民医連新聞

2003年2月11日

介護報酬2.3%引き下げ

サービスの質向上に逆行

 厚生労働省社会保障審議会給付費分科会は、2001年10月から今日まで、今後のサービスのあり方 を含め、介護報酬の見直しについて18回の議論をし、19回目で答申を出しました。今回の改定のポイントを速報します。(全日本民医連担当事務局) 1月 23日の社会保障審議会介護給付費分科会で、新しい介護報酬が了承されました。

今回の見直しで、全体では△2.3%(在宅0.1%、施設△4.0%)の改定です。介護報酬の引き下げは、 利用者には利用料負担が減る側面もあります。しかし国民や利用者が求める安心・安全な質の高い介護サービスを実現するには、介護・福祉職の労働条件を改善 し、専門性を高めるために報酬上の裏付けが必要です。今回のマイナス改定は「介護サービスの質の向上」に逆行するものです。
 具体的にサービスごとにみてみます。ケアマネジャーは17.1%増ですが、同時に「質の向上」を問われ、利用者宅の訪問やサービス担当者会議の開催など 一定の要件を満たさないと3割減算されます。また、四種以上の居宅サービスでケアプランを作成すると1000円加算されます。
 訪問介護は「複合型」は廃止、家事援助は「生活援助」に名称変更され、全体で2.3%引き上げられます。しかし、報酬が上がると利用者負担が増えます。 また支給限度額が据え置かれたままでは、今まで限度枠いっぱい利用していた場合は枠を超えてしまいます。利用者の経済的負担増やサービスの利用控えが懸念 されます。
 訪問看護は実際に訪問しなければ「緊急時訪問看護加算」が60%以上の大幅引き下げで、全体で△3.2%です。
 デイケアは△3.8%、デイサービスは△3.0%と、引き下げられる一方、デイケアでは病院や老健からの退院・退所者への個別リハビリ加算が新設。

 

主な介護報酬の改定内容

  サービスの種類 現行 改正
訪問介護 身体介護中心型    
30分未満 210単位 → 231単位
生活援助(家事援助)中心型 (家事援助) (生活援助)
30分以上1時間未満 153単位 → 208単位
1時間以上 222単位 → 291単位
複合型は廃止    
訪問看護 緊急時訪問看護加算    
訪問看護ステーション 1370単位/月 → 540単位/月
病院・診療所 840単位/月 → 290単位/月
介護老人福祉施設 介護福祉サービス費(I)    
要介護1 796単位 → 677単位
要介護3 885単位 → 818単位
要介護5 974単位 → 959単位
(新設)小規模生活単位型介護福祉施設サービス費   新設
要介護1   784単位
要介護3   879単位
要介護5   974単位
介護老人保健施設 介護老人保健施設サービス費(I)  
要介護1 888単位 → 819単位
要介護3 980単位 → 921単位
要介護5 1080単位 → 1028単位
介護療養型医療施設 療養型介護療養施設サービス費(I)(看護6:1/介護3:1)は廃止    
 療養型介護療養施設サービス費(II)(看護6:1/介護4:1)    
 (I)(看護6:1/介護4:1)    
要介護1 1126単位 → 820単位
要介護3 1213単位 → 1168単位
要介護5 1299単位 → 1360単位

注:要介護2・4は省略

利用しにくく現場は困難に
 施設は、特養・老健ともに△4.2%、介護療養型も△3.2%の引き下げです。ユニットケアの特養の報酬は従来型特養に比べ高めの設定ですが、ホテルコ スト徴収も導入され、低所得者の入所が困難になることが懸念されます。介護施設は現在の報酬でもぎりぎりの人員配置で運営しており、報酬の引き下げはさら に現場に困難をもたらし、サービスの低下につながりかねません。その上、介護療養型では一番手厚い人員配置の介護職三:一配置が廃止されるなど、充分な介 護を実現できる報酬ではありません。

 全日本民医連では今回の改定を受けて、新報酬でのあてはめ作業と分析を行い、今後の対応策を検討する予定です。

(民医連新聞 第1300号 2003年2月11日)

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