医療・福祉関係者のみなさま

2010年2月22日

【2010.02.22】2010年度診療報酬改定(医科)についての声明

2010年2月22日
全日本民医連会長 鈴木篤

  1. 「実質ゼロ改定」では、地域医療の崩壊をくい止められない
     今回の改定は、社会保障費2200億円の削減を撤廃し、5回連続マイナス改定を中止させたが、「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出される600 億円分(▲0.16%)も含めれば、改定率+0.03%(+100億円)の「実質ゼロ改定」である。
     今回の「実質ゼロ改定」は、「過去のマイナス改定を回復し、病院の入院基本料を初めとする診療報酬の大幅な引き上げによる医療費全体の底上げを強く求め る(中医協診療側委員)」という切実な医療界の要求からは、ほど遠く、地域医療の崩壊をくい止め、根本的に立て直す改定でない。
     民主党政権は、OECD加盟国平均の医療費水準への引き上げを「マニフェスト」で掲げており、この公約実現へ向けて直ちに入院基本料などの大幅な引き上 げの再改定を行い、地域医療の再建に着手することを強く要望する。

  2. 「実質ゼロ改定」のもとでの「中医協平成22年度診療報酬改定答申書」の特徴
     2月12日に発表された「中医協平成22年度診療報酬改定答申書」は、民医連が要求(「診療報酬改定要望書」)していた救急・産科・小児科・外科(手 術)など急性期医療に係わる引き上げや高齢者に特化した診療報酬点数の廃止、看護補助配置・リハビリ・がん医療・在宅医療・訪問看護・医療連携などの一部 評価も反映されているものの、「実質ゼロ改定」の限界から、多くの矛盾をはらむものとなっている。

    <地域医療の重要な役割を担う中小病院と診療所の底上げに至らない改定>
     今回の改定の特徴は、大規模急性期病院や入院料加算の引き上げなどの重点配分(4.4千億円)に留まり、病院の入院基本料の引き上げに至らないことや、 診療所の再診料を引き下げたことである。現在集約されている緊急の試算(薬価引き下げを除き)では、中小規模病院は、1%前後の引き上げに止まり、診療所 は、再診料や画像診断・検査・透析等の引き下げでマイナス改定である。深刻な経営危機と地域医療の崩壊をくい止めるどころか加速しかねない状況である。

    <「総合入院体制加算」の施設基準の継続と特定入院基本料の年齢拡大>
     また、保険診療に混合診療を導入する「総合入院体制加算(旧入院時医学管理加算)」の施設基準の継続や特定入院基本料の年齢拡大などは見逃せない重大な 改定である。さらに、回復期リハ病棟に導入された「成果主義」を継続するとともに療養病床や精神科病床への拡大につながる改定も行われている。この「成果 主義」の強制は、療養病床入院基本料の細分化と施設基準の引き上げと合わせ、入院基本料の引き上げがない状況では、医療・介護難民を生み出しかねない重大 な問題を含んでいる。

  3. 医療界が団結して大幅な引き上げの再改定と患者負担の軽減を
     今日の地域医療の崩壊を再建し、国民の生命と健康を守るためには、すべての病院と診療所が引き上げとなる再改定が必要である。全日本民医連は、再改定へ 向けて医療界全体が団結して民主党政権にその実現を迫るために大きく運動を推進していく。
     また、貧困と格差が世代各層に広がり、国民のいのちと健康が脅かされている。地域医療の崩壊を防ぐための診療報酬の大幅引き上げの再改定を行うととも に、世界一高い患者負担の引き下げや急増している「無保険児・者」の根絶を強く要望する。特に、医療費の窓口負担「ゼロ」をめざし、当面75歳以上の高齢 者と就学前の子どもの医療費の無料化、他の保険も「3割から2割」「2割から1割」へと自己負担の軽減を強く要望する。

以上

(PDF版)

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