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第39期第1回評議員会方針決定

2010年8月22日 全日本民医連第39期第1回評議員会

 総会から約半年が過ぎようとしています。私たちは時代の変革期の真っただ中にあって、新綱領のもと、総会方針の実践にとりくんできました。今評議員会はこの半年間を振り返りつつ、情勢認識を深め、新しい時代を切り開くにふさわしい民医連運動をつくりあげることを目的に開催します。

I.総会方針、新綱領を日々の活動の原動力に
II.半年間の主な活動と第2回評議員会までの重点課題
 1.民医連としての参議院選挙のとりくみ
 2.平和・九条を守り活かし、社会保障改善の運動
  (1)反貧困のとりくみ
  (2)平和のとりくみ
  (3)医療・社会保障改善の運動(後期高齢者医療制度廃止の運動)
  (4)消費税大増税を許さないたたかい
 3.医療活動
 4.2009年度、経営結果と課題
 5.医師養成と医学対、看護師確保など
  (1)医師、医学生分野
  (2)看護分野・他
  (3)事務
III.参議院選挙の結果と、情勢を切り開く今後の運動課題
IV.民医連運動を前進させる半年間に
 1.四つの克服すべき課題への挑戦を
 2.共同組織拡大強化月間の成功を
 3.全日本民医連理事会として民医連規約改定の提案を準備
 4.その他の課題

I.総会方針、新綱領を日々の活動の原動力に

 第三九回総会は「みんなで討論し、参加し、つくりあげる」という集団と民主主義の力を発揮し、半世紀ぶりに綱領を改定しました。方針・綱領DVDが好評です。医師団合宿や医局朝会などを通じて、医師集団での討議がすすめられています。「新入職員研修時には、聞いた覚えがあるが、それ以来…」といった中堅、ベテラン職員もいました。若い職員にとっても、事業所がどのように生まれ、何をめざしてきたのか、めざすのかを学ぶ機会となり、「迷ったとき、悩んだときには新綱領に立ち返り、民医連運動に確信をもってすすんでいきたい」などの感想が多く出されています。
 今年三三〇人の青年職員が参加した東京民医連国会研修や広島共立病院の二年目職員による被爆者聞き取り調査、鳥取生協病院の初期研修医による地域レポート発表会、辺野古支援連帯行動、NPT(核不拡散条約)行動の参加、自転車平和リレー、反核マラソンなどの体験や「一職場一事例」検討会などのとりくみが、いっそう確信を深める機会となっています。
 長野県民医連のピースゼミナール(平和学校)を卒業した青年職員が、長野県歴史教育者協議会の要請を受け、その総会で活動を報告しました。参加した社会科教師からは以下のような感想が寄せられました。「医療や福祉の現場で働く若い職員が、自らの言葉で憲法や平和を語る姿に感動しました。日々、いのちと向き合う仕事だからこそ、率直にいのちを奪うものへの怒りを感じるのでしょうか。教育の世界で語られる言葉とは違った重みがありました」。人が育つ「土壌」をもっている民医連を実感させるものです。
 綱領は、民医連が日本国憲法の理念の実現をめざすことを内外に宣言しました。そして、これまでの歩みをさらに発展させることを確認し、「介護」「共同組織」「安心して住み続けられるまちづくり」「共同のいとなみ」「権利としての社会保障」「地域と共に歩む人間性豊かな専門職を育成し」「核兵器をなくし」「環境を守る」など、獲得してきた理念や分野・概念を新たに明記しました。
 同時に、倒産などの経営危機や医療事故・事件などさまざまな困難に直面しましたが、事実から目をそらさず、地域の医療を守ること、患者、利用者を守ること、職員や家族を守ることを統一的にとらえ、全国的な連帯の力を発揮して、困難を乗り越えてきました。「民医連統一会計基準」の確立や共同組織の位置づけと強化、医療安全対策などは、こうした経験、教訓から導き出したものです。
 新しい綱領では、「事業所の集団所有」と「科学的で民主的な管理と運営」は絶えず点検し、見直し、改善すべき課題であるとの立場から、前文で「…めざして活動しています」とし、不断の努力の必要性を示しました。
 この間、意識的にとりくんできた無料低額診療事業は民医連の存在意義を端的に示しました。実施した事業所では、社会的困難を抱えた人びとの「最後のよりどころ」としての役割をいっそう発揮しており、行政や地域住民など多くの人びとの信頼を集めています。総会後も各地で届出が受理され、実施事業所はさらに増えています。あらためて、全事業所で実施することを提起します(『民医連医療』七月号参照)。
 綱領学習を第二回評議員会までに全職員が必ずやりきることを確認します。その上で綱領と実践を結びつけた交流会を企画します。
 毎年、全職員が必ず、綱領をじっくりと学ぶ機会をつくることを提起します。その際、幹部が先頭に立ち、職員一人ひとりが「自らの言葉」で、歴史や「私と民医連」を語る力をつけましょう。
 この間、室料差額徴収を実施した病院や民医連加盟について揺らいでいる法人が生まれています。民医連は加盟事業所が自ら綱領と規約を認め自覚的に結集する組織であり、総会方針は全国の英知を集めたものです。しかし、民医連を知らない職員も増え、意識的に綱領や総会方針を学ぶとりくみを行わない限り、民医連運動は弱まります。当該県連や法人が積極的な指導性を発揮して、全職員で新しい綱領を学び、身につける機会を確保し、民主主義の力を発揮して問題を克服していくことを期待します。全日本民医連は必要な援助を惜しみません。
 五月時点の『いつでも元気』の県連別職員読者比は最高一〇〇%から最低八・五%で、平均三五%でした。『いつでも元気』は、人権の視点から時の情勢や各地の動き、すすんだ経験を伝える「あなたと民医連をつなぐ」月刊誌です。読者からは「元気が出る」「読みやすい」という評価を得ています。次回評議員会までに職員読者比平均四五%にするために全県連で目標を持ち、とりわけ三五%未満の県連は平均に近づくよう奮起を求めます。
 新しい綱領や「医療・介護再生プラン(案)」を持ち、医療・福祉関係団体や友好団体と懇談をすすめましょう。「顔の見える」関係をつくり、地域および日本の医療・福祉再生にむけての一歩としましょう。

II.半年間の主な活動と第2回評議員会までの重点課題

1.民医連としての参議院選挙のとりくみ

 私たちは医療・社会保障の危機の打開、国民生活を守るために、全力をあげて奮闘してきました。この危機は、医療費抑制や介護保険制度改悪などを長年おしすすめてきた悪政の結果であり、この政治を変えることなしに改善できません。民医連がとりくむ選挙活動は、医療や社会保障、暮らしを守り前進させるうえで重要な機会です。当然、政党支持の自由を堅持しつつ、積極的にとりくむべき課題です。この活動は綱領実践そのものです。
 全日本民医連は、今回の参議院選挙を昨年の政権交代以来始まった新しい社会づくりの第二歩と考え、普天間基地の無条件撤去、後期高齢者医療制度即時廃止、医療費負担・保険料軽減、介護保険制度の抜本的な改善、消費税増税反対などの要求を掲げ実現をめざしました。この要求は、八万人の職員、三四〇万共同組織の仲間や国民多数の要求と合致するものです。後期高齢者医療制度廃止を訴えるリーフ「あの約束はどこにいったの?」や学習・宣伝用「青リーフ」、ポスターなどを三〇〇万枚以上発行し、職員や共同組織の仲間に向け「学習し、要求を広げよう、そして主権者として選挙に行こう」と、全日本民医連理事会方針を確認し、訴えました。各部や職能委員会、全国青年ジャンボリー実行委員会などもアピールを出し、各県連でも積極的にとりくみました。
 四月、「いのちの平等」を掲げ、門祐輔・京都民医連第二中央病院院長が京都府知事選挙に出馬し旋風を起こしました。三月、石川知事選、七月の参議院選挙では東京、沖縄、長野で民医連の仲間が立候補し、健闘しました。参議院選挙の結果、民主党が得票、議席を減らすなど大敗しました。公約を破り続けた結果です。自民党も得票を大きく減らしました。国民は今、辺野古への普天間基地移転の是非や日米関係、今後の医療や社会保障の姿と財源などこの国のあり方などをめぐって模索を始めています。こうした模索が新しい日本づくりにむけての第二歩となるよう、私たち自身が運動し、提案する力量をつけていくことが求められています。
 政治活動や選挙にのぞむ姿勢は、前述の立場を明らかにしてとりくんでいきます。

2.平和・九条のとりくみと社会保障改善の運動

(1)反貧困のとりくみ

 各地で、命をささえる反貧困ネットワークができ、ホームレスの夜回り訪問や住まいの確保、生活支援や街頭での相談活動などが引き続き活発にとりくまれています。
 日本歯科新聞などで、『口から見える格差と貧困〜歯科酷書〜』や『民医連医療』二〇〇九年五月号の特集が取り上げられました。この中で、「『この問題は社会の縮図』であり口腔から『人』を診て、さらに『社会』を診る医師たちは明らかな理念と哲学をもって、診療所から地域に飛び込み、厳しい現実に真正面から立ち向かっています。地域の人びとの生活と健康を応援する心意気の中に『歯科医療』の果たすべき役割と可能性をみる思いがします」とレポートは結ばれています。

(2)平和のとりくみ

 民医連は「いのち」と対極にある一切の戦争政策に反対し、たたかい続けます。普天間基地の撤去を求める沖縄県民の意思は明確です。県民の八四%が辺野古への移転に反対し、無条件撤去・国外撤去に賛成は七四%に上っています。日米安保容認は七%に留まっています(琉球新報)。「絶対に辺野古に基地をつくらせない。無条件撤去しかない」、このうねりを全国に広げましょう。秋には沖縄県知事選挙もあります。
 民医連は四・二五沖縄県民大会、普天間基地包囲行動、第二〇次辺野古支援連帯行動、徳之島島民集会などに積極的にとりくみました。
 戦後六五年が経過した今も、日本には米軍基地が一三四カ所あります。一年に一カ所基地をなくしても一三四年かかります。基地を永久化させるわけにはいきません。神奈川県・横須賀米軍基地は米国外で唯一の原子力空母の母港となっています。東京からわずか五〇kmの距離にある横須賀の原子力空母で、チェルノブイリ原発のような事故が起きれば、近隣の三〇〇〇万人以上に被害が及ぶとされています(注‥チェルノブイリ原発事故は広島型原爆の四〇〇倍の放射能汚染事故であり、三一年経った現在でも周辺三〇キロメートル以内は立ち入り禁止になっている)。新日米安保五〇年にあたる今年、実態を学ぶことを重視しましょう。
 今年五月に開催されたNPT再検討会議では、核を持つ国の反対で日程こそ明記されなかったものの、参加したすべての国の一致で、核兵器のない世界をめざすことが合意され、廃絶にむけて「対話・共同」「アクション」を起こすことが確認されました。NPT再検討会議行動には世界中から二・五万人を超える人びとが集い、日本原水協は六九〇万筆の署名を国連に積み上げました。そのうち民医連は九二万筆の署名を集め全国から二三一人の代表団を送り出しました。署名を直接受け取ったNPT再検討会議議長と国連軍縮上級代表は、私たちの運動を「あなたたちの核兵器をなくすという『固い決意』が必ずそうした社会をつくり出すと確信する」と評価し、原爆投下から六五年目にあたる今年八月六日、国連事務総長が広島の式典に参加することを表明しました。運動が確実に、核兵器のない世界へと変えつつあります。
 引き続き辺野古支援連帯行動や原水禁世界大会、IPPNW世界大会(一九八五年にノーベル平和賞を受賞した国際的な反核医師の会の総会。今年はスイスで八月二六〜二九日に開催)、九月二五日に開催される「医療者・九条の会」講演会、奈良で開催される「反核医師のつどい」(九月一八〜一九日)などを成功させましょう。「九月九日九時九分」に憲法九条をアピールする活動も創意を生かしてとりくみましょう。
 基地周辺環境調査など健康被害の実態告発の運動をすすめます。

(3)医療・社会保障改善の運動(後期高齢者医療制度廃止の運動)

 後期高齢者医療制度廃止を求める運動として高齢者訪問調査にとりくみました。この調査をまとめ、高齢者の実態を告発します。後期高齢者に対し六月現在、東京では二六の区市が短期保険証の発行を予定しています。全国的にも同様の動きがあります。資格証明書の発行も懸念される状況です。沖縄では「後期高齢者の短期保険証の期限切れで、無保険になっている人が五八五人にのぼる」と報道されています。
 厚生労働省は後期高齢者一人当たりの年間医療費が八六万円かかったと宣伝しています。高齢者になれば病気が増え受診の機会が増えるのは当然です。それを高齢者の自己責任のように扱い、医療費が増えたら連動して保険料が上がるしくみの後期高齢者医療制度を一日も早く廃止させなければなりません。二〇二五年には一人当たりの保険料は年一六万円と試算されています。しかし菅政権は八月この制度の本質である医療費抑制のしくみを温存し、現行の七五歳からの保険料徴収を六五歳まで下げ、自己負担を恒久化させるなど取りまとめを行い、来年の通常国会に提出するとしています。しかし内容は、現制度の「さらなる改悪」です。政権につく前は「高齢者いじめ法」と名づけ即時廃止を主張していたこととは、一八〇度の転換です。学習と宣伝を重視し、徹底的な批判を行い、廃止に向け大運動を起こすとともに当面、後期高齢者医療制度の保険料の大幅軽減(無料化)や自己負担ゼロ化を求める運動を強めます。

(生保老齢加算廃止撤回のとりくみ)
 民医連の医師の意見書やSW委員会の実態調査などが大きく影響し、六月、福岡高裁で「生活保護老齢加算廃止は違法」との逆転勝利判決を勝ち取りました。実態調査は、老齢加算廃止後(北九州市では月額一万七九三〇円=年額二一・五万円の減額)、多くの人が「一日二食のみ」「近所づきあいや親戚づきあいを絶った」「下着も年一回一〇〇円ショップで買う」など、とても人間としての尊厳が守られていないことを明らかにしました。福岡高裁(控訴審)での逆転勝訴は、全国ですすめられている裁判に大きな影響を与えるものです。被告の北九州市は判決を不服として上告しましたが、運動をこれまで以上に強め、憲法二五条違反の老齢加算廃止撤回を求めていきましょう。

(国保問題へのとりくみ)
 国保問題が大変深刻です。全日本民医連が行った二〇〇九年の国保など死亡事例調査を三月に記者会見で発表しました。マスコミがいっせいに注目しました。調査は四年目ですが、昨年一年間に判明しただけでも四七人が受診時には手遅れでした。こうした事例は毎年増え続け、中でも今回は、二七人が「無保険」でした。若年層に拡大しているのが特徴です。これらは氷山の一角にすぎません。
 国民の四割、約五〇〇〇万人が加入する国保の改善運動を重視します。あまりにも高くて払えない保険料、三割という高率の窓口負担など、社会保険とは言えない実態です。資格証明書や短期保険証の発行や留め置きなど、「実質無保険者」が一〇〇万人以上と推計されます。保険料を払うまで保険証を渡さない「留め置き」や「財産の差し押さえ」が強まっています。しかし「国民皆保険」という建前上、国は実態調査を行っていません。減らされ続けてきた国庫負担率を少なくとも一九八四年当時の四五%(現在三〇%)まで戻すことを強く求めます。窓口での三割負担の軽減を求めます。四月、参議院厚生労働委員会で、全日本民医連の石川徹理事・東京民医連会長が参考人として実態を告発し、国庫負担増を求めました。
 具体的な困難事例に対し、無料低額診療の活用をはじめ、国保料減免や国保法四四条に基づく一部負担金免除制度など、あらゆる社会資源・制度の活用法を研究し、医療・介護を受ける権利を守るとりくみを強めましょう。

(介護保険改善のとりくみ)
 四月以後七月初旬までに「STOP介護崩壊・介護ウエーブ二〇一〇推進ニュース」を二八号発行しました。「YOSAKOIソーラン祭り」が行われている札幌・大通り公園で四〇四筆の署名を集めた仲間をはじめ、全国各地の介護ウエーブのとりくみが紹介されています。厚生労働省交渉や各県交渉を積極的に行いました。
 石川県議会、金沢市議会は共産党、自民党、公明党の共同提案で「介護保険制度の抜本的な基盤整備を求める意見書」を採択しました。五月には長妻厚労相と語る「みんなの介護保険」意見交換会が開催され、山田智副会長はじめ三人が公募で参加し意見をのべました。この会で、夫に介護されている妻は「もっと人間味ある制度にしてほしい。私は夫より先に逝くしかありません」と悲痛な思いを語りました。
 先日、民医連の事業所がかかわっている利用者宅で無理心中がありました。要介護認定制度の見直し、施設整備、介護保険利用料の負担軽減、支給限度額の引き上げ・上限撤廃、介護職員の処遇改善はまったなしです。そうした中で、介護職員処遇改善交付金、介護雇用プログラムの活用や、高齢者を対象にした住まいづくりなども始まっています。他団体とも共同して介護保険のあり方についてシンポジウムを開いたり、介護管理者や職員の研修会もとりくまれています。

(診療報酬再改定を求めるとりくみ)
 今春の診療報酬改定は、一〇年ぶりに引き下げは止めさせたものの、〇・〇三%という実質「ゼロ改定」でした。民主党の診療報酬引き上げを求める議連からも「これでは公約違反であり、医療崩壊を防ぐことはできない。次回大幅改定を求める」旨の意見が出されるほどです。
 全日本民医連として四、五月の結果を踏まえ、六月に経験交流と厚生労働省交渉を行いました。今回の改定で中小病院と診療所はマイナス改定となったこと、入院期間が九〇日を超えた入院基本料引き下げの対象年齢の拡大、リハビリの日数制限や成果主義の導入、混合診療の拡大、入院中の他医療機関受診時の専門的な投薬規制・入院基本料の減額問題、レセプト開示の原則義務化などの問題点を現場から告発し、たたかいを強めます。

(4)消費税大増税を許さないたたかい

 参議院選挙を通じて急浮上した「消費税率引き上げ+法人税率引き下げ」が実行されれば、国民生活、日本経済に深刻な影響を与え、大不況となります。
 消費税の「最終消費者」にさせられている医療・介護事業所にとっても死活問題となります。全日本民医連の試算では、民医連の事業所は今でも事業収益の一〜一・五%分の消費税を払っています。東京の健和会では、〇九年度の消費税負担は二・一四億円でした。これが倍になれば、民医連の事業所の場合、利益はなくなります。消費税増税は、医療・介護事業所つぶしの政策です。
 一方、輸出品には消費税を転嫁できないとして、特別に消費税が免除されています。そのため、トヨタ自動車などの輸出大企業は巨額の還付金を受け取っています。還付額は〇八年度でトヨタは三二一九億円、ソニーは一五八七億円、上位一〇社だけで一兆円以上にものぼります。これら輸出大企業にとって消費税増税は、巨額の還付金が自動的に倍になるということです。
病院の新築移転などの大型投資を計画している法人も少なくありませんが、七〇億円の投資に対し、掛かる消費税は七億円となります。消費税増税は「国民生活破壊税」「医療・福祉破壊税」です。
 国民の中には「消費税を上げてでも医療・福祉の充実を」との声も少なくありません。これは軽視できません。
 かつて小泉純一郎首相は「『もうこれ以上、医療・福祉の予算を削減するのはやめてくれ』という声が上がるまで医療・福祉の予算減らしを徹底し、財源がないからというタイミングで消費税率を上げる」と放言していました。
 一九八九年の導入時や九七年に五%へ引き上げた時、政府は「福祉を充実させるため」と言いました。しかし、この二二年間、医療・福祉は、改悪につぐ改悪で改善されたことはありません。消費税導入前年の特養待機者は二万人だったのが今は四二万人、健康保険本人の窓口負担は一割から三割へ、国保料一人当たりの負担額は年五・六万円から九・一万円にはね上がったことなどが、事実を物語っています。
 法人税の引き下げも同時に言われています。下げなければ「国際競争に負ける」「企業が海外に出て行く」という口実ですが、大企業に対しては研究開発促進税制などの優遇税制があるため、法人税率は本来なら四〇%を払わなければならないところをソニーは実質一三%、パナソニックは一八%で、主要三銀行はこの一〇年間一円も法人税を払っていません。
 ワールドカップで話題を呼んだブブゼラの多くは中国でつくられていますが、労働者が一日一〇〇〇個つくっても収入は一〇〇〇円と報じられています。競争力とは要するに安い労働力に頼り、搾取することにほかなりません。日本国内でも労働者派遣法を改悪して非正規労働者を搾取し莫大な利益を上げています。
 日本の大企業は他国と比べても「法人税+企業の社会保険料負担」が低く、対GDP比で日本は八%、フランス一三・九%、スウェーデン一四・六%です(出所「経済産業省」)。その具体的な事実を示し国民に知らせ、必ず増税を阻止しましょう。

3.医療活動

 総会方針で提起した、貧困と格差・超高齢社会に立ち向かう民医連の医療活動の「八つの重点課題」は積極的に受け止められ、HPH(ヘルス・プロモーティング・ホスピタル)の検討や実践など、県連や法人、医師集団の中で議論が開始されています。自分の県連や事業所の地域分析を行うなど、医師養成と一体の実践課題となるよう、いっそうの議論を呼びかけます。
 日本は世界的に見ても予防接種が遅れています。国際水準の予防接種の実施、公費負担の拡大を求める運動をすすめます。また子宮頸ガンワクチン接種の運動に呼応し、性教育や検診の重要性、安全性の検証など、公的責任を明確にしたとりくみを強めます。『高齢者医療実践ハンドブック』の積極的な活用を呼びかけます。
 昨年秋の水俣病大検診と、その後各地で開催した水俣病検診(北海道、東北、関東、東海、近畿、中国四国、現地熊本・鹿児島、九州沖縄など)は、予想をはるかに超える潜在被害者が現地や全国に広がっていることを明らかにしました。この検診を長年続けてきた熊本民医連の仲間、ノーモア・ミナマタ訴訟の原告団、弁護団そして全国の民医連の運動が世論を動かし、和解合意を勝ち取りました。五月一日から始まった水俣病特別措置法による救済を求める人が一カ月だけで一・八万人を超えました。
 しかし、非認定地域の住民や一九六九年以後に生まれた人など、水俣病特別措置法、ノーモア・ミナマタ訴訟の和解案だけでは救済されない人がいることも明らかで、今後も被害者支援活動を強めていきます。
 六、七月に新潟民医連を中心に「新潟水俣病」検診がとりくまれました。水俣地域と同様に新潟でも潜在被害者が多いことを明らかにしました。運動を反映し、新潟地裁は七月八日、和解勧告決議を出しました。
 この検診活動に参加した職員に与えた影響は大きく、民医連の原点を確認する機会となりました。検診活動の経験をまとめた出版物を刊行する予定です。
 アスベスト問題では、二九の病院が参加して実施した「全日本民医連アスベスト多施設調査」の症例検討結果をまとめました。原発性肺がん八八五例の一二・八%に胸膜プラークが見つかるなど、深刻なアスベスト被害の実態を明らかにした報告であり、国内外の学会で発表しました。このような大規模な追跡調査は他に類を見ないものです。
 泉南アスベスト訴訟で勝利判決が出されました。引き続き被害者救済と裁判支援、国に対しては責任を認めるよう運動を強めます。とりわけ今秋の臨時国会で審議される予定の改正「アスベスト新法」が、被災者の真の救済につながるよう要求していきます。
 電子カルテの中に職歴記載欄のない病院も見られました。この間の水俣病やアスベスト被害へのとりくみも踏まえて、職歴や生活歴が日常診療の場でしっかり把握されているのか、今一度、総会方針にそって日常診療を見直すことを提起します。
 一九六八年にカネミ倉庫がつくった「カネミライスオイル」に、製造過程で猛毒のダイオキシン類が混入し、深刻な健康被害を広げました。その「カネミ油症」被害者が現在も福岡、長崎などにたくさんいます。事件当時、被害の届け出をした人は九州北部を中心にした西日本で一万四〇〇〇人にも上っていました。
 事件当初はPCBが原因と考えられましたが、その後PCDFなどのダイオキシン類が主原因であることが解明されました。しかし国の油症研究班による認定基準はPCBによる皮膚症状や血中PCB濃度を偏重し、全身に及ぶダイオキシン被害の実態とはかけ離れたもので、現在までに認定されたのは約二〇〇〇人に過ぎません(二〇〇四年から血中PCDF濃度が加えられましたが、事件発生後三六年経過しており、この認定基準によって新たに認定されたのは数十人に留まっています)。
 民医連は一九八〇年代半ばまで福岡県連を中心に油症の検診や治療、研究を積極的に行ってきましたが、その後とりくみが停滞していました。発がん性や次世代への影響も指摘されており、九州・沖縄地協を中心に被害者救済にむけてどのようにとりくむか検討します。
 宮崎県で大量に発生した口蹄疫被害も獣医の不足、国や行政の対応の遅れもあり、甚大な被害を与えました。人災といえます。全日本民医連として義援金を呼びかけました。
 熱中症問題では大阪民医連が七年来とりくんできた経験をふまえ、生健会とともに国に緊急対策の申し入れを行いました。各県連でも同様のとりくみが行われました。
 全日本民医連は、厚労省が募集した「医療の質の評価・公表等推進事業」のとりくみに、民医連加盟の三五病院の参加を得て応募しました。今回は採用となりませんでしたが、この医療指標の設定・評価・公開のとりくみは総会方針の実践でもあり、民医連独自で同様のとりくみをすすめます。
 「川崎協同病院事件」の被告医師の行った違法行為(最高裁で有罪確定済)をもち上げる論調があります。真実と教訓を明らかにするために川崎協同病院があらためて見解を出しました。同院のホームページにも掲載されています。
 一二月に第四回病院管理者・顧問弁護士交流会を開催します。全国の経験から学ぶことが重要です。これまで参加のなかった法人からの積極的な参加を呼びかけます。

〈介護・福祉分野のとりくみ〉
 介護保険制度が始まって丸一〇年になりました。二〇一一年度には見直し法案が提出され、一二年度から施行されます。今年の一一月には法案の要綱が示される予定です。財界からは介護保険料の二割負担化や要介護1以下を介護保険給付から外す案も出されています。全日本民医連として「介護保険の一〇年」を検証し、政策提言づくりを行います。国や自治体に向けて具体的な提案を発信し、介護改善を求める声と共同を広げます。
 二〇一二年の同時改定(医療・介護の一体改革)に向けて、「地域包括ケア」が打ち出されています。日常生活の圏域で、住まいを基本に、医療、介護、福祉・生活支援サービスを一体的に提供して在宅生活をささえるという構想ですが、「自助」「互助」(公的制度によらない助け合い)など自己責任を強要するとともに、ヘルパーの生活援助を保険給付から外すなど、保険外サービスの拡大や介護の営利・市場化の推進を方向づける内容となっています。高齢者が地域で安心して暮らせるための「地域包括ケア」のあり方について「たたかいと対応」の視点でとりくみます。個別テーマとして「住まいづくり」「在宅をささえる民医連の拠点づくり」「医療との連携」「訪問看護やリハビリの強化」「認知症への対応」「自治体などとの連携」が課題です。
 引き続き、経営改善や介護の質の確保、法的整備、介護職の確保と養成にとりくみます。民医連における介護・福祉理念について具体的な事例を通して深めます。

4.2009年度、経営結果と課題

 第一・四半期のモニター法人の経営結果は、前期よりも改善し、病院のみでも黒字となりました。
 二〇〇九年度の医科法人合計の経常利益率は一・六%(前年比〇・九%増)、黒字法人比率も八二・五%(前年六六・四%)と大幅な改善となりました。二〇〇〇年度以降の一〇年間で見ると、経常利益率は、二〇〇〇年度二・一%、〇一年度二・〇%に次ぐ利益確保で、この間低下し続けた黒字法人比率は最も高くなっています。その要因は、事業収益を三・一%伸ばしたこと(この一〇年で最高)、事業費用の伸びが二・二%に留まったことによります。収益は、入院収益で二・七%増、外来収益一・五%増、昨年約七%ダウンした保健予防収益も一〇・六%増(〇七年度比でも三・七%増)、介護収益三・一%増と、いずれも増収となりました。〇一年をピークに減少してきた外来患者数は、件数、延べ数ともに八年ぶりに前年と同水準を維持しています。
 病院は、経常利益が〇八年度▲四七億円(収益比▲〇・七%)から、▲二七億円(収益比▲〇・八%)と大きく改善したものの、五三%の病院が赤字です。病床機能別合計でも、療養型病院、精神科病院を除いてすべて赤字となっています。引き続き、病院の経営改善が最大の焦点となっています。
 診療所も経常利益率八・〇%(前年六・九%)と改善しています。損益の改善にともなって、事業キャッシュフローの対収益比率も五・九%(〇六〜〇八年度は四%台)と改善はしているものの、依然として獲得した事業キャッシュフローは長期借入金・返済金額以下となっており、借入金返済のために新たな借り入れが必要な状況が続いています。また、一五八法人中六五法人で利益剰余金がマイナスとなっているなど、引き続き経営改善は焦眉の課題となっています。
 また中長期の資金見通し・計画を確立できていない法人が少なくありません。少なくない病院で老朽化への対応、耐震化や療養環境の改善など今後大型設備投資が予定されています。各地の経験から学ぶことや中長期の見通しに立った資金計画をしっかりともつことが必要です。とりわけ経営幹部は損益、貸借、キャッシュフローを統一的にとらえて方針を確立しなければなりません。八月に、大型投資を準備している事業所を対象に交流会を開催します。
 全日本民医連として、法人形態によって異なる税率の解消や、消費税ゼロ税率などを求め厚生労働省に要望書を出しました。日本医師会や四病院団体協議会も同様の問題で運動を強めるとしており、民医連としても税制に対する検討を深め、運動を強化します。
 支出対策であり患者負担軽減策の一つである、安全なジェネリックへの切り替えについて、主体的な評価を行って採用をすすめるなど、薬事委員会や医療材料委員会の活動を強めましょう。医療材料、医薬品に関する民医連としての共同購入のあり方についてプロジェクトをつくり検討しています。
 大手製薬企業の大儲けに迫り(五つの大手製薬企業の平均経常利益率は一〇年三月末で一八・五%、武田薬品CEOの年収は五・五億円など)、医療改善、経営改善につなげていきます。また、今回新設された「新薬創設・適応外薬解消等促進加算」(*)は大手製薬企業の利益を保証する制度であり、撤回を求めていく運動を強めます。
 今期、定期的に地協経営委員長会議を開催し、より現場に身近なところでの経営対策を強めます。秋には県連経営委員長会議を開催します。

 * 新薬を開発する費用を捻出できるように、後発医薬品が出るまでの期間、薬価を維持させる制度。厚生労働省が定める基準価格の範囲内で販売することが条件となり、保険薬局や医療機関に対し、不当な値上げ要求が行われています。

5.医師養成と医学対、看護師確保など

(1)医師、 医学生分野

 「オール民医連」の力を結集し、医学対活動や医師養成を成功させようと四月、初めて「新入医師統一オリエンテーション」を行いました。二〇一〇年度の新入医師受け入れは一三二人でした。
 全日本民医連として医療専門誌に研修医、医師募集広告を載せました。六月には、「医師の確保と養成に関する全国会議」(静岡・伊東集会)を行いました。
 会議では、医学対活動の「医学生の民主的成長への援助」と「民医連の後継者対策」の二つの役割にもとづき、三つの柱として、(1)高校生対策、(2)奨学生の成長を援助する活動、(3)「オール民医連」によるフルマッチ対策、を提起しました。民医連の豊かなフィールドを生かし、医師や幹部が語り、この課題の実現を必ずやり抜きましょう。現状のままに留まるなら定員増のもとでは「後退」となります。二〇〇九年春、民医連内で後期研修へ移行する人の割合が増えました。一方、卒年対策では、現時点では奨学生の約四割が未決意です。フルマッチをめざしてさらにとりくみを強化しましょう。
 中・高学年の対策が遅れています。夏実習などの対策を強めましょう。一方、低学年で前進が始まっています。今年七月時点での新入生の奨学生は四四人と〇二年以来の到達になっています。空白大学であった九州大学に今春三人の奨学生が誕生し、福岡・佐賀民医連の奨学生は過去最高の三〇人となりました。あらためて全大学で奨学生を確保し、全学年で各九〇人以上の奨学生確保をめざして奮闘するよう呼びかけます。
 夏休みに行われる「第三一回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」(宮城)を成功させましょう。医学生自身の自主的な運動である「第五三回全国医学生ゼミナール」(岐阜)の成功にむけ協力しましょう。今年は韓国人道主義医師実践協議会主催の離島医療実習に奨学生が参加し交流します。
 全国組織としての優位性を発揮し、「オール民医連」の立場でプログラムをつくるなど初期研修を充実させ、研修医に絶えず「語り、働きかける」ことを重視しましょう。民医連の後期研修対応は全体的に十分ではありません。初期研修と後期研修を一体のものとしてプログラムや研修を充実させること、意識的・主体的に民医連の医療活動や地域活動に参加してもらう努力が必要です。研修担当事務の役割が重要です。その際、医師の成長のために、看護師はじめ多くの職種、職員、共同組織の仲間などがいっしょになって援助することが重要です。また、医師を育てることを各臨研病院任せとせず、全日本や地協で情報をつかみ必要な指導・援助ができる体制をつくること、全国規模で各専門科の後継者確保・専門医取得が可能となるよう具体化します。「オール民医連」のとりくみの第一歩として、全日本民医連は『後期研修ガイドブック』を作成しました。積極的な活用を呼びかけます。
 「三〇〇〇件問題」(*)では、地協全体で初期研修医の受け入れ体制を早急に具体化し、フルマッチをめざすこと、国に対して、制度の見直しを迫り、県レベルでの増員交渉などをすすめることを提起しました。確実にすすめましょう。
 初期研修を修了した世代や青年・中堅世代などが退職する場合でも、民医連内異動で引き続き民医連医師として働き続ける可能性を追求しましょう。入職につながらなかった医師や退職した医師の動向を把握し、継続的に働きかけることを強めましょう。意識的に医局合宿に招く、継続的にフォローする体制をとるなどの経験も生まれています。また、医師の流動化の中で、パート医師などが民医連医療に共感し入職する場合もあり、既卒医師対策もしっかりと位置づけましょう。

 *年間新入院三〇〇〇件以下の臨床研修基幹型病院は、来年秋のマッチングを最後に募集できなくなる。民医連の五六の基幹型のうち、かなりの病院が対象となる。

(2)看護分野・他

 看護師確保と養成のための拡大看護委員長・看護学生委員長・教務主任合同会議を開催しました。二〇一〇年卒受け入れは前年度よりも三四人増え、九二六人となり、二年連続の前進です。一方、入職内定者のうち九二人が辞退となりました。全国的にすすんだ経験や厳しかった経験を学び合い、高校生一日看護体験やその後のフォローアップ、看護実習の充実、臨床実習受け入れ(年間二三五校より六五〇〇人)、紹介運動や再就職セミナーなどのとりくみと看護対策担当者の体制強化を通じて結実した成果を確認しました。
 〇九年度の退職率は常勤職員比九・三%、新卒では七・二%と全体としては低下傾向です。引き続き「メンタルヘルスの問題」や「求められる看護の知識と技術のギャップ」などへの援助、働き方の工夫、やりがいを実感できる職場づくりをすすめましょう。各地の経験に学び二〇一一年卒で一〇〇〇人以上の入職の実現および既卒受け入れを前進させましょう。一〇月二四〜二五日、全県連から四六九(応募六九五)の演題が持ち寄られ、第一〇回看護介護活動研究交流集会が開催されます。民医連看護の元気さ≠体感し、明日へのエネルギーにしましょう。
 「特定看護師」について厚生労働省は全国の医療機関に対し「看護業務実態調査」を行っています。その趣旨は三月一九日に出された厚生労働省「チーム医療推進に関する検討会」報告書でのべている「医師の『包括的指示』の活用で、…従来一般的には看護師が実施できないと理解されていた医療行為を幅広く実施できるようにするため」としており、調査項目は全身麻酔の導入、局所麻酔、気管切開、骨髄穿刺、IVHの挿入など一四七の医療行為に及んでおり、これまでの業務範囲を大きく超えるものとなっています。医師養成や医療のあり方そのものを変えることにもつながるものです。
高度化した医療のもとでの看護の役割は、患者の情報を正しく把握し、必要で的確な援助ができることであり、医師の肩代わりや「チーム医療」の名のもとでの診断・医療行為に偏った業務拡大・役割拡大の議論は基本方向が違っていると、言わざるを得ません。いま、重要なのは、看護本来の業務である患者の視点に立ち、「人間らしく、その人らしく生きていくことを援助する」ことです。全日本民医連としてこうした立場から、特定看護師の導入に反対を表明し、(1)学習を通じ本質をつかむこと、(2)共同を広げること、(3)民医連のめざす看護のあり方をいっそう追求することを重視します。
 同時に、私たち自身が患者を中心に安全で質の高い医療活動を行うために、医師と看護師はじめ他職種の専門性やチーム医療のレベルを引き上げるたゆまぬ努力が必要です。また、絶対的な看護師不足の放置を許さず、働き続けられる条件の改善にむけて、第七次看護師需給計画の見直し、増員を求め、ナースウエーブのさらなる運動を強めます。
 また薬学生対策、リハビリスタッフ、介護職の確保と養成を引き続き重視します。

(3)事務

 今日、民医連運動を総合的に発展させる幹部の確保と養成は極めて重要な課題です。とりわけ事務幹部の養成は急務です。団塊の世代の幹部が定年退職を迎える時期に加えて、この間の経営の厳しさから系統的に採用ができなかったことや事務業務が多様化していることにより、総合的な力量を身につけた事務幹部を育てることが困難になってきています。従って事務幹部の育成についてはこれまでの延長戦上ではないとりくみが必要です。
 そうした中で各地協や県連、法人単位でも幹部養成講座やセミナーをはじめさまざまな試みが始まっています。民医連の事務職として「人権のアンテナ」の感度を高めることと専門性を高めることをつなげ、未収金の回収や中断患者のフォローにとりくんだり、民医連事務の役割を自主的に学ぶ実践もすすめられています。全国の多様なとりくみからも学んで実践を強化しましょう。全日本民医連はスタートした第二期事務幹部学校の成功をめざします。また、前期からとりくんでいる事務政策について問題提起を準備します。

III.参議院選挙の結果と、情勢を切り開く今後の運動課題

 国民の「政治を変えてほしい」との期待に背いた鳩山政権が退場し、その後に登場した菅政権は参議院選挙で大敗しました。その要因はアメリカ政府と大企業からの要求に屈服し、旧来の政権と変わらない政策に回帰してしまったからです。消費税増税は本音から出た発言であり、国民はこれを拒否しました。自民党やみんなの党の議席増は政権交代後の失政への失望です。選挙後のテレビや新聞で「なにを期待し投票したか」の問いに「医療や社会保障の充実、消費税増税ストップなど安心できる社会の実現」と多くの市民が答えています。
 菅政権から「コンクリートから人へ」というスローガンが消え、沖縄・辺野古への基地押しつけ推進、消費税大増税+法人税引き下げ、衆議院・参議院比例定数削減、後期高齢者医療制度のさらなる改悪、公務員削減などを打ち出しています。いずれも平和と人権、民主主義への重大な挑戦です。
 六月に閣議決定された政府の「新成長戦略」ではいっそうの規制緩和を促進し、医療分野を「成長産業」として位置づけ、技術力を高め、外国の富裕層を対象にした医療ツーリズムの育成や混合診療の全面的な拡大などを掲げています。介護の分野でも成長市場(マーケット)として位置づけ、その上で雇用創出をうたっています。
 また、「地域主権」の名のもとですすめられようとしているものは、国の主要な仕事を外交、防衛に限定し、他の事業は道州制など自治体に丸投げし、一定の財源の委譲と引き替えに「自己決定、自己責任、自己負担」を原則にするもので、憲法に定める「権利としての社会保障」を否定するものです。
 自民党に呼応して菅首相が消費税一〇%を公言しましたが、財界の試算では法人税減税分に四%、財政再建に六〜九%、地域主権への財源委譲で三%、基礎年金の国庫負担二分の一にするため(すでに国民に約束していたもの)に三%程度と考えられており、医療や福祉に回るお金はそもそも想定されていません。財界などが要求する消費税率は一〇%どころか二〇%以上が必要で、一度消費税増税を許すと際限なく上がっていく仕掛けができています。いずれも財界からの強い意向にもとづくものです。
 これら一連の動きは、国民の健康や暮らしに多大な傷跡を残して破綻した新自由主義的な政策を復活させるものであり、国民の期待とも逆行しています。私たち民医連は逆流を許さず、切実な国民生活を守り、要求実現めざして、奮闘します。
 東京新聞の報道によると(六月三〇日付)、人口当たりの自殺者は先進国で最悪であり、昨年三〇代で亡くなった人の四人に一人が自殺という異常な事態です。〇九年度の自殺原因も「失業」が前年比一六五・三%、「生活苦」が同一三四・三%となっており、長引く経済苦が自殺者数に直結する結果を示しています。自殺率と犯罪率、自殺率と失業率は相関関係にあります。今年も半年間で一・五万人を超える自殺者が出ています。失業率は五・二%で三カ月連続して悪化し、百貨店、コンビニも長期にわたり対前年度収益を減らし続けています。国民の購買力が低下していることを如実に示しています。
 子どもの貧困も深刻です。母子家庭の貧困率は六六%とずば抜けて高いものの生活保護を受けている世帯は一割です。貧困な非生活保護世帯では保険料の納入や医療費窓口負担もしなければならず、所得再配分後の貧困率は配分前より高くなるという世界でも例のない国です。「学校でケガをし、病院に行こうと連絡したら親にやめてくれと言われた」(全日本教職員組合)など深刻です。中学生以下の「自己肯定感」はOECD加盟三〇カ国中最低の三〇%でした。最高のオランダ九八%とは大きな違いです。生まれたときからの貧困と格差、生きがいの喪失という「負の連鎖」から脱出するためには公的責任による社会保障制度の転換と地域的連帯がどうしても必要です。
 民医連は、いっそう多くの国民との共同を追求し、悪法をはね返す運動をすすめます。政権が国民の声や運動を無視できない政治状況をつくり出しましょう。民医連はその先頭に立って奮闘する決意です。
 アメリカでは富裕層への課税引き上げがおこなわれました。ドイツでは軍事費一兆円を削減すると発表しました。フィリピン・クラーク米軍基地、ウズベキスタン・ハルナド米軍基地も撤去されました。イギリスでは「二大政党制」見直しの議論が出ています。世界では大きな変化が起きています。
 これから重要なのは、日本のあり方を模索している多くの国民や医療・福祉関係者に対し、社会保障政策の大転換を求める運動と新しい福祉国家像を民医連として示していくことです。「全日本民医連の医療・介護再生プラン(案)」はその原型をなすものであり、多くの運動団体や研究者、研究所、政党などと共同して提案をさらに豊かなものにします。医療界は混合診療拡大反対、公的医療費の拡大、患者負担の大幅軽減などで一致しており、共同、連携の条件は広がっており、とりくみを強めます。
 二〇一一年の通常国会は介護保険制度や医療保険制度、消費税増税など国民生活にかかわる重要な法案が出される予定で、今後の日本のあり方を問う「社会保障国会」となります。
 そして来春には国民生活と密着する統一地方選挙が行われます。要求実現のチャンスです。二〇一一年を転換点≠ニするために、あらゆる団体、個人と共同して、以下のことを重点に運動を強めます。(1)「貧困と健康」の問題について、調査・研究をすすめ、マスコミや学会での発表などあらゆる機会を通じて「可視化」させていきましょう。(2)「構造改革」路線の復活、消費税増税を許さず、政策転換を求めます。(3)総会方針で掲げた健康権の学習を深め、患者、利用者、住民の権利を保障するために全力をあげます。(4)医団連主催で「一〇・二一集会」を開催します。医療・介護崩壊を防ぎ、憲法が輝く社会への運動の節目として成功させましょう。(5)秋の自治体キャラバンや要求運動を強めましょう。
 保守の自治体や国であろうと具体的な事実にもとづく住民運動や政策提言で具体的な成果をかちとることは可能です。現に沖縄では四一自治体すべてが辺野古への基地移転に反対する決議をあげました。大阪・堺市では政令都市で初めて、七月から所得制限なしで月額自己負担上限一〇〇〇円、中学生までの入院・外来医療費制度を実現させました。
 いま、各地で映画「いのちの山河」の上映運動が行われています。五〇年前の経験は、いまに生きています。地方から粘り強く要求を実現する運動を積み上げていきましょう。

IV.民医連運動を前進させる半年間に

1.四つの克服すべき課題への挑戦を

 第三九回総会方針は、今後、民医連が前進していく上で、克服すべき課題として四点を強調しました。(1)医師、医学対での抜本的飛躍を実現すること、(2)経営改善と経営管理の強化を強めること、(3)医師、看護師、事務など経営幹部育成を意識的にすすめること、(4)自覚的な民医連運動(全国、地協、県連)への結集と強化を強めること、です。
 県連事務局長集中研修交流会(九月二九〜三〇日)を開催します。経営を含む民医連運動の前進にとって法人専務が確信をもって運営に当たることが重要です。法人の専務会議を一〇月下旬に行い、総会方針の具体化、綱領学習、「四課題」を前進させるための幹部の役割について議論する予定です。

2.共同組織拡大強化月間の成功を

 一〇〜一一月の共同組織拡大強化月間を成功させましょう。月間は、(1)職員が地域に出て共同組織の仲間とともに医療・福祉の改善運動、健康づくり運動にとりくむこと、(2)共同組織が地域になくてはならない存在としての役割を高め、健康づくりやまちづくり運動を大きく広げること、(3)仲間を一〇万人増やすこと、『いつでも元気』読者を三〇〇〇部増やすこと、ほか出資金や地域協同基金を増やすこと、などの目標をもってとりくみます。各共同組織と法人、県連で推進体制をとり奮闘を呼びかけます。

3.全日本民医連理事会として民医連規約改定の提案を準備

 先の総会の確認を踏まえて、全日本民医連規約改定案を第二回評議員会に提案する予定です。大きな検討項目として、規約前文の扱い、民医連加盟条件の見直し、法人の位置づけ、地協や県連の位置づけと全日本民医連規約との整合性、その他です。

4.その他の課題

 今年は日本が軍事的圧力で「日韓併合」を行い、植民地化して一〇〇年に当たります。ソウルの西大門刑務所跡を訪ねると、独立を求める人びとにいかに日本政府が残虐非道なことを行ったのかがわかります。「過去に目を閉ざすことは、現在に対しても盲目になる」という元ドイツ大統領ヴァイツゼッカーの言葉にあるように、原爆や沖縄戦、空襲のような被害の歴史とともに加害の歴史を学ぶことが真の友好関係を築くもとになります。一一月予定で全日本民医連韓国平和ツアーを実施します。それに際して「民医連と平和」のテーマで小論文(二四〇〇字程度)を募集します。
 ハイチ大地震カンパ、イラク・アフガン・ガザ人道支援、イラク人医師夫妻の研修受け入れなどにとりくみました。キューバ政府の要請を受け、民医連の事業所から内視鏡はじめたくさんの医療機器を募り、送りました。

 変革期の情勢は、後退の危険性とともに前進の可能性も秘めています。より多くの仲間と共同し、運動の力を強め、また日常の実践を通じて、平和・人権を守るとりくみを強めましょう。

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