民医連新聞

2003年2月21日

見解「『医療事故』、『事件』と私たち民医連の立場」への感想・意見をひきつづき識者に聞きます

私の意見<2>見解 「『医療事故』『事件』と民医連の立場」に

弁護士 二上  護さん

「見解は職員を勇気づける」「継続することで試される」

 まず言いたいのは、この数年マスコミで医療事故がさかんに報道されるようになったのは、医療の前進にとってプラスだ、ということです。「医療は危険」と宣伝するような、行き過ぎの面はありますが。
 民医連の病院でも「事故」や「事件」が起きている。これを「見解」では率直に認めた。これは必要ですし勇気のいることです。そして「事実にもとづく究 明」と「患者の立場にたつ対処」を基本的な姿勢にするとはっきり述べた。当然のことですが、これを大胆に言ったことを評価したい。
 「見解」の立場は当たり前に見えるけれども、いかにたいへんなことか…。被害にあった患者さんは裁判を起こして、たいへん苦労しています。もし、すべて の病院がこの「見解」のような立場で対処したならば、日本の医療が転換するくらいなものです。
 また「事実にもとづく究明」といっても、自分たちの手で明らかにすることはたいへんなことです。自分との、仲間とのたたかいなのですから。この姿勢と勇気を持ち続けてほしいと思います。これで医療人として試されると思います。
 「事故」「被害の発生」を目先の利害にとらわれて隠すのではなく、大胆に事実を明らかにすることは、長い目で見れば再発を防止し「良い医療」に通じるも のだと思います。勇気もいり、たいへんでも、その立場を貫いたとき、民医連が組織として存在できるし、医療が続けられると思います。
 この「見解」を打ち出したことは、職員一人ひとりにとっても、生きがいをもって医療の仕事を続けられる確信につながるのでは?
 医療機関で働く人は、「病院を守る」ことと、被害にあった患者の苦しみの板挟みで、自分が引き裂かれるような思いを味わう場合もありがちです。「患者の ために徹底するんだ」と、はっきり打ち出したことは、職員を勇気づけます。それが本当の意味で「病院を守る」ことにもなります。
 「見解」には、川崎協同病院の「内部調査委員会報告」の内容もきちんと受け止められ、簡潔に骨格がまとめられています。この報告は「よくここまで書きま したね」と言われるくらい徹底して突き詰めて書いたものです。いま川崎は非難を受けていますが、必ず対処できます。その力になる文書だと思います。
 繰り返しますが「徹底究明と再発予防」の姿勢を、まず医療事故・事件全ての出発点として確認することが大事です。「見解」は原則論はこれで良い。このさ き各論に入るといろいろでてくると思います。自分たちだけで調査できるのか、病院が単独でできるのか、警察との関わりなどが大きな壁になってくるでしょ う。医療事故の調査・情報収集・公表に関わる第三者機関がなんとしても必要です。医療機関からも、その必要性について発言していくべきです。

*  *

 2月6日の衆議院予算委員会での自民党・西野議員の質問は、安全な医療を願う全ての国民と医療人に対する野蛮な 攻撃です。医療事故の克服のために努力している病院をこのように名指しで攻撃することは絶対に許されません。公明党が民医連の病院を攻撃するビラを各地で まいていますが、これも極めて不当なものです。これらに対して事実にもとづいて断固として反撃することは、医療人としての国民に対する責務であると思いま す。

*  *

 いま医療事故・事件が知られてきて、国民の中に「混乱」が生じていると思います。医療の置かれている状況や、医療事故防止のためにどうすべきか、医療機関の正しい姿勢は何かなど、多くの人に知らせ理解してもらうことが必要です。
 と言っても、自分のまわりの人たちから始めなければ。民医連の周囲には、友の会や生協組合員がいるでしょう。まずは身近な協力者に徹底的に理解してもら うことが大切では?インフォームドコンセントや経営についても同様です。日常的な諸活動を共同組織の人たち、患者とともにすすめ、住民に対して「言うこ と」と「やっていること」を一致させていく努力を続けてほしいと思います。(聞き手・小林裕子記者)

(民医連新聞 第1301号 2003年2月21日)

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