医療・福祉関係者のみなさま

2011年1月14日

【2011.01.14】薬害イレッサ訴訟に関する大阪・東京地方裁判所の和解勧告について

~ アストラゼネカ社と国は裁判所の勧告を真摯に受け入れることを要望する ~

2011年 1月14日
全日本民主医療機関連合会
会 長  藤末  衛

 薬害イレッサ訴訟に関して大阪地方裁判所と東京地方裁判所は、1月7日に所見をともなう和 解勧告を行いました。同日、薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団は、「原告らは、和解協議に応じたうえで、原告全員救済を含めた全面解決の実現を目指すこ ととする。」とした「声明」を発表しました。
 全日本民医連は、原告団・弁護団の「声明」を全面的に支持し、薬害イレッサ問題の早期全面解決のために引き続き全力をあげて支援する決意を述べるととも に、被告であるアストラゼネカ社と国は裁判所の勧告を真摯に受け入れ、被害者とその家族に対し、謝罪と償いを行うことを切に要望するものです。
 2002年7月に世界に先駆けて日本で発売が開始された肺ガン治療薬イレッサは、承認から2010年9月末までに819人もの尊い命を、その副作用であ る間質性肺炎で奪いました。被告企業であるアストラゼネカ社は公判の中で、終始「育薬」の重要性を強調し、臨床現場で医薬品がより有効に使われるために は、800人の命が犠牲になろうとも仕方がないとも受け取れる答弁を繰り返していました。
 そもそも「育薬」の意味とは何でしょうか。研究段階では未知の効用や有害作用が発売後に広く使われることで初めて明らかになる場合も少なくないため、す でに市販された医薬品についても継続して、患者背景・使用方法・効果及び副作用等を調査・評価し、有効で安全な使い方に関する情報を増やしていくことが重 要です。こうした考え方にもとづいて、医師・薬剤師・製薬企業関係者・研究者・患者らが、それぞれの立場で薬をより使いやすく有効性及び安全性の高いもの に育てていく様々な取り組み(制度、活動)のことを「育薬」と言われています(日本薬学会ホームページより)。
 本来の「育薬」の意義から今回の薬害イレッサ問題を考えてみると、承認から半年で180人もの副作用による死亡が確認された時点で一旦薬剤の使用を中止 し、より安全に使用するための研究を行うのが製薬企業の使命ではないでしょうか。しかし、被告アストラゼネカ社は、イレッサの使用を中止するどころか、非 人道的とも言えるさらなる販売拡大を行い、結果的に800人以上もの犠牲者を生み出しました。これは決して「育薬」と呼べるものではありません。製薬業界 の中で、今回のような意味合いで「育薬」が行われることになると、第二第三の薬害イレッサが引き起こされることは確実です。製薬企業はもとより、国も真の 「育薬」にもとづく薬事行政を行うことも重要です。
 全日本民医連は、「いのちの平等」の立場で、安全で有効な薬物療法が実施されるためのさらなる環境整備と、いかなる医薬品であっても、それによる健康被 害が生じた場合は、被害者の立場に立って即時に救済されるための制度確立に向けて引き続き奮闘する決意です。

(PDF版)

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