声明・見解

2009年9月13日

【声明2009.09.13】新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種について(素案)に対する意見

厚生労働省
新型インフルエンザ対策推進本部事務局 御中

新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種について(素案)に対する意見

2009年 9月13日
全日本民主医療機関連合会
会 長 鈴木 篤

はじめに
 全日本民医連は、従来から予防接種に大きな関心を持ち、たびたび声明や厚生労働省への要望書を出してきました。2008年10月には、高病原性鳥インフ ルエンザに対するプレパンデミックワクチンの発生前事前接種や発生後の先行接種について意見を述べました。2009年1月には、国の責任で予防接種行政に 力を入れ独自のワクチンの開発をすすめ、国民には無料で接種し、大きな成果を挙げているキューバに医療視察団を派遣し、国の責任で必要量のワクチンを製造 確保することや国民への無料接種の重要性を実感して来ました。また、本年6月30日には現在世界的な流行となっている「新型インフルエンザに対する要望」 を厚生労働省に提出し、「新型インフルエンザワクチンの安全性と有効性を検証したうえで、季節性インフルエンザワクチンとともに充分な供給をはかること。 医療介護従事者、ライフラインの維持にかかわる人たちへ優先的に接種を進めること」等要望しました。このような立場から見ると、国と厚生労働省の新型イン フルエンザワクチンに対する対応は極めて遅いものといわざるを得ません。
 以上の経過を踏まえて、今回厚生労働省から出された新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種について(素案)について意見を述べます。

1.新型インフルエンザ対策における予防接種の位置づけ
 これに関しては、特段の意見はありません。
 ただし、今回のインフルエンザワクチンは「死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこと及びそのために必要な医療を確保することをその目的とする」とあ ります。新型インフルエンザ(A/H1N1)は重症者は比較的少ないものと考えられますが、ライフラインの維持についての考え方について記載しておくべき であると考えます。

2.ワクチンの接種について
(1)優先接種の必要性について

 現状のワクチンの供給量が限られていることを前提にすれば、優先的にワクチンを接種する対象者を決めることは当然のことで、賛成です。
 ただし、「素案」の5ページならびに「参考資料1」の11ページに記載されているように、10mlバイアル製造の場合、当初製造予定数よりも大幅に多い 約3,000万人分の生産が可能とのことです。事態の状況を鑑み、集団接種できる態勢の確保を前提に、10mlバイアルでの供給をすれば、優先接種対象者 の中でも優先順位を決めることなく接種が可能と考えます。しかも、継続して10mlバイアルでの供給を行うことで、年明けには受験生や65歳以上の高齢者 も接種できる条件が広がります。
 是非ともワクチンの製造単位と、接種のあり方については、行政サイドのイニシアチブを発揮した取り組みを強く要望します。

(2)優先接種対象者
 直接、インフルエンザ患者の診療に従事する医療従事者とありますが、考え方としては、地域の一般開業医も含めた、臨床現場に従事する国内の全医療従事者を想定していることを明確にすることを要望します。
 また、医療従事者に接種するにあたっては、国公立の医療機関から優先することなく、全国一律的に接種できるように安定供給されることを要望します。
 ハイリスク者への優先接種については賛成です。
 基本的なライフラインの維持にかかわる労働者に対する考え方について記載を要望します。

3.ワクチンの確保について
(1)国内産ワクチンの確保

 前述したように、基本的に集団接種できる態勢を確保し、10mlバイアル入り製剤での接種を行うことで、少なくとも優先接種対象者については、遅滞なく接種できることを要望します。
 今回のように、誰を優先すべきか否かといった議論を行う前に、わが国におけるワクチン製造・確保についての基本的政策に誤りがあったのではないかという 思いを払拭できません。予防接種の意義は、基本的に公衆衛生の向上であり、基本的に国ならびに自治体行政が責任をもって実施するべき事項と考えます。この 観点から、現在のような限られた製薬企業にワクチン製造を任せるのではなく、国の機関としてワクチン製造を行う設備を確保し、今回のような予期せぬウイル スに国民が危険にさらされている事態になったとしても、安定的にワクチンが供給できる体制を至急確立すべきです。国民の安全確保は国の使命です。

(2)輸入ワクチンの確保
 現時点でのワクチンの輸入については賛同できません。
 その理由としては、以下の3点です。
 第一に、前述したように10mlバイアルで集団接種を行えば、優先接種対象者については十二分にまかなえること。
 第二に、厚労省から提供されている輸入を検討しているワクチンの概要だけでは、日本人に対する有効性と安全性が確立されていないこと。
 第三に、日本が、諸外国からの輸入に頼ることは、開発途上国へのワクチンの供給を減らす要因にもなるため、先進国である日本としては取るべき行動ではないこと。

4.その他 ワクチンの接種料金について
 昨今のマスコミ報道によると、新型インフルエンザに対するワクチンの接種料金は、1回につき5000円前後と言われています。新型インフルエンザへの対 応は、通常の季節性のものとは異なり、防疫的な観点での対処が必要と考えます。よって、「死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこと及びそのために必要 な医療を確保すること」を目的としているのであれば、少なくとも優先接種対象者については、無償で接種できるように特別な措置を講じることを要望します。
 また、医療従事者用については、医療機関に対して無償で提供されることを要望します。

以 上

【本件に関する照会先】    
全日本民主医療機関連合会
事務局次長 廣田憲威
電 話:03-5842-5656
FAX: 03-5842-5657
e-メールアドレス:
n-hirota@min-iren.gr.jp

(PDF版)

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