民医連新聞

2004年10月18日

「利用者さんの満足は看護・介護の喜び」 第7回看護介護活動研究交流集会―考え話し合った分科会―

 分科会は一二会場・五テーマで三六一演題が発表されました。各会場で質問・意見・経験の交流を活発に行いました。介護職の発表が一割強でした。一部を紹介します。

分科会Ⅰ
生活と労働の視点からの看護・介護のとりくみ

 「デイケアに小グループ活動をとり入れた。妻の死に落ち込んでいた利用者が、趣味の書道を始めて変化。デイが生きがいになった。ニーズの把握が大切」との報告(山形・老健かけはし)が注目されました。

 また地域のネットワークで高齢者を支えた次のような二つの事例報告(北海道・札幌みなみ診療所)が関心を集めました。

 在宅サービスで暮らす高齢夫婦の妻が入院、痴呆の夫が独居に。すると町内会や民生委員、カラオケサークルなどが関わって、デイケアへの誘いやゴミ出しなどに協力した。不穏だった夫は安定、妻が退院するまで三カ月間、独居を維持できた。

 介護保険利用を拒否し飲酒による不穏行動のあった糖尿病の独居男性に、ねばり強く働きかけた。「いつ死んでもいい」の口癖が「死にたくない」へ変化、酒もやめ前向きに。

 発表者は「診療所が地域のネットワークを結ぶ拠点として期待される。地域の力に依拠して、高齢者の在宅生活を豊かにできた」と結びました。

分科会Ⅱ
安心して住み続けられるまちづくり

 単独型ショート(二五床)のベット管理の経験(山形・協立ショートステイセンターふたば)が関心を集めました。「キャンセル待ちリストを作り、ケアマネと連携、希望者を探し出し、好成績をあげた」との報告に、意見が交わされました。

 頸椎損傷で在宅酸素の独居患者を各機関と連携してささえた経験(福岡・健和会)。行政と地域も含めたネットワー クで精神障害者と家族をささえた経験(東京・代々木病院)。鼻マスク式間欠陽圧人工呼吸導入患者を在宅でささえた経験(岐阜・みどり訪看ST)。各地の報 告には、患者さんの満足と看護の喜びの実感があふれていました。

 「看護白書より五年目をむかえた介護保険制度」をテーマに福岡・みさき病院の山田智医師が教育講演し、四年間で 見えてきた介護保険の課題をデータを使って紹介しました。また厚労省の「制度見直しの内容」を示し、「現場の意見をどれだけ反映させるかの正念場。現場か らの提言づくり、保険給付の制限・負担増を許さないたたかい、介護予防事業などの新たな課題を、共同組織とすすめよう」と、呼びかけました。

分科会Ⅲ
人権を守る入院・入所のとりくみ

 福岡・大手町病院の荒川優子看護師が「抑制に関する一考察~県連での抑制意識調査・実態調査を実施して~」と題 する教育講演を行い、抑制について問いかけました。福岡・佐賀民医連のセンター病院、全二九病棟での実態調査と、看護師一三〇人の意識調査では、ほとんど の病棟と看護師に抑制の経験がありました。

 調査では、抑制の基準を持つ病棟は少なく、抑制の決定には看護師が関わり、多くの看護師がジレンマを感じても「患者の安全確保のためには仕方がない」と考えていました。

 荒川さんは「抑制の是非を院所全体で論議し、方針を明確にしよう。抑制の開始・継続・中止は看護師個人が判断せず、チームでするシステムが必要。抑制は人権侵害行為。全職員の理解で、抑制しない環境づくりをしよう」と呼びかけました。

 抑制を減らした三事業所が発言。

 痴呆・車イス使用の患者さんの訴えを受け止め、安全確保の手だてをとって抑制を減らし、ADLを改善した(東 京・東葛病院)、気管カニューレの自己抜去を繰り返す患者さんに、訪室の回数、見守りを増やし抑制を減らした(岡山・水島協同病院)、全看護師に抑制に関 する意識調査を行い、見直しマニュアルを作成・徹底した(高知生協病院)との報告でした。

 会場からも抑制を止めるとりくみが出され活発に意見交換しました。

分科会Ⅳ
患者・利用者の立場に立つ看護・介護技術の向上

 援助を拒んでいた独居の利用者を何度も訪問し信頼関係を築く(静岡・田町福祉サービスセンター)、レスピレー ター使用の障害者の独居生活を実現させた(大分健生病院)、回復期リハ病棟で、更衣訓練により、ADLとリハビリ意欲が向上した(鳥取生協病院)、患者の 負担を減らすため、経管栄養の注入回数、速度や体位を見直した(岡山・玉島協同病院)などが注目されました。

 教育講演は「みんなでとりくむ注射事故予防~注射業務を見直そう~」と題して、福岡・千鳥橋病院の小西恭司医師が行いました。

『みんなでとりくむ注射事故防止』パンフにそって、「エラーは結果であり原因でない。対策では直接リスクと間接リ スクを考え業務を見直す」など基本を話しました。医師の指示から実施までのプロセスでは、ダブルチェックを強調。「あの先生の指示だから間違いないだろ う」「看護師がチェックしてくれるだろう」という依存が、エラー率を何百倍にも上げてしまうと指摘。実施後の観察ポイントもわかりやすく説明しました。

 また「注射事故対策」立案では、実行可能で業務負担を考慮したものに、とアドバイスしました。

 続いて実演でした。構造的にワンショット使用が防止されるはずのKCLアンプルは、実際には間違った使い方をされる恐れがあることが示され、注意を呼びかけました。

分科会Ⅴ
ともに育ち合う職場づくり

 看護師のストレスに対する調査報告が三題ありました。

 「九五%がストレスを感じ、五年目までのストレス度が高い」「師長とスタッフ双方にストレスはあり、メンタルヘルス、業務改善のとりくみが重要である」「ICUでは半数にバーンアウト兆候がみられた。ストレスは組織の問題ととらえ、解決すべき」という内容でした。

 討論では、相談相手の大切さ、育てる側の問題、良い評価がやりがいにつながる、など意見交換しました。

 新卒看護師は「学校で習った倫理学は難しく、覚えていない」の声があり、現場での倫理研修が必要(神奈川・川崎 協同病院)、民医連の綱領や活動について、職員の意識調査から教育の重要性を認識した(群馬・前橋協立病院)、共同組織増やしをスタッフ全員でとりくんだ (大分健生病院)、との報告が注目されました。

(民医連新聞 第1342号 2004年10月18日)

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