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全日本民医連 第36期 第2回評議員会決定

第36期 第2回評議員会決定 

2005年2月20日 全日本民医連第36期第2回評議員会

1章 第36期総会方針前半期の活動のまとめ
2章 私たちをめぐる情勢をどうみて、切り開くか
  (一)世界の動きと日本
  (二)医療社会保障をめぐる情勢
3章 この1年を踏まえつつ、第37回総会にむけ、どんな運動を創造するのか
  (一)憲法・平和と人権を守るたたかいに本格的にとりくもう
  (二)介護保険制度の後退許さず、地域、共同組織とともに「たたかいと対応」を強めよう
  (三)民医連の中小病院および診療所の展望と医師養成
  (四)民主的集団医療を実践的に積み重ね、到達点を引き上げよう
  (五)看護分野に光をあて、看護分野の前進をめざそう
  (六)職員が育つ場、民医連医療を実践する場として「職場づくり」を重視しよう


1章 第36期総会方針前半期の活動のまとめ

 第三六回総会以後の約一〇カ月間、私たちは、総会方針で確認したスローガンである「平和と憲法を守り抜くこと」「人権のアンテナの感度を高め、患者・利用者の二つの権利を守り、安全安心信頼の医療・福祉の実践をすすめること」「管理力量を高め、職員が生きがいと誇りを持てる組織に成長していくこと」の実現めざしてとりくんできました。総会以後、三つの県連(長野、石川、大分)で歯科診療所を建設し空白を克服したのをはじめ、加盟事業所は五五施設増え一六九七(二〇〇五年二月現在)となりました。
 医療安全、医療・介護の質向上にむけたとりくみでは、他の医療団体、患者団体と共同して「なくそう医療事故、たかめよう患者の権利6・5シンポ(二〇〇四年)」を開催し、第三者機関設置の運動を全国すべての医療機関、医療関係団体によびかけ大きな機運をつくりました。アスパラK誤注射事件や麻薬・向精神薬管理問題の教訓をふまえ一斉点検・学習運動をすすめました。医療整備チェックリストを作成し、自主点検と整備をよびかけました。人権を守る立場からフィブリノゲン薬害肝炎患者の救済めざし積極的対応を行いました。県連、法人・事業所で医療安全にとりくむ姿勢が高まり、リスクマネージャーの配置をはじめ組織的なとりくみがすすみました。福岡医療団では、患者権利オンブズマンの弁護士など外部委員も加わる事故調査委員会が二週間に一度、開催され、その内容が医師集団はじめ現場にフィードバックされるシステムができている、など先進的な経験が生まれています。初めて、顧問弁護士交流集会とリスクマネージャー交流集会を開催しました。リスクマネージャーの位置づけを高めていくことや日常的に弁護士など専門家の力を借りていくことの重要性が浮かび上がりました。この間、地協や県連単位でリスクマネージャー交流会や相互の安全診断がすすめられました。東京では診療所レベルでの安全診断にとりくんでいます。
 これらのとりくみを通じて、①日本における医療安全のとりくみの前進の上で全国組織として積極的なイニシアチブが発揮できたこと、②医療安全にとりくむ全日本民医連の原則、姿勢が浸透し、職員や共同組織の中に確信が生まれてきていることが前進面として上げられます。とりくみを強め、三月に開催する第二回医療安全交流集会に結実させましょう。
 病院機能評価受審への援助を行いました。認定は三三病院、留保および結果待ちが一八病院となっています(二〇〇五年一月現在)。ISOやプライバシーマーク取得にチャレンジする法人、事業所も増えています。医療倫理委員会の設置はこの一年間で、二〇・二%の法人・事業所から四八・三%に大きく増え、さらに多くの法人・事業所で準備・検討中です。四月に医療倫理委員会活動交流集会を開催し経験を交流します。大規模病院ではDPC(診断群分類別包括評価)対応を視野に入れ、診療情報管理士の配置など、医療の質を高める立場で、具体的とりくみを総合的にすすめましょう。
 歯科分野では、「歯科分野における三つの転換(受療権を守る医療構造へ、管理運営水準の引き上げ、高人件費構造の転換)」を提起し、討議と実践をよびかけました。歯科臨床研修取得にむけ準備をすすめるとともに、引き続き全県連に対応した歯科活動を追求しましょう。
 薬剤師の確保と養成の課題は今日的に重要となっています。求められる薬剤師像を鮮明にしながら経験交流をすすめましょう。
 介護分野での「たたかいと対応」をよびかけ、軽度要介護者の実態調査と調査結果を踏まえた行政交渉や厚労省交渉を行いました。地域のニーズを踏まえ各地で特別養護老人ホーム建設、老人住宅建設はじめ様ざまな介護事業がすすめられています。一〇月には介護事業責任者会議など重要な会議を開催し、意思統一をはかりました。
 原水爆禁止世界大会成功にむけて奮闘しました。全参加者の約二割が民医連および共同組織の仲間でした。原爆症集団訴訟勝利にむけた民医連医師団による統一意見書を作成し、裁判所に提出しました。熊本民医連では被爆者と対照群との比較聞き取り調査にとりくみ、地裁に証拠書類として提出を予定しています。IPPNW北京大会や第一六回反核医師・医学者のつどい(北海道)に、多くの民医連医師が参加しました。病院内医師も多く参加する九条の会結成など(愛知・協立総合病院など)、医師分野での平和運動へとつながっています。
 イラクで人質となった日本人救出に向け、北海道はじめ各地で機敏な運動が行われ、辺野古連帯支援行動はじめ多彩な平和活動を行いました。イラク人道支援募金は二〇〇〇万円を超え、日本国際ボランティアセンター(JVC)、「アラブの子どもとなかよくする会」などを通じて、現地に支援を続けています。
 また、熱中症調査、ホームレスへの支援活動、診療現場の具体的な事例から受療権を守る活動にとりくみ(『民医連新聞』「茨城・城南病院に出会えて良かった!」など)、粘り強い運動を通じて国保法四四条の適用拡大、介護保険料・利用料減免や在宅酸素療法への電気代助成実現の経験も生まれています。国保資格証明書・短期保険証発行の改善や障害者医療費助成打ち切り反対など、医療を受ける権利を守るたたかいをすすめました。長野民医連では事例に基づき県との懇談や交渉を重ねる中で、県が私たちと同じ立場で国に対して要望書を提出し改善を迫るとりくみにまで発展しています。混合診療解禁の動きに対し、日本医師会はじめ国民的な運動、世論の力で、全面解禁をストップさせました。
 医療界の各分野で活躍する二七氏がよびかけた「九条の会・医師・医学者の会(略称:医療者の会)」が結成されました。現職大学教官や病院長などが続ぞくと賛同を寄せています。二月一七日現在一〇〇〇人を超えました。大江健三郎氏ら九氏による「九条の会」のよびかけに応え、全国各地や各分野でとりくみが広がっています。全日本民医連は労働組合や革新懇などで構成する「共同センター」に参加し全国的な役割を担っています。民医連憲法手帳(七万部普及)・憲法パンフ(四・八万部普及)を使った学習会や事例を通じた憲法学習にとりくみました。京都からはじまった九日・二五日の「平和と人権デー」は各地でとりくまれつつあります。
 マッチングで二〇〇五年新卒医師受け入れが、二一九人の史上最高になりました。地域に密着した民医連の研修が評価されていることを確信とすべきです。また、新しい医師養成制度のもとでの研修成功へ努力が払われています。
 民医連五〇周年を記念し「平和と医療・福祉を学ぶアジアへの旅」を実施し、ベトナム、中国、韓国の医療機関や平和団体との交流をすすめました。この間、韓国源進総合センター・グリーン病院との交流を深めました。これらのツアーや辺野古連帯支援行動、平和大会や原水禁世界大会などのとりくみを通じて、とりわけ青年職員が戦争の悲惨さを実感し、平和を守る決意を高めています。今年度、引き続き韓国、中国への平和ツアー、スウェーデンの福祉の国づくりを探るツアー(非営利・協同研究所との共催予定)を企画します。
 退職金動向を踏まえ今後一五年以内に要支給額を一〇〇%引き当てることや税効果会計処理等を主な変更点として新統一会計基準を改定しました。二〇〇五年度からの実施となります。二〇〇三年度は医療改悪が経営を直撃する中でも差額徴収を行わないで、八〇%近い法人が黒字を生み出すなど奮闘しています。二〇〇四年度上半期のモニター法人(二六法人)の経営結果は、赤字法人が一五から一〇、黒字法人が一一から一六と、全体としては改善傾向にあります。しかし、九法人が経常利益を前年より一億円以上改善させた一方で、四法人が一億円以上悪化させています。受療権が侵害され、患者減がすすむ中、積極的な医療展開や徹底した地域活動、共同組織の強化を通じて件数増をはかっている経験、二四カ月連続一〇〇〇万円以上の出資金増で新病院建設を実現させた岩手などの経験も生まれています。福岡三法人の医療・経営構造転換、経営改善、管理運営面でのすすんだ経験・教訓が、全国にひろがり普及されました。とりわけ「福岡・健和会の民医連的再建」を実現するために県連機能を強化し、全国や地協の支援のもと、法人を越えた医師、事務はじめ幹部の人事交流・支援を大胆に行い、双方が学び成長したこと、全国や県連結集を強め、運動や教育を重視したことなどが教訓的です。この経験、教訓は、民医連医療や非営利・協同研究所機関誌『いのちとくらし』に掲載されています。
 二〇〇四年共同組織拡大強化月間では五万以上の共同組織の仲間が増え、三〇六万を超えました。『いつでも元気』読者は五万二〇〇〇部を超え最高の到達です。各県連で掲げた二〇〇四年度目標をやりきり、六月に岡山で開催する第八回全国共同組織活動交流集会を成功させましょう。
 総会方針で重視した管理運営の前進めざして院長会議を開催し、また院長メールを開始しました。三月には、テーマを鮮明にし、第二回病院長会議を開催します。一一月、第三回トップ幹部研修会を開催しました。引き続き「多職種型で管理部を教育する機会」として継続していきます。第七回看護介護活動研究交流集会は「輝け いのち!平和と人権を守り、地域に息づく看護・介護への挑戦を」をテーマに開催し、過去最高の演題で成功させました。
 災害の多かった二〇〇四年、新潟県中越大震災、兵庫豊岡水害、岡山高潮など各地で発生した災害に対し支援にとりくみ、民医連的な連帯の力を発揮しました。兵庫県豊岡水害にはのべ六〇〇人、九〇〇万円、新潟県中越大震災にはのべ一六〇〇人以上の人的支援と五五〇〇万円を超える義援金が寄せられました。現地調査を踏まえ国、県へ緊急要望書を提出し交渉を行いました。民医連の献身的な奮闘は被災者および被災地関係者から高い評価を得ています。参加した職員や共同組織を中心に確信が深まっています。
 今年は阪神淡路大震災丸一〇年となります。この間の経験と教訓をふまえ、全日本民医連として災害時対策方針を策定します。各事業所における防災計画策定をすすめましょう。日本生協連医療部会と協力し、APHCO(アジア太平洋地域保健協同組合協議会)などを通じて、スマトラ大地震・津波被災地への支援にとりくみます。
 水俣病関西訴訟勝利を踏まえ、潜在的な患者の掘り起こし運動を実施します。また、東京、川崎、愛知、大阪、尼崎、倉敷地域で大気汚染公害患者の療養生活実態調査を共同で行います。当該県連、地協中心に成功させましょう。
 九月には第七回学術・運動交流集会を神戸で開催します。総会方針を全面実践する立場で日常の人権を守る多様で創造的なとりくみを持ち寄り、交流し合いましょう。また、九月二五〜二七日、北海道・洞爺湖で第三一回全国青年ジャンボリーが開催されます。ジャンボリーは民医連に働く青年が一同に会し、「平和・民医連・共同組織」をキーワードに集い、交流し、発進する場です。積極的に各地の青年のとりくみを援助し、大きく成功させましょう。民医連に働く職員の健康管理は今日いっそう重要です。全日本民医連が提起した「健康で働きつづけられるために(案)」にもとづき各県連、事業所で具体的にとりくみ、前進をはかりましょう。
 総じて、総会以後の一〇カ月間、私たちは民医連綱領、医療・福祉宣言の立場を堅持し、第三六回総会方針の実践めざして奮闘してきました。また、災害支援などの課題にも果敢にとりくみ、少なくない前進を生み出してきました。

 同時に、第三六回総会方針に照らして見た場合、私たちがつくりあげてきた到達は、いまだ半ばです。小泉政権による国民生活犠牲の施策によって、国民生活の困難は増しています。私たちの中でも新たな経営困難法人が発生しています。また、教訓が伝わりきらず同様の医療事故が発生しています。
 激動の時代には、我流の管理運営では前進が困難なばかりか、組織に大きな支障を来します。様ざまな経験や教訓から学び、方針に団結し、方針を創造的に具体化する姿勢がとりわけトップ幹部や各級管理者に求められています。院長機能強化とともに、事務長、総師長などスタッフ形成と集団化がいっそう重要です。幹部の自覚的な県連結集なくして県連単位での民医連運動は前進できません。
 医療・介護事業の法的整備や個人情報保護法への積極的対応の課題も待ったなしの状況です。四月からの施行に当たり、患者さんの人権を守るという民医連の基本的立場を堅持し、着実に対応をすすめ、萎縮しないことが重要です。医学生への働きかけでは低学年、中学年への働きかけ、奨学生集団づくりが引き続き重要です。総会で確認した「今後一〇年間で四〇〇万共同組織・一〇万『いつでも元気』」「あらゆる活動を共同組織とともに」の目標からすれば、到達は不十分です。
 今日の情勢は私たちの活動の一層の前進を求めています。
 第三六回総会決定の全面的な実践の上で、とりわけ重視すべき点について、第三章で提起します。


2章 私たちをめぐる情勢をどうみて、切り開くか

(一)世界の動きと日本

 今、アメリカと日本の動きを見ていると、一国覇権主義を唱え、弱肉強食の論理を振りまくブッシュ政権の力の政治が席巻(せっけん)しているように見えます。小泉政権はこれに無条件で追随し、自衛隊の派兵延長を決め、アメリカとの集団的自衛権の行使を前提とした新防衛大綱を発表しています。一一月に自民党が発表した憲法「改正」草案大綱(たたき台)は、天皇の国家元首化、九条を否定し軍隊の創設、有事のもとでの基本的人権の制限などを掲げ、日本の国を根本的に転換しようとするものです。この動きだけを見ていると、なかなか展望ある二一世紀を描くことが難しい状況にあります。
 しかし、このような力の政治の潮流を世界史の主流とみなすことはできません。
 国連加盟国一九一カ国中、イラクへ軍隊を派兵したのはわずか三七カ国でしたが、そのうち撤退もしくは撤退を表明している国がすでに一六にのぼっています。昨年秋に開催された欧州社会フォーラムにはヨーロッパおよびアラブ諸国から六〇カ国二万人が集まり、戦争政策を拒否し、平和と民主主義、人権保障を広げることを確認しました。こうした草の根からの運動が、欧州では「イラク派兵反対のたたかいは史上最大の社会運動」となり、スペインではアメリカを支持する政権を打ち破り、軍隊を撤退させる力となっています。ブラジル、ベネズエラなど南米の少なくない国ぐにで国民的立場に立つ政権が生まれています。国家(民族)主権、基本的人権尊重、国連憲章尊重など一〇の原則を確認した五〇年前のバンドン会議の歴史を発展させてアジア政党国際会議が開かれ、平和と協調を基調とする新しい動きが広がっています。二〇〇一年からはじまり、今年ブラジルで開催された第五回世界社会フォーラムには世界中から過去最高の一五万人以上が集いました。社会フォーラムの共通のスローガンが「もう一つの世界は可能だ」です。それは力の政治や「弱肉強食の社会」ではなく、「戦争に反対し」「連帯し、助け合う(共同する)人間中心の社会」をつくりあげることを目標にしています。
 これらの動きに対し、アメリカは国連決議を無視してイラクヘの侵略戦争を強行し、今なおファルージャはじめ全土で殺りくを繰り返しています。何の罪もないイラク国民一〇万人もの尊い命が奪われています。核拡散防止条約(NPT)再検討会議に消極的態度を示し、地球温暖化防止のために世界各国が集って二酸化炭素の削減目標を決めた京都議定書から離脱したのもブッシュ政権です。この路線は国内でも国外でもますます孤立と対立を強めています。湾岸戦争から続く軍事費の拡大で、アメリカは世界最高の医療水準を持ちながら、医療が市場原理に委ねられているために四五〇〇万人が無保険という貧富の格差の激しい国となっています。イギリスでは八〇年代のサッチャー政権以降、医療・福祉予算をどんどん削った結果、医療の荒廃は限度に達し、イギリス政府はついに、今後五年間で国民医療費を一・五倍に増額し強化に努める、と発表せざるをえなくなっています。
 一方、北欧の福祉国家といわれるスウェーデンでは教育、医療、福祉、環境、国民参加を国づくりの基本にすえてきました。GDP(国内総生産)比の社会保障への支出はスウェーデン四五・九%に対し、日本は一七・四%(一九九六年度)です。日本ではどんどん下がっている出生率もスウェーデンは増加しています。老人の自殺率は、日本はスウェーデンの二倍です。教育は大学授業料を含め原則生涯無料です。現役引退後も生活に必要な年金や社会保障が保証され、情報公開、国民参加もすすんでいます。スウェーデン型の社会保障を貫く考え方は、すべての人が人生のライフステージで遭遇する出産、教育、労働、家庭、病気・障害、退職などに対し、等しく国が保障するというものです。自己責任ではなく、個人の生きる力を援助するのが国の役割という考え方です。なぜ、このような福祉国家ができたのでしょうか。
 国政選挙の投票率が常に八〇%を超え、労働組合組織率九〇%に見られる民主主義の力が発揮され、労働者を中心に中産階級を含めた政権を実現させました。非営利・協同型の組織(アソシェーション)が、国内に数十万あると言われています。例えば保育士集団と父母会による保育所運営などです。これらがスウェーデン社会の担い手として大きな役割を果たしています。およそ二〇〇年近く戦争をせず、軍事同盟に参加してこなかった結果です。他国を攻撃しなかったことや様ざまな国際援助活動によって、他国からも大きな信頼を得ています。
 この経験は今後の日本のすすむべき方向を示唆しています。日本でも、ダム建設など無駄な公共事業を削って、教育・福祉予算を増額させている長野県はじめ、住民本位の自治体にその姿を見ることができます。平和憲法のもと六〇年間、戦争をしなかったことが、今日の日本をつくりあげたことからも明らかです。しかし今、日本はこうした経験から学ぶのではなく、憲法を改悪し「戦争をする国」へ、そして医療・福祉・教育分野における公的責任を放棄する方向へと大きく舵を切ろうとしています。二一世紀を「平和・いのち・人権」が輝く日本とするために、国民の要求と運動の結集が強く望まれています。

(二)医療社会保障をめぐる情勢

 小泉政権がすすめている政策は、①アメリカの世界戦略に貢献する軍事・大企業優先の国づくり、②医療、社会保障、教育など国民生活のあらゆる分野へ犠牲を転嫁すること、株式会社による医療分野への参入促進、③さらに三位一体改革、地方自治体への負担の転嫁・切り捨て、消費税引き上げを行おうとしていること、などを特徴としています。
 国民に新たに二兆円の負担を強いる二〇〇五年予算政府原案はこのことを如実に示しています。軍事費は四兆八五六三億円でアメリカについで世界第二位(『世界』〇四年八月)と突出しています。この中には、先制攻撃を前提とするミサイル防衛予算や辺野古沖への米軍普天間基地移転に伴う整備費用や米軍駐留経費への「思いやり予算」も含まれています。海外派兵のための装備も目白押しです。
 一方、定率減税の半減や年金改悪による保険料引き上げに加え、介護保険の施設利用者からの居住費徴収(二〇〇五年一〇月から)、生活保護の老齢加算・母子加算の削減、国保への国庫補助の削減(五四九四億円)などが含まれます。また教育では義務教育への国庫負担削減、国立大学法人授業料の大幅引き上げ(一万五〇〇〇円)が盛り込まれました。さらに中小企業対策費を削減する一方で、関西空港二期工事や諫早湾干拓工事など無駄な公共事業には引き続き予算を計上しています。ナノテクノロジー、ヒトゲノム解析など国際競争力に勝つことを主目的に科学技術開発費予算が大幅に増加していますが、人間の幸せに貢献する視点が乏しいとの指摘もあり、情報管理もプライバシーと離れてすすむ危険をはらんでいます。
 一九九八年以来、勤労者世帯の所得は年平均四兆円のマイナスであり、自殺者も六年連続で三万人を超えています。上位二五%の世帯が国民所得の七五%を占有する一方、貯蓄なし世帯が二〇%一〇〇〇万世帯に、生活保護世帯が一〇〇万世帯となるなど、貧富の格差が広がっています。、この予算案はこうした国民の苦難に追い討ちをかけるものです。出生率の低下、児童虐待や児童をめぐる犯罪など、子どもをめぐる状況も深刻化し、未来に対し大きな影を落としています。医療、福祉の分野では介護保険の改悪(二〇〇五年)、医療制度・診療報酬の改悪(二〇〇六年)に大きく足を踏み出すものであり、また二〇〇七年消費税大増税が計画されており、断じて容認できません。あいつぐ医療改悪や社会保障改悪の中で自己負担が大幅に増えており受診率の低下となって表れていますが、このことを逆手にとって、今、保険会社から、「生活習慣病保障つき終身医療保険」などがあいつぎ発売され、生保会社が最も力を入れている分野です。ここにこそ財界から強く迫られている混合診療全面解禁要求の経済的理由があります。施設入所者への居住費(ホテルコスト)負担が迫られていますが、国民年金を四〇年間掛け続けてきた人の年金は月額六万六〇〇〇円に過ぎません。どうして一〇万円以上の負担ができるのでしょうか。このことは憲法二五条に定める国民の生存権を侵害するものです。お金のあるなしで命を差別する時代にしてはなりません。東京都では、医療機関の間の救急車依頼に対して、民間の会社を使わせるという事態もすすんでいます。
 私たちは、「国の財政支出の削減のみを最優先した介護保険見直しを許さない」「国民皆保険解体につながる混合診療の全面解禁も特定療養費の制約なき拡大にも反対です(全日本民医連理事会声明参照)」「精神保健福祉法第三二条の改悪反対」を表明しました。これから一年、「許すな」混合診療拡大・介護保険・障害者医療福祉制度改悪、「充実せよ」医療・社会保障の運動が重要です。診療報酬・介護報酬が引き下げられようとする情勢のもとで、医療・福祉分野への市場原理に基づく政策を打ち破り、拡充を迫ることなしに医療・福祉を受ける権利も経営も、職員の生活も守ることはできません。「診療報酬・介護報酬引き上げよ」の運動を強めます。憲法二五条にかかげる「生存権」保障の実現めざし、共同組織とともに、多くの国民に積極的に働きかけ、奮闘する決意です。
 二〇〇四年に多発した災害では、高齢者や障害者など社会的に弱い立場の人の命が奪われました。街のすみずみに福祉施設が存在することは、災害に強い街づくりであり、安心して住み続けられるまちづくりにつながります。
 民医連が掲げ続けてきた「いつでも・どこでも・だれでも、安心できるよい医療・福祉を」のスローガンは今や、日本医師会、看護協会はじめ医療関係団体、国民の共通の主張です。共同を広げ大きな流れをつくりだす転機の年にしていきましょう。


3章 この1年を踏まえつつ、第37回総会にむけ、どんな運動を創造するのか

(一)憲法・平和と人権を守るたたかいに本格的にとりくもう

 日米支配層の強い意向を受けて、自民党・公明党政権は二〇〇七年度までに憲法九条改憲を中心に、日本国憲法の改悪を行おうとしています。日の丸・君が代の強制に反対した教師が処罰され、戦争賛美の「新しい歴史教科書をつくる会」の代表が教育委員になるなど動きは急です。教育基本法の改悪や国民投票法の準備がされています。平和憲法は日本が世界に誇る「宝」です。その憲法が今、かつてない危機的な状況に直面しています。憲法を否定することは、基本的人権を否定することです。九条と二五条を守るたたかいは一体のものであり、未来への最大の財産であり、他の課題とは同列におくことのできない最重要課題です。

.民医連綱領と医療・福祉宣言は平和憲法を土台にしています。すべての職員が憲法(九条、二五条)を守ることを自分のものとし、行動することができる職員として役割を果たしましょう。「学習が力」です。症例・事例から憲法を学び体感するなど創意工夫で大きく前進させましょう。
 生命と健康を守ることを社会的使命とする医師をはじめ医療人が、平和と人権を守る運動の先頭に立つことは、日本の民主的な医療人の立場をアジアと世界に発信することです。「九条の会・医師・医学者の会」の活動はじめ憲法、平和を守るとりくみで民医連の医師集団の役割を発揮しましょう。
 憲法を守る課題を三〇六万共同組織に正面から提起し、力強くすすめましょう。
 平和アクションプラン60(八面参照)、辺野古連帯行動やNPT再検討会議への参加など全日本民医連方針の具体化をすすめましょう。そしてこれらのとりくみを意識的な教育の機会として位置づけ、とりわけ青年職員が大きく成長できるよう配慮が必要です。
 憲法を守り抜く上で、県連・法人・事業所のトップ幹部のたたかいへの構えが決定的です。すべての共同組織、職場では全職場レベルまで闘争体制を確立していきましょう。共同組織や労働組合とともに地域で護憲勢力の総結集めざして大きな運動をすすめましょう。「学び、行動し、また学ぶ」を合言葉に立ち上がりましょう。

.もっとも困難な人びとの「最後のよりどころ」となることは民医連の決意です。受療権を奪われた人びとへの共感を高め、医療、福祉を受ける権利、人間らしく生活する権利を、日常の医療や福祉の現場から積み上げ、守るとりくみにこだわり続けましょう。そのためにも、総会方針で強調された人権のアンテナの感度を高めることにいっそう磨きをかけましょう。

.医師分野や地域で人権を守り、護憲の多数派となるために、これまで経験したことのない幅広い共同を本気ですすめていく必要があります。急速にすすむ右傾化や国民生活切り捨ての施策に対し「このままではいけない」と感じ、行動を始めている人びとが幅広く存在します。そうした人たちとの共同を広げ、「開かれた民医連」として奮闘しましょう。

(二)介護保険制度の後退許さず、地域、共同組織とともに「たたかいと対応」を強めよう

 二〇〇五年通常国会に介護保険見直し法案が上程されました。今回の見直しは、財政の面から「制度の持続可能性」の確保を目的とした保険給付の抑制、利用者・国民の負担増の方向です。軽度者の介護サービスの制限・後退、施設等の居住費・食費の保険はずし、介護保険料の引き上げなど一連の見直しの実施は、現在の介護保険の矛盾を解決するどころか、利用者・高齢者にさらなる困難をもたらすものです。全日本民医連の調査(二〇〇四年九〜一〇月実施、六〇六三件)では、現在の介護サービスが制限された場合、今後の生活に「懸念がある」とケアマネジャーが回答した利用者は約九五%にのぼっています。その内容として、「QOL(生活の質)の低下」が指摘される人が六割以上で、「ADLの低下」(五四%)、「病状の悪化」(四一%)、「介護者の負担増」(四〇%)が続き、「在宅生活の維持が困難」との回答は三分の一にのぼっています。今調査では、「本人非課税」が八五%、「独居」が四割、「老老世帯」が二割を占め、何らかの痴呆症状がある利用者は、要支援で四割、要介護1で六割となっています。本来これらの層は介護保険サービスの利用がもっとも必要であるにもかかわらず、利用が抑制され、現状では様ざまな困難をかかえており、見直しによって在宅での生活にさらなる困難が加わることは明らかです。厚労省の「援助が自立を阻害している」という説明は、ヘルパーの生活援助など介護の専門性を否定する乱暴な議論です。
 厚労省は、施設の居住費・食費の保険はずしについて、二〇〇五年一〇月から実施する方向を固めており、多床室でも三万円以上の負担増になるとしています。民医連の特養(老健)で現在食費の減免を受けている入所者は七一・三%(三七・七%)、利用料の減免を受けている入所者は二〇・三%(四・三%)であり(全日本民医連調査)、見直しが実施されれば費用負担の困難から多くの入所者が入所を続けられなくなります。低所得者の施設からの排除をもたらすことは明白です。さらに、食費の保険外しについては、通所系サービスや短期入所に加えて医療保険の療養型施設にも対象を拡大することが検討されています。全日本民医連が行った調査は全国レベルでの実態を反映した説得力あるものです。介護白書を作成し、大量普及できるように準備します。大いに広げ、たたかいを組織しましょう。
 今回の見直しには、介護予防や地域密着型サービスなど、今後の高齢化に向けた新たな課題も盛り込まれています。一面では、高齢者・国民の要求が反映していると評価できますが、財政事情優先のもとでは介護予防が軽度者の介護給付制限と抱き合わせで導入されるなど、ゆがんだ形で推進されていく危険性があります。また、老人保健事業や障害者支援費制度の介護保険への統合・吸収が検討されており、介護保険が「牽引者」となって社会保障全体の「構造改革」(一体的見直し)をいっそう推進するものです。
 介護保険見直しに対するとりくみでは「たたかいと対応」の視点をつらぬくことが大切です。どのような運動を展開し、事業対応の準備をしていくのか、この一年間は民医連の介護福祉分野の活動にとって決定的に重要な時期です。

.利用者、高齢者の生活実態や要求に基づき、一人ひとりがその人らしく、住みなれた地域で最後まで安心して生活していくことを、真にささえる制度への見直しを求めます。民医連は、六月までに一万回のシンポ・学習会・小集会・班会などの開催と三〇〇万筆の署名運動を展開します。財政事情「先にありき」ではなく、誰にとっての何のための制度見直しなのか、あらためて問われなければなりません。給付抑制・負担増の方向ではなく、現在の介護保険の様ざまな矛盾や問題点に対する真撃な検証とその大幅な改善をはかることにこそ、今回の見直しの焦点があてられなければなりません。実態調査にもとづき、共同組織や地域社保協、他の介護事業所とも協力しながら、利用者・高齢者の実態や今回の見直しの問題点を急速に知らせていきましょう。介護問題の学習を深めながら、他の事業所、関係団体との懇談や申し入れなど、たたかいの新たな共同を追求しましょう。自治体への働きかけも重要です。今回の見直しに対する自治体としての態度表明を求め、国に意見をあげるよう要請しましょう。

二.介護・福祉事業責任者会議(〇四年一一月)の「問題提起」に基づき、制度見直しを視野に入れた今後の事業展開の具体化をはかりましょう。利用者・高齢者の生存権を断固守りぬく「たたかい」の視点が重要です。制度見直しを視野に入れ、情報の収集、地域の実態や要求の把握、現在の事業の評価、今後の展開の可能性・選択肢の検討など、必要な検討・準備を法人としてすすめましょう。質の向上と事業整備は引き続き重要です。また、引き続きケアマネジャーの資格取得を重視し、医療・介護の総合的展開を保障するとりくみを重視しましょう。二四時間切れ目のない安全・安心の医療と福祉の地域ネットワークづくり、高齢者、国民が願う真の健康増進事業としての介護予防事業や、小規模・多機能サービスの展開、高齢者の生活実態に対応した様ざまな支援・助け合い活動など共同組織と一体となって創意あるとりくみをすすめます。介護事業所を民医連運動の拠点と位置づけ、空白地への展開を積極的にすすめることも重要です。介護保険事業を情勢に見合って大きく展開していく上で、医科法人のみならず、薬局法人や社会福祉法人、あるいは新しい法人の設立を含めた積極的な対応が重要で、地域での分担や連携のあり方等について組織間でしっかりとした議論と調整を行いましょう。

三.これらをすすめる上で、事業全般を統括する機構や体制(介護事業部長の配置)が必要です。自治体の意向や計画を把握し、地域要求に基づく具体的な提案や法人としての今後の計画や実績を示していくなど、自治体との関係づくりもすすめましょう。

(三)民医連の中小病院および診療所の展望と医師養成

 民医連の医療活動の基本は、地域の第一線医療機関として地域の医療要求と正面から向き合うことです。技術建設の到達度や医療・診療報酬制度への対応として、個々の病院の機能を急性期や療養型の入院に特化したり、特定の診療科に特化することはあり得ますが、その場合も当然のこととして、長期の入院需要や外来要求にどう対応するのかについても方針が示されなければなりません。また、民医連の医師養成と技術建設は、地域の切実な要求に応え得る医療水準の獲得を目標にすすめられてきたはずです。しかし、現実には、診療所や中小病院を担う医師の育成はすすまず、医師養成機関であるセンター病院の医療機能を保持するために、逆に診療所や中小病院の医師を一時期引き上げるざるをえない事態すら生まれています。その結果、少なくない診療所では、担当医師の高齢化やパート医化によって、第一線医療機関としての機能を後退させ他の診療所に「せり負ける」状況すら生まれています。

(1)民医連中小規模病院および診療所の展望を切り開こう
 あいつぐ医療制度改悪のなかで多くの医療機関、中でも中小病院が閉塞感を抱いています。このことは民医連の病院においても例外ではありません。民医連の病院は現在一五一カ所ですが、圧倒的には病床規模一〇〇〜二〇〇床が多く、日本の医療機関の中では中小病院に属します(二〇〇床以上三〇・七%、一九九床以下六九・三%=一〇五病院)。これらの病院は地域医療で重要な役割を担い、同時に医師養成の役割を担っています。今の医療政策では中小病院は「淘汰(とうた)」の対象となっており、おかれている現実を直視したとりくみが求められています。
 一九七〇年代から八〇年代半ばまでの、診療報酬の引き上げや増床によって収益を増やすことが可能だった時代は終焉しています。地域での類型化と役割分担がすすんだ一九九〇年代から二〇〇〇年代を通じては、共同組織強化、健診活動や介護事業の展開、病棟構造の転換、外来外部化など医療経営構造の転換と支出対策にとりくみ、経営を守る活動をすすめてきました。そしてこれまでは、民医連では、診療所が経営的にも、病院をささえていました。また、中小病院での研修の優位性が強調されてきました。
 しかし、
・全国的には診療所の開設が増えているにもかかわらず、民医連では増えない。診療所で勤務する医師も増えない
・中小病院も診療所も、経営的に厳しくなり、患者数、件数あるいは手術とも減少している
・一〇〇から二〇〇床規模の病院における医療の質や技術目標が明確にしきれていない
・その規模で、医師の退職(技術的な展望も含めて)がある
・一〇〇〜二〇〇床規模の病院での研修の厳しさ、マッチングが少ない
・医療機関の機能別再編がされている中で、地域の医療要求、県連としての医療水準の維持などで、思い切った転換ができない、
などの課題が浮かび上がってきています。
 今、問われているのは、こうした現状に立って、二一世紀初頭の民医連の中小病院と診療所の今後の展望をいかに能動的かつ抜本的に切り開いていくのかです。従来の延長線上で、診療報酬対応の積み上げや支出対策だけでは限界です。共同組織や地域の人びとの医療や健康要求に正面からこたえ、「健康21」や新たな介護保険がめざす方向にも対応できるものでなければなりません。
 全日本民医連理事会はプロジェクトチームをつくり作業をすすめるとともに、第一回病院長会議や理事会で集中論義を行うなど検討してきました。第三七回総会にむけてあと一年、討議と実践を通じて民医連の中小病院と診療所の展望と発展方向を探っていきましょう。検討する上で現時点での全日本民医連理事会の問題意識を表明し、議論をよびかけます。

.拠点となる中小病院の場合、大規模病院以上に地域と患者の状況、要求を見極め、医療・経営・医師問題(医師養成、医療技術等)を一体のものとして捉えることが重要です。中小病院では、院長や管理部だけでなく、法人、県連が主体性を発揮し、病院のビジョンと戦略を明確にする決意と努力が求められています。
 中小病院の場合、今までの科別・臓器別中心の視点だけでなく、地域の医療・保健・福祉(プライマリー・ヘルス・ケア)をささえる技術を重視し、「保健・医療・福祉の複合体」の要として総合力を発揮することが重要です。このことは各分野の医療技術や専門性を否定するものではなく、ニーズに基づいて蓄積してきた力量を統合し再編成することによってこそ可能となると考えます。なお経営問題を抜きにした医療構想はありえません。絶えず総合化させながら構想をつくりあげましょう。東京など大都市部では土地対策を含めリニューアルが大変困難ですが、地域、職員の合意を大切に、県連的連携を強め、医療・経営構想をつくりあげましょう。
 また、中小病院こそ徹底して連携の視点に立つことが必要です。①民医連の事業所間(診療所や介護福祉施設、医科と歯科を含めて)の連携を重視すること、②法人や県連の枠を越えた連携(外科、整形外科などの集団形成や統一、法人合同や共同事業)を模索すること、③民医連内の連携にとどまらず、中小病院は「地域の共有財産」の立場で地域の医療福祉システムの中で、共同を広げ積極的な役割を担うこと、などが重要です。
.保健予防活動の位置づけを抜本的に強化し、予防という視点から外来、入院機能を見直し発展させることが重要です。医療費負担増の中で国民の受診率は低下していますが、「健康で暮らしたい」ということは人間の本源的要求です。このことは街かど健康チェックが全国で大盛況だったり、健康番組やサプリメントに国民の関心が高いことなどをみても明らかです。厚生労働省もゼロ次、一次予防と介護予防に本腰を入れる方向をだしています。ヘルスコープおおさかでは、組合員自身の大きな運動として毎年大腸ガンチェック(一万人)や前立腺チェックにとりくみ、病院の医療活動の前進につなぐ先進的な経験が生まれています。
 まず健康チェックだけでなく健診活動も共同組織構成員が主人公になれるようなとりくみをすすめましょう。健診そのものを組合員主体ですすめている医療生協があります。大いに学んで、すべての共同組織に広めましょう。そして、保健予防活動の受け皿として精密検査や生活習慣を変えられる外来活動が必要です。禁煙、肥満外来や女性外来など、ニーズに基づいた特色ある外来等には患者が集中しています。睡眠時無呼吸精査や動脈硬化の評価入院など、新しい入院メニューづくりにもとりくみましょう。医療費の自己負担拡大は、患者の側から医療機関が選ばれることを加速します。健康要求にマッチした活動の推進、介護福祉分野との切れ目ない連携をいっそう強めましょう。
.今、日本の診療所は増加傾向にあり、世代交代の中で四〇歳前後の若い医師が開業しています。共同して行うグループ診療、病児保育やデイケアを併設するなど、積極的な展開が見られます。民医連の診療所は地域に密着し、地域住民と深く関わり、保健・医療・介護・まちづくりの拠点の役割を担ってきました。五〇〇カ所の診療所建設は実現しました(五一一カ所)が、介護保険時代に入り診療所の役割は今後ますます重要になっています。いつの時代にも診療所は民医連の原点として輝くことで、民医連運動の推進役を果たしてきました。しかし現在診療所を担っている医師は民医連全医師の一六%にすぎず、後継者問題も多くの場合深刻です。「保健・医療・介護の複合体」として職員や共同組織の総合力を発揮し、拠点病院との連携をいっそう強めるとともに、県連・法人・事業所で再度診療所の位置づけを明確にする必要があります。診療所を担う医師を大量に養成していかねばなりません。診療所の担い手として、青年・中堅・ベテラン・幹部など各世代の医師が役割分担し合い、医師団の力を結集して、民医連の事業所を守り発展させ、地域の期待に応えることが重要です。一〇月に開催する診療所交流集会を、新たな飛躍の機会として、準備をすすめます。
 なお、大規模病院の問題が解決したわけではありません。引き続き困難が伴う一方、この間、三〇〇床以上の大規模病院の問題はかなり明確になりつつあります。地域の急性期医療を担う中核病院として、近隣医療機関、福祉施設との交流や連携、救急医療の強化、さらに急性期加算などで経営的にも前進しているところも生まれています。臨床研修や技術蓄積の県連センター病院として懸命な努力が行われています。しかし、指導医や後継者養成、経営改善、管理運営など克服すべき課題も少なくありません。全日本民医連として大規模病院の交流をすすめ、抱えている課題の解決にむけてとりくみを強めます。

(2)あらたな医師養成制度のもと民医連の医師養成を前進させるために
 二〇〇四年度から新しい医師養成制度が始まり、一六四人の新卒医師が民医連で研修をスタートさせました。二〇〇五年度予定者と合わせると総会方針目標の三〇〇人を大きく上回る初期研修医が、民医連の臨床研修病院で研修を行うことになります。また二〇〇六年には、二年間の研修を終了し、それに続く次の後期研修(三〜五年)を開始します。あらためて、「民医連が育てようとしている医師はどんな医師なのか」を鮮明にしていく時期です。
 民医連の病院の三分の一に当たる五〇病院が管理型臨床研修病院となりました。わたしたちは、地域の第一線の医療を担い、患者・共同組織の仲間と共に、「いのちの平等」の立場から「共同のいとなみ」の医療をすすめている集団です。そして急速にすすむ少子高齢化に対応し、医療のみならず、保健予防活動から介護福祉分野まで総合的に展開しています。センター病院を中心に急性期の医療分野を担い、地域に密着した中小病院を多数もち、さらには五〇〇カ所を超える診療所や様ざまな介護施設、在宅事業所などを総合的に展開していることが、日赤や済生会などと比べ、民医連の大きな特徴です。そして綱領や医療・福祉宣言を実践する職員集団と三〇五万に達した共同組織の存在があります。このフィールドと内在する力を医師養成に最大限生かし、具体的なカリキュラムに組み込むことが重要です。
 都内新入医学生の約五〇%が、めざす医師像として「地域医療を担う医師」をあげるなど、意識も変化してきています。地域住民からは質の高い第一線医療の強化が期待されています。民医連で研修を開始したすべての医師に対し、民医連の医師養成は「プライマリ・ヘルス・ケアを担うプロフェッショナルの養成」「第一線の診療所を担う医師の養成」を行うことを明確に打ち出し、「地域とともに歩む医師および医師集団」に「あなたの力を求めています」というメッセージを県連および臨床研修病院の責任で提起すべきと考えます。また、地域医療の担い手といっても、その医師像は様ざまです。センター病院を中心に専門分野の担い手を計画的に養成していくことも極めて重要です。研修医一人ひとりの多様性を組織として大切にしつつ、医師として自ら成長することを援助しましょう。同時に、重要なのは医学生時代の六年間、実習や奨学生活動を通じて、医師像を深め、民医連への理解と共感を持つ医学生を積極的に受け入れることです。総会方針でも強調した全学年、全学生への働きかけを一層強め、奨学生の確保と集団化をすすめましょう。
 近く「民医連の後期研修はこう考えます」の方針を提起します。初期二年間の初期研修の到達を適切に評価し、幅広い疾患・病態に対応できる診療能力、人権を守り、患者を中心に他職種と対等平等の医療をすすめる視点の獲得、幅広い問題解決能力を高め地域医療の担い手として育つ道筋の研修プログラムを作り上げていきましょう。質の高い家庭医、総合内科医、一般外科医づくりの場として中小病院、診療所を位置づけ、魅力ある民医連の医師像に接近しましょう。民医連のどの県連、どの病院に入職しようとも、所属県連に必要な専門分野の技術の維持や獲得、学会活動は大変重要な課題です。センター病院との連携や必要に応じて民医連外の教育機関、医療機関とのネットワークを意識したプログラムも検討しましょう。全国の民医連医療機関の各学会の認定施設取得状況を把握し、県連、事業所や各医師に情報を提供し、専門医、認定医の取得条件を広げます。特に内科学会認定医、専門医取得に必要な援助を県連や地協中心に、場合によっては全国対応を行います。医師養成や医師としての成長をライフサイクルの中で位置づけ、確認し合うしくみをつくることが重要です。センター病院で専門分野を担ったあと、診療所や高齢者医療を担うことも、その逆のスタイルも検討されるべきではないでしょうか。そのためにも総会方針で提起した育成面接など医師との日常的なコミュニケーションづくりが大切です。
 合わせて、医師が生きいきと成長できる場の保障が重要です。個々の医師の自覚の問題に留めてしまったり、現場で起きている問題を放置することは管理責任の放棄です。管理部の責任で、必要な援助や率直な批判ができる民主的な環境づくりをすすめましょう。技術習得や専門性の獲得と同等レベルで、民主的集団医療の重要性が体得できるよう意識的なとりくみが重要です。医師が参加できる制度教育研修のしくみづくりをすすめましょう。夜勤明けの保障など医師労働の改善も重要です。

(四)民主的集団医療を実践的に積み重ね、到達点を引き上げよう

 川崎、京都の「事件」は、民医連運動にとって衝撃的な出来事でした。人権や民主主義を掲げ、大切にしてきた民医連で「なぜ、このような事件が起きたのか」について、私たちは第三六回総会方針の中で、①掲げてきた理念と実践の乖(かい)離(り)、②医師の権威勾配の存在、医師と他職種の関係、③医師間のコミュニケーション不足、④他職種の専門的力量・倫理性の問題、⑤管理組織のあり方や医療管理、医師管理の不在の問題などにまとめ、克服をよびかけました。
 その後、管理運営の強化など一定の前進がみられますが、現場での医療管理の問題、民主的集団医療のあり方など、さらに踏み込んだ改善が必要です。川崎では事件当時、医師とのカンファレンスも医師同士による回診もなくなっていました。カンファレンスはあっても医師からの一方的な指示受けや病状説明に終わることが多く、患者や家族の気持ちを受け止め、それを反映する内容になっていませんでした。医師とのコミュニケーションも取りにくく、患者の問題点をチームとして共有し、他職種を含めた参加で解決しあうことができませんでした。
 京都でも事件の背景には医師と他職種との関係の困難さが指摘されています。医師の医療活動上の問題点を放置したままで、具体的な改善をはかることはできません。医療管理、医師管理における管理部のリーダーシップの発揮が強く求められています。病院の場合、外来・病棟における診療部ラインの整備と活性化をはかることです。とりわけ病棟・外来運営会議等では経営管理のみならず医療管理や運動なども議題にし、現場ぎわで問題解決能力を高める管理の改善、充実が求められます。特に医師の管理ライン(指揮命令系統)が具体的に動くよう整備、確立が大切です。各科の運営に責任を負う科長の役割を鮮明にしましょう。そのためにも管理医師の集団化、事務幹部などのサポート体制を重視しましょう。
 民主的集団医療の考え方は民医連がこれまで実践的に培い確立してきたものです。それは、なによりも①患者を中心にすえ、患者の抱える課題と情報を各職種が共有し、②それぞれの立場から英知を出し合って変革の視点で解決していくことを出発点としており、課題の前に医師も看護師も他職種もすべて平等であり、それぞれの民主的関係が決定的です。この実践が、間違いなく民医連に働く職員の働きがいにつながっています。
 川崎、京都の事件に正面から向き合い、克服しようとするとき、あらためて民主的集団医療を今日的に構築することが重要です。全職員の理解をすすめるために、県連・法人の民主的集団医療にかかわる教育研修の充実を訴えます。従来の制度教育に加えて医療事故分析などに、医師をはじめ全職種が目標を持って参加し、個々の診療場面でのマネージメントやコミュニケーションのスキルアップを図るなど工夫しましょう。
 一方で、今日の病棟医療の現場は、在院日数の管理、それに伴う入退院への対応、医療の安全性の確保、そして電子カルテなどのIT化などで大変な状況になっています。
 このような状況で、民主的集団医療のあり方もおのずと変化してきています。このような医療現場の変化の中で、回診やカンファランスはより重要です。急性期病棟は急性期に見合った方法で、また慢性期病棟は慢性期に見合った方法で、充実させるように工夫しましょう。病院機能評価で求められる各種の基準、マニュアルの整備も重要です。また、クリニカルパスの導入も、民主的集団医療にとって有効な方法です。積極的にとりくみましょう。
 この間発展してきた感染防止対策でのICT(感染防止チーム)や、医療安全委員会、栄養管理のためのNST(栄養サポートチーム)やじょく瘡チームなど、新しい職種横断的な医療活動を組織していくことが重要です。
 こうした医療活動が日常的に機能しているかどうか点検、指導し、責任の所在を明確にしつつ、民主的集団医療を推進・支援・援助する機構を確立していくことが医療管理における管理部の重要な役割です。

(五)看護分野に光をあて、看護分野の前進をめざそう

 この間すすめてきた医療・経営構造転換と医療安全、医療の質向上のとりくみは、看護部門に大きな変化をもたらしました。ハード面では病棟機能再編(一般・急性期、回復期リハ、医療〔介護〕療養型、特殊疾患、緩和ケア等への機能分化)であり、外来外部化であり、介護事業の展開などを柱とするものでした。ソフト面では在院日数管理やリスクマネージメント、電子カルテ、病院機能評価など外部評価の受審、さらには性格のことなる病棟間の調整や入退院をめぐる施設間連携、在宅二四時間対応などです。こうした中、看護・介護の活動は急速に変化し守備範囲も大きく広がっています。看護職・介護職集団の奮闘が在宅介護事業や医療・経営構造の転換を推進してきた大きな要因であったことは間違いありません。
 同時に、矛盾も広がっています。ベテラン看護師が在宅事業などへ異動したこととともに、急性期病院、臨床研修病院を中心に現場に過重な看護労働と精神的な負荷が加わり、メンタルな問題の発生や退職にもつながっています。看護師養成カリキュラムや養成制度の変更も少なくない影響を及ぼしています。このことは民医連に限ったことではなく、日本の看護のおかれている全体的な現状との認識がまず必要です。その上に、民医連には他の医療機関が引き受けないような重介護・複合疾患、生活困窮者などの層が多く、看護職が「がんばる分だけ」いっそう複雑で、たいへんになっています。
 医療の現場が変化しているにもかかわらず、看護・介護の要員は変化していません。安全・安心・信頼の医療・看護を保障するためにも、看護体制の拡充が不可欠です。看護問題を社会問題としてとらえ、欧米と比べても圧倒的に少ない看護配置に対し、看護・介護職の養成と増員、労働条件の改善を掲げ、一大ナースウエーブをまき起こさねばなりません。医団連などと共同し看護協会や多くの医療機関への働きかけをつよめて、国民的運動をよびかけていきます。
 「看護の輝き」が民医連を輝かせる最大の力と言っても過言ではありません。看護・介護職員は全職員の四割強を占め、もっとも患者さんと結びつき、寄り添っている集団であり、だからこそ看護師集団の輝きと看護の質が、民医連の輝きを決定づけます。また看護師不足は病棟の基準が取得できず、経営問題に直結します。
 看護部門の現状と今後の方向について認識を深めていくことが大切です。全日本民医連の問題意識として、
 (一)看護問題を「管理の問題」として捉え、トップ管理者の課題とすること。管理部が自らの病院・病棟の看護をめぐる現状分析と課題の整理を行い、わかりやすく理解できるように工夫し、医師集団はじめ病院全体の課題とすること。
 (二)看護部長、病院総師長など看護幹部が外部との交流、連携を重視し、積極的に学ぶ視点を貫き、職能分野での共同を積極的に強めること、
 (三)日常的には、各診療単位で症例・事例に徹底的にこだわり、医師を含むチームの中で、事例・症例を科学的・多角的に分析し、日々の実践に生かす視点で日常的にカンファレンスの充実をはかること。看護部門からの発信が大切です。
 (四)全国・地協、県連、法人が協力して看護管理者の目的意識的で計画的な養成や交流をすすめること。このことは経験の浅い職責者が増えているもとで特に重視すべきです。
 (五)看護学生への働きかけ、看護職の確保と養成の課題を現場任せにせず、目標と計画を持ち意識的にすすめること、が重要と考えます。

(六)職員が育つ場、民医連医療を実践する場として「職場づくり」を重視しよう

 五万七〇〇〇人の職員集団の基礎単位が「職場」です。若い職員の多い職場を職員が育つ場とすることが重要です。わたしたちはこの間、事業所の医療・福祉宣言とともに、職場での医療・福祉宣言づくりをすすめてきました。宣言には様ざまな思い、職場の「なりたい姿」が込められました。「自らの成長を日々実感している。私の職場は日本一」(五〇周年記念論文「わたしと民医連」)など生きいきした経験も多数報告されています。一方、日々の忙しさの中で、民医連で働いていることに生きがいや誇りを実感できず苦悩している姿も見えてきます。
 民医連の職場は基本的に組織の目標と個人の目標が一致できる優位性があります。それはなにより「いのちの平等」の実現をめざすという共通項があるからです。この優位性を生かし「育ち、育ち合う」職場づくりをすすめましょう。「仲間と共に患者の立場に立つ医療を行っていると実感したとき」にこそ、生きがいや誇りが生まれます。
 「どんな職場づくりをめざすのか」に関わって、①職場の「使命」や「目標」が明確になっていること、②決めたことをやりぬく体質がある、③いつも患者・人権を守ることが中心にすわっていること、④地域、職場、現場がリアルにつかまれ、学ぶこと、育ち合うことが重視されていること、⑤「もっと」と現状変革の志があり、思いやりと率直な相互批判にもとづく信頼と規律があること、⑥個人責任と集団責任が明確になっていること、の視点に基づき職場づくりをすすめましょう。職場責任者の役割がいっそう重要です。そのための学習機会および業務保障が必要です。管理部は、職責者育成に力を注ぎ、役割が発揮できるよう大いに援助しましょう。

 今回の評議員会は、第三六回総会方針にそって、第三七回総会(仙台)までに力を注ぐべき重点について提起しました。同時に、この一〇カ月間余り、医療安全、医療の質向上にむけての重要な方針や行動提起、経営委員長会議・経営幹部会議にむけての問題提起、医学生委員長会議問題提起、看護・看護学生委員長会議問題提起、社保委員長会議問題提起や共同組織月間方針など重要な方針を提起してきました。それらには各地の実践や経験を踏まえた、全国的な英知の結晶といえる内容が含まれています。県連・法人・事業所に引き寄せ、具体化をよびかけます。

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