声明・見解

2009年6月30日

【声明2009.06.30】新型インフルエンザ対応に関する要望

厚生労働大臣 舛添 要一 殿

 2009年6月30日
全日本民主医療機関連合会
会 長 鈴木 篤

 貴職におかれましては、新型インフルエンザ対応でご尽力されていることと存じます。
 さて、4月にメキシコで確認された新型インフルエンザは全世界に感染が広がり、日本国内では5月16日に初めて海外渡航歴のない新型インフルエンザ感染 患者が確認されました。WHOは6月11日、警戒度を世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」へ引き上げると発表しました。
 今回のウイルスは幸いにも弱毒性といわれており、国内で重症例はいまのところ報告されていませんが、兵庫県や大阪府では実際の発熱患者の診療にあたって多くの混乱がみられました。
 第2波、第3波の流行、さらに強毒性ウイルスの流行に備え、以下、要望します。

1.感染拡大期、パンデミック時における行動指針、診療指針を明確にすること
 兵庫県や大阪府は国内発生早期の段階で、想定していた医療提供体制は機能しませんでした。発熱相談センターの電話は一杯になり、発熱患者を発熱外来に集 中させるという方法も矛盾をきたしました。また、診療の指針が明確でなく、現場では抗ウイルス薬の使用のありかた、遺伝子検査を行う基準など自治体からの 指示が何度も変わり、混乱をきたしました。すべての医療機関が、それぞれの規模や機能に合わせて新型インフルエンザの診療に協力するために、現実的な行動 指針・診療指針の確立をお願いします。

2.サージカルマスク、N95マスク、ゴーグル、予防着、診断キット・治療薬などの確保と、必要時、速やかに流通する手だてをとる。全国の医療機関で必要な備蓄を確保できるようにすること
 兵庫県や大阪府では国内発生早期の段階で、マスクや診断キット、治療薬の不足が生じました。医療機関に必要な物資が必要時に十分供給されるよう、製造メーカーへの指導をはじめ実効力のある検討をお願いします。

3.サーベイランス体制を強化し、感染動向を正確に把握すること。確定診断のための遺伝子検査が迅速かつ容易にできるよう、体制を確立すること。および検疫所に十分な人員を配置し、機能強化をはかること

4.発症後48時間以降のインフルエンザ抗原検査に対する保険適応を拡大すること
 現在の診療報酬では、インフルエンザ抗原検査は発症後48時間以内に実施した場合に限り算定する、とされています。診断キットはある程度ウイルス量が増 えないと反応せず、1回の検査では陰性でもその後の検査で陽性が判明することがよくあります。「発症後48時間以内」というのは、抗ウイルス薬投与との関 連だと説明されていますが、抗ウイルス薬は必ずしも陽性の患者すべてに投与が必要なわけではありません。新型インフルエンザの感染拡大を防ぐためには、仮 に発症後48時間を過ぎていたとしても、正確な診断を下すことが必要だと考えます。実施回数も含めて、保険適応の条件である「発症後48時間以内」の制限 緩和について次期診療報酬改定を待たずに検討してください。

5.医療従事者の確保を支援すること
 感染が拡大すると、保育所の休業や休校により、医療従事者が子どもの世話のために出勤できない状況があります。看護師などの体制確保をするための手だて を急ぐことが求められています。経済的な保障を含め、各医療機関を支援する施策の検討をお願いします。

6.地域の保健予防活動において保健所が十分な役割を果たすために、医師などの配置をすすめ、保健所機能を復活させること
 保健所の統廃合がすすみ、医師不在の支所が増えています。住民の顔の見える範囲で保健予防活動を進めるために、支所に医師の配置を進めるなど、保健所機能の復活をはかってください。

7.地域の基幹病院の機能を充実させ、感染拡大の際に十分患者を受け入れることができるように整備すること。また、感染症病床・陰圧病床を計画的に増床すること
 新型インフルエンザ対策において、自治体病院など地域の基幹病院の役割が重要です。この間の病床削減政策をあらため、安心して入院できる体制を整備して ください。今後、さらに強毒性の流行も考えられます。この4年間で、感染症指定医療機関の専門病床が3,400床も減らされています。感染症病床、陰圧病 床などの増床を検討してください。

8.新型インフルエンザ対応にかかる費用の増大、新型インフルエンザ患者の 診療にあたって他の患者の制限による収入減、などについて医療機関に対する経済的補填を行うこと。医療従事者とりわけ新型インフルエンザの診療にあたる医 師などが感染した際の休業補償について検討すること。休業を要請された介護保険通所・短期入所事業所への、休業期間中の経済的補填と報酬算定の適切な運用 を行うこと

9.新型インフルエンザワクチンの安全性と有効性を検証したうえで、季節性インフルエンザワクチンとともに十分な供給をはかること。医療・介護従事者、ライフラインの維持に関わる人たちへ優先的に接種を進めること

10.流行時、外出を控えざるをえない在宅患者、高齢者、慢性疾患患者などの健康を守る手だてを講じること
 新型インフルエンザの流行によって介護保険サービスの利用が制限される事態になっても、配食サービスや家事のサポートなど利用者の日常生活が継続できるよう必要な対策を講じて下さい。
 通院を控えざるをえない慢性疾患患者に対する療養指導や健康管理が十分に行えるよう、また救急医療をはじめインフルエンザ以外の患者に対する医療が制限されることがないよう、必要な対策を講じて下さい。

11.「無保険者」など医療費の支払いが困難な人の保障制度を緊急に確立すること
 「無保険者」など医療費の支払いが困難な人が新型インフルエンザに感染した場合に、経済的な心配をせずに安心して受診することができるよう、医療費自己 負担分を保障する制度を緊急に確立してください。また、これらの方々が安心して受診できるよう、広報機能を高めて下さい。

(PDF版)

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