民医連新聞

2004年9月6日

肌で感じた大自然 考えた過疎地の医療 医系学生へき地研修

医系学生へき地研修 徳島民医連

 七月三~四日の二日間、フィールドワークで東祖谷山村(ひがしいややまむら)を訪問しました。医学生五人・看学生二人が参加しました。過疎がすすむ村の生活や医療を肌で実感し、医師像・看護師像を考えるきっかけにすることが目的です。

 東祖谷山村は徳島県の西南端にあり、日本の三大秘境の一つです。交通の便が悪く、他の地域と隔絶されており、救 急車を呼んでも医療機関まで二時間かかります。ところが今年二月に、村に唯一あった医療機関が閉鎖されてしまいました。今は徳島健康生協が週一度だけ民家 で開設する東祖谷出張診療所しかありません。

*  *

 まず出張診療所で、祖谷に住む医療生協の理事さんと懇談しました。過疎がすすみ、一九四五年に一万人だった村の人口が今は二三〇〇人に。高齢化もすすみ、六五歳以上の住民は四〇%です。独居老人も一一〇人と多く、健康への不安もあってか、毎年複数の自殺者が出ています。

 また村には若いころトンネル工事やダム建設に従事した人がたくさんいます。そのためじん肺や振動病の患者さんが多くいて、今も苦しんでいます。

 二人の患者さんから、「わしらは使い捨てやった…」と、劣悪な条件で働かされ、労災補償も十分されていない状況を聴き取りしました。

 その後、患者さんの家を訪問しました。不便な生活、山深い土地で高齢者が独りで暮らすこと、無医地域であることの厳しさを話してくれました。「救急車の中でみな死んでしまうで…」との言葉に、不安がにじんでいました。

 学生たちが「医師・看護師の卵」と自己紹介すると、大変な歓迎ぶりでした。「祖谷でお医者はんしてくれるんで」と皆が口を揃えたように言いました。

 「どんな医師・看護師になったら良いですか?」と問う学生たちに、「年寄りの話をゆっくりと、よう聞いてくれるお医者はん」「こんな田舎でも働いてくれるお医者はん、看護師さん」と答えが返りました。

 学生たちは、患者さんの笑顔と美しい自然に感動しながらも、それと相反する医療事情に、とまどってもいました。慣れない高齢者との対話に、コミュニケーションの難しさも感じたようです。

 「過疎地域の医療を確保するには、国のサポートが必要」「何ともしがたい現実に、自分にできることは何か、を考えさせられた」という感想も出ました。今回の経験はめざすべき医師像や医療・医学を考える機会になったようです。

 深夜の宿舎では、医師・看護師をめざした動機を交流し、初心を確認しあいました。翌日は、訪問を受け入れてくれ た方がたにお礼のはがきを書きました。「元気で長生きしてください。私も良い医師になるようがんばります」「この出会いを大切に、人間味のある優しい看護 師になります」と書かれていました。

(楠藤義朝(なんとうよしとも)、事務)

(民医連新聞 第1339号 2004年9月6日)

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