民医連新聞

2004年10月4日

〝憲法〟学ぶ工夫さまざま 「語り合うとよくわかる」

 来年11月までに、憲法「改正」の草案をまとめる政府・自民党。改憲の動きが急です。ねらいは、憲法9条を変え、米軍とともに恒久的に自衛隊を海 外派兵させること。これに対して、著名人9人が「九条の会」をつくり、平和憲法を守る運動が全国に広がっています。全日本民医連ではこの秋、大運動推進本 部を設置。事業所では、憲法を学ぶ様ざまなとりくみがされています。職員の率直な気持ちを聞き、足もとから、患者さんの生活から、憲法をとらえていこう、 との活動を紹介します。

参加者全員が発言する「憲法トーク講座」

富山民医連

 当県連では、七月から「憲法トーク講座」をはじめています。県連社保委員がチューターになり、前半に「お国言葉 憲法」のCDやビデオを視聴、後半はフリートークします。民医連の『憲法手帳』にある『あたらしい憲法の話』もテキストです。一二月までに四〇〇人余の全 職員参加が目標。全体講座は富山協立病院と虹の会の相互乗り入れで月一回程度、出前講座は職場単位で計画した場にチューターを派遣する、というふうにすす めて、現在二〇〇人が参加しています。

 「憲法を学ぼう」という提起が出てから、社保委員会では、社会科の教諭にすすめ方を相談したり、最近いくつも出 版された「憲法」本や絵本、ビデオ、憲法を歌ったCDをもちより、「どういうものが吸収しやすいか」「座っているだけの学習会はイヤ」など、時間をかけて 考えました。

 第一弾の今回の目標は、「憲法を身近に感じる」こと。レベルが低いかも知れませんが「憲法」と言っても大抵「学 校で習ったなあ」というくらい。戦争はイヤだという気持ちがあっても、「憲法を守る声を周りにひろげる」という行動には結びつきません。だから「憲法って 何?」という問いかけを始めたところです。

 参加者は絶対何かしゃべることが決まりになっています。参加者が一〇人を超えると、一巡で時間切れですが、発言は新鮮です。

 「自衛隊に入ろうとした兄弟と話してみたくなった」とか、「看護協会の研修の講師に来ていた大学の先生が、医療 人には憲法が大切と語り、憲法の冊子を受講者全員に配った。いろいろな人が憲法を守ろうとしている、民医連だけが騒いでいるのではないんだ」とか。親の戦 争体験をもとに、自分の生き方と憲法を結びつけている人も。また、「戦争は抽象的なイメージしかない」「憲法が時代にあわなくなっているのでは」という意 見も出て、それが「戦争って何?」「憲法があわなくなる『時代』って?」という話し合いになります。チューターの一人、松尾守委員は「模範的な感想より、 疑問が出る方が議論が深まります」。

 現在チューターができる社保委員は三、四人に限定されています。すすめる側が自信を持ち、委員全員がチューターになれるように、その学習も考えているところです。

 (足立千恵子、富山民医連社保委員)

「憲法」で職員アンケート結果にびっくり!!

北海道・道東勤医協

 北海道・釧路協立病院と協立すこやかクリニック(道東勤医協)では、地域訪問と友の会の拡大にとりくむ「秋のたたかい」をすすめています。今回はあらたに、「憲法を学び、行動する職場づくり」を課題に加えました。

 社保委員会が中心となり、毎週火曜日に全職員対象の昼休み学習会を開いています。参加者は毎回五〇人くらい。SWや医師が講師となり、各職場で集めた深刻な事例を憲法に照らし合わせながら、検討していきます。

 学習会を始めるにあたって、職員が「憲法改正」についてどう考えているのか、アンケートを実施してみました。NHKの世論調査と同じ質問で、「日本国憲法を変える必要があるか」などの三項目を尋ね、職員の回答結果と比較しました。

 五二人から回答がありました。その結果、「変える必要がある」と答えた人の割合は、一四%にのぼりました。そのなかでも青年の占める割合が顕著であり、世論調査とも共通していました。

 協立すこやかクリニックの野原秀樹事務長は、「秋のたたかい」推進委員会の副委員長でもあります。「アンケート 結果には驚きました。『憲法を変える必要はない』と答えた人は半数を超えますが、『どちらともいえない』『分からない』という人も三割近くいるのです。学 習会を通じて、憲法のすばらしさ、大切さを実感し、そのことを伝えられるようになってほしい」と、語ります。

(鐙(あぶみ) 史朗記者)

ともに「憲法」考える仲間増やしたい

横浜勤労者福祉協会

 同協会では五月、三人の青年が、「平和憲法を学習する会」を立ち上げました。四年目の小川正志さんと川瀬敏正さん、二年目の柏木哲哉さんです。

 「全日本民医連の三六回総会で、憲法の学習運動が提起されましたよね。協会からも呼びかけがあり、青年独自で何かできないかと話し合いました。マスコミの報道を見ていると、本当に憲法が変えられそうで怖い」。三人が、「会」を発足させた理由です。

 「多くの職員と平和の大切さを考えたい」と、イラクで人道支援活動をしてきた、NPO「ピース・オン」の相澤恭行代表を呼んで、「イラク報告会」を六月に開きました。テレビで報道されない戦場の映像に参加者一同、息をのみました。

 七月には、汐田診療所の放射線技師、並木哲さんを講師に「I LOVE 憲法!!」と題する学習会を持ちました。日本国憲法がどのようにしてできたのか、世界の中で憲法九条が果たす役割などを学びました。参加した青年に声をかけ、「会」の実行委員になってもらいました。

青年の気持ちに思いを寄せて

 三人は、「もっと多くの青年が参加する活動にしたい」、「仲間を増やすにはどうしたらいいのか?」、と顔を合わせるたびに話し合っています。

 企画の宣伝にも力を入れました。チラシを配布するだけにせず、仕事が忙しい青年を気遣い、職場を回ってお茶を配り、参加を呼びかけました。

 声をかける中で気になったのは、仕事を理由に企画への参加を断る人がいることです。仕事や社保活動に慣れていない青年にとって、職場や職責者のバックアップが必要、と三人は痛感しているそうです。

 法人の教育担当も兼ねる川瀬さんは「北朝鮮のことを考え、『自衛権が必要ではないか』と思っている職員がいる」 と、首をかしげました。横から柏木さんが、「政府の言う自衛権は北朝鮮に対するものとは話が違う。アメリカが起こす戦争に同盟国として加わるもの」と、答 えを返します。

 「お金がないと病院にかかれない、これは生存権が脅かされていること。生存権を決めている憲法を学んで、生かし ていくことは、民医連職員の使命です。このとりくみを青年だけでなく、中堅職員や共同組織の人ともすすめたい。他の県連の青年とも交流ができれば、運動は もっと大きくなるはず」、と三人の話はつきません。(荒井正和記者)

憲法前文に秋田弁で挑戦

秋田・大曲中通病院

 「難しい話だろうな…」と思っていたらしい職員が、「意外だ!」という顔になりました。集まったのは四〇人ほど。興味を引かれた様子が講師の長澤昭さんに伝わりました。「まず成功だ」と内心ほっとする長澤さん。

 当院は毎年八月「戦争体験を聞く会」をしています。主催は教育委員会と、院内にある原水爆禁止日本協議会の支部です。今回は、当院で被爆者健診を受けている方から話を聞くほか、民医連の『憲法手帳』と『こころやさしき日本の憲法』を使った学習をプラスしました。

 講師を引き受けた組織担当の長澤さんは、「なにか工夫は?」と頭をひねりました。大曲郡部に生まれ秋田っ子の彼は、その言葉で憲法前文を語ることに(左上)。参考書は『お国言葉で憲法を』です。秋田弁が収録されていないので、挑戦してみようとの試みです。

 ふつうの職員は、学校で「憲法がある」とは習っています。が、逐一読んだことはなく、身近に感じたこともない状態です。今回は理解する入り口に立つこと。

 日常的な医療活動と受療権・生存権を考えてもらいました。また年間の自殺者が連続三万人を超える現状で、「絶望 ではなく希望を。人権とは生きること。平和とは生きること。戦争とは人を殺すこと。この単純明快なことをはっきりと見る眼を持ち続けよう(米倉斉加年(ま さかね)さんの言葉)」と訴えました。

 参加者の多くが「わかりやすかった」と言っていました。(山田富貴子、看護師・教育委員長)


 

秋田弁憲法前文

 おれがだ日本国民は 選挙の時、汚ねごとはしね。候補者の話しっこする政策を えぐ聞いで わの頭で考え で わの意見はしっかりもって わのしてもらいたいこと願っていることを実現させてける候補者に一票を入れる。……戦争というは、戦地でたたかう兵隊さん だけが傷ついたり 死んだりするものでね。 年寄りから女、わらしの命 それだげでねぐって 他の国の人の命までも じっぱり犠牲にするもだ。…… その うえに音楽を聴いたり芝居どが映画どが絵どが見で楽しむこともできねばがりが 身も心も荒れ果ててギスギスした人間になってしまう。 そんな思いをさせる 戦争なんて絶対いやだ。 んだから 戦争は二度とやってはなねどかたく心に決めだんだ。

(民医連新聞 第1341号 2004年10月4日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ