全日本民医連 歯科部
 民医連HOME 歯科部トップ 民医連歯科の活動 第18回 歯科学術運動交流集会

全日本民医連歯科部(メールニュース) 第38期 No.8

発行元 全日本民医連歯科部
2008年9月18日
TEL:03-5842-6451
Email:min-shika@min-iren.gr.jp


第18回 全日本民医連


歯科学術・運動交流集会

 第18回歯科学術・運動交流集会が、2008年9月13日(土)〜14日(日)、横浜市開港記念会館をメイン会場として開催されました。30県連から314名が参加し、演題数127と、どれも過去最高数でした。
 開会時には、中村実行委員長から「社会保障抑制政策から患者、国民へしわ寄せがいき、お金のない人が医療にかかれない状況が悪化しています。今回の“守ろう命”というテーマの下、みなさんが一つでも多くのことを持ち帰れるように期待します」と挨拶されました。
 また、神奈川民医連堀内会長からは、歓迎の挨拶をいただきました。「歯科再生プラン(案)」に対する期待を述べ、来るべき総選挙を日本の医療と福祉を変える力にするよう檄をいただきました。
 江原歯科部長からは、歯科学運交と民医連歯科の歴史に触れ、私たちが直面している経営等の課題について述べました。第38期に歯科部で掲げる三つの提案として、
 (1) 全ての法人・事業所で経営計画を立て、待ったなしで黒字体質づくりをめざすこと
 (2) 「保険でよい医療を求める」運動の発展強化、現状の告発と対策の実践
 (3) 民医連歯科の人づくり・職員育成
 をあげました。最後にこの集会の中に、民医連歯科の “宝”があるとし、それを学び合い、集会の二日間を有意義なものにするよう呼びかけました。

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分科会の様子

 歯科部企画では、第38回定期総会のテーマにも使われた“まっすぐな人権意識”を基軸に、経済的な理由で起こる健康破壊の事例を報告し、深刻化する貧困問題は歯科医療現場からどのように見ることができるかを示し、またそういった患者の受療権をどのように守れば良いのか、生活保護申請援助や無料・低額診療実施に関する相談活動の具体例を報告し、課題提起しました。さらに、“患者の社会的背景を含めてみる”ことについては、「その人にとってその時に本当に必要な処置は何か」、「受療権を守るためには通り一遍ではない対応が必要」という事例を具体的に示し、学術的な視点、制度的な視点だけでない“まっすぐな人権意識”を持った歯科医療の実践について提起しました。

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分科会の様子

 発表演題は「医療の安全性の追求・患者サービスの向上」、「歯科医療(QOLの向上をめざして)」、「経営改善・事業展開への挑戦」、「社保活動・地域、共同の取り組み」の4つのテーマで集め、7つの分科会を設けました。幅広いテーマで演題が集まり、また歯科の無い県連での歯科医療・保健活動の演題、言語聴覚士や介護福祉士といった他職種からの演題もありました。当日速報でもお知らせしましたが、汐田総合病院歯科の竹内友香さんの演題「当院における感染対策〜ICTに参加して〜」は、民医連歯科でも特徴的な、病院のICTに参加した取り組みを報告がされました。今後の民医連歯科の役割を考える上での参考になる発表でした。玉島歯科の陶山ひとみさんの演題「症例検討を通して気づかされたこと」では、診療現場での患者さんとの関わり、症例検討を通じて感じたことなどが率直に報告されました。歯科技工士の役割を改めて考えさせられるものでした。相互歯科の田口綾子さんの演題「知的障害のある生活保護患者の総義歯製作に関わる事例」では、患者に寄り添った医療活動が紹介されました。民医連の原点とも言えるものではないでしょうか。研修医らしい、とても新鮮で、学ばされることの多い発表でした。札幌ふしこ歯科の遠藤高弘さんの演題「全職員が主体的に参加する、法人、院所運営についての経験」は、法人新設に伴う苦労話もまじえた、とても聞き応えのある発表でした。収支の改善、職員の主体性向上の話は非常に参考になります。

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講師の岩倉先生 「こっちの方が落ち着くので」と舞台を降りて客席で講演

 記念講演では、尚絅学院大学女子短期大学部保育科の岩倉政城教授に今回のテーマで講演していただきました。歯科医療費の抑制政策や、年金生活の高齢者などの経済的な理由で歯科にかかれない状況等を指摘し、変革の必要性を話されました。また、本当はない口臭で悩む患者同士で同じ机について話をする方が、歯科医師・歯科衛生士などによる相談よりも効果があること、歯みがき指導も患者自らがすることによってその重要性や技術が理解されることなどを紹介し、“患者の立場にたつ”という医療のあり方をわかりやすく、具体的に話されました。いかに地域に出て、住民中心で医療・保健活動をすすめることが重要かを学びました。さらに歯科は精神・心理学的に有用な機能を持ち得るため、歯科医療が様々な人の精神的支え、“人生の伴走者”となることができるという、今後の展望を熱く語っていただきました。

 今回の歯科学運交では、神奈川民医連歯科職員を中心として現地実行委員会を構成しました。閉会の際は「若手職員がほとんどを占め、民医連についての学習から始めなければならなかったことなどに困難がありましたが、1年半にわたり実行委員会を開催し、徐々に集団としてのまとまりができ、大きく成長することができました」と現地実行委員会から挨拶がありました。当日は神奈川の職員でほぼ全ての運営をしていただきました。神奈川民医連の皆様のご協力に感謝致します。

 「歯ブラシ1本で地域に出られる力をつけないと!と思いました。本来私たちが目指さなければならない医療が再認識できました。」「人の心に近づき、目線を合わせることで見えてくることが沢山あると改めて考えさせられました。」
 「賃金が低い青年、不規則な生活を送る青年の症例を見て、仕事に就けないのは本当に自己責任だけの問題なのだろうかと考えさせられました。“患者をみる”ことについては、歯科衛生の問診の必要性をとても感じました。」
 などの感想が寄せられました。とても良い集会にでした。参加者から報告を受け、各施設の今後の活動に役立てていただきたいと思います。

 分科会の発表を聴いて、「参考になった」という感想は多く寄せられました。抄録集には各演題発表者の連絡先も記されていますので、今後も活動交流を続け、より良い医療活動、運動づくりに取り組みましょう。
 分科会で発表された演題はどれもすばらしい内容でした。その中でも歯科内外へお知らせしたい取り組みについては、今後民医連の各誌へ掲載、全日本民医連学運交などでの発表をお願いしたいと思います。その際はご協力よろしくお願いします。

 


  

 
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