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全日本民医連 第35回定期総会 運動方針

全日本民医連 第35回定期総会 運動方針

目 次

はじめに

第1章 この2年間の主なとりくみと課題
第1節 民医連の医療、介護活動の新たな展開と経営問題へのとりくみ
第2節 地域に「人権と非営利」をめざす共同の輪を…平和・人権・福祉の新たな日本を
第3節 「科学とヒューマニズム、民主的医療人」…民医連運動の担い手としていかに成長するか
第4節 共同組織の総合的発展をめざして
第5節 民医連運動の団結を新たな水準に

第2章 今日の情勢の特徴と新しい平和・福祉の国づくりをめざして
第1節 いのちとくらしをめぐる激しいせめぎあいの時代
第2節 私たちはどう活動し、展望を切り開くか

第3章 今後2年間の基本的立場と重点課題
第1節 人権をまもる医療活動と医療・経営構造の転換の課題
第2節 医師養成と確保
第3節 たたかいと共同組織
第4節 組織改革と団結

おわりに

はじめに

 いのちとくらし、医療・社会保障をめぐる厳しい情勢のなかで、私たちは、職員数、加盟院所・施設数や共同組織の構成員数など史上最高の組織的到達点をもって、21世紀最初の全日本民医連総会をむかえています。

 いま、小泉内閣がすすめる新自由主義※による構造改革で、日本の医療制度が根本から崩され、本来あるべき医療の公共性が危機に直面しています。日本の戦後の歴史の中でかつて経験したことのない大幅な医療改悪案がつぎつぎと打ち出されてきました。

 「小泉改革※」による痛みは医療分野だけでなく、国民生活のあらゆる分野で深刻さを増しています。長期不況がつづき、失業と倒産が増えつづけています。政府与党や財界は、国民生活の苦しさには目をくれず、「痛みを分かち合う」ことを強要し、医療改悪をはじめとした構造改革を断固としてすすめるとしています。この「改革」は、日本経済をますます悪化させ、国民生活をいっそう厳しくし、日本社会を破綻に追いこむものでしかありません。さらに小泉内閣は、テロ報復戦争に自衛隊を派兵し、国内外の大きな批判のなかで靖国神社参拝※を強行しました。日本の平和と民主主義が重大な危機をむかえています。まさに、国民犠牲と軍事大国化路線を強行する戦後最悪の危険な政府といっても過言ではありません。

 私たちは前総会方針で、21世紀をむかえるにあたって、平和・人権・民主主義の憲法が尊重される社会、新しい平和・福祉の国に日本を切りかえることをよびかけました。この間、悪政がつづくなかでも、正義と道理をかかげたたたかいがすすみ、ハンセン病国家賠償訴訟※の貴重な勝利がかちとられ、全面解決にむけたたたかいが発展しています。また、草の根からの運動がすすみ、トンネルじん肺※や大気汚染公害闘争の勝利和解、過労死認定基準の改正、「新しい歴史教科書」※の採用を0.03%に押さえた運動などは、圧倒的多数の国民にかけられた痛みをはねかえしていく今後の運動のあり方を示した経験でもあります。

 今の時代は、なによりも平和と生存権が大切にされること、世界に誇るべき憲法を守ることが必要です。そのための国民的な連帯と共同が大切です。私たちは、共同組織の人たちとともに民医連運動のあらゆる分野で「より開かれた民医連」の姿勢をつらぬきます。

 私たちは、この2年間、総会方針が提起した「人権と非営利をめざして」「より開かれた民医連」「社会的使命と主体性・民主性」「連帯と共同」の4つのキーワードを軸に、民医連運動の発展をめざして奮闘してきました。その中で、医療・経営構造の転換や医師問題、経営問題など克服すべき課題もいよいよ明らかになってきました。

 第35回定期総会では、第1に、今日の時代をどうみるかについて明らかにし、民医連の原点である患者の生存権や受療権をまもるたたかいを発展させること、第2に、民医連と共同組織がより深く地域に根ざし、安心して住み続けられるまちづくりにとりくむこと、第3に、民医連院所・施設の存在意義を明らかにし、21世紀初頭にふさわしい新たな民医連運動を創造することについて率直な議論を行います。

 今総会は、以上の内容をもつ運動方針案と関連する規約の一部改正案を審議し決定します。また、「全日本民医連の医療・福祉宣言」、決算・予算を審議・決定し、全日本民医連の新役員及び評議員・予備評議員を選出します。


第1章 この2年間の主なとりくみと課題

 21世紀初頭の民医連運動をすすめていくうえで、第34回総会方針が提起した4つのキーワードは、重要な視点と目標を示したもので、今後さらに実践的に発展させることが大切です。それゆえ、ハンセン病のとりくみで私たちは、90年にわたる人権侵害に問題意識をもてなかったことに対して、全日本民医連として患者さんたちに謝罪し、率直に反省の表明をおこないました。

 本来あるべき無差別・平等の医療・福祉が崩され、特定療養費※など患者負担が拡大されつつある中で、対照的に室料差額をとらないでがんばっている民医連への期待と共感がよせられています。そのもとで、民医連の加盟院所数は704、準ずる組織は806事業所となり、この2年間で加盟数は160増加しました。介護・福祉分野で大きく前進し、歯科院所数は107カ所となりました。常勤職員数は4万5335人です。特筆すべきは共同組織構成員が285万、「いつでも元気」が4万8747に到達し、2年間で構成員は20万増加し、飛躍的に前進したことです。

 この章では、2年間の活動について、その到達点と課題について述べます。なお、医療活動の各個別課題および各職種の活動については別資料としてまとめています。

第1節 民医連の医療、介護活動の新たな展開と経営問題へのとりくみ

(1)医療の安全性と医療整備

 私たちは、耳原総合病院で発生したセラチア菌感染とそれによる死亡事例の教訓を共有し、医療の安全性と医療整備に全力をあげてとりくんできました。「医療事故を起こさない」という原則的立場をふまえながら、医療の複雑化・高度化・専門分化のなかで「起こりうる」医療事故を減らすために、安全対策を総合的にすすめること、医療事故や院内感染がおこった場合、「誰がおこしたか」でなく「なぜおきたのか」の立場で分析や改善にとりくむことを重視し、「公開」「徹底分析」「教訓の共有」「患者の参加」の原則的立場を明らかにしました。職員一人ひとりが安全性への意識を高めあい、総合的対策をすすめる目的で、2000年12月に全国病院長会議を緊急に開催しました。それ以後、各院所で、安全性に対するとりくみが急速にすすみました。

全日本民医連概況の推移


病 院
(当年1月)
医 科
診療所
(当年1月)
歯 科
施 設
(当年1月)
準ずる
組 織
(当年1月)
職員数
(前年4月)
共同組織
(翌年3月末)
事業収益
(翌年3月末)
1994年 154 333 74 74 38,557 2,101,666 4,296億円
113%
1996年 155
(+1)
367
(+34)
79
(+5)
195
(+121)
41,285
(+2,782)
2,348,616
(+246,950)
+398億円
4,694億円
109%
1998年 154
(-1)
408
(+41)
82
(+3)
411
(+216)
44,654
(+3,369)
2,565,371
(+216,755)
+199億円
4,893億円
104%
2000年 153
(-1)
461
(+53)
95
(+13)
664
(+253)
47,943
(+3,289)
2,753,867
(+188,496)
+270億円
5,163億円
106%
2002年 154
(+1)
481
(+20)
107
(+12)
803
(+139)
52,263
(+4,320)


 全日本民医連として、2000年8月から「医療安全モニター制度」をスタートさせました。調査報告では、転倒転落・注射事故が最も多く、転倒転落では医活部と看護委員会が協力して大規模調査を行い、注射事故では専門家の協力もえて調査・分析し、予防策をたてる検討に入っています。民医連全体の院内感染対策のレベルアップをめざし、『院内感染制御ガイドライン―みんなではじめる感染予防』をまとめ、3万部以上を普及し、民医連外にも反響をよびました。

 医療の安全性と医療整備の課題を「日本の医療の国民的歴史的な重要課題」として世に問うものとして位置づけ、他の医療団体や患者団体とシンポジウムを開催しました。また、厚生労働省に対して、国民がもとめる安全・安心・信頼の医療をすすめるうえで、診療報酬上の改善や人的体制の充実などの要求をかかげて交渉してきました。

 医療の安全性と医療整備の課題は持続的・総合的な対策が必要であり、ひきつづき院所長を中心とした院所・施設の管理部の指導性および職員集団の組織的とりくみと安全文化の向上が重要です。

(2)人権を守る共同の営みとしての医療活動

 民医連は、患者の権利について、生存権や受療権など社会保障としての権利と、医療機関との関係で保障されるべき権利の側面があることを提起してきました。今日、人権を守る医療活動では、この提起を実践的に深める必要があります。

 私たちは、日常医療活動の中で、「気になる患者訪問活動」や中断チェックにとりくんだり、「退院した後の施設が決まらない」「退院後だれが介護するのかはっきりしない」など多くの相談や事例に苦闘しています。あらゆる現場での対応をしっかり行い、患者の要求や生活背景をきちんとつかむ努力がいっそう必要です。失業の増大や資格証明書の発行など、経済的な事情で受診できない人の数が急増しています。来院患者が抱えている問題の共有のみならず、来院できない人びとの問題を含めて「最後のよりどころ」としての役割の発揮が真剣に追求されなければなりません。共同組織や多くの団体とともに、「安心して住み続けられるまちづくり」の一環として、重視したとりくみが必要です。また、切実さを増すホームレス問題について、行政の責任を果たすよう追求するとともに、独自の支援活動の強化も必要です。

 医療機関との関係で保障されるべき患者の権利を守る立場から、安全・安心・信頼の医療の実現をめざして、さまざまな努力が行われてきました。この間、共同の営みとしての医療をすすめる立場からのカルテ開示や、カルテへの患者自己記入欄の新設などのとりくみをはじめた院所も生まれましたが、全面あるいは部分開示が154病院中94病院(61%)にとどまっており、今後さらに強化すべき課題となっています。

 受診抑制と包括化がすすむもとでの慢性疾患管理活動のあり方、施設や安全性を含めた療養環境の改善、長期療養病床や介護・福祉施設など新たな展開の中での患者を中心にしたケアのあり方など、改善と具体化にむけたとりくみも必要です。

 遺伝子医療や遺伝子検査※に対する考え方を明らかにした見解をまとめました。人権を守る立場からの検討が必要です。法人・院所での倫理委員会の設置を呼びかけてきましたが、14病院(9%)にとどまっています。少なくとも臨床研修病院やセンター病院では医療倫理・安全検討委員会の確立が必要です。

(3)介護分野でのとりくみ

 介護保険が導入されて以降、制度改善のたたかいと介護関連事業※の具体化を統一的にとりくんできました。在宅事業の分野では、在宅医療を強めながら、訪問看護ステーションやヘルパー派遣事業※など複合的な展開を追求し、在宅福祉総合センター※などに発展させているところもでてきています。施設分野では、特養ホーム※・老健施設※に加え、ケアハウス※やグループホーム※など新たなとりくみもはじまっています。民医連のケアマネジャー※は5000人以上となり、ケアプランの作成数は民医連全体で4万件に達し、自治体・行政区によっては民医連の事業所が全体の2〜3割を担っているところもあります。多くのベテラン職員がこの分野の急速な事業展開に力を発揮しました。

 「人権と非営利※」の立場をつらぬく民医連の介護実践にたいする期待は、地域の中でいっそう大きなものとなっています。宅老所※や配食サービスなど、介護保険ではカバーしきれない高齢者の暮らしをささえる助け合いの活動に、共同組織とともにとりくみを発展させる経験も生まれています。また、他の事業所やNPO法人※などの諸団体との事業連携やネットワークが、従来にないひろがりをもってつくられ、まちづくり運動がよりゆたかに発展してきています。

 一方、この分野への要求の高まりにこたえきれていないところもあり、中長期の計画策定と職員の確保・養成が求められています。また、入院から居宅サービスにつなぐ「在宅調整※」や施設での看護職と介護職によるチームでのケアなど、医療と介護の連携や総合化について、患者や利用者の立場で実践的に深め理論化していくことが必要になっています。

 介護分野で、多くの新しい職員をむかえる中で、ケアマネジャー、ヘルパー、ケアワーカーの研修会・交流会などが県連、法人単位で実施されはじめています。全日本民医連として、訪問介護事業の視点と課題、民医連らしいグループホームづくりをすすめるための方針を提起し、地協単位でのケアマネジャーの研修会を実施しました。今後、ヘルパーの雇用形態の検討、介護分野を担う職員の育成を強めることが課題となっています。介護分野のとりくみは、高齢者をはじめ地域住民の切実な要求であり、今日の時代の新しいテーマとして、ひきつづき民医連が積極的にとりくむ意義があります。

(4)医療・経営構造の転換のとりくみ

 90年代後半、情勢の激変にあたって「民医連運動も脱皮することが必要」という方針が提起されました。少子高齢化社会での疾病構造の変化や福祉・介護への要求が拡大するもとで、これまでの急性期中心、病院中心型の医療だけでは患者要求に応えきれないこと、従来のままの医療や経営構造では民医連の経営は深刻な事態を生みかねないこと、大規模病院を中心に医師問題や管理運営など困難な問題が存在していることなどが議論されてきました。第33期第1回評議員会方針で、「収入増のみに依存する経営体質の転換」「医師の労働実態をみすえた収入計画の立案」「介護保険法の施行をにらんだ事業方針の策定」を中心に「医療・経営構造の転換」がよびかけられました。

 第四次医療法改悪のもとで、医療・経営構造の転換の課題がいっそう重要になってきました。2003年8月までに一般病床か療養病床の選択が必要になっています。民医連における療養型病床は、約4割の病院が保有し、約2割の病院が計画または検討中となっています。

 医療・経営構造の転換は、病院の増改築や移転新築、近接診療所建設、介護・福祉事業の展開など施設面での転換だけでなく、医療のあり方や病院機能の再編、医師や看護婦など各職種の業務内容などの転換の課題でもあります。また、従来の高収入・高支出型の経営構造をみなおし、医師の過重労働を軽減する必要があります。実際には、医師体制の困難さやリニューアルに対応する経営力量の不足、医療活動のあり方と法人院所の発展計画とのギャップなど、容易に方針を決めきれない難しさがあります。県連内での医師の再配置や院所機能の再編の検討など、法人の枠をこえた検討も必要です。一県連一法人の場合、地協としての経験交流や検討も重要です。

(5)民医連経営を守るとりくみ

 私たちは、前総会以降、同仁会における経営危機に際して、医療と経営の乖離、院所と地域の乖離、職場からの民主主義の欠落、資金管理や利益管理についての事務系幹部の力量の不足、民医連統一会計基準の不理解、法人の県連への自覚的な結集と県連機能発揮の弱さなどを教訓として整理してきました。医療改悪がすすむもとで、「たたかいと対応」を統一的にとらえられず、ともすれば民医連運動と理念を忘れ、経営さえ守られればよいという傾向も生まれがちであり、そのため職員の力を正しく引き出せない問題もおこりかねません。労働組合との対等平等・協力共同の原則を堅持し、役職員の力を引き出す方向での努力が大切です。

 第四次医療法改悪への対応や医療・経営構造転換に伴い多くの病院・施設でリニューアルや移転新築が計画されており、多額の投資が必要になっています。一方、今日の金融情勢は、不安定な経営の事業所に対する融資制限などいっそう厳しさを増しています。全日本民医連は、非営利・協同組織としての今日の到達点をふまえて「共同組織の人びとの拠出による安定的で無利子の資金を幅広く結集する」ことを目的に「地域協同基金※」制度を発足させました。法人形態を問わず、総資本に対する「自己資本+地域協同基金」比率の大幅な引き上げが必要です。

 また、金融情勢の激変や予期せぬ事態の発生によって経営危機に陥った場合の救済措置として「全国連帯基金制度※」の創設を提案しました。現在、この制度の是非について各県連、法人・院所で検討を行っています。

 民医連の経営は、黒字法人の比率が1999年度72.2%、2000年度81.8%と全役職員の奮闘と共同組織の力で大幅に改善しました。しかし、2001年度の上半期はモニター法人の集計で前年同期と比べて赤字法人が増加しています。これは、長期不況や患者負担増による患者減を背景としています。2002年度には、医療保険制度が開始されて以後初めて診療報酬が引き下げられようとしています。強行されれば、私たちの経営もさらに大きな打撃をこうむることになります。

 この間、全日本民医連新統一会計基準の改定を行い、経営対策のための「要対策10項目※」を「要対策11項目※」に改訂しました。また、今期2回にわたって統一会計基準推進士養成講座を行い、2百数十人の「推進士」が誕生しました。新統一会計基準※に準拠した、経営の科学的管理をすすめることが重要です。

(6)「民医連の医療・福祉宣言」づくり

 「民医連の医療・福祉宣言」は継続して検討を深めてきました。同時に、院所・施設の地域での存在意義と役割、共同の営みとしての医療のあり方、役職員の働きがいとは何かなど、みんなの意見を集めながら、具体性をもった「院所・施設の医療・福祉宣言」をよびかけてきました。作成委員会に患者・共同組織の人々が参加し、ともに論議を深めあう中で創意ある「宣言」が作成され、見直し作業がすすめられているところもありますが、「宣言」を作成した院所・施設は、まだ約20%にとどまっています。

 民医連が全体としてめざす方向を社会的に打ち出すのが「宣言」です。患者さんや地域の人々への私たちのメッセージであり、医学生らにとって魅力ある院所・施設づくりにつながるものです。同時に、一人ひとりの職員や共同組織にとっては「宣言」をつくる過程が大切です。ひきつづきとりくみを強める必要があります。

 「全日本民医連の医療・福祉宣言(案)」は、第1次案の段階で寄せられた民医連内外の意見をふまえ、患者や共同組織の人びとはもちろん、広範な国民にむけたものとしてまとめました。今総会で決定し、情勢の変化などにもとづき、必要な場合は2年に1度の総会ごとに見直しを行います。

第2節 地域に「人権と非営利」をめざす共同の輪を…平和・人権・福祉の新たな日本を

 私たちは、介護保険制度の改善をめざし、また医療大改悪阻止にむけて、地域でシンポジウムや学習会・懇談会を開催し、「介護保険をよくする会」や地域社保協の結成をすすめ、地域から連帯と共同のとりくみを発展させてきました。

 この間、すべての職員が社会保障運動に主体的に参加することをめざしてきました。日常の医療現場で人権をまもる「目とかまえ」を研ぎすまし、地域に出かけ、情勢を身近にひきよせて学ぶことを重視してきました。昨年の「社保学習月間」では3400人以上の職員が講師となり、「2000年介護実態調査」では2万2000件の訪問調査に多くの職員が参加しました。青年職員を中心に「ムダづかい公共事業見学ツアー」や「国会見学・研修」など体験型の学習が多くの県連で企画されました。また、「あすをひらく社会保障」のビデオは、職場や共同組織の班会などでも活用され、「民医連の歴史と存在意義を実感できた」などの感想も寄せられました。

(1)介護保障・介護保険改善のたたかい

 多くの問題点をもったまま、2000年4月から介護保険制度が実施されました。

 私たちは介護保険制度が、サービスが充実されれば保険料負担増となって国民にはねかえること、介護報酬を上げれば利用料・保険料負担になること、営利企業の事業参入を認めるなど、医療・社会保障制度のしくみを改悪するテコとしての役割があることを明らかにし、多くの人びとと共同した改善運動をすすめてきました。現時点では、保険料は378自治体、利用料は674自治体で減免が実現するなど、戦後の社会保障拡充の運動の中でも特筆すべき成果をかちとってきています。

 全日本民医連の「2000年介護実態調査」によって、「介護保険が実施されて毎月の負担金が2.6倍、1万400円も増加した」「要介護者本人の年収では100万円未満が46.7%もあり、介護費用が生活を大きく圧迫している」「介護者の負担は軽減していない」などの実態が明らかになりました。介護保険が目的とした「介護の社会化※」の実現にはほど遠いことを鋭く告発するものとなり、各地の介護保障制度の改善の運動に大きく役立っています。

 2003年度に介護報酬の改定、介護保険料、事業計画の見直しが予定されており、そのための議論がはじまりました。保険料・利用料の減免や基盤整備などを中心とした制度改善のたたかいを強めることが重要です。

 一方、介護保険実施後も特養や老健施設への入所待ちが急増し、「保険あって介護なし」の状況がすすんでいます。厚生労働省はホテルコスト※と称して特養入所者の自己負担の大幅引き上げを打ち出すなど、介護保険制度の改善に背を向けています。

(2)医療大改悪阻止をめざす「大運動」

 2001年6月に経済財政諮問会議がまとめた「骨太方針」で、医療と介護の営利市場化、医療の公共性の否定、人権侵害をもたらす医療抜本改悪の全容が示されました。私たちは、昨年8月の第3回評議員会で「医療大改悪阻止・共同組織の強化発展をめざす大運動」にとりくむことを決定し、いち早く学習決起集会を開催しました。医団連や中央社保協※とともに「いのちをけずる小泉改革反対」のスローガンをかかげ5000人の参加で「10・24集会」を開催しました。また、「安全・安心の医療をまもろう2・14国民大集会」を、医団連、中央社保協、国民春闘共闘の三者共催で開催し、全国から1万5000人が怒りの声をもって結集しました。

 今回のたたかいでは、ラジオコマーシャルなど新たにメディアを使った宣伝を重視し、150万枚のリーフレット、50万枚のポスターステッカーの活用など世論を変えるためにかつてない規模の大宣伝を行いました。全国各地で、数十万から100万枚を超える宣伝物が活用され、路面電車の全面広告のような創意ある宣伝によって、国民世論の大きなうねりをつくり出してきました。7000通を超える署名協力が返信された県連もあり、医療改悪反対署名や懇談会・学習会が旺盛に開催されています。民医連は、保団連や日生協医療部会、医労連などとともに運動の牽引車としての役割を発揮しています。

 政府与党がサラリーマンの窓口負担増を先送りしたことは、私たちのたたかいと国民世論の高まりによって譲歩をかちとってきたといえます。2002年通常国会に向けて、たたかいの手をゆるめず、大運動をいっそう発展させます。

(3)連帯と共同を発展させるとりくみ

 私たちは共同組織とともに、地域の老人クラブや社会福祉協議会※、行政などと連携し、懇談会やシンポジウムを開催してきました。切実な要求や考え方を出し合い、自治体での要求実現につなげてきました。また、全国各地の共同組織で、「相談所」ステッカーが貼られ、困っている人びとにとって、力強い相談相手になっています。大阪や福岡などで介護保険の減免をもとめる「一揆の会」のとりくみが広がっています。

 この間、各地の集会に、県医師会や地区医師会から「立場は異なっても、ともに反対の行動を」のメッセージがよせられています。薬剤師配置基準の見直しについて日本病院薬剤師会との懇談が行われ、診療報酬問題で日本臨床検査技師会との懇談が行われるなど医療分野での共同のとりくみがはじまっています。そして、保団連・日生協医療部会・医労連・新医協・日患同盟などで構成する医団連での共同のとりくみが大きく前進し、地域社保協は、260を超え、草の根からの社保協を軸とした運動が発展しつつあります。

 また、深刻化する国保問題※の改善にむけた社保協としての交流集会の開催、「乳幼児医療費無料化全国ネットワーク」の結成、基本的人権をもとめる「学資保険裁判※」への支援など幅広い分野で、共同のとりくみがすすんでいます。

(4)憲法と平和・民主主義をまもるたたかい

 私たちは、2001年9月に起こった同時多発テロ事件と報復戦争という事態の中で、「テロにも戦争にも反対」という立場を明らかにし、この事件を口実とした自衛隊の海外派遣・武器使用の合法化など、憲法違反の動きに対していち早く抗議声明を発表して、医療関係者の抗議集会を開催しました。

 また、毎年の原水禁世界大会には1500人を超える職員と共同組織の人たちが参加し、平和大会やビキニ集会・核戦争防止国際医師会議(IPPNW)・反核医師のつどい・原爆被爆者の認定裁判などに積極的にとりくんできました。最高裁での勝利判決をかちとった長崎原爆松谷訴訟のたたかいでは、全国で数次にわたる署名にとりくみ大きく貢献しました。ひきつづく東京・北海道訴訟にも積極的な支援をすすめています。

 こうした平和のたたかいに多くの青年職員が参加し、民医連の先輩や共同組織の人たちから従軍体験や被爆体験などを聞き、各地のたたかいの経験を学ぶなかで、民医連運動への確信を深める機会となっています。

(5)地方と国政の政治革新をめざすとりくみ

 私たちは、「無駄な公共事業を削って、医療や福祉の充実を」の要求をかかげ、衆議院選挙や東京都議選挙・参議院選挙をはじめ各地の首長選挙などにとりくんできました。職場や共同組織の班会での学習を重視し、医療の専門家として医療現場でつかんだ経験を話してきました。紙芝居やビデオを使った、創意あるとりくみが前進しています。

 この間、長野や千葉、栃木などでオール与党の県知事候補を破って、草の根運動と結んだ知事が誕生するなど、住民のパワーが発揮されているのが特徴的です。国家財政だけでなく地方自治体の財政も危機をむかえており、地域住民のいのちとくらしを守る防波堤の役割を果たせない自治体も生まれています。東京や大阪では、都立病院や府立病院の統廃合の計画に対して、広範な住民の反対運動が行われています。また、各地で高齢者や障害者などの福祉制度が削られつつあります。ひきつづき地方と国政の政治革新をもとめるとりくみが重要です。

第3節 「科学とヒューマニズム、民主的医療人」…民医連運動の担い手としていかに成長するか

 前総会方針は、私たち一人ひとりが、民医連運動の担い手として成長するうえで、職員相互の連帯を感じられる職場づくり、患者や共同組織の人たちから学びあうことの大切さを強調してきました。国民生活の苦難が増大し、医療を受ける権利が奪われつつある中で、患者を生活や労働の場でとらえ、人権をまもる立場を研ぎすます必要があります。制度教育を重視しつつ、日常的に医療・福祉活動のなかで民医連職員として育ちあうことが大事です。

 新自由主義にもとづく弱肉強食的な考え方がまん延しています。そして、人間性を否定し、企業利益を最優先するような現象も発生しています。過去において科学の利用や応用によって営利主義や戦争に直結した歴史があり、現在もその危険性が高まっています。それだけに、私たちは社会や医療、環境などを科学的にとらえる力を養い、-32409命は平等-32408のヒューマニズを基礎にした視点を研ぎすますことが大切になっています。

 前総会が、突破すべき最大の課題とした医学生対策と医師養成の課題では、「医師の社会的使命と生きがい」を深めながら、共同組織とともにとりくむ医学対への転換を打ち出すなど、大きな努力を払ってきましたが依然として壁をうち破れていません。医学生対策や医師研修の充実、退職を生まない医局づくりなど、この間のとりくみから教訓を引き出し、今日の医師問題を打開するための論議と方針づくりが必要です。

 職員確保では、医薬分業が急速にすすむなかで、薬剤師の確保が追いついていません。地域にとってたよりがいのある民医連保険薬局づくりとそれをささえる薬剤師の確保と養成に力を入れる必要があります。

 職員養成では、民医連運動の未来にとって青年職員の成長と役割発揮がきわめて重要であり、組織的な援助の強化が課題になっています。また、急速に増えつつある介護・福祉系職員が民医連運動についての理解を深め、新しい分野の主体的担い手として育ちあうとりくみに、力を入れていくことも大切です。また、働くものの医療を担う、民医連職員の健康管理は重要です。この間、労働者健康委員会と全日本民医連共済組合理事会は合同で、職員の長期病欠者や死亡の状況について分析を行ってきました。職員自らが健康管理に努めるとともに、県連や法人・院所でも対策と対応を強める必要があります。

 ここでは、医師問題と青年問題の課題について重点的に述べ、各職種のとりくみについては別途資料にまとめることとしました。

(1)医師・歯科医師養成と確保のとりくみ

 第34回総会では、2年間で新卒医師受け入れ目標を300人としました。結果は、2001年卒が109人、2002年卒が113人(1月現在)で、依然として110人台を突破できず、飛躍はつくりきれていません。また2000年常勤医師実態調査では入職1、2年目の研修医世代の退職が増加している傾向もみられます。21世紀をになう総合的な力量を持つ民医連医師の養成が立ち遅れています。

 医学生や医師研修をとりまく状況が、大きく変化してきていることがこの間の特徴です。国立大学法人化構想※や遠山プラン「トップ30※」が打ち出され、大学間の競争、研究至上主義や業績主義が強まっています。産学共同による大学支配がすすみ、軍学共同も危惧されるなかで、社会的視野が欠如した、技術主義的な医師養成にますます拍車がかかる状況にあります。

 大学と医療の変化に応じて、医学教育は大きく変化してきています。各大学でさまざまな教育改革(早期実地体験、臨床実習、小グループ教育など)が行われていますが、一般教養の切り捨てがすすみ、自然科学と技能教育に偏った医学部教育の詰め込み主義が強まっています。全国一律の進級試験の導入や国家試験合格率による大学評価などによって、医学部教育は医師国家試験予備校化の側面も大きくなっています。医学生が社会、文化、科学、医療などについての視野を広げ経験を積む機会は乏しくなってきているのが現状です。

 卒後臨床研修必修化※をめぐっては、政府が研修医の処遇や研修条件整備に対して予算措置を行う責任を果たさないこと、プライマリケアや地域医療を排除した急性期大病院中心の研修が強制されようとしていることの2つが大きな問題であることが、医師臨床研修検討部会の議論を通じて明らかになってきています。

 このような状況の中で、まともな研修をもとめる研修医や医学生の新たな動きも活発化しています。関西医大研修医過労死事件※を契機にマスコミも医師研修問題に注目し、医学連の見解や民医連病院での研修が新聞やテレビで紹介されています。

 全日本民医連として、はじめての研修委員長会議を開催しました。民医連の研修をより改善し、社会にアピールしていくため継続した研究が必要との意見から民医連臨床研修交流会を毎年開催します。

 医師問題についてのこの間のとりくみや論議をとおして、その打開に向けた糸口が明らかになりつつあります。医師問題は、医師研修のあり方、過重な医師労働、院所の管理運営、院所の発展方向と一人ひとりの医師のやりがいなどと深く関係しており、法人・院所管理部や医局での論議が重要です。医師労働の改善はこれらの前提になる問題です。

 医学対は医師問題打開のために一歩も後退させられない課題です。これまでの医師・医学生委員会まかせの医学対から、県連理事会や法人・院所の管理部が責任を持つ医学対にきりかえ、新たな前進を実現しなければなりません。

 こうした認識に立って、医師問題の克服をテーマとした全国病院長会議を開催し、医療の安全性、医療構造の転換とならんで、医師・医学生問題を病院管理部の重要課題とすることを提起しました。ひきつづき35期の改善すべき課題として、職員・共同組織の力で前進をつくり出すことが必要です。

 全日本民医連の歯科医師数は、前総会より25人増え、327人となりました。歯科空白県連に歯科院所を建設するためには、地方協議会ごとに議論し、歯学生対策を強化し、計画的に歯科医師を確保していくことが必要です。歯科医師の臨床研修必修化は2006年からですが、全日本民医連および地方協議会として具体的な対応策を検討します。

(2)青年職員が主体的に成長するために

 歴史的に、民医連の院所・施設には多くの青年職員が参加し、常に民医連運動に若い力と新しい息吹が注ぎ込まれ、発展の原動力となってきました。青年職員が、生き生きと活動するかどうかは、民医連の未来はもちろん、現在にとっても非常に大事な問題です。

 現在、民医連で働く30歳未満の青年職員は、34%、約1万4千人です。35歳未満では44%、約2万人です。この間、青年職員は、災害救援ボランティア、ハンセン病裁判支援、薬害ヤコブ病訴訟支援、平和運動、介護実態調査などに積極的にとりくみ、医療や社会の問題で視野を広げ民医連運動への確信を深めています。一方、青年職員の多くは、成育過程で今日の日本の「過度の競争」と「管理」を特徴とする教育の影響をさまざまに受けています。社会保障などの学習や、連帯感に満ちた人間関係づくりなどで、院所・職場の先輩職員がていねいに援助の手をさしのべることが大事です。その点では、医系学生・後継者対策の活動での「つどい※」やDANS※、医療・福祉の現場体験、地域の人々との交流などを重視する必要があります。

 全日本民医連では青年ブックレットを発行し、また青年プロジェクトチームで青年職員との懇談や県連事務局長アンケート、青年職員の養成をめざす全国交流会などにとりくみました。ジャンボリー運動は、「ひとりぼっちの青年をなくそう」の言葉を原点として、青年職員が職種・院所をこえて学び交流し成長をめざす場です。より多くの青年が結集できるよう、院所・県連・地協での活動を大切にします。全国ジャンボリーは当面2年に1度の開催とし、各地の活動の合流の場として位置づけ成功させます。

第4節 共同組織の総合的発展をめざして

(1)民医連としての共同組織の今日的な位置づけ

 第1に、共同組織は民医連運動にとって不可欠の構成要素です。これまでの、法人や院所・施設との定期協議、院所利用委員会や社保委員会などへの共同組織の参加に加え、共同組織の人たちによる医学生へのよびかけによって、医学対活動で大きな前進をかちとった県連や法人が生まれています。医療倫理委員会や教育委員会への参加が具体的にすすめられている共同組織もあります。この間、無利息・長期の安定的な地域住民資金を結集するための全国的な基準として「地域協同基金」の提起が行われました。共同組織の人びとが、法人や事業所の意志決定に参加することを実質的に保障することを要件としており、その実践がはじまっています。院所・施設の医療・福祉宣言づくりの策定委員会に共同組織が参加している院所もあります。

 第2に、共同組織は医療・福祉の住民運動組織であり、「安心して住み続けられるまちづくり」や「健康づくり」運動の主体者へと活動内容も発展してきています。民医連院所・施設ととともに「最後のよりどころ」として地域になくてはならない存在になりつつあり、高齢者がかかえる困難と要求を把握し、介護保険料や利用料の軽減や制度の充実を求める運動や、お食事会、宅老所、お弁当の宅配サービス、ボランティア活動などを通じて、助け合いのネットワークが広がっています。「まちづくり計画」や「わがまちの夢マップ」づくりが支部やブロック単位に行われ、懇談会や協議会が地域の自治会や老人クラブなどとともに開催されています。介護や医療問題での具体的な要求をかかげ、自治体をまきこむとりくみも広がっています。

(2)「安心して住み続けられるまちづくり」運動がゆたかに発展

 石川県山中温泉で開催された第6回共同組織活動交流集会は、すべての県連から過去最高の人びとが参加し、各地から医療・福祉の充実、平和と民主主義や環境を守るとりくみ、教育・子育て問題など、安心して住み続けられるまちづくりの活動が、多彩に、力強く、そして着実に地域の中で広がっていることが報告されました。NPO法人などあらたなとりくみの主体者となっている報告も行われました。地域でも、民医連運動でも、共同組織がなくてはならない組織として、巨大なエネルギーが発揮されていることを確認しあうものでした。

(3)構成員300万、『いつでも元気』5万の達成にむけて

 私たちは、90年代初頭に共同組織構成員300万を目標としてとりくむことを決定しました。35回総会までに、がんばれば目標をやりきるところまで到達しているとして、強化月間に2年連続してとりくんできました。現在、構成員は285万、『いつでも元気※』4万8747部に到達しました。厳しい情勢の中でも、前総会以降20万増えたことは、21世紀初頭の民医連運動の発展を切りひらく貴重な前進です。そのなかで多くの成果と教訓が生まれました。

 第1に、介護保険制度の改善や医療大改悪阻止のたたかいにとりくむなかで、仲間を増やしてきたことです。第2は、県内全域を視野にみすえ、従来の延長線上ではない大きな構えでとりくんだことです。第3に、学習を基礎に全国各地のとりくみに学び、全職員の自覚的な力が大きく発揮されたことです。第4に、職員が共同組織とともに楽しく、そして励まし合いながらとりくんだことです。

 共同組織の活動内容や組織の質的強化もはかってきました。支部や班会の活動を重視し、新しい班の結成や班会の開催、機関紙の手配り者を増やすことにも力を入れてきました。また、県連での共同組織連絡会は新たに神奈川、山形、新潟、鳥取で結成され、20県連となりました。共同組織相互の交流とともに、県連理事会や共同組織委員会との懇談や合同会議が行われるなど、民医連運動や方針についての理解を共同組織に広げる上でも重要な役割を果たしつつあります。

第5節 民医連運動の団結を新たな水準に

(1)地方協議会の活動

 全日本民医連と県連や法人・院所の距離を近づけ、理事会として県連や法人・院所がかかえる困難な問題に、機敏に対応できる執行機能としての地協活動を重視してきました。介護・福祉分野の「たたかいと対応」や社会保障運動についての交流、各職種の交流と事務幹部養成の課題が活発にとりくまれました。医師確保と養成の課題に加えて、臨床研修必修化に対応して、臨床研修病院の取得と位置づけ、指導医の配置などについて、地協として検討がはじまっています。また、地協経営委員長会議による1県連1法人の経営検討会や専務会議の開催など、直面している経営の課題について踏み込んだ検討を行ってきました。県連機能の強化をはかるうえで、地協の役割はますます重要です。地協運営は担当理事会議や地協事務局長会議を軸に行われてきましたが、体制や財政などをさらに強化することが必要です。

(2)全国支援と連帯

 この間、北海道民医連から医師支援要請が出されました。全日本民医連理事会は「医師問題と経営問題は道民医連だけの問題でなく、全日本民医連が抱える問題、とりわけ大規模医師集団を抱える県連、法人における今日的課題」として調査を行い、要請にこたえて1年半にわたって2人の医師支援を行ってきました。北海道民医連は、全日本民医連調査団の指摘を真正面からうけとめ論議を深め改善にとりくんでいます。

 福岡・健和会の再建では、各施設のリニューアルの実施にともなう資金確保と金融機関への返済の変更について金融機関と交渉を重ね、新たな合意をかちとってきました。福岡健和会対策委員会を中心に、ひきつづき援助していきます。

 大阪・同仁会は、再建運動3年目に発生したセラチア菌院内感染問題によって、経営状況の厳しさと相まって3カ年計画の遂行に遅れをきたしました。2001年度より新たな再建3カ年計画をつくり、医療の総点検や医療・経営構造の転換などに職員・友の会共同でとりくみ、2001年度は経営も改善しています。こうした事態に対して全日本民医連理事会は「再建基金」の期間延長の協力を呼びかけました。

(3)規模が大きくなった中での組織改革

 民医連組織の発展と共に民医連がとりくむ分野や戦線が広がっています。こうした状況は全日本民医連理事会や各部・委員会の活動にも反映し、それぞれの委員会から方針がつぎつぎ出され、「現場では消化しきれない」など、改善を求める意見が寄せられています。また、出された方針について論議や実践の徹底を強める指導援助と同時に、各県連の活動状況や教訓を集約することが十分でなく、理事会や各部・委員会の運営のあり方について抜本的な見直しが必要になっています。

 この間、全日本民医連理事会として「介護保険関連事業所の新規加盟について」の考え方を整理しました。また、民医連運動の発展段階をふまえ「準ずる組織」の名称問題と加盟対象施設の分類など規約にかかわる事項の検討や事業収益の実態に即した施設割会費基準の見直しなどの検討を行ってきました。

 共同購入連絡会は、法人・院所の経営に大きく貢献しています。県連での共同購入を軸とした共同事業所のとりくみは、県連機能をさらに高めるものとなっています。

(4)全国組織としての民医連の役割

 2001年5月末に、全日本民医連事務所が「平和と労働センター」に移転しました。前総会方針にもとづき、「医療問題や社会医学上の諸問題について、総合的な研究・政策提言をすすめることを目的とした研究機関の設置を検討」してきました。「総合研究所(仮称)」準備会を発足させ、事務所を設置しました。学者・研究者の援助をえながら、具体的な検討と準備をすすめています。

 国際部の活動は、主にアジアを中心とする各国の医療や情勢の学習、日生協医療部会など諸団体の国際活動の調査を重点にとりくみました。また、「世界市民集会」への代表派遣など国際交流をはかりました。

(5)その他

 全日本民医連共済組合は、民医連年金制度を長期に継続するための改定を提案し、退職者を含めた全国的な討議を精力的にすすめてきました。今年度の共済組合定期総会は、年金制度の長期的維持を意思統一する重要な総会です。各共済組合支部、各法人での事前の討議が活発に行われるようひきつづき協力していきます。

 『民医連医療』『民医連資料』の紙面改善にとりくみました。

 また、全国各地で地震など自然災害が生じた場合に現地の被害状況の調査、被災者および被災自治体への見舞金などに使用することを目的とする「災害基金」を創設しました。

 この2年間の活動を通して、私たちは前進した分野として次の点を確認することができます。

 第1に、地域の人びとの要求とこれまでの医療活動の蓄積をふまえ、介護・福祉分野への展開がすすみ、保健・医療・福祉の総合的活動が大きく広がったことです。

 第2に、国民的要求と自らの痛切な経験にもとづいて、国民の立場から医療の安全性についての基本的考え方を確立し、組織的な実践を強化してきたことです。

 第3に、民医連運動のあらゆる分野にとって、またまちづくりの運動にとってなくてはならない存在である共同組織の強化拡大にとりくみ、2年間で約20万人の増という、日本の諸運動の中でも特筆すべき前進を遂げたことです。

 第4に、支配層の医療・社会保障破壊の攻撃に対し、患者・地域の人びとの人権と医療・福祉の公共性を守りぬくたたかいで常に先頭に立ち、国民の中での共同を広げてきたことです。

 一方、今日の時代のなかで、民医連運動がこのような役割をいっそう果たしていくうえで、のりこえなければならない問題点もいよいよ鮮明になりました。

 第1に、私たちの医療・経営構造をより時代に適合して発展させていくために、本格的な転換をはかることです。

 第2に、そのなかで医師をはじめとした職員が働きがいをもっていっそう生き生きと活動することです。特に、医師の確保と養成の課題での困難を必ず突破しなければなりません。

 第3に、以上をすすめるにふさわしい組織の強化・改革を行うことです。

 これらを、35期の民医連運動の重点課題として引き継いでいく必要があります。


第2章 今日の情勢の特徴と新しい平和・福祉の国づくりをめざして

第1節 いのちとくらしをめぐる激しいせめぎあいの時代

 私たちは、介護実態調査で「保険料や利用料が高くて十分な介護が受けられない」「食費を切りつめている」など悲痛な叫びを聞きました。今回の医療改悪に反対するとりくみで「年をとったら死ねというのですか」と怒りの言葉をぎっしり書き込んだ署名用紙がこれまでになく数多く届いています。医療の公共性や無差別・平等の医療がどんどん崩され、お金がなければ医療が受けられない事態がすすんでいます。

 50年前、「医療を受けられない人びとに医療を」と、医師をはじめとした医療従事者と地域住民の共同の力で発足した民医連運動の原点に戻り、戦後最悪の不況下における「働くものの医療機関」の真価を発揮すべきときです。

(1)新自由主義のもとで国民生活の苦難が増大

 財界や政府与党は、日本の企業が国際競争にうち勝つためという理由で多国籍企業の利益を守り、同時に、アメリカの目下の同盟者として、軍事大国化をすすめ、経済的軍事的影響力を強めようとしています。

 その具体化として、大企業や高額所得者の税率を引き下げ、消費税に重点を切りかえ、さらに高齢化時代に対応するとして医療や社会保障、教育などの国家予算を大幅に削減するという方針を打ち出しています。

 こうした政治経済の路線は、弱肉強食、優勝劣敗の新自由主義的な考え方にもとづいています。社会を市場原理にゆだね、自由競争に任せれば経済の発展があり社会が良くなるという考え方です。「失業率が一定上がっても仕方がない」「不良債権処理で弱い企業は潰せ」などは、結果として、社会保障など国民生活を守るという政府の役割を否定し、大企業やアメリカにとって都合がよい論理にほかなりません。

 「いのちこそ宝」です。医療や社会保障はその公共性こそ守られねばならず、市場経済にゆだねるべきではありません。

 世界経済においても、現在、アメリカを中心に新自由主義的な考え方とそれによる改革が押しつけられようとしており、大きな問題になっています。経済のグローバル化によって、富める国と貧しい国の格差が広がっています。地球上には、約60億人の人びとが住んでいます。絶対的貧困といわれる1日1ドル以下で生活している人が12億人、生活・住居・食料などが充分保障されていない人びとが28億人と、半数を占めています。南北問題の深刻化※、貧富の差の拡大、自然破壊や環境汚染の広がり、エイズや健康破壊の深刻化など、生きることそのものが脅かされています。

 日本でも、この路線は小泉内閣の登場によって顕著になってきており、マスメディアを徹底的に利用しつつ、「規制緩和」と「構造改革」がすすめられています。あらゆる分野で国民の痛みが増大しています。

 私たちの診療現場でも窓口未収金が増大し、慢性疾患患者の中断が増えるなど深刻な国民生活の実態が表れています。保険資格喪失の患者宅に電話連絡したことで、家計の大黒柱のお父さんの失業を家族全員がはじめて知ったという事例もありました。

 倒産と廃業の増大、リストラ合理化による完全失業者は370万人に達し、失業率も5.5%と増えつづけています。失業率の増大は低賃金体制においこみ、日本の雇用形態を大幅に変更しつつあります。夏冬の賞与も退職金もなく、パート労働者に依存した新たな雇用形態をとる企業がふえつつあります。自殺者も依然として中高年の比率が高く、ホームレスも全国各地に広がりつつあります。狂牛病の影響も重なって、畜産業や食肉関連企業は壊滅的打撃を受けています。公務員の大幅削減、国立大学法人化、大学や国公立病院の統廃合なども強行されようとしています。

 さらにいま、人間的連帯が失われ、教育、環境、文化が荒廃しています。所得格差の拡大は、社会不安を増幅させ、犯罪を増加させる一因にもなっています。アルコール依存症、薬物依存症、幼児虐待の増加、ドメスティックバイオレンス※、いじめ、ひきこもり、職場での精神疾患の増加、自殺と餓死、孤独死などは支配層の政策を映す社会病理現象としてとらえる必要があります。

(2)小泉内閣のもとで明るい未来はみえてこない

 この間、「古い自民党政治の古い枠組みを変えてくれるのではないか」という期待感が小泉内閣への高い支持率をもたらしました。しかし、古い自民党の体質が少しも変わっていなことや経済危機がいっそうひどくなり、医療大改悪が押し進められるもとで、小泉内閣に疑問や不安を感じ支持率が大幅に低下してきました。国民は急速に「小泉改革」が、国民に一方的に痛みを押しつけ、アメリカ追随、大企業中心の政治をいっそう乱暴に押しすすめようとするものであることを実感しています。国民にとって、この改革に明るい展望はありません。

 今日、国と地方の借金が、693兆円にもふくれあがり、日本の国債が国際的信用をなくしつつあるなど、財政はまさに破綻状態です。日本経済は悪化するばかりで、国民生活の苦難は増大しています。国民消費を冷え込ませ、いのちや健康に不安を与える財界や政府与党の政策に正当性はなく、国民は「痛み」の要因に目をむけはじめています。私たちの医療改悪阻止のたたかいが広がりつつあることも重なり、マスコミの世論調査でも、医療改革に対して、「将来生活に不安」などの理由で反対が過半数を上回っています。医療・社会保障改悪の問題は小泉改革の中心課題であり、それだけに「ウィークポイント」でもあります。したがって、私たちのたたかいは小泉改革全体に大きな影響を及ぼすものです。

(3)医療や社会保障の未曾有の大改悪

 一昨年の医療改悪で、老人医療費が1割負担となりました。高額療養費も引き上げられ、手術を受けたり入院すれば多額の自己負担となりました。国保資格証明書や短期証の発行が義務づけられ、資格書や短期証をもった患者が多くの院所に来院するようになってきました。倒産や廃業、リストラで保険料が払えない人が急増し、全国で資格書発行数は17万件に達しています。一昨年末の国会で第四次医療法改悪が行われ、一般病床の大幅削減をねらった病床の選択(2003年8月までに一般病床か療養病床かを選ぶ)や臨床研修病院での医師卒後研修必修化(2004年)、広告規制緩和が決まりました。保険料や利用料が高い、利用施設整備が不十分など多くの課題をかかえたまま介護保険制度がはじまり、昨年10月には猶予されていた高齢者など低所得者の介護保険料が満額徴収されました。全体として国民・患者負担が増え、ベッド削減など医療機関への規制が強められ、救急病院や急性期医療に対応できる病院が地域からなくなるという事態さえうまれ始めています。さらに政府は、公的保険を縮小する一方で、営利を目的とする民間保険事業を奨励しています。

 政府・厚生労働省は、小泉改革のもとで、2002年度国家予算案の編成にあわせてとんでもない医療改悪案をつぎつぎと打ち出してきました。老人健康保険の対象年齢を75歳以上にし、定額部分を大幅に引き上げ償還制度を導入すること、当面は一定以上の所得のある高齢者は2割負担とし将来は3割負担とすること、健保本人の保険料算定を年収にきりかえ2割負担から3割負担への引き上げを「必要なとき」に実施すること、診療報酬と薬価を引き下げること、特定療養費を改定し保険外負担を大幅に増やすことなどがその内容です。今年4月に実施される診療報酬改定は、はじめて診療報酬の点数が引き下げられただけでなく、包括化や逓減制の大幅拡大を行っています。これは患者の受療権が損なわれるだけでなく、医療機関の経営にとってかつてない厳しいものであり、とりわけ病院の淘汰につながるものです。また、患者の選択と同意が前提であり、医療の周辺部分のみへの適用であったはずの「特定療養費」が、入院基本料や外来再診料、薬剤などの医療本体部分まで拡大されました。治療や検査時間の短縮、入院期間の短縮強要は過密労働をもちこみ、国民と医療従事者の願いである医療の質と安全性を脅かすものです。歯科分野では、慢性疾患管理でかかりつけ歯科医や初診料、メンテナンスを診療の一部のなかに包括化し、義歯関連の包括化と引き下げを行っただけではなくて、訪問歯科診療関係で対象患者を制限し、報酬そのものも引き下げるという内容になっています。小泉首相は、「三方一両損、よくやったでしょう」と自慢し、マスコミも大いに評価しています。「患者・国民」と「保険者」と「診療側」(医療機関)の痛みがあっても、「国家」の責任をはじめから免罪し、意図的にごまかしています。

 政府は、2002年から2004年の3年間を「医療改革集中期間」として、一気に大改悪をすすめるとしています。2003年には介護保険の見直しが予定され、すでに保険料の引き上げなどが検討されています。2004年には年金制度の改悪が予定され、厚生年金の民営化などもとりざたされています。日本の社会保障の歴史のなかで、短期間でこれほどの抜本的な改悪を実行しようというのははじめてです。

(4)憲法の平和と生存権が焦点に

 ブッシュ大統領は同時多発テロの直後に、「テロを戦争行為」と断定し、アフガニスタンへの報復爆撃を開始しました。テロは犯罪であり、戦争と区別されなければなりません。20世紀の戦争による殺戮をくりかえさないために、21世紀は平和の世紀であることを世界の人びとが願い、誓ったはずでした。許しがたいことに、小泉首相はいち早く報復戦争への後方支援と自衛隊の海外派兵を表明し、自衛隊新法を強行採決しました。

 これまでアフガニスタンと日本は友好関係にあり、憲法9条という世界に誇るべき条項をもった国として、積極的な役割をはたす条件がありました。国民の多くは、アフガニスタンへの人道的支援を望んでいます。ひきつづき自衛隊海外派兵や有事立法の策定をゆるさないとりくみが必要です。

 アジア諸国民は、日本の戦争政策によって多くの人びとのいのちが奪われ、多大な損害を受けてきました。日本政府は、口頭では反省と陳謝を表明しつつも、損害賠償など根本的な解決をはかろうとしていません。そのうえ、小泉首相は国内外の批判があったにもかかわらず戦犯者を祀った靖国神社参拝を強行しました。新しい歴史教科書の採用など、平和と民主主義に逆行する動きは、軍事大国化をめざす政治経済路線と深く結びついています。民族主義的な考え方をあおることによって、国民生活の苦難に対する批判の高まりをそらす手口は、戦前・戦中の軍国主義者の常套手段です。

 憲法にもとづいて教育の理念や教育行政のあり方などが示されている教育基本法を、根本から改悪しようとする動きが強まっており、これをゆるさないたたかいが必要です。

 憲法調査会では論議が継続されており、自民党をはじめとした与党だけでなく民主党、自由党も憲法の改悪をねらっています。首相公選制の導入を口実とした国民投票法案の策動もそのあらわれです。憲法の9条と25条は表裏一体であり、私たちは平和と生存権を守る国民的な連帯と行動に積極的にとりくむことが必要です。

第2節 私たちはどう活動し、展望を切り開くか

(1)「痛み」は圧倒的多数の国民が受けている

 支配層は以上のような政策に正当性も展望も持ち合わせていないのが現実です。2年前、失業率が増大するもとで、小泉首相や竹中経済財政担当相は「IT産業や介護事業こそが新たな雇用を確保できる」と豪語していました。しかし、アメリカでIT産業が急速な不況に陥ると同時に、日本でも株価が下がり不況がいっそう深刻化しました。介護事業に参画したコムスンなど民間営利企業の縮小・撤退により、福祉分野での雇用が簡単に拡大できる状況にないことが明らかになっています。今、財界のトップから「失業率は6%どころか8%を覚悟しなければ」との無責任な発言が出される状況にあります。

 構造改革による痛みは、圧倒的多数の国民が受けています。構造改革をやめさせ、政治の転換をすすめる多数派を形成できる可能性があります。また、介護保険の改善をもとめるとりくみで、多くの自治体が保険料や利用料の減免を実施し、道理ある地域住民の願いや要求を実現しつつあります。乳幼児医療費の減免やインフルエンザワクチンの接種などでも要求の実現を勝ちとっています。「脱ダム」宣言を行った長野県では、特養ホームの建設が昨年度5カ所も実現しており、地方政治の転換をおこなえばいろいろなことが実現できる状況にあります。

(2)地域からの連帯と共同の発展を

 介護保険の改善をもとめるとりくみや医療大改悪阻止をめざす「大運動」で、私たちは貴重な経験と教訓を得てきました。第1に、生活の場である地域で、さまざまな「痛み」や「怒り」を出し合い、要求実現やたたかいに発展させることです。第2は、さまざまな団体や個人が、一致する具体的な要求での共同のとりくみを発展させることです。医療分野での構造改革に対して、日本医師会は「患者の負担増に反対」の立場であり、一致点での共同のとりくみが発展する条件が満ちてきています。全労連は、2002年度の春闘方針に、「雇用」「いのちと健康」「くらしと賃金」「平和」の4つの柱をかかげ、医療大改悪を阻止するたたかいを重視することを決めています。社保協を軸として、医療や福祉の充実をもとめる連帯と共同のとりくみを地域の中で発展させ、ともにたたかう陣地をひろげ固めることが、展望を切りひらく確かな道です。

(3)新しい平和・福祉の国づくりをめざして

 前総会では、これから先5年から10年の期間を、アメリカいいなりの軍事大国化と新自由主義にもとづく国づくりか、それとも国民一人ひとりのくらしやいのちを大切にする新しい平和・福祉の国づくりをめざす道かをめぐって、せめぎ合いの時代としました。そして、平和・基本的人権・民主主義の憲法を守り、民医連綱領の路線を堅持して民医連運動の新たな発展をめざすことを提起しました。

 「安心して住み続けられるまちづくり」や「非営利・協同組織とそのセクター」「私たちがめざす新しい平和・福祉の国づくり」など、他の団体や学者・研究者の協力を得ながら、ひきつづき理論的にも深める必要があります。診療報酬問題で、保団連など医団連として検討チームをつくって作業が始まっています。

 「健康日本21※」に対して、保団連・日生協医療部会・自治体問題研究所・自治労連と共同実行委員会をつくり、「私たちの見解」や「より良い『健康日本21』の策定と健康なまちづくりのための『私たちの提案』」を発表してきました。「健康日本21」が、医療費抑制のための計画であり、健康問題を生活習慣病の名のもとに自己責任に一面化しているなどの問題点を指摘し、住民と自治体が共同して健康づくりを進めるための提案をしました。総合研究所を今期中には正式発足すべく準備をすすめています。非営利・協同や医療・社会保障政策についても研究と交流をすすめていきます。


第3章 今後2年間の基本的立場と重点課題

 民医連は来年、創立50周年をむかえます。私たちは、無産者診療所の伝統をひきつぎ、無差別・平等の医療を追求しつづけてきました。民医連は、共同組織とともに、平和と人権と民主主義の日本社会を築き、医療や社会保障の公共性をまもる役割を発揮する必要があります。

 貧富の差が拡大し、お金がなければ医療が受けられない時代がおとずれています。5万人の職員と300万の共同組織が、地域のなかで「最後のよりどころ」としての役割を今こそ発揮すべきときです。

 今後2年間は、前総会が提起した、「人権と非営利をめざして」「より開かれた民医連」「社会的使命と主体性・民主性」「連帯と共同」の4つのキーワードを実践的に発展させていくべき段階です。第1に、人権をまもり共同の営みを発展させる立場で、日常の医療活動や介護・福祉の活動にとりくむことです。第2に、医療大改悪阻止のため、連帯と共同の輪をひろげることです。第3に、医療や社会保障をめぐる情勢の厳しさが一定期間つづくことをふまえ、民医連経営を守りぬき、たたかいの陣地をひろげ固めるとりくみを重視することです。

 民医連院所・施設だけの自己完結的な対応では、患者さんや地域住民の医療や福祉要求に応えることはできません。たとえば、都市部での小児救急医療体制は、小児科医の減少などによって困難になっています。「より開かれた民医連」の立場で、地域の公的施設や他の民間施設とも連携することが必要です。その中で、自らの院所・施設の役割を問い直す必要があります。その意味からも「院所・施設の医療・福祉宣言」によって、21世紀初頭の院所・施設の存在意義を明らかにし、患者さんや地域にむけて具体的にどんな姿勢と目標をもってとりくもうとしているかを示しつづけることが重要です。それは、職員の働きがいを示すものであり、民医連綱領とともに団結の要でもあります。

 以下、今後2年間の重点課題として、?人権をまもる医療活動と医療・経営構造の転換、?医師養成と確保、?たたかいと共同組織、?組織改革と団結について提起します。

第1節 人権をまもる医療活動と医療・経営構造の転換の課題

(1)人権をまもる医療・介護

 国民の医療を受ける権利が奪われ、医療大改悪のもとで医療機関は事業収益が減少する厳しい状況をむかえつつあります。一方、保健予防・医療・福祉への国民の要求が総合的に広がってきています。医学の進歩と医療や福祉をとりまく環境の変化のもとで、安全・安心・信頼の医療や介護、医療の質の向上、医療の公開をすすめなければなりません。そして診断治療のみに偏らない複合的な医療活動が重要になってきています。機能的に分断される高齢者の診療にあたっては特にこの視点が重要であり、高齢者医学医療の実践的な探求が課題です。また、医療・介護活動と経営を一体のものとしてとらえ、人権を守る非営利・協同の事業体としての民医連の立場を打ち出していくことが必要です。

 さらに、医療や福祉を受けられない人たちにどのような手をさしのべていくのか、共同組織とともに対応を重視します。「助け合い制度」の具体化も検討が必要です。

 人権をまもる課題では、「安全性」の課題の重要性が、民医連の実践的な到達点としてさまざまな教訓とともに全体の認識になってきましたが、まだ多くの改善が求められています。患者と共同の営みとしての、インフォームドコンセント、カルテ開示などもさらに前進させます。

 「人権を守る医療・介護」の今日的な内容として「生存権」「安全性」「患者の権利」を柱にとりくみます。特に、医療の質が求められる時代であることをしっかりと受けとめ、転換の課題と結びつけながら質の向上をめざしましょう。

(2)医療・経営構造の転換

 医療法や診療報酬の重なる改悪によって、在院日数の短縮が経営問題の重要課題となり、患者の要求や思いとのズレが生じがちです。一般病床から療養型病床への転換は、この問題への1つの対応策としてすでに多くの施設でとりくまれています。しかし、これだけで問題が解決するわけではなく、在宅介護事業や介護・福祉施設などへのとりくみがかつてなく重要性を増しています。

 医療制度や施設体系が大きく変化する中で、患者の要望どおりに病院・施設へ来院・入所することが困難になってきています。保健予防(健診)〜外来(慢患・救急・通所)〜入院(一般・回復期リハ・療養型)〜施設(老健・特養)〜在宅(訪問看護ステーション・ヘルパーステーション)など、歯科をふくめ多くの機能を総合的に展開していくことが民医連の使命です。これらの民医連施設やシステムを、医師はじめ多くの職種の協力で患者本位に機能させることが重要です。

 転換では、右肩上がりの収益予算の見直し、職員の再配置や業務の見直し、退職金制度の見直しをふくめた人件費問題など、大幅な変動をともないます。職員や共同組織から出される疑問や意見には、法人・院所管理部としてていねいに説明し、理解を深め、必要な決断を回避しないことが重要です。全日本民医連としても、県連や法人がかかえる問題点を整理し対策を強めます。

 転換の視点として、次の点をしっかり押さえながら計画の作成と具体化をはかることが必要です。

 第1に、転換は、国民や地域の要求にもとづいた時代の要請です。医療や社会保障への攻撃に対して、国民の権利と自らの存在を守るために立ち向かう「たたかいと対応」でもあります。

 第2に、転換は、画一的なものではなく、それぞれの県連や法人・院所の歴史と到達点、地域の状況とそこでの役割によって個別性があることをふまえることです。地域の医療機関や福祉施設などの諸団体と連携することを重視します。また、民医連運動の発展の中で生まれた克服すべき課題と結びつけながらすすめることです。

 第3に、転換は、県連・法人理事会や院所・施設の管理部の指導性が発揮されなければなりません。また、職員一人ひとりが民医連運動に確信をもち、成長する課題として位置づけることが必要です。

第2節 医師養成と確保

 民医連の医療・福祉活動が地域に根ざして魅力あるものになっているか、そのなかで医師をはじめ職員が生き生きと活動しているか、院所が地域のなかでどのような役割を果たしているか。これらのことを見直し、確認し、明快に発信していくことが、医学対活動と医師養成を前進させていく基本です。

 県連とともに、法人・院所の指導部集団と医局を先頭に大いに論議を深め、医師問題の打開めざして全力をあげる必要があります。

 新卒医師受け入れは、ひきつづき2年間で300人を目標としてすすめます。また、低学年からの医学生との結びつきは大学教育の変化のなかでいっそう重要になっています。入学前からのとりくみも重視します。民医連の医療と研修を前進させる立場から、既卒医師対策にとりくみます。

 医学対活動の強化のうえでは、医学生の声をとりいれ、医学生運動との協力共同をすすめながら、県連・法人・院所で指導部が責任を持つ医学対推進体制を確立することが大事です。また、共同組織でのとりくみを発展させます。

 医師養成を成功させ、退職を生まない魅力ある医師集団づくりのために、この課題に責任を持つ医師幹部および事務幹部を配置し、一人ひとりの医師が大切にされる医局運営や医師労働の改善をすすめます。県連・法人・院所の医療・福祉構想論議に、すべての医師が積極的に参加するような場を大事にします。

 2004年卒後研修必修化にむけ、地域に根ざした魅力ある民医連ならではの研修病院をつくりあげることは大変重要な課題です。研修病院で指導医体制を整えることをはじめ、大学・教育機関の力も借りて、地協ごとに臨床研修病院を中心にした研修体制の確立をすすめます。地協、県連、法人、院所がよく認識を一致させることが大切です。2003年には地協としての研修要項をまとめ、医学生にもアピールしていきます。なお、全日本民医連として臨床研修病院の課題について、必要な会議の開催を検討することとします。

第3節 たたかいと共同組織

 私たちは「大運動」をとおして、政府・与党がすすめる医療大改悪のねらいを、国民の中に明らかにし、患者・国民の人権・受療権を徹底して保障する立場から、医療の公共性をまもることの、重要性を訴えてたたかいをすすめます。

 診療報酬の引き下げは、医療機関の経営にとって打撃になるだけでなく、安全・安心の医療を求める患者・地域住民の願いに背を向けることにつながります。ひきつづき診療報酬についての理解を求める運動を強めます。また、特定療養費がいっそう拡大されるもとで、全日本民医連としての考え方と統一的な対応について整理します。

 あわせて、少子・高齢化がすすむ中でとりくまれている乳幼児医療費無料化をめざすとりくみ、国保証とりあげを許さないたたかいなどについては、運動の全国的交流と促進をはかる企画を準備します。

 当面する医療大改悪について、政府・与党の改革案は今後数年間をかけて実施に移すとしており、たたかいは長期にわたるものとなります。私たちは、要求を基礎に幅ひろい地域の人びとの連帯と共同の輪をいっそうひろげるたたかいをすすめます。地域社保協は、その中心としての役割をもっており、民医連としても地域社保協の建設を戦略的課題として重視します。中央社保協は当面500の地域社保協を目標にかかげており、民医連としても大いにとりくみを強めます。

 共同組織のさらなる前進は、私たちがめざす「安心して住み続けられるまち」「新しい平和と福祉の国」の実現にとって重要な課題です。共同組織の班や支部の活動は、草の根から医療・社会保障をはじめとして日常生活の各分野にわたる、共同と連帯のネットワークを構築し、その巨大なエネルギーを開花させる基本の課題です。

 共同組織の強化・発展の課題を県連・法人・院所の活動に正面から位置づけ、新たな発展をはかりましょう。

 2003年にかけて、一斉地方選挙をはじめ京都府知事選挙など重要な選挙が予定されています。地域からまちづくり運動と社会保障改善の要求をかかげて国政革新と住民が主人公の自治体の実現に向けたとりくみを強化します。

第4節 組織改革と団結

 民医連への期待の高まりの中で、全日本民医連理事会に求められていることは、激変する情勢や政策動向に機敏に対応できる全国組織としての政策力と、各県連、法人・院所が創意を発揮してとりくめるような全国的な経験や教訓を普及し、現場に即応した指導援助ができる執行機能をつくりあげることです。理事会運営のありかたを、時代の要請に対応し抜本的に強化・改革していくことが必要です。

 全日本民医連の理事会は、2カ月に1回の開催を原則とし、総会方針にもとづく重点方針の具体化や執行機能の検証などについて横断的、重点的な議論ができるように体制と運営を見直します。理事会機能の各部・委員会についても、分野別から機能別に再編し、2年間の目標、計画、行事予定にそった運営をめざします。したがって、これまでの部・委員会開催の頻度、全国集会の開催方法なども抜本的に見直しをはかります。

 地協の役割をよりいっそう重視します。全日本民医連理事と地協から選出される若干の運営委員で地協運営委員会を構成し、全日本民医連理事会のない月に定例の運営委員会を開催します。また、地協体制強化のため必要な予算措置を行います。県連機能の強化はひきつづき重要な課題です。県連機能強化なしには民医連運動の前進はできません。法人・院所が自覚的に県連への結集を強めていくことが必要です。

 運動の分野、医療や社会保障の分野での理論政策活動を重視します。「総合研究所(仮称)」を発足させ、学者・研究者などの力を借りて政策の積極的な提言や研究活動を行っていきます。

 国際部の活動を強化し、世界の医療団体との交流を通じて民医連の医療活動を紹介し、またさまざまな経験を学ぶとともに、特にアジアの人びととの継続的な相互交流をめざします。

 全日本民医連の施設割会費基準についての見直しを行います。次期の評議員会で検討し各県連等の意見を集約して決定していきます。

 全日本民医連は2003年6月7日に結成50周年をむかえます。50周年記念誌の編纂など記念の事業の準備をすすめます。


おわりに

 21世紀初頭、日本の社会と国民・地域の人びとにとって、民医連運動の値打ち、存在意義はいよいよその輝きを増しています。この輝きの源泉は何よりも、それぞれの地域で、一人ひとりの役職員が、患者・共同組織の人びとと力をあわせて奮闘する日常的な医療と福祉の実践にあります。その懸命な努力こそが、国民の健康づくり、くらしと福祉の向上に貢献するものです。そして、医療・介護の事業体であり、かつ運動組織である民医連の発展は、日本の医療のみならず日本社会の明るい将来展望につながっています。

 民医連職員としてのやりがい、働きがい……このことについて大いに語りあい、共有しつつ、今期の重要課題に挑戦しましょう。そしてより多くの人びとと手をとりあい、困難な時代と格闘し未来をきりひらこうではありませんか。

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