声明・見解

2009年6月19日

【声明2009.06.19】臓器移植法改正案の衆議院通過にあたって

 2009年6月19日
全日本民主医療機関連合会
会 長  鈴木 篤

 6月18日、衆議院本会議で臓器移植改正法案が採決され、脳死を「人の死」とすることを前提に15才未満からの臓器提供を可能とすることを柱にした「A 案」が可決されました。

 人の生死に直接的に関わり、生命倫理が根本的に問われる重要法案であるにもかかわらず、衆議院厚生労働委員会で、わずか8 時間の審議しか行われませんでした。不十分な審議のまま採決に至ったことに強い危惧を覚えます。

 可決された「A案」は、「脳死は人の死である」という前提にたって、臓器提供の条件について生前の意思表示と家族の同意を必要としている現行制度を大幅 に緩和し、脳死状態となったとき本人の意思が不明でも、生前の拒否がない限り家族の同意があれば臓器摘出を認めるというものです。また年齢制限が撤廃さ れ、乳幼児からの臓器提供が可能となります。

 本来、脳死を人の死として認めるか否かは、臓器移植と切り離して議論し結論を出すべき問題です。現在の日本で、「脳死は人の死である」という国民的合意 がつくられているとは考えられません。また、脳死臓器移植は、他の人の死を前提に成り立つ極めて限定的な医療です。「生命の贈り物(Gift of Life)」によって行われているということを重視するならば、ドナー本人の意思表示の確認は必須条件です。生前の拒否がなければ家族の同意で認めるとい う、ドナーカードのない臓器移植については、慎重に考えるべきです。また、現在の脳死判定基準が臨床現場で合意を得られるものになっているか、十分な検証 が必要です。

 小児の臓器移植については、検討が急がれます。ドナー・レシピエント双方の子ども自身の意思表示をどのように確認すべきか、とりわけ子どもの虐待が社会問題化する中で、十分な議論が必要です。
 小児の救急医療体制が十分ではない状況の中で、小児救急救命医の育成、脳死判定を実際に行う医師の配置など医療整備が課題です。小児の脳死判定について は成人に比べてより慎重な判断が必要です。

 1997 年に成立した現行の臓器移植法のもとで、いくつかの問題点が指摘されていることも事実です。参議院での徹底審議を求めるとともに、今国会で拙速に成立させ るのではなく、専門家の知見や関係者の意見を求め、国民的議論を尽くすことこそが必要です。

(PDF版)

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