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第39期第2回評議員会決定

2011年2月20日 全日本民医連第39期第2回評議委員会

はじめに
I章 「転換期」の情勢を「変革」の立場からとらえよう
1節 核兵器廃絶を求める世界の世論と平和をめぐる運動の広がり
2節 沖縄県知事選挙の結果と展望について
3節 国民生活と民主党政権
4節 医療・社会保障政策の特徴と影響
5節 情勢をみる立場と変革の展望
II章 各分野の活動の特徴と課題
1節 医療活動分野
2節 介護・福祉分野
3節 歯科分野
4節 職員育成
5節 共同組織
6節 経営活動と管理運営
7節 民医連の組織的課題
III章 民医連運動の飛躍のための重点課題
1節 医師問題の飛躍を〜医学生、研修医の中に民医連の魅力を伝えよう
2節 「知は力」、民医連綱領を身につけた職員の育成を重視しよう
3節 平和と「権利としての社会保障」実現めざしダイナミックな運動を
おわりに

はじめに

 民医連綱領を改定した総会から一年、第三九期の中間点を迎えます。
 私たちは「いのちの平等」の実現を掲げる新綱領と総会方針の学習運動を力に、その具体化に力を注いできました。平和活動や各種調査にもとづく現場からの発信、無料低額診療事業を実施する事業所の増加、人権を守る医療・介護の実践の数かず、全国に広がった水俣病検診などはその象徴です。
 医療や福祉と密接なかかわりを持つ政治の分野では、国民と医療・福祉関係者の運動で小泉政権以来続いていた社会保障費を毎年二二〇〇億円削減する方針を撤回させ、医師養成数の増員や一〇年ぶりに診療報酬を引き上げさせるなど一定の成果を実現させました。
 しかし、「国民生活第一」をスローガンに掲げ登場した民主党(中心)政権は、アメリカと財界の圧力に屈服し、いまや「菅の小泉化」、「構造改革路線への回帰」(東京新聞)といわれるように自民・公明党政権時代以上の悪政をすすめ、後期高齢者医療制度などさらに改悪ともいえる内容を準備しています。政治への「あきらめ」感が増大する一方、政治と国民生活との矛盾はより激しくなり、内閣支持率は二〇%台前半と末期的状態で、いつ解散・総選挙があってもおかしくない情勢です。
 日本医師会会長と全日本民医連会長との対談が「民医連新聞」の企画で行われ、医療、社会保障を抜本的に改善しなければならないとの認識で一致しました。現職の会長同士の対談は初めてのことです。
 いま、「せめぎ合い」の情勢です。多くの国民が政権交代に期待した「構造改革をやめさせ、人間が大切にされる社会」への展望は、私たちや国民の運動にかかっています。「暮らしも政治も変えることができる」と実感でき、「民医連があってよかった」と思われるような運動を国民との共同の力でつくり出しましょう。
 第二回評議員会の役割は、(1)「憲法と綱領」の立場から情勢分析を行い、運動課題を意思統一すること、(2)第三九期の中間的まとめを行い今後の課題、とりわけ「医師問題の前進」など重点課題について意思統一すること、(3)二〇一〇年決算と二〇一一年予算を確定することです。

I章 「転換期」の情勢を「変革」の立場からとらえよう

 いま、重要なのは、あらゆる事象を九条と二五条を持つ日本国憲法と民医連綱領の立場からとらえることです。すなわち、この日本社会の中で、最も困難な立場に置かれている人の目線に立ち、現状を変革する構えが重要です。
 半世紀前、「医療機関にかかるのは『死亡診断書』を書いてもらうときだけ」といわれたような豪雪地帯で、一九六一年、日本初の老人医療・乳児医療の一〇割給付を実施した岩手県・沢内村(現西和賀町)は翌年、日本の自治体で初めて乳児死亡ゼロを実現させました。一〇割給付を実現させようとする時、県や国の妨害にあいながらも「憲法二五条には違反しない」と村長、行政、村民の団結で圧力をはねのけました。住民参加による「保健・予防の徹底」、「早期発見・早期治療」の成果は村民の医療費を減らし、一人当たり老人医療費は国平均の約半分、県平均の四割台(一九八一年度)と「日本一健康な村」を実現させました。これらの経験は一九六七年に革新自治体となった東京都で老人医療無料化を実現させ、革新自治体の全国的な広がりの中で一九七三年に国の制度となりました。
 一方、これに危機感を覚えた支配層は革新勢力を分断させ、国の無料化制度は一〇年で終わり、その後、国は「医療費亡国論」を振りまき、あい次いで医療・社会保障の改悪をすすめました。
 しかし、行政と住民の運動による「生命尊重の村」の教訓は、あらためて評価され、今日に生かそうという運動が広がっています。沢内村を描いた映画「いのちの山河」に感動が広がり、全国で上映運動が行われています。地区医師会あげて上映を行っているところもあります。
 政治と選挙を大いに語り、日常的な要求運動や統一地方選挙を通じて、「情勢は変わるし、変えることができる」ことに確信をもち、全国各地で権利を守る運動を広げて行きましょう。

1節 核兵器廃絶を求める世界の世論と平和をめぐる運動の広がり

 昨年五月にニューヨークで行われたNPT再検討会議には日本から七〇〇万筆以上(うち民医連は一〇〇万筆超)の署名が寄せられ、「世界から核兵器を廃絶する」ことを満場一致で決議しました。さらに、国連事務総長や原爆投下国アメリカ大使が初めて広島の平和式典へ参加するなど大きな変化をつくり出し、世界平和市長会は「二〇二〇年までに核兵器を廃絶しよう」と運動を呼びかけました。原水禁世界大会も大きな成功をおさめました。世界的な運動の成果であり、民医連も他団体と共同して積極的に役割を果たしました。運動が「核のない世界へ」と流れを大きく変えつつあります。
 一方、東アジアにおける政治的・軍事的緊張が高まっています。私たちは「『核の脅威』には核兵器保有で対抗する」と主張する北朝鮮の態度を厳しく批判します。また、いかなる軍事行動にも反対します。国際紛争は核や武力で解決できないことは歴史が証明しています。
 日本国内においても北朝鮮や中国との政治的・軍事的緊張をもって「憲法を変えて集団的自衛権の行使を」といった意見や「核武装すべき」といった論調まで出ています。マス・メディアの多くはこれらの論調を無批判に垂れ流し、好戦的世論をつくり出しています。昨年末、戦後最大規模の日米(四万四五〇〇人が参加)、米韓の合同軍事演習が行われました。その中には大分県・日出生台(自衛隊基地内)を中国軍部隊に占領された尖閣諸島と見立てて、自衛隊の空挺部隊が中国兵をせん滅するという想定の作戦まで行われました。
 歴代首相で、「日米同盟(軍事同盟)の深化」を言ったのは菅政権が初めてです。そして、「核の傘」論や沖縄・海兵隊の「抑止力」論に固執し、武器輸出三原則の緩和、攻撃型最新兵器の装備などを含む新防衛大綱を発表しました。日本政府は昨年秋の国連総会で「核兵器の廃絶をめざす日程を決める」決議にも棄権しています。一方、アメリカの最大輸出品は「武器」であり、その圧力も日本の軍備増強の背景となっています。
 「中国脅威論」が意識的に流されていますが、日本との貿易額が一番多い地域が中国を含むアジア諸国であり、五割を超えています。中国では多くの日本企業が生産や販売活動を行っています。日本と中国は協力、連携の関係国でこそあれ、決して敵対する国ではありません。むしろ朝鮮半島を半世紀近くも植民地化し、中国に対し侵略を行ってきた日本が、まともな反省もなくアメリカとともに軍事的行動力を強めることこそアジアから見れば最大の脅威です。
 世界の流れを見ると、すでに南半球はすべて「非核宣言地域」となっていますし、モンゴルを含む中央アジア五カ国が非核地帯宣言条約を発効しています。憲法九条を持つ国、被爆の悲惨さを知る日本が中国などとともに積極的に非核北東アジアの実現と対等な経済協力関係の実現にむけてリーダーシップをとらなければなりません。
 二月に出される「核兵器全面禁止のアピール」に賛同し、新たな署名運動にとりくみましょう。

2節 沖縄県知事選挙の結果と展望について

 昨年一一月二八日に投票が行われた沖縄県知事選挙は、「基地の島・沖縄」から「平和の発信地・沖縄」へ転換することを求める県民と日米両政府とのたたかいでした。基地のない沖縄の実現をめざした知事候補・伊波洋一さんはわずかの差で勝利することはできなかったものの、相手候補がこれまで堅持してきた「普天間基地の県内移設」推進の立場を変更し、「県外」を公約せざるを得ないところまで県民のたたかいはさらに前進しました。伊波さんの後継者として普天間基地即時撤去・辺野古移設反対を掲げる安里猛宜野湾市長が誕生しました。これらの選挙では党派を超え「共同の力」が大きな役割を果たしました。政権党である民主党は候補者すら擁立できませんでした。今回の知事選挙、勝利した一月の名護市長選挙、伊集唯行候補(現沖縄医療生協理事長)が革新共同候補として挑んだ参議院選挙などの、共同のたたかいは今後に生かすべき教訓を残しました。
 また、九月の名護市議選挙で基地建設反対派が圧勝し、九万人以上が参加した「四・二五県民集会」などを通じて明確な県民の意思を示しました。県民あげて反対する中、もはや「普天間基地存続・辺野古への移設」はあり得ません。一二月一六日付朝日新聞の全国世論調査でも五九%が「日米合意を見直しすべき」と答えているように、日本政府が説得するのは知事、県民ではなくアメリカ政府そのものです。名護市への振興基金を打ち切ると発表した民主党政権の卑劣なやり方を断じて許すことはできません。
 民医連は知事選挙に当たり「『支援』という立場ではなく『自らの選挙』としてとりくもう」との提起を行い、四四県連から参加した約六〇〇人のべ一八〇〇人を超える職員が現地で活動し八〇〇万円を超えるカンパも集りました。
 これらのとりくみの背景には二〇〇四年秋以来、二二次にわたる辺野古連帯支援行動の継続や平和学校などのとりくみがあります。
 今年も平和風船が風にのって各地に平和の種をまきました。各地でとりくまれている平和のための自転車リレー(マラソン)はのべ四〇〇〇キロメートルにもおよんでいます。今春には名護に民主診療所が誕生予定です。九条の会の活発化や引き続き沖縄への連帯行動を強めます。

3節 国民生活と民主党政権

1.国民生活の実態と大企業の莫大な資金ためこみ

 民主党政権のもとで暮らしや医療、社会保障は良くなったでしょうか。「消えた高齢者問題」「無縁社会」「熱中症」「買物難民」「限界集落」「就職難民」「子どもの貧困」などに象徴されるように日本社会の抱えている深刻な矛盾が露呈し、一三年連続して自殺者は三万人を超えました。誰にも看とられることなく亡くなった人「無縁死」は年間三・二万人を超えています(NHK調べ)。
 年収二〇〇万円以下で生活する勤労者は一一〇〇万人と一年の間に一〇〇万人増えました。また、生活保護世帯は一四一・八万世帯と過去最高を更新し続けています。国民健康保険料の滞納者は全加入世帯の二割を超え、制裁措置として保険証の取り上げ(資格証明書・短期保険証)の急増や行政による財産や年金の差し押さえも行われています。生活保護費を抑えるために「生活保護受給者のレセプトへの査定が格段に厳しくなっている」との報告もあります。
 「歯科に関する意識調査」によれば、「歯科に行きたいが一年以上行っていない」との回答が五七%を超え、その理由では「お金がかかるから」が二三%に達しています。文部科学省の発表によると一二月現在、大学生、高校生の就職内定率は五〇%台に留まっています。北海道民医連が秋に実施した通院中の患者を対象としたアンケート(二〇七八人)では、「困っていること」として保険料の高さ四一・一%、自己負担の高さ四六・一%、対策として生活費を節約二二・六%、受診を我慢八・八%、生活費を削って保険料を払っている人が三三・六%いました。中断のリスクが高いこと、とても入院できない実態が浮き彫りになっています。
 不況とはいえ世界のGDPの一割を占める日本でこのような問題が次つぎと生まれるのは、税金の集め方、使い方が根本的に間違っているからです。
 「大企業が栄えれば、庶民の生活はよくなる」という論理は現実を見ればまったくの幻想であることがわかります。今日、資本金一〇億円以上の大企業は一〇年間で一〇〇兆円以上も「内部留保」を増やし計二四四兆円もの「ためこみ資金」を抱えています。過去最高の莫大な「内部留保」は徹底した非正規雇用への切り替え、賃金引き下げ、解雇・首切りなどによって生み出されたものです。失業率は高止まりし、若年層の失業率(九・九%)が上がっています。国が発表した「民間給与実態調査(二〇〇九年)」では労働者の平均賃金は一〇年間で一人当たり六二万円も減りました。いま、問題となっている日本航空パイロットや乗務員の大量解雇は、国がアメリカからの要望に応え大量の飛行機を購入し、必要のない空港建設を行ったこと、ずさんな経営を続けてきたことなどが原因です。この国と大企業の体質を示しています。

2.自民・公明政権以上の悪政を続ける菅民主党政権

 民主党が政権をとった背景には、(1)構造改革路線の矛盾の激化・表面化、(2)脱官僚政治への期待、(3)「国民生活第一」、「コンクリートから人へ」、「普天間基地の移転先は海外、最低でも県外」に代表される政策への期待にありました。一方、同政権が参議院選挙で惨敗した背景には、(1)上記公約を掲げた政権への強烈なアメリカと財界の反撃と巻き返し、(2)「埋蔵金と仕分け」にもとづく「財源論」の破綻、(3)「政治と金」の問題や消費税増税発言と国民生活との乖離などがあります。
 しかも、菅政権がすすめている政治は自民・公明政権となんら変わりないどころか、「アメリカ第一・財界第一」路線の強化です。そのことは二〇一一年度政府予算案に端的に示されています。法人税減税五%を予算案に盛り込み、特例措置であった証券取引優遇税(本来二〇%を一〇%としている)を、今回三年間再延長、など大企業や大投資家を税制面で優遇する一方で、政権党への企業団体献金の再開など財界の要求を全面的に受け入れようとしています。
 雇用創出のために法人税の引き下げが必要であるかのように言っていますが、「政府税調調査」では、大企業に対し、法人税が下がれば何に使うかの問いに「人件費や人員の増員」はわずかで「内部留保に回す」が二五・六%も占めています。民主党政権を支持したある学者は「リフオーム詐欺の片棒を担いだみたいだ」と嘆いていますが、私たちは国民の暮らしや医療・福祉の拡充のためにたたかわなければなりません。
 国はアメリカ、財界からの強い要請にもとづき日本経済を破壊する「TPP」(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加表明を行い、猛反発をよんでいます。TPPは貿易にかかわる関税などを自由化し、貿易関係の規制を取り除こうとするものです。農産物が関税なしで日本に輸入されることにより日本の農業などは壊滅するといわれています。最大の農産物輸出国アメリカの強い要請によるものです。
 TPPは農業分野のみならず、医療や介護の分野の規制緩和も促進します。混合診療全面解禁による診療報酬によらない自由価格の医療市場の拡大、私的な医療・介護保険、外国からの医薬品や医療材料、海外歯科技工物などの大量輸入や株式会社による医療機関経営への参入、外国人看護師、介護職の参入要件の緩和や外国人富裕層の受け入れなどです。これは現政権が打ち出した「新成長戦略」そのものです。
 全日本民医連はこれら多くの問題をもつTPPに反対を表明し、同じく重大な懸念を表明している日本医師会、全国農協中央会はじめ各地で多くの団体と共同して導入阻止のたたかいを強めます。
 さらに衆院の比例定数削減が計画されています。少数政党を締め出すことで、多様な世論を封殺するものです。先にあるのは憲法改悪、消費税大増税などにあることは明らかです。また、公務員の数の多さがあたかも無駄使いの象徴のように宣伝されていますが、国際比較では日本の公務員の数は人口比で圧倒的に少ないのが現状です。これ以上の削減は、保健所がこの一〇数年で半減し、保健師も大幅に減る中、新型インフルエンザへの対応が遅れたように、住民へのサービス・安全の低下につながることは明らかです。

4節 医療・社会保障政策の特徴と影響

 二〇一一年の通常国会には後期高齢者医療制度に変わる新しい高齢者医療制度案と介護保険見直し法案が一体のものとして上程される予定で、二〇一二年の診療報酬・介護報酬の同時改定と連動する計画です。これらは二〇〇六年に強行可決された「医療制度改革関連法」の具体化第二段として位置づけられるもので、二〇一三年から都道府県単位の第二期医療費適正化計画(向こう五年間)がスタートします。ここでは療養病床削減計画や各都道府県ごとに「特例診療報酬」を決めることが可能になるなど、給付を抑制し、急性期をはじめとする病床の縮小をすすめ、高齢者を病院から追い出し、さらには保険が使える在宅サービスを制限するというものです。
 さらに現政権は、打ち出した「新成長戦略」にもとづいて混合診療の拡大や外国人富裕層を対象にした医療ビジネス(ツーリズム)など医療や介護を「儲け」の対象として積極的にすすめようとしています。いまほど「権利としての社会保障」が求められる時はありません。

1.「地域主権改革」と「国保問題」

 「地域主権(分権)改革」の名のもとにすすめられているのは、国の役割を外交、防衛などに限定し、国の責任を地方自治体に押しつけ、「どの地域に住んでいようが憲法で保障する基本的権利はすべての国民に保障する」というナショナルミニマムを放棄するものです。具体的には「国保広域化」による保険料など地域間格差の是認、保育所を「公的」に保障するシステムから利用者が選んで「買う」制度へ変質させ、施設や人員配置基準も自治体に任せることなどが問題視されています。地方自治体への社会福祉関連補助金を「減額」し、使い道の「権限」も地方に丸投げのうえ、国民には「自助」、「互助」を押しつけ、そのうえでどうしてもだめなら「共助」、「公助」をという「自己責任論」と自治体の独立採算性を迫るものです。こうした中で自治体は、財政難を理由に「福祉」を切り捨てる動きが出ています。
 国は新しい高齢者医療制度案をテコに、国保財政を都道府県単位とした上で一般会計から国保財政への繰り入れをできなくさせる仕組みにしようとしています。一般会計から国保への補てんを行っている自治体や保険料収納率九〇%以下の自治体に対し、制裁措置として交付金の削減方針を打ち出しています。徴収した保険料の範囲内で治療を行うという保険主義の徹底がねらいです。保険料の大幅な値上げ、きびしい取り立てや差し押さえすら行う自治体が生まれています。すでに都道府県の「独自交付金」は一〇年前には三二二億円あったものが、二〇一〇年度には八四億円と四分の一に減っています。大阪では、各自治体が行っている独自の国民健康保険財政への一般会計からの繰り入れ(赤字補てんや国保料引き下げ、子ども医療費の無料化などの財源)を橋下知事の呼びかけで、足並みをそろえ、一斉に打ち切ろうとする動きが出ています。ただでさえ高い国保料や三割負担のもとで、自治体の補助金をカットすることは大幅な保険料の値上げにつながり、国保の存続を困難にします。
 都道府県単位の国保運営は、財政力による給付や保険料の格差をさらに拡大するものです。国民健康保険法第一条は「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と国の責任をうたっており、明確な憲法・法律違反です。

2.「新しい高齢者医療制度と介護保険見直し」、二つの重大な改悪

 新しい高齢者医療制度は、健保の本人・扶養者家族は元に戻すとしているものの、(1)七〇〜七四歳までの窓口負担を倍の二割に引き上げること、七五歳以上の保険料負担軽減措置の縮小、(2)七五歳以上の高齢者を「別枠会計」とし「負担と給付のバランス」という考え方を強く打ち出し医療費を抑制すること、(3)保険料滞納者には保険証を取り上げるなどを主な内容としています。自民・公明政権時代に導入された制度と本質・骨格になんら変わりなく、「廃止法案」を野党時代に共同して可決させた同じ政党のあまりの「変節」ぶりに、民主党議員からも激しい批判があがっています。後期高齢者医療制度は直ちに廃止し、元の老人保健法に戻すべきです。老健法が第一条でのべているように「この法律は、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、老人福祉の増進を図ることを目的とする」主旨を生かすのが国の責任です。
 厚労省の審議会(介護保険部会)は「このままでは次期介護保険料は月五〇〇〇円を超える」と財政危機を煽りながら、利用者・家族の介護・生活を無視し「負担増・給付抑制」を先行させる改悪案を打ち出しました。見直しの柱は「持続可能な制度の構築」と「地域包括ケアの実現」とし、具体的内容は、(1)利用者負担の拡大、生活援助など新たな給付制限、(2)認定制度をはじめ制度矛盾への対応の先送り、(3)一方で地域包括ケアや介護職員の処遇改善など新たな施策の盛り込み、(4)国の負担割合の引き上げと財源確保の見送りです。「新たな施策を行う場合は、財源を確保するか、既存の支出を削減する」という「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則」(もともとの意は「自腹」)を掲げ、「保険料を値上げするか、さもなければ給付を抑制するか」という二者択一を迫るものです。こうした財政規制の考え方は、小泉構造改革の「骨太方針」で出されたものです。財政事情優先の見直しは、現状の介護保険の問題を解決するどころか、逆に利用者・家族の困難をいっそう広げるものです。
 これらの見直し案には多くの反対があり、今年の統一地方選挙対策や政権延命のために、七〇〜七四歳までの医療費の二割負担を盛り込んだ新しい高齢者医療制度案の国会上程は流動的です。介護保険の見直しもケアプラン有料化などの新たな利用者負担を先送りする政府案が示されています。しかし、医療・介護に対する国の責任を大幅に縮小させようとするねらいに変わりありません。統一地方選挙で反対の声をあげるとともに悪法そのものを上程させないたたかいが重要です。

3.「地域包括ケア構想」のねらいと私たちの立場

 国の「地域包括ケア構想」は、「医療・介護の切れ目のない提供」、「二四時間対応型訪問サービスの実施」、「訪問看護やリハビリの強化」、「住まいの整備」など超高齢化に向け重要な課題を盛り込んでおり、今回の介護保険見直しでもその一部の実施を提案しています。しかし、「自己責任」、「市場化」を土台にしており、このまま政府の思惑通りすすめば、高齢者の要求を「逆手」にとった新たな公費抑制システムとして、高齢者・国民が求める方向と乖離したものになる危険性を持っています。このねらいをしっかりと押さえ、地域との結びつきや自治体の実態と分析、提案などの役割を強めましょう。憲法二五条で保障された基本的人権を守るたたかいと地域での支え合いや事業展開は車の両輪です。この二つを統一し、民医連があるべき「地域包括ケア」にとりくんでいく必要があります。

4.社会保障財源としての「消費税」増税は最悪

 一二月一〇日に政府・与党社会保障改革検討本部が決定した「社会保障改革の推進について」は、今後の社会保障財源は「消費税を柱にする」とのべ、首相は実現のために「政治生命を賭ける」とまで言いました。「政治生命」をかけなければならないのは、構造改革路線をやめ、国民生活を守ることです。「消費税の福祉目的税化」とは、福祉についての国の責任をなくすことです。政府の一般歳出はその中心が福祉目的であるべきです。歳入確保のための税収は、大企業や富裕層に応分の負担を求めるべきで、輸出大企業優遇、中小・零細企業負担増、国民生活圧迫(消費のさらなる落ち込み)という性格を持つ消費税増税は絶対に行うべきではありません。
 公的国民医療費の約三割以上(約八兆円)を占める医薬品は他国と比べて高いだけでなく、日本の製薬大企業の年間利益率は他の産業に比べても異常な高さです。例えば後発医薬品を除く販売後九年以内の「新薬」の薬価を二割下げるだけでも、約一兆円の医療費の無駄をなくし患者負担軽減に役立てることができます。「全日本民医連の医療・介護再生プラン(案)」がのべている通りです。
 さらに国は、障がい者の切実な願いをよそに「応益負担」の原則を残したまま、障害者自立支援(阻害)法の延命を行いました。また、生活保護行政の改善(老齢年金加算復活や国際的に見ても極めて低い補足率)、原爆症や水俣病の認定、薬害被害者の救済など、国の責任で早期解決しようとの姿勢はなく、いたずらに解決を遅らせています。

5.内需拡大重視で暮らし優先へ政策転換を

 あまりにも高い保険料や窓口負担、特養待機者が四二万人などに見られるように医療や介護、社会保障の改善は急務です。一方、医療従事者の絶対的不足や介護職員の低賃金や厳しい労働条件があります。医療や介護、社会保障、教育、保育分野は対人サービスであり、そこへの雇用を増やすことは継続性を伴う「内需拡大」策です。国の統計でも最も経済波及効果の高い分野で、裏づける政府統計は次つぎに出されています。日本のGDPの六割を個人消費が占めており、お金の心配なく医療や介護、保育や教育を受けることができ、家計を安定させ購買力を高めることこそ必要な政策です。学校や保育所など身近な公共施設や住宅の耐震補強、リフォームなどは町の業者の仕事を増やすことになります。「地産地消」などを通じて地域を活性化させる農業分野も同じです。これらは「地域循環型」経済として地域を再生し、安心して住みつづけられるまちづくりにつながるものです。

5節 情勢をみる立場と変革の展望

 経済同友会終身幹事である品川正治さんは、「戦争も経済も『国家』の目ではなく、『人間』の目、すなわち憲法の目でみること」を訴え続けています。私たちには民医連綱領があります。その立場から、現場で起きている困難事例を通じて、それが「自己責任」に由来するのか、社会的な背景を伴うものなのか、徹底的に深め、私たちの「立ち位置」を定めましょう。決して特別な人の問題ではなく、誰もが遭遇する可能性を持った問題です。
 世界の先進国では、医療費無料が当たり前です。窓口負担三割を強いるような日本や、民間医療保険が主流のアメリカなど、「自己責任」にもとづく医療をすすめているのはごく一部の国だけです。日本ではさらに室料差額徴収など「世界一」の医療費負担と社会保障費の抑制が続いています。
 二〇一一年は東京都知事選挙をはじめ、地域生活や国民の暮らしに直結する統一地方選挙が行われます。解散・総選挙の可能性もあります。二月に行われる愛知県知事選挙には、県民の期待に応え民医連の医師が出馬します。地域から暮らしを変え、住民本位の自治体をつくり出すチャンスです。そのためにも「民医連における政治と選挙活動における幹部の役割」(第三九期一一月理事会決定)をあらためて確認し、組織としての態度表明や個々人が「主権者」として確信をもってとりくむ状況をつくり出しましょう。
 その際、民医連の強みである現場力・実践力・発信力・問題提起力を大いに発揮しましょう。「全日本民医連の医療・介護再生プラン(案)」が力になります。今春には研究者との共同作業をすすめている憲法を活かし「新しい福祉の日本」を展望した社会福祉国家構想も提案される予定です。学習し、「地域を変革の発信地」としましょう。

II章 各分野の活動の特徴と課題

◆新綱領を力に、憲法理念にもとづき、すべての人が等しく人間として尊重される社会をめざして、医療・介護の実践と運動、経営を統一的に発展させる民医連運動を総合的に前進させよう。

◆「貧困と格差」社会の転換、国が描く二〇二五年「超高齢・少子化」社会から「長生きして良かった」「この国に生まれてよかった」「子どもを生み育てることのできる社会」「安心して住み続けられるまち」づくりへ、健康権の実現をめざして国民的共同で未来を変えよう=B

◆克服すべき「四つの課題」(医師・医学生対策の飛躍的前進、経営・管理運営の改善、幹部養成・人づくりの成功、民医連運動への結集)へ挑戦し前進しよう。

 (=第三九回総会方針の要旨)

1節 医療活動分野

1.社会福祉法にもとづく無料低額診療事業の広がり

 第三八期に提起した社会福祉法にもとづく「無料低額診療事業」は各地で積極的に受け止められ、民医連で実施している事業所は一八四カ所(+老健施設一四カ所)と、この二年で倍加し、今なお増え続けています。このとりくみには学校校長会からの説明会要請や利用者、自治体などからの問い合わせがあい次ぎ、各地のテレビ局や新聞社が特集を組むなど社会的な注目を集めています。無料低額診療事業に関わる相談の多くは、「保険料を滞納して保険証がない」「年金がなく生活にも困窮」「窓口負担が払えない」「自営業で倒産、しかも体調が悪い」などで、「無低診」を介して、生活保護申請や身体障害者手帳の取得、ジェネリック薬への切り替えなどに結びついています。
 手遅れ死亡事例が後を絶ちません。お金の切れ目は命の切れ目ともいわれる今日、室料差額徴収を行わないことと併せ、無料低額診療事業は民医連の特徴を端的に示すとりくみとして「患者になれない病人」の最初のよりどころの役割を果たし、事業所に対する評価を高めています。さらに「いのちを助けることができた喜び」は職員の確信と誇りとなっています。
 同時に、この制度は自治体の「自治」業務となっていますが、本来、国の制度として行うべきものです。無料低額診療事業が必要とされる背景には、そもそも高すぎる窓口負担があり、国保法四四条の定めによる医療費窓口減免が実行されていない現実の反映があります。保険薬局などには適用されません。大阪市など届け出の受け付けを拒否し続けている自治体もあり、全事業所での実施と制度の拡充が重要です。引き続きすべての事業所で積極的に挑戦し、民医連事業所としての役割を発揮するとともに、他の医療機関や自治体病院などにも実施を呼びかけましょう。

2.水俣病、アスベスト、熱中症など患者、利用者の権利を守るとりくみ

 北海道から九州まで各地の地協や県連が水俣病検診を行いました。これらの活動は『みなまたは終わっていない―水俣病に苦しむ被害者と寄り添う医療者の証言二〇〇九〜二〇一〇』としてまとめられ、出版されました。新たに明らかになったことは、全国に多数存在する潜在被害者と非認定地域や一九六九年以降生まれの被害者があまりにも多いことです。新潟水俣病について和解勧告が出され基本合意を勝ち取りました。しかし、すべての被害者を救済しないままで「幕引き」は絶対に許されません。薬害イレッサ、B型肝炎訴訟などの支援、アスベスト被害の掘り起こし、カネミ油症被害者健康調査、基地騒音被害調査の準備もすすめられています。すべての被害者の救済を求めて最後までたたかいましょう。
 いま、大気汚染被害者に対する医療費や生活保障などの救済制度創設と大気汚染公害を根絶する施策の充実を求める運動が開始され、全日本民医連も署名推進を呼びかけています。東京都の医療費助成制度の期限はあと三年であり、制度延長にむけてこの一年の運動が重要です。
 これらの運動を民医連も全国で大きく前進させましょう。
 酷暑となった昨年、八月末時点で四・六万人が救急車で搬送され、少なくとも五〇〇人以上が死亡する(消防庁発表)「熱中症」が社会問題になりました。また、熱中症による労災が急増したと指摘されています。民医連では在宅患者の安否確認や予防の呼びかけ、国や自治体に住民への緊急対策を要請するなど、とりくみました。「貧困」問題の反映です。七年間、この活動を行ってきた大阪民医連の調査ではクーラーのない家が一七%、あっても使用するのは二時間以内が二二%、三〇度以上の室温世帯が六割を超えていました。この結果、国も対策の必要性を表明し、自治体によっては具体的な対策を講じるところも出ています。
 寒冷地では、生活が苦しくて灯油が買えない高齢者、生活困窮者がたくさんいます。引き続き寒冷地生活実態調査にとりくみ、救済の運動をすすめましょう。
 子どもの貧困について、外来小児科学会で民医連の医師が調査結果や事例を報告しました。予防接種問題で初めて厚労省の担当者と懇談しました。この間の運動の成果としてヒブワクチン、小児用肺炎球菌、子宮頸がんワクチンの公費助成が始まりますが、不活化ポリオワクチンの導入をはじめまだ多くの課題が残されています。全日本民医連は「こころの健康をまもり推進する基本法」制定を求める運動への支援、子宮頸がんワクチンに関わる見解と運動を提起しました。新臓器移植法施行に伴い民医連としての原則的な立場と論点を示しました(法案成立時には抗議声明を発表)。
 「アスベスト多施設調査」のまとめや『高齢者医療ハンドブック』を発行するとともに、「終末期ケアの展望と課題―高齢者のターミナルケア」セミナー、自主研究会代表者会議(地域医療を担う専門医の養成と研究会の活性化)、第二回急性期・基幹型臨床研修病院(DPC病院)交流集会、第四回顧問弁護士・病院管理者交流集会などを開催しました。
 次回総会までの重点課題として、(1)今期の医療活動方針である「八つの重点課題」の具体化をすすめていきます。特に「貧困と慢性疾患の関係」や「子どもの貧困」に焦点をあて、その可視化や告発・提案へ向けた民医連事業所のとりくみをすすめます。また、「健康なまちづくり」を切り開くヘルスプロモーション・保健予防活動(「HPH」への参加)や在宅医療の新たな展開を大きくすすめます。(2)民医連らしい総合的な医療の質向上にむけて、今年一月から二一項目の医療指標を設定して「全日本民医連医療の質向上・公開推進事業(QI推進事業)」を実施します。現在、五五病院が参加予定です。すべての民医連病院でとりくむことを呼びかけます。また、顧問弁護士交流会の到達点を踏まえ、あらためて医療安全問題での組織的なとりくみの向上を呼びかけます。
(3)二〇一一年に開催する全国集会(診療に生かす医療情報システムの活用交流集会、医療安全交流集会、慢性疾患医療交流集会、在宅医療交流集会、医療倫理交流集会、保健予防交流集会、診療情報活用・医療の質向上交流集会)は、貧困と健康格差・超高齢社会に立ち向かう「八つの重点課題」の具体化と実践交流を主な目的に開催します。(4)健康権やチーム医療、超高齢社会の医療・介護提供体制など今日的な民医連の医療理念や医療活動にかかわる政策的課題の検討を行います。
 九月に中小病院交流集会、一一月に診療所所長交流集会を前期に引き続き開催します。

2節 介護・福祉分野

 二〇一〇年に開催した介護・福祉責任者会議は、(1)介護保険見直しをめぐる情勢と今後の介護ウエーブ、(2)閣議決定された「地域包括ケア構想」に対する基本的な考え方と今後の事業・運動の課題、を確認しました。「一一・一一介護の日」には、各地で署名・宣伝行動、介護一一〇番、自治体交渉などにとりくみました。全日本民医連は、宣伝・学習資材を作成するとともに、「介護ウエーブ二〇一〇推進ニュース」を発行し、各地のとりくみや厚労省の審議内容を紹介してきました。
 今後の重点は以下の八項目です。
 (1)介護ウエーブは、「政府の改定法案に対するたたかい」という新たなステージを迎えます。「広げ、伝える」(政府の見直し案の問題点、利用者の実態を広げ伝える)、「検証し、提案する」(実践・事例を通じて制度を検証し、具体的な提案をまとめ発信する)を柱に介護保険制度の抜本的改善を実現させるたたかいを強めます。
 (2)民医連がめざす「地域包括ケア」は、誰もが、最後まで安心して住み続けられる「地域包括ケア」(まちづくり)です。高齢者の生活を守りささえる実践を通じて介護の質を高め、それをふまえた提案型のたたかいをすすめます。各自治体の第五期事業計画策定にあたって実践にもとづく具体的な提案をしていきましょう。「住まい」への公的保障を実現させるとりくみやたたかいを重視します。地域包括ケア、制度改定を視野に入れた法人としての中長期計画づくりを重視しましょう。日常生活圏域(=中学校区)を視野に入れた二四時間対応やサービスの拠点づくり、誰もが入居できる住まいづくりを共同組織(各圏域ごとに支部・班が対応)と連携しながら具体化します。全日本民医連として「住まいづくり交流会」の開催を検討します。訪問看護の位置づけやとりくみの強化をめざし、看護委員会との共催で訪問看護ステーション交流会と地域包括支援センター交流会を開催します。医師集団や共同組織での地域包括ケアの学習を重視します。
 (3)引き続き管理者養成や民医連らしいキャリアアップにとりくみます。法人責任者のレベルアップと後継者養成を目的に、全日本民医連として研修会(三クール=二月、六月、九月)を行います。「たたかうケアマネジャー」の養成・集団化に向けて「ケアマネジャー責任者研修交流会」(二クール=三月、七月)を開催します。
 (4)総会で議論を呼びかけた「民医連の介護・福祉の理念(案)」を二〇一一年度の責任者会議で確定させる予定です。各地で議論をすすめましょう。全日本民医連として「民医連の介護・福祉の理念を深める事例集づくり」(仮称)を提起します。
 (5)介護事業経営の実態把握、経営基盤の強化に向けた方針づくりをすすめます。
 (6)地協ごとの事業整備交流会などを企画し、事業整備の課題を前進させます。
 (7)県連の介護職部会やケアワーカー委員会などの実態把握を行い、介護職の組織づくりを促進します。
 (8)引き続き、社会福祉法人専務・事務局長会議を開催し民医連社会福祉法人の役割を深め、各地のとりくみを交流します。また「二一老福連」(二一世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会)などの全国組織との連携や交流を深めます。

3節 歯科分野

 貧困による健康破壊、口腔崩壊がすすむ中、全日本民医連として『歯科酷書』を発表しました。日本歯科新聞、メディカルTV、NHK、毎日新聞、革新懇ニュースなどで取り上げられ、民医連歯科の活動が「地域に出て貧困に立ち向かう医療」として注目を集めています。「保険で良い歯科医療」署名は、目標を大きく超え一二万六〇〇〇筆を達成し、運動を牽引しました。一六の歯科事業所が無料低額診療を実施しています。すべての事業所が無料低額診療に挑戦しましょう。一つひとつの困難事例を掘り下げ「人権のアンテナの感度」を高めましょう。昨年とりくんだ「一万人アンケート」の運動を生かし「歯科酷書第二弾」として発表します。往診の患者件数が一・五倍になっています。二〇〇九年度の黒字施設数は半数に留まっていますが、患者数や事業収益は二〇〇一年度以降最高です。
 (1)管理運営の改善やチーム医療の強化などをすすめ、全事業所が黒字をめざしましょう。(2)「民医連全事業所に対応できる歯科」「全県連に歯科」をめざします。(3)全日本民医連として「歯科医師養成委員会」を立ち上げ、未来を担う中堅歯科医師の集団化と民医連歯科のあり方の検討を開始します。(4)全国の大学病院以外の管理型研修施設数は二〇施設で、うち一〇施設が民医連です。また、協力型も約三〇施設になりました。若い歯科医師に「民主的な歯科医療」「国民が求める本当の歯科医療の姿」を示し、奨学生確保など歯学対活動を強めましょう。

4節 職員育成

1.総会方針「学習月間」と「綱領を学び実践する大運動」

 新綱領は私たちの大切な「宝物」になりました。「綱領を学び実践する大運動」(一一年二月まで)は、「私と民医連」、「法人の歴史を学ぶ」学習会、「私の事例と私と民医連」手記募集など多彩に行われています。「あたらしい時代を民医連綱領とともに」の綱領学習パンフもできました。一月三〇日に開催する「新綱領を『原動力』に民医連運動を推進する交流集会」に実践をもち寄り、今後の職員の育成につなげましょう。
 学習月間では六一%の職員が総会方針を読了しました(未集計県連あり)。職責者一〇〇%読了県連が七県連、八〇%以上が八県連、一方で五〇%以下が一一県連ありました。今回、重視した医師の読了は、報告のあった県連は六県連で、報告県連では一〇〇%を達成しましたが、まだ医師集団が総会方針を学ぶという活動には成功しきれていません。『いつでも元気』職員購読率を四五%まで引き上げようとの提起を積極的受け止め目標を達成した県連が生まれている一方、職員読者を増やす運動を行えなかった県連もあります。第二回評議員会までに必ずやり抜きましょう。

2.青年、事務職員分野

 一月末に開催する「拡大教育委員長・事務委員長・青年委員長合同会議」に「教育政策(案)」「全日本民医連事務政策づくりにあたっての問題提起」を提案し、一年間の討議と実践を呼びかけます。
 全国青年ジャンボリー(JB)は二〇一一年秋、宮城で開催します。「実行委員と現地が一番元気になった」といわれるように学習とフィールド活動を通じて開催を準備しています。今日的な青年の置かれている状況を踏まえ「青年職員育成の指針(案)」の作成をすすめます。
 各地協や県連単位でも事務幹部研修会が開催されるようになり、事務幹部の養成が重視されています。全日本民医連第九回トップ管理者研修会、第二回事務幹部養成学校(四クール)を開催し、「学習と討論を通じて自分の考え方が劇的に変化した」など、日常の業務に忙殺される中では得られない知識や体験を通じて、管理者として体系的に学び成長する機会となっています。

3.看護分野

 第一〇回看護介護活動研究交流集会が石川で開催され約一〇〇〇人の参加者で成功しました。看護と介護の職種が患者、利用者の事例を通じて学び合い、今回は認定看護師、専門看護師、助産師、保健師の分科会を設定しました。看護委員会は、(1)中堅看護職員を対象に「民医連のめざす看護(仮題)」をまとめること、(2)若手・中堅職員に的を絞った定着対策を検討し、その政策と手だてを提言すること、(3)「交替勤務を中心とした労働環境課題」では病院実態調査を行って現状を把握し、健康で働きつづけられる職場づくりを提案すること、に向けて作業をすすめています。
 この間の努力で、看護学生の低学年の奨学生の確保がすすみました。新卒確保は現在で九五七人(前年同月比一〇〇人増)となっています。あらゆる可能性を追求し一〇〇〇人を確保し、全県連で目標達成しましょう。今期、青森県連の全面協力で、県内の看護学生を対象に他県連の病院・奨学金の説明会を開催し、多くの学生が参加しました。今後も「オール民医連」の立場でこうしたとりくみを広げていきます。
 看護職員の第七次需給見通しの策定(昨年一二月)では、五・六万人の不足であることが明らかにされました。しかし、実際にはこれ以上不足していることは明らかです。全日本民医連および各県連で事実にもとづき、具体的な養成計画や労働条件の抜本的改善をめざし「政策提言」を行い、運動を強めます。引き続き医療団体連絡会議(医団連)との共同行動を重視するとともに、看護協会などとも一致できる点での共同を追求します。
 医師不足を口実に看護師に「資格」を与え、医行為を行わせようとする「特定看護師(仮称)」制度創設が画策されていますが、認定看護師など看護師のキャリアアップの延長線にあるものではありません。絶対的な医師不足、看護師不足を放置したまま、こうした新たな「職種」をつくることに全日本民医連は反対を表明しました。
 今後、新人看護師受け入れ担当者会議、新人看護師研修プログラム研修会、第二回拡大看護委員長・看護学生委員長・教務主任会議、看護トップ管理者研修会を予定しています。

4.薬剤分野

 薬害根絶をめざし薬害イレッサ訴訟、B型肝炎訴訟支援などにとりくみました。今年一月、東京・大阪地裁はイレッサ訴訟において「国と企業の責任」を断定し、被害患者の救済を求める和解勧告を出しました。早期解決を強く求めます。
 保団連といっしょに「わが国における新薬シフトをはじめとした高すぎる薬価問題」で厚労省交渉を行いました。また、統一会計基準保険薬局版の改定、保険薬局向け医療整備チェックリストの改定を行いました。副作用モニター制度(二〇〇九年度一八五事業所二六六四件集約)と新薬モニター(各事業所から寄せられる新薬評価情報)による情報を全国に発信しました。薬剤師総数はほぼ横ばいで推移しています。いくつかの地協で薬剤師支援にとりくみました。育てる薬学対をめざし、「医学生のつどい」の経験に学び、薬剤師奨学生、つながり学生を対象とした薬学生セミナーを予定しています。
 ファーマ・ウエーブのテーマは、「安全で安心の薬を! 患者負担を軽減し、薬剤師の力が発揮できる医療制度確立を!」です。薬害訴訟の早期解決をめざす運動、高すぎる薬価の是正、薬局でも無料低額診療が実施できること、病院薬剤師業務に対し診療報酬上正当に評価させることなどを柱にとりくみます。そのために国民や患者向けのわかりやすいチラシを作成し運動を強めます。民医連を担う「薬剤師政策(案)」の検討と提案の準備、民医連職員向け「医薬品副作用救済制度活用パンフ」を完成させ、普及をはかります。あらためて薬事委員会の役割を強めることを強調します。

5節 共同組織

 昨年一一月末、全日本民医連の共同組織は三四六万を超えました。三六〇万まであとわずかです。『いつでも元気』は五・七万部に到達しました。目標達成に向けて奮闘しましょう。ベストセラーとなった詩集『くじけないで』の著者で宇都宮協立診療所の「生協組合員」である柴田トヨさんが新年号に登場し、民医連事業所とのかかわりや自らの生き方を語っています。『いつでも元気』一〇月号には「無縁社会≠ネんてまっぴら だから、地域にわたしたち」の特集が載りました。診療所で共同組織の会員が子どもの教育の援助を行う活動や、安否確認のための「赤いリボン」運動、「命のバトン」運動などが取り上げられています。メディアでも紹介され「地域に共同組織あり」と役割が高まっています。一方、誰にも看取られることなく亡くなる「孤独死」「無縁死」や「介護殺人・心中」が社会問題になるほど「地域の崩壊」「孤立化」がすすむ中で、共同組織がもっともっと地域で助け合いやささえ合いの運動を強めることが期待されています。さらに、共同組織が地域に根を張り、要求をもち寄り、自治体や国の政治を住民本位に変えていく「主権者」として力をつけていくことが重要です。こうしたとりくみに職員集団が積極的にかかわることを強めましょう。
 今年九月、第一一回全国共同組織活動交流集会が老人医療費無料化発祥の地・岩手で開催されます。盛岡医療生協の理事・支部長・運営委員・職員が「民医連についての学習」を行い、組合員と職員が参加する「沢内の心を今に引き継ぐ」構成劇も準備されています。全国連絡会には三五県連から委員が集まって準備に当たっています。全県連から最低一五〇〇人以上の参加が目標です。熱心な討議を通じて、テーマは「いま、いのち輝く新しい福祉の国づくり〜雨ニモマケズ、風ニモマケズ、安心して住み続けられるまちづくりを〜」に決まりました。昨年秋、八〇〇人規模の参加で成功させた大阪民医連共同組織交流集会はじめ各地協や各県で共同組織の交流がすすんでいます。各地のとりくみをもち寄り成功させましょう。こうした共同組織の活動に研修医や医学生、職員の積極的参加を呼びかけます。

6節 経営活動と管理運営

 二〇〇九年度決算の医科法人合計の経常利益率は、一・六%となり前年〇・七%から大きく改善しました。二〇〇八年は二〇〇〇年以降最悪で三四%の法人が赤字となり、「民医連経営は未曾有の危機に直面している」と提起しましたが、各地での経営改善のとりくみで、〇九年度は一七%になりました。二〇一〇年度上半期のモニター法人調査でも、経常利益率一・八%(前年同期〇・八%)と、引き続き改善基調となっています。しかし、社会保障費自然増の年間二二〇〇億円の削減計画を中止させたことによって二〇一〇年改定では診療報酬は下がらなかったものの(+〇・一九%)、過去四回の診療報酬引き下げ(計▲八・七六%)は経営に深刻な影響を与えています。また、昨年の診療報酬改定ではDPC病院などに若干の経営改善効果はあったものの、中小病院、診療所などには厳しい内容となっています。また大型のリニューアルを控えている法人も少なくなく、経営基盤を確かなものにしなければなりません。
 民医連経営は全体として、この一〇年、事業キャッシュフローで設備投資と借入金の返済をまかなえないという水準で推移してきました。こうした中、資金困難に直面する法人も増加しました。事業キャッシュ率は、二〇〇九年で平均六・〇%(二〇〇〇年以降四〜五%水準)と低い水準です。また、自己資本比率は二〇〇九年度末で一七・九%となっていますが、この一〇年でみると、利益剰余金での増加はわずかです。利益剰余金がマイナスで累積赤字を抱えている法人が約五割です。経常利益率五%、事業キャッシュ率七%〜八%を目標に引き続き努力することが必要です。
 二〇一〇年度経営委員長会議では、経営と管理の改善に向けて、(1)民医連綱領・事業所の理念や基本方針の徹底が経営改善の大前提であること、(2)経営戦略、中長期計画の策定が必須の課題であること、(3)連携の質と量が経営を左右する重要課題となっていること、(4)全職員参加の経営を正面にすえたとりくみをあらためて重視し、その基礎となる会計制度や管理のしくみの見直しと改善をすすめること、(5)医師確保と事務幹部育成を重視すること、(6)診療報酬制度、支払い制度、税制、連携問題など経営の側面からも、たたかうことを重視し具体的実践を展開すること、の六点を提起しました。各地で積極的に受け止められ、二〇一一年度予算編成論議が開始されています。引き続き、民医連経営の強みである「たたかう経営」「全職員参加の経営」「共同組織とともにすすめる経営活動」「対等平等の労使関係」「保健予防活動」「医療・介護の複合体であること」などを生かしきるとりくみを攻勢的にすすめるとともに、経営と管理にかかわる弱点にもきちんと向き合うとりくみをすすめることを重視しましょう。
 貧困と格差、超高齢化などの地域の現状を踏まえ、地域の未来をしっかり見つめて、自らの事業計画と安定的経営の実現を描くことが求められています。とりわけ、中長期の経営計画を確立できていない法人・事業所は、経営幹部を先頭にとりくみをすすめましょう。病院リニューアルなどの大型設備投資が必要な法人も少なくありません。しっかりした戦略にもとづく計画とそれを実践する力を積み上げていくことが求められています。また、統一会計基準準拠状況調査では、管理会計制度の確立も含め、依然として基本的事項の整備やとりくみに課題を抱えています。経営に関わる知識や技術を大いに吸収するとりくみをすすめるとともに、基本的事項の整備をすすめましょう。
 今期、全日本民医連として地協経営委員会、地協経営委員長会議を設置しました。個別的な援助も強めています。全国や地協、県連などの機能を十分生かし、自らの法人、事業所を客観化することも重要です。さらに医療・介護制度の動向を機敏につかみ、対応することや法人制度改革への的確な対応が重要です。引き続き困難法人への援助、川崎、徳島対策をすすめます。今期、全日本民医連として共同購入事業を促進する立場から検討チームを立ち上げ、医薬品や医療材料、介護用品などについて全国的な共同事業化について具体的な検討を行っています。

7節 民医連の組織的課題

1.利根中央病院支援

 長年、大学からの医師派遣に頼ってきた利根中央病院が、医師引きあげを契機に困難に陥っています。一方、利根・沼田医療圏は医療過疎地域で、利根中央病院が長年、救急車の半数以上を受け入れてきた実績と地域からの信頼、期待があります。医師退職の契機は大学からの引きあげですが、病院建設や管理運営問題での医師集団、職員集団との意思疎通が不十分だったこともあり、この三年間(今年度末予定含む)で内科、外科を中心に二〇数人の医師が減ることになります。
 「民医連を脱退すれば医師派遣の継続が可能ではないか」との判断から一時、常務理事会で民医連脱退が検討された時期もありました。しかし、大学からの医師引き上げ問題は全国どこでも起こっている問題であり、本質問題ではないとの判断で「脱退検討声明」は一〇月理事会で撤回されました。いまも困難な状況の中で地域医療を守るために日夜奮闘している医師や職員が存在します。利根中央病院の「存亡の危機」は、地域医療の崩壊を意味します。
 いま、必要なことは力を合わせ「利根・沼田」地域の医療、住民の医療を受ける権利を守ることです。同時に並行して管理運営体制を立て直し、困難に陥った要因を総括するとともに、民主的で科学的な管理運営を貫き、医療構想をつくり上げなければなりません。そのためには、医療圏の七割の世帯を占める医療生協組合員に依拠し、行政、大学などとの連携と群馬民医連、全日本民医連による医師支援などが必要です。全日本民医連はこの半年間、群馬民医連、医療福祉生協連合会とともに利根保健生協への援助を行ってきました。今年四月より一年間の予定で県連及び利根保健生協から内科医師四人、外科医師二人の支援の要請が出されました。全日本民医連は、どの県連、事業所も厳しい医師体制ですが、これまで幾多の歴史が示したように、「困難を共有し、仲間と連帯する」という民医連の精神を発揮し、全国の力で要請に応える決意です。積極的な検討をお願いします。

2.その他の活動

 日本が朝鮮半島を植民地化して一〇〇年目の昨年、藤末会長を団長とする「平和と友好を深める」韓国ツアーを行い、日本の加害の歴史を学び、たたかう人たちとの交流を行いました。また、日本と同じように医療や介護分野に新自由主義的政策を取り入れている韓国でたたかっている全国保健医療連合の招きで山田副会長、江原理事をピープルサミットに派遣し交流を深めました。スイスで行われたIPPNW(核兵器廃絶を求める国際医師の会)総会へ代表派遣を行いました。次回は二年後に広島で行われます。中国・毒ガス被害者救済支援にもとりくみました。キューバとの交流を通じ医療機器を贈る運動を行ったほか、キューバ科学省・商務省と協議しヒブワクチンの日本国内での販売が可能になるよう検討を開始しています。第三回「キューバの保健と医療視察」を一月に開催しました。
 「自主共済(助け合い事業)」を認めず「保険業」として扱う法改正に伴い、民医連の仲間をささえ、助け合う「共済」事業を守るために法的な組織整備をすすめています。全国の仲間の連帯組織として守り発展させましょう。
 全日本民医連として県連事務局長集中研修会を行い、県連のとりくみや運営の実態交流と県連に求められている役割について交流を深めました。集中豪雨に見舞われた奄美大島に対し、カンパを呼びかけ、鹿児島民医連は医療、生活復興支援を行いました。今年一〇月、東京で第一〇回学術運動交流集会を開催します。全国から実践をもち寄りましょう。
 今年四月の第二八回医学会総会に向けて、民医連も参加する「戦争と医の倫理の検証をすすめる会」が戦争責任を検証する運動をすすめています。全国各地でいまだに「人体の不思議展」が商業ベースで行われています。問題点を告発し、中止を求める運動をすすめましょう。
 地震で過去最大規模の死者を出し、今なお困難に直面しているハイチへの支援(義援金や子どもに絵本を贈る運動)にとりくんでいます。「非営利・協同総合研究所いのちとくらし」は若手研究者も参加し、日本における「医療・社会保障の課題」「非営利・協同組織のあり方」などの検討を深めています。

3.規約改正について

 綱領改定をうけ、四役会議のもとに規約改定プロジェクトをつくり検討を行ってきました。現時点での改正の問題意識は、新綱領との整合性をもたせ、実際の運営と規約との乖離を解消することです。要点として、(1)規約前文の歴史的経過の記述の扱い(2)「名称」問題、(3)加盟要件の検討、(4)法人との関係の整理、(5)県連の位置づけや個別法人への指導・援助のあり方、(6)理事会・評議員会運営規約上の整合性や整理など、です。早期にまとめ提案し、次期総会で決定したいと考えています。

III章 民医連運動の飛躍のための重点課題

1節 医師問題の飛躍を〜医学生、研修医の中に民医連の魅力を伝えよう

 昨年六月に開催した「医師の確保と養成に関する全国会議」(伊東集会)は、民医連の研修の積極性を確認するとともに、医療活動と医師養成の前進を一体のものとしてすすめること、情勢の激変を乗り越えるために「全国はひとつ」の立場で全日本民医連の総合力を大いに発揮し、医学生や研修医、既卒医師にも、民医連で初期研修や後期研修、医師として働くことを呼びかけよう、と提起しました。「オール民医連」「フルマッチ」をキーワードにしたこの伊東集会の提起を担当者任せにせず、民医連全体として受け止め実践することが大切です。県連、法人、院所管理部は、医学対活動の前進と医師が育つ環境をつくる方針と体制を新たな情勢にふさわしく確立しましょう。
 全国的協力の中で、民医連と医学生とのつながりをつくり、すそのを広げる中でこそ、医学対の前進も可能です。
 また、年間入院三〇〇〇件未満医療機関の臨研取り消し問題のたたかいと対応は、民医連の後継者養成にとどまらず、卒後臨床研修への小規模病院の参加が地域と歩む総合力を持った医師を育て、地域医療を守り発展させる医師を増やす力になることを世に示すことです。「プライマリケアを重視する」という日本の卒後臨床研修制度の本旨を実現する活動として、粘り強くとりくみを続けましょう。

1.日々の実践を自らの言葉で語る、そこから出発しよう

 毎年百数十人の新卒医師が民医連で研修を開始しています。そこに至るまでには確かな「接点」があり、民医連で研修する「動機と意思」があります。最初の出会いは、高校生対策や、職員・組合員による紹介運動、新入生歓迎運動などであり、私たちが意識して接点をつくらない限りできません。そして民医連との出会いからマッチングに至る決め手になるのは民医連院所での医師、他職種の日々の実践であり、研修医を育てようとする姿勢でした。
 患者と対等平等の立場に立とうとする「共同のいとなみ」の実践、『笑って死ねる病院』に見られるような人権を重視する実践、生活と労働の視点から疾病をとらえ、急性期から在宅、介護まで一貫した医療・介護の連携、熱心な研修指導、地域医療を守るための連携など、どれも魅力ある民医連の活動です。こうしたとりくみは外部の指導医などからも高く評価されています。また、綱領で結ばれた医師・職員集団や共同組織は、青年医師や医学生の不安に応え将来の医師像を見つけるうえでの大きな存在となり、暖かい雰囲気をつくりだしています。医学対は特別な人でなければできない活動ではなく、多くの医師や職員が当たり前にやっていることを気軽に語り、見せることが出発点です。

2.民医連の医療と運動に共感する医学生・奨学生の確保は基本中の基本!

 二〇一〇年、民医連で後期研修にすすむ研修医は若干増え、低学年からの奨学生が後期研修にすすむ割合も増えました。これらは、初期研修と後期研修を一体のものとして「どんな医師をめざすのか」をいっしょに考え、提案する努力を重視してきたこと、そして後期研修のプログラムを整備し、その指導体制を含めて初期研修医に見えるようにしてきた結果と考えます。ある調査によると将来の志望分野にプライマリケア医を志向している学生は三三%で、民医連の中小病院に参加する研修医が増える条件はあります。総合的な力と一定の専門性を持つ地域医療を担う医師として成長したい、という要求に応える活動をいっそう強めましょう。
 医学生対策の基本は「医学生の民主的成長への援助」と「民医連の医師後継者対策」の二つであり、変わることはありません。日常的にこの活動をすすめる担当者、医師は、オール民医連を代表して高校生、医学生に出会い、語るという気概をもって奮闘しましょう。
 高校生対策や実習などに力を入れてとりくんだ結果、一六卒奨学生数は一〇月時点で同月比過去最高となりました。年一回開催している「民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」実行委員会には毎回約一〇〇人の医学生が参加し、自由闊達に討論しています。昨年は「介護・福祉」をテーマに、この一〇年で最高の一八四人の医学生が参加しました。韓国人道主義実践医師協議会と全国保健医療連合、韓国の医系学生たちが行う離島医療研修への参加や、反核医師の会医学生部会の活動なども広がっています。こうしたとりくみが医学生ゼミナールへつながっています。
 奨学生会議は民医連や社会に触れ、学び、交流する貴重な機会です。最初は経済的な理由で民医連奨学生になったとしても奨学生会議を通じて学びあい、成長している報告は少なくありません。奨学生が自信を持って民医連を語り、オール民医連の視点を持って活動し、仲間を増やせるような援助を強めましょう。最終の進路選択時期になってまったく迷わない医学生などいません。そこで大切なのは、これまでの民医連との関わりで、いかに成長できたと実感しているか、民医連の医療・福祉の活動の意味をどれだけ理解し、具体的なロールモデルを民医連医師の中にイメージできているか、ではないでしょうか。
 二〇一一年、民医連にマッチした一一卒一三〇人は新臨床研修制度発足以来、最低となりました。ここを新たな出発点として、遅れている一二、一三卒対策(新五、六年生対策)を強めなければなりません。九州沖縄地協では、地協医学生委員長を先頭にして週報を発行しながら卒年対策をすすめ、沖縄での受け入れ増や福岡の奨学生を鹿児島との「たすき掛けプログラム」に着地させるなど、オール民医連でとりくむ医学生対策の成果が出始めています。しかし、「地元県連主催での研修説明会をしても医学生の参加が難しい」といった大学も少なからずあります。各地の大学で全国、地協の力を結集して「オール民医連の医療と研修を語る集い」を開催します。
 医学生が研修先を考える時期は主に五年春からです。民医連での研修を決定的にするためには、この期間に募集定員の一〇倍以上の民医連での実習経験者を組織することです。特に春、夏実習の組織と実習を魅力あるものにするために特別体制をとりチャレンジしましょう。

3.新たな飛躍をめざして〜「全日本民医連医師研修センター」の発足

 「民医連はすばらしい活動や研修を行っているにも関わらず宣伝が下手」という指摘があります。「全国の民医連がもつ総合力を発揮すれば、医師を育てるうえで大きな可能性がある」。これは一昨年の学術運動交流集会で講演された県立東金病院長の民医連への期待の言葉です。
 今期、全国の臨研病院の紹介ハンドブックを作成しました。全日本民医連として医学生、研修医、既卒医師を対象にした募集広告を医学関係の雑誌に掲載しました。また、精神科医療にすすむ医師のための後期研修ハンドブックを一万部作成し、後期研修を呼びかけています。
 同時に、それでも十分ではありません。ある大学のアンケートでは、医学生が研修病院を考える際、最初の出会いがインターネット、口コミ、実習、説明会の順となっています。インターネットを通じて、全国各地でくり広げられている民医連の理念や活動、研修内容、実習や研修会など企画、体験、専門医の取得条件、悩み相談などリアルかつ生き生きと伝え、民医連合同研修説明会の開催や実習、面談につなげていくことを目的として「全日本民医連医師研修センター」(名称募集中)を開設します。その活動を企画する体制をとり、活動内容をリアルタイムで伝える独自のホームページを開設します。そのために予算措置と体制をとり、地協や各病院などとも広く連携しながらコンテンツを充実させていきます。これまで通り『メディウィング』も活用します。こうした活動を通じて、医師をめざす高校生、医学生、研修医、既卒医師や関係者の中で民医連が話題となる「民医連ブーム」を巻き起こしましょう。

4.民医連医師のアイデンティティーを高めるために

 第三九回総会は、貧困と格差・超高齢社会に立ち向かう医療活動の方向性として「八つの重点課題」を提起しました。「伊東集会」では、これらにしっかりと対応して医学生・研修医からみてもわかりやすい医師像として、「総合性を自らの専門として高い力量を持つ家庭医・総合医」と「総合的基礎力を備えた専門医」を両方バランスよく養成していくことが求められている、と明記しました。
 昨年八月に開催した民医連自主研究会代表者会議では、一四の研究会、科別医療委員会の代表が参加し、民医連の専門医のおかれている現状や課題が報告され、民医連の全国ネットの後期研修、専門医取得コースの可視化や情報の共有、初期研修医への積極的なアプローチについて議論しました。今後、自主研究会と全日本民医連医療部、医師部、開設予定の民医連医師研修センターが協力して、民医連でがんばる専門医を増やし、「八つの重点課題」の実践がすすむよう努力することを確認しました。各県連、医局で自主研究会をいっそう積極的に位置づけ、民医連らしい臨床研究や研修、多くの研修医の参加を呼びかけます。
 また、各医師が各種学会などに参加し、「貧困と医療」などをテーマに積極的に発表することも重視しましょう。

5.既卒医師対策の強化と働きつづけられる条件づくり

 既卒採用の医師の中にも、かつて民医連の奨学生であったり、実習に参加した経験を持つ医師が多くいます。また、いったん民医連を離れた後、再就職した医師も少なくありません。非常勤として働く中で、民医連医療に共感し、常勤として参加する医師もいます。地協、県連、法人で情報を交流したり、組織的、継続的にアプローチする体制をとりましょう。
 そして、今働いている医師が働き続けられるための条件整備をすすめましょう。そのためにも、医師の増員や労働条件の改善にむけて新たなドクターウエーブの運動を広げましょう。
 今秋にはドクターズユニオンの呼びかけで一〇〇〇人規模の医師集会が予定されています。今の医療をなんとかしなければと考えている医師は全国にたくさんいます。全国で、地域でともに医療を守り発展させるために新たな共同を広げましょう。

2節 「知は力」、民医連綱領を身につけた職員の育成を重視しよう

 憲法とともに制定された教育基本法(旧法)は「憲法の実現は教育の力に待つものである」とのべました。「知は力」です。法人幹部、事業所管理者を先頭に、綱領や総会方針を自らが学び、語るなど年一回は必ず教育や研修の機会をつくりましょう。医師の理念・制度教育を医師委員会や医師研修委員会と協力し、医局合宿や医師総会、医局会などの機会を有効に生かしながら意識的にすすめましょう。全日本民医連としてトップ管理者研修会、事務幹部養成学校をはじめ各種研修会を引き続き強めます。
 すべての職員が「綱領と歴史」「法人や事業所の地域での役割や存在意義」をくり返し学び、確信をもつことができる教育を重視しましょう。次の世代へと民医連運動のバトンが確実に手渡されなければならない今こそ、一人ひとりの職員が綱領にこめられた歴史や理念、憲法の理念をしっかりと身につけることが重要です。全ての職員、共同組織の役員などを対象にとりくみましょう。
 今日、多くの職員は民医連に入って初めて社会や政治の矛盾に気づきます。新自由主義の考え方が蔓延する中、国民の中に「自己責任論」が大きく広がり、特に青年の中では「自己肯定感」がもてず苦しんでいる状況が見られます。民医連でも同様です。しかし社会が変わるように、人権に向き合う中で人も必ず成長します。民医連は、なによりも「いのちの平等」を掲げる「人間の発達を促す」組織です。さまざまな制約や現実の矛盾を乗り越える力こそ教育です。学習と実践を統一的にとらえ、育ちあうことが重要です。事例を通じて人権意識や科学的なものの見方・考え方を養い、患者を中心にすえた職場運営をすすめましょう。そのためにも、職責者を援助し職場を「人が育つ」場にしましょう。忙しさの中で日常的に学習する機会がもてない中でも「民医連新聞」や『民医連医療』、『いつでも元気』などを職場の学習などで積極的に活用・紹介し、全国の経験を学びましょう。

3節 平和と「権利としての社会保障」実現めざしダイナミックな運動を

 国は公的保険・提供体制の一体改革に本格的に着手しました。ねらいは自己責任を迫り、財源として消費税を目的税化することにあります。この方向は日本の社会保障制度そのものの根幹を揺るがす問題です。団塊の世代が高齢化を迎える時代が想定されています。国の財政は国民の幸せを保障するものでなければなりません。否定的未来ではなく、展望ある未来をつくり出すために、たたかい、第一歩を踏み出さなければなりません。そのために、腹を固めましょう。民医連がこの日本や地域で存在する意義を存分に発揮しましょう。
 一昨年の総選挙を前後して始まった「新しい日本」に向けての国民的な「模索」の時期にあって、憲法が輝き、一人ひとりの人権が尊重されるよう多くの仲間と共同して運動を強めます。その立場から「社会保障国会」、統一地方選挙をたたかいます。
 具体的には、(1)「新高齢者医療制度関連法案を上程させない」「成立させない」「介護保険の改悪を許さない」、さらには医療・社会保障政策の抜本的転換をめざし、民医連として大規模な運動を展開します。他団体に積極的に呼びかけ共同の輪を大きく広げましょう。対県や対市町村要求をまとめ、自治体交渉、地方議員要請を旺盛にすすめましょう。
 統一地方選挙では「国保改善」、「介護改善」など、具体的な要求を掲げ、全ての職員、共同組織の仲間に「選挙に行って政治を変え、要求を実現しよう」と呼びかけます。これらをすすめる闘争体制を確立し、必要な学習資材を用意します。
 (2)「現場」からの具体的な事例を通じて告発し、記者会見や行政への提案、交渉、国民、地域住民に知らせることを重視します。「国保等死亡事例」の公表、SW委員会がとりくんでいる「医療費・介護費相談調査」や「無低診」利用者のまとめなどを行います。これを全国、各県連単位ですすめしょう。六月に無料低額診療事業実践交流会を行います。
 (3)「全日本民医連の医療・介護再生プラン案」のバージョンアップを準備中です。これらを早期にまとめていきます。
 また、研究者らといっしょにとりくんでいる「新しい福祉国家を展望する構想づくり」をすすめ、関係団体と積極的に懇談します。

おわりに

 第四〇回総会は岡山で開催されます。約半世紀前人間裁判≠ニ呼ばれる「朝日訴訟」が起こされた地です。この時代は民主勢力も民医連の力も今よりずっと小さなものでした。しかし、国民の切実な要求を背景に、安保闘争、三井三池闘争をはじめ、世界にも例がない住民運動で国に小児マヒの生ワクチン一三〇〇万人分を緊急輸入させたり、労災職業病・公害をなくす運動などが大きく広がりました。そうした運動が、四七〇〇万人が暮らす革新自治体を誕生させ、医療や教育、福祉、暮らしを重視する地方政治を実現しました。
 今、民医連は医療・介護の分野で約二%近いシェアをもち、約八万人(常勤換算六・八万人)、三五〇万近い共同組織を有し、人権を守る民主的諸運動、医療・福祉の運動を展開しています。私たちの運動は、苦難を伴いますが、やりがいのある仕事です。伊波洋一さんは「基地がある限りたたかいは続くでしょう。運動がある限りいつかきっと私たちが勝つでしょう。」と語りました。この発言に多くの国民は力と勇気をもらいました。「歴史を変えるのは私たち」です。「転換期」の情勢にふさわしいダイナミックなとりくみを行おうではありませんか。

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