「規制緩和」が迫られ、国民の安全、安心が脅かされます。TPPが「国のかたちを変える」と言われるゆえんです。

身勝手なアメリカの要求

 民主党の前原誠司政調会長は「非関税障壁」撤廃の害悪について「根拠がない。『TPPおばけ』みたいなもの」と茶化していますが、“おばけ”などではありません。アメリカが日本に以前から要求してきたことです。
 たとえば食の安全について、アメリカ政府は「日本の基準は厳しすぎる」と。米国通商代表部は「牛肉BSE対策の規制を緩和しろ」「コメ輸入の際の検査を 緩和せよ」「冷凍フライドポテトの大腸菌付着を認めろ」などと驚くべき要求をしています。

交渉参加国でも反対の声高まる

 医療でも、アメリカ政府は一貫して日本の公的医療保険制度を敵視し、民間保険会社への「市場開 放」などを求めてきました。日本医師会は、TPPに参加すれば、混合診療の全面解禁で保険のきかない医療が拡大し、所得によって受けられる医療が制限され る危険があると指摘し、反対を呼びかけています。当然の懸念です。
 すでにTPP交渉に参加しているオーストラリアやニュージーランドでも、反対の声が高まっています。両国で特に問題になっているのが、医薬品を国民に安 く供給する制度をアメリカの製薬業界が敵視していることです。TPPに入れば、この制度が崩壊するという危機感が広がっています。

何でもアメリカ流でいいのか

 実は、TPPには「毒素条項」と呼ばれるものが盛り込まれる危険があります。これはすでに北米 自由貿易協定(NAFTA)に導入されていますが、企業が投資した相手国の政府を訴えることができるというものです。たとえば、日本が禁煙の規制を強めれ ば、アメリカのたばこ会社が日本政府に損害賠償を請求することもできるのです。民医連が住民と力を合わせて運動し、患者負担軽減の制度が実現したら、アメ リカの製薬会社から「利益を上げる妨げだ」と訴えられるなんてことも起きかねません。
 「TPPに入っても、問題があれば抜ければいい」なんていう議論もありますが、無責任すぎます。関税の原則撤廃などを認めるのがTPP交渉に加わる前提 条件。その前提自体が問題の根源なのですから。TPPは一度口にしたら、たいへんな害悪をもたらす“毒薬”にほかなりません。
 何でもかんでもアメリカ流のやり方で、この国のかたちを変えることは許せません。広範な人々と力を合わせて、「TPP反対、日本の農業も医療も守れ」の声をあげていきましょう。

いつでも元気 2011.12 No.242

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