民医連新聞

2004年9月20日

「介護保険制度見直し」―たたかいと対応のポイント 「現場からの提言」を行政へ地域要求に応えあらたな事業の準備を

 厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会は、『介護保険制度見直しに関する意見(七月三〇日)』(以下「見直し案」)を出しました。今後、法案 がつくられ、〇五年二月に国会審議、〇六年四月実施という予定が示されています。「見直し案」には、「制度の持続可能性」を理由に、給付の抑制と負担増の 方向があからさまに示されています。特に要支援・要介護1に対する家事援助の抑制と、施設での食事代・居住費などの利用者負担引き上げが問題です。全日本 民医連理事会は、『制度見直しに対する「たたかいと対応」の基本視点』と「当面の力点」を発表しました。そのポイントを医療・介護保険政策プロジェクト鈴 木篤委員長に聞きました。

 制度改悪を阻止する運動をすすめる私たちの基本的視点は、利用者や地域の実態から出発すること、そして「介護の保障は憲法二五条にもとづく権利」との認識で、制度の根本的な改善と緊急を要する改善を求めていくことです。

 また運動をすすめる留意点をあげました。第一に「現場からの提言づくり」です。現場の実態、地域の介護実態調査 や困難事例を基礎にして、現行の制度に対する説得力のある改善要求をまとめましょう。特に、軽度要介護者の保険給付制限、施設利用者の負担増でどのような 影響が生じるか、調査活動を行い、実情にもとづく要望を厚労省や自治体へ出していくことが大切です。

 第二に、共同組織はじめ地域の人たちと幅広く共闘することです。そして減免制度、上乗せ横出しサービス、介護予 防・地域支え合い事業などの拡充を、自治体独自の施策を含めて具体的に提案して求めることです。また自治体には、介護事業が「公開・住民参加」になるよう 働きかけ、利用実態や予算などの情報を開示させ、住民要求を反映させる道を開くことも重要です。地域の社保協、事業者、各団体と協力し、自治体との話し合 いやシンポジウムをすすめましょう。

キーワードは「介護予防」「小規模多機能サービス」

 厚労省は「新・予防給付」は〇九年四月までに体制の整った市町村から順次導入するとしています。具体的なプログラムとして、「筋力向上トレーニング」「低栄養予防」「口腔ケア」「閉じこもり予防」「フットケア」などが例示されています。

 すでに「市町村介護予防モデル事業」がスタートしています。また「介護予防・地域支え合い事業」は、すでに二三 〇〇を超える市町村が直営・委託で実施しています。国が二分の一、都道府県・市町村が各四分の一の負担で運営するもので、今年度は国ベースの予算四〇〇億 円が付きました。今年の三月から医療法人の付帯業務が緩和され、「高齢者介護予防等」が追加になりました。定款・寄付行為を変更して、前記の事業に参入す ることが可能になります。

 介護保険利用者だけでなく、非該当者や未利用者の、潜在的な介護・福祉の要求に応えることも視野に入れ、事業展 開をどう図るか検討と準備を急ぎましょう。モデル事業の動向やプログラムの研究にも注意していきましょう。共同組織が実施している「健康づくり」や「助け 合い」などの位置づけも検討し、積極的に広げていく必要があります。

 また「小規模多機能」の施設つくりも課題です。通所、泊まり、多様な居住形態など、利用者の状態や要求に応じた ケアを提供する施設になる可能性があります。これも市町村が事業者を指定し、価格を決めることになる予定です。実績のある事業所が順に指定される可能性も あり、早めのとりくみが必要です。

 来年の通常国会は「介護保険国会」とも言われます。介護保険政策プロジェクトや介護・福祉部から、情報をどんどん発信したいと思います。各県連・法人で、共同組織強化月間とも結びつけ、学習・調査・運動を大いにすすめましょう。

(民医連新聞 第1340号 2004年9月20日)

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