医療・福祉関係者のみなさま

2012年1月12日

【論点整理への意見2012.01.12】医師増員が必要との認識を共通の前提に、医師養成のための具体的議論を(「論点整理」への全日本民医連パブリックコメント)

2012年1月12日
全日本民主医療機関連合会
医師部長 増田 剛

 「論点整理」では、医師の地域・診療科による偏在についての議 論から始まっているが、そのような議論をおこなう以前に、人口あたり医師数でOECD 加盟国でも極めて低位にある日本の絶対的医師不足に対して、どのような目標とテンポで医師数を増やすのかについての政策的な枠組みを明確にすべきと考え る。
 今回の「論点整理」のように、そうした前提についてあいまいなまま、医学部の新設の手法についての是非を問えば、賛否両論ともに多くの意見が出されるこ とは明らかである。既存の医学部定員をさらに増やしていくことに限界がある以上、医師増員をすすめるためには医学部新設であれ、メディカルスクール創設で あれ、いずれかの対策を打つことは当然のことである。そのことを明確に打ち出し、それらにともなう困難については医療界全体の力を結集して、解決を図って いく必要がある。
 医師数増により、医師の賃金や身分の低下を懸念する声があるが、現在の医師数では、当直明けもなく働くような劣悪な労働環境の改善は到底見込めず、医師 の過労死をくいとめるに遠くおよばない。また、医療事故の背景には過労状態での医師労働があることを銘記すべきである。
 専門科による偏りや地域偏在については、総合医・家庭医の必要数や配置、専門医の必要数や配置の検討を含む医療供給体制のグランドデザインが必要と考え る。その際、大学に初期研修医を取り戻せばすべて解決するといった狭い見地に立つべきではない。臨床研修の必修化以降、一貫して良い研修づくりに努力して きている臨床研修指定病院、中でも最も地域に密着して医療活動に取り組んでいる多くの中小病院の研修機能についても、積極的に評価し、日本の医師養成のシ ステムの中にしっかりと位置付けるべきである。
 昨年の東日本大震災と原発災害は、医師数が最も少ない東北の太平洋沿岸地域で起こり、多くの医療機関と医師を失うこととなった。そこからの復興を考える と、東北の地域医療を支える医師を大幅に増やす必要がある。そのためには、元々医育機関が少ない東北の地に医学部を新設し、災害からの復興と地域医療の再 生を力強く支援する施策に国は責任を持って取り組むべきと考える。

(PDF版)

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