全日本民医連 MIN-IREN
TOP
ENGLISH
ハングル
お問い合わせ
私たちのめざす医療
民医連の学術活動
介護・福祉
医師・看護師
生かそう憲法・守ろう平和
いのちと人権を守る
歯科
医系学生
まちづくり
文字サイズ
標準
会長メッセージ
理事会あいさつ
全国に広がる民医連
データでみる民医連
民医連綱領、運動方針
マンガでみる民医連
あなたのまちの民医連
民医連の紹介
民医連綱領、医療福祉宣言、運動方針
インデックスページ

第40期第1回評議員会決定

2012年8月26日 全日本民医連第40期第1回評議員会

はじめに

I.総会以後の情勢の特徴とこの間の運動
〈民意と国政の異様なねじれ〉
〈変革を求める新しい市民・国民的運動の胎動〉
〈矛盾の根本、日米安保に迫る 運動を〉
〈消費税・社会保障改悪は国民生活も医療も破壊する〉
〈政策を変えるのは国民の運動の力〉
〈原発の再稼働を許さず、全原発の廃止にむけ政治決断を〉
〈世界でも日本でも「脱」新自由主義的政策の流れが生まれている〉

II.この半年間のとりくみ
〈総会方針学習が大きな力となっている〉
〈9年ぶりに千人の大台に乗った新卒看護師受け入れ〉
〈医師分野での前進と課題〉
〈利根中央病院への医師支援と到達点〉
〈福島連帯支援委員会の発足とその目的〉
〈核害と震災被災者支援にとりくむ〉
〈健康権保障の到達と課題〉
〈二〇一一年度の経営成績〉

III.第2回評議員会までの重点課題
〈いのち守る共同〉
〈健康権・生存権守る〉
〈共同組織と共に〉
〈中小病院〉
〈「医療・介護再生プラン」〉

おわりに

はじめに

 第四〇回総会から半年が経過しました。新入医師一四二人をはじめ、多くの新しい仲間が民医連の事業所に入職しました。また、全国で総会方針の学習が旺盛に繰り広げられました。一方、原発再稼働など国のあり方をめぐって重大な局面を迎えています。総会方針が示した、まさに「せめぎ合い」の時代です。
第一回評議員会は、(1)総会後の半年間の活動を振り返り、教訓をまとめること、(2)現在の情勢の特徴をつかみ、総会方針の具体化を目指す第二回評議員会までの重点課題を確認すること、を役割とします。また、民医連の歴史をまとめた『無差別・平等の医療めざして』の発刊記念レセプションを行いました。

I.総会以後の情勢の特徴とこの間の運動

〈民意と国政の異様なねじれ〉

 二〇〇九年秋の政権交代は「これで日本は変わる」と多くの国民が期待を抱きました。しかし、政権公約を次々と投げ捨て、現野田政権にいたっては「自民党・野田派」と言われるように、自民党や公明党と一緒になって翼賛政治をすすめています。被災地の復旧・復興は大幅に遅れています。政府は原発事故の収束、原因究明が全くないまま、再稼働を容認しました。「復興」に名を借りた新たな利権あさりが生まれています。
一方、公約にはなかった消費税の大増税、大企業・富裕層への減税、日本の農業や医療などに壊滅的な打撃を与えるTPPへの参加をすすめようとしています。オスプレイの強行配備、武器輸出三原則の緩和、集団的自衛権の容認発言など日米軍事同盟を新たな段階に深化させようとしています。
大型公共事業を全面的に復活させる一方で、障害者自立支援法や後期高齢者医療制度廃止の方針を撤回しました。さらに、社会保障の基本理念の変質をすすめ、生活保護への締め付け・切り捨て、保育への公的責任の放棄と民営化、介護保険制度の改悪など、自民党・公明党政権ができなかったことを三党による密室合意で強行しました。憲法改悪や衆議院比例定数削減ももくろまれています。大手マスコミが悪政推進の旗振り役となっています。これらのどの政策にも六割を超える国民が反対しています。しかし野田政権は、「国民の生活・生命より財界・アメリカ第一」を求める支配層の忠実な実行者となっており、今ほど民意と国政がねじれていることはありません。

〈変革を求める新しい市民・国民的運動の胎動〉

 しかし、国民は黙っていません。首都圏の青年たちがツイッターなどで呼びかけた脱原発と再稼働反対の官邸前抗議行動は週を追うごとに人々が集まり、六月二九日にはついに二〇万人を超えました。これらの動きは急速に全国に広がっています。こうした動きを黙殺していたマスコミも取り上げざるをえない状況です。この運動は「紫陽花(あじさい)革命」ともいわれ、今まで運動に参加したことのない青年や多くの市民が自分の意思で参加しているのが特徴です。八月二二日には、野田首相との面談が実現しましたが、首相の反応はまったく納得できるものではありませんでした。ウォール街を占拠する「九九%」(OWS運動)の市民の運動にも連なる動きです。TPP参加問題では、日本医師会、JA全中など既成大組織と市民がいっしょになってオールジャパンの運動が広がっています。米軍基地問題では基地縮小、オスプレイ配備反対を求めて一歩も引かない沖縄県民の意志が、県知事の姿勢を毅然としたものにさせています。今、国政を左右する重要なたたかいに全国各地で「有(う)象(ぞう)無(む)象(ぞう)」(脱原発杉並の会が自らをこう名乗り、流行となった)の人々が集まり、立ち上がっています。

〈矛盾の根本、日米安保に迫る 運動を〉

 それぞれは「要求の一致」にもとづく課題別共同行動ですが、「共通の敵」も明らかになりつつあります。根源は、日米安保条約です。「原発もTPPも消費税もいらないよ 九九%のための社会を目指す市民グループProject99%」など多くの市民運動が生まれ、民医連とも交流を深めています。矛盾の根源である日米安保の問題点の学習を深め、日米安保をなくしたら日本はどう変わるかを展望した運動が求められています。七・一六 一〇万人集会実行委員会、TPP円卓会議等々を通じて、これまでつながりのなかった多くの市民団体や人びととのつながり、共同の行動が生まれています。総会方針の「架け橋になろう」との提起が大きな力となっています。

〈消費税・社会保障改悪は国民生活も医療も破壊する〉

 消費税が一〇%になれば、民医連の医科法人だけで新たに年間七二億円の負担増が強いられます。東京・健和会では二〇一一年度の消費税は二・三億円であり、消費税が上がれば倍の負担となります。全国自治体病院協議会の調査では二〇一〇年度一病院あたり平均一・二四億円増です。このままでは、医療・介護の崩壊は加速度的にすすみます。最も弱い立場の人々に過大な負担がかかる消費税増税は、家計をより圧迫し、GDPの六〜七割を占める内需をいっそう落ちこませることになります。
芸能人をスケープゴートにした生活保護への集中的な攻撃は、親族相互扶養を強制するものであり、明治時代の「恤(じゅっ)救(きゅう)規則」(救貧法)と同じ思想です。成人した家族が家族の面倒をみなければならないという発想そのものが「自己責任」の論理です。また、生活保護世帯が増加している要因である「貧困と格差」を生み出している社会には目を向けていません。最低限度の生活の“ものさし”である生活保護へのバッシングは、その“ものさし”を縮め、社会保障の給付水準、最低賃金を含む労働者の賃金水準の引き下げを狙っており、国民全体の権利を侵害することになります。国会では、なんの議論もないまま、三党合意で、「社会保障制度改革推進法」を国民の声を無視して強行採決・可決しました。社会保障の理念として「自助、共助を原則に、家族相互の助け合いを基本とする」ことが明記されました。憲法二五条を否定する、重大な社会保障理念の変質です。人権意識を高め、「権利としての社会保障」が当たり前の社会にしなければなりません。野田首相は消費税増税・社会保障改悪に命をかけてとりくむとしていますが、「命をかけなければならない」ことは、なにより生活不安、健康不安をかかえ、見通しの立たない生活を強いられている被災地の復旧・復興と原発からの撤退を決断することであり、国民生活を守ることです。
国民はこの政権と翼賛政党にレッドカードを突きつけています。世論調査では民自公三党合わせても支持率が三〇%を切る状態です。こうした状況のもとで、橋下徹大阪市長が率いる維新の会が国政進出を狙い、マスコミも新しい旗手として持ち上げています。三〇歳代の支持率は今なお七割を超えています。橋下氏は、「日本ほど低負担で超、超、超高福祉の国はない」、「私学助成を求める前に、自己責任で公立校にいけ」、「憲法九条は、いやなことはしないという思想の塊」、などの発言をしています。また、「市職員の政治活動や入れ墨の調査と解雇の脅迫」、「教員への国歌斉唱の強制、式典での教員の口の動きのチェック」「大飯原発再稼働容認」の行動など、具体的な事実から出発した学習と幅広い人々との間で丁寧に対話することが重要です。

〈政策を変えるのは国民の運動の力〉

 国や地方自治体の政治を変えるのは強いリーダーではなく、圧倒的な国民の運動の力であることは歴史が証明しています。四〇年前に日本復帰を果たした沖縄の力になったのは、「アメリカ統治ではなく日本国憲法の下で暮らしたい」という県民の願いであり、運動でした。朝日訴訟を通じて生活保護基準を大幅に引き上げさせたのも労働組合や国民のたたかいによるものでした。
今、国民の中には、政治に対する根深い怒り、憤りがあり、「なにか行動したい」という思いがあふれています。国民の力で国の政治、政策を変えるチャンスです。
全日本民医連は会長を本部長とした「『いのち』を守る共同行動推進本部」を発足させました。これまでの「構造改革」に反対する立場から「消費税を上げないですむ社会の実現」「原発に頼らない社会の実現」など前向きなたたかいと提案型運動をすすめていきます。

〈原発の再稼働を許さず、全原発の廃止にむけ政治決断を〉

 福島第一原発の廃炉が決まり、残った五〇基の原子力発電所が五月五日の「子どもの日」に全て止まりました。国民の運動と世論が「止めた」歴史的な日となりました。野田首相は、六月一五日、このままでは「日本経済が立ちゆかなくなる」、「部分停電になれば命に関わる事態も生まれる」として再稼働を決めました。「原発安全神話」の根拠が崩れ、核燃料廃棄物処理の解決方法がまったくない中で、これほど国民の命を粗末にする無責任な発言はありません。そうした中での大飯原発再稼働は、国民の怒りをいっそう強くしています。世論調査では「この夏、原発が動かなくとも節電で乗り切る」という世論が八〇%を占めています。しかも、関西電力は原発再稼働を契機に管内の火力発電所八基を停止しました。「電力不足キャンペーン」は完全に破綻しました。再稼働は原子力ムラに群がる利権勢力の権益を守るためのものです。そんな勢力に国民の命や将来を委ねるわけにはいきません。全日本民医連が入る平和と労働センターは、昨年八月、自主的なとりくみで前年比二五%の節電をしました。この夏、「原発に頼らない国民的運動」をすすめ、原発など再稼働を許さない運動と再生可能エネルギーへの転換を求める運動を大きくすすめましょう。九月、医師を中心にチェルノブイリ・ドイツ視察を行います。
民医連は「原発をなくす全国連絡会」の中心的な役割を担い、五月二六日の全国交流会はじめ、大江健三郎氏、鎌田慧氏、坂本龍一氏ら九氏が呼びかけた「さようなら原発実行委員会」に積極的に参加し、さらに原発ゼロ首長連合、首都圏反原発連合、超党派の国会議員による原発ゼロの会などとの共同を強めてきました。七月一六日、東京・代々木公園で開催された脱原発を求める集会は今世紀最大の一七万人が、7・29国会包囲行動には二〇万人が集う歴史を画するとりくみとなりました。国内はもちろん、世界中が大きく注目しました。鹿児島県知事選、山口県知事選で脱原発を掲げる候補が大善戦しました。
政府は、今後のエネルギー政策に関し、原発依存率「〇%、一五%、二〇〜二五%」の選択肢を示してパブリックコメントを募集しました。四〇年以上経った原発を廃炉にするなら二〇三〇年には五%にしかならず、一五%、二〇〜二五%の選択はあり得ません。この選択は新たな建設もしくは老朽化した原発を使い続けることを前提にしています。また、〇%の選択をした場合には温暖化対策はすすまない、と脅しをかけています。あまりにも拙速で意図的なものです。しかしパブリックコメントには史上最多の八万九〇〇〇人が意見を出し、抽出調査で八九・一%が「原発ゼロ」、内訳では八一%が「即時ゼロ」を求めています。再生可能な自然エネルギーに力を入れ、大量生産・大量消費・大量廃棄の生活を見直すことで〇%は可能です。福島第一原発事故を経験した日本が、原発ゼロを実現させ、「二〇一二年、国民の運動で日本の原発がなくなった」といわれる壮大な運動を作り上げましょう。未来に「負の遺産」を残さないために、今こそ一人ひとりが意思を示し、行動を起こしましょう。克服すべきは「無関心」です。

〈世界でも日本でも「脱」新自由主義的政策の流れが生まれている〉

 フランスではオランド左派政権が誕生、六月に行われた総選挙では左派政党が躍進し過半数を制し、前政権が公約していた消費税増税を撤回し、富裕層への増税を決めました。このように先進資本主義国においても新自由主義政策の転換を求める大きなうねりが起きています。韓国でもTPPのモデルと言われる米韓FTA廃棄を大きな争点としてこの秋、大統領選挙が行われます。
六月の沖縄県議会議員選挙で民主党は惨敗し、野党勢力が多数を確保、「普天間基地撤去、辺野古移設反対」の県民の意思を明確に示しました。七月一二〜一四日、全日本民医連は第二六次辺野古支援連帯行動を行い、名護市役所を初めて訪問し、連帯を確認し合いました。世界一危険な基地である普天間基地に、世界一危険な欠陥軍用機であるオスプレイが配備されようとしており、沖縄、岩国を拠点に全国七ルートの訓練飛行計画が予定されています。九月九日にはオール沖縄による大規模な県民集会が行われます。全国から代表団を送りましょう。あわせて全国での連帯したたたかいを呼びかけます。
地元二紙と朝日新聞への五月一五日の普天間基地無条件返還を求める意見広告には全日本民医連や県連・法人・事業所なども積極的に賛同し、大きな反響を呼びました。八月の原水禁世界大会、広島で行われるIPPNW世界大会が大きく成功しました。

II.この半年間のとりくみ

〈総会方針学習が大きな力となっている〉

 五月に開催した総会方針を学ぶ講師養成講座を二三〇人が受講し、全国各地の県連・事業所では、学習会、読了、DVD視聴など多様な形で総会学習運動が積極的にとりくまれ、一〇〇%終了したところも多く生まれています。参加者からは、震災支援などと結びつけて「民医連で働いてよかった」、「民医連の連帯を実感した」「『架け橋』の提起は新綱領実践そのもの」「なぜ、健康権保障なのか理解できた」など共通した感想が出されています。
震災で半年延期となった全国青年ジャンボリーは被災地・宮城で規模を縮小しながらも四五〇人の青年が参加し、全国の仲間の連帯、民医連への確信を深める機会として成功しました。民医連の震災支援のルポルタージュ『被災者に寄りそう医療』は多くの人々、職員、共同組織の仲間に感銘を与え、一万三五〇〇部普及しています。さらに多くの職員、共同組織の仲間、医系学生などに普及し、民医連の活動、マインドを伝えましょう。民医連の通史『無差別・平等の医療をめざして』は三三七九部普及しています。韓国のグリーン病院からは民医連の歴史に学びたいとハングルでの翻訳・出版の要請を受け、了承しました。さらに、全日本民医連が発行した『福島第一原発事故からなにを学び、取り組むのか』のパンフも韓国で翻訳・出版され数千部が普及しています。日韓の交流を強めアジアにおける健康権保障のとりくみ強化につなげていく予定です。

〈9年ぶりに千人の大台に乗った新卒看護師受け入れ〉

 新卒看護師受け入れは九年ぶりに千人の大台を回復(一〇三四人)し、奨学生数(一四一二人)も引き続き同月(四月)比で過去最高となりました。看護受け入れ担当者会議、拡大看護委員長会議を開催し、全国のすすんだ経験を共有したり、民医連医療・看護を前面に押し出し、高校生からのきめ細かい対応の結果です。しかし、東京民医連では看護師確保のために斡旋業者に年間二〇〇〇万円以上も支払わなければならないなど厳しい状況です。“全国はひとつ”の立場でさらに看護師確保を旺盛にすすめましょう。
看護分野では医労連などと一緒になって看護師特定能力認証制度反対の学習運動をすすめるためのチラシを作成しました。大いに学習・討議を行い、理解を深め、抗議はがきやFAX送付などにとりくみましょう。医師不足の安易な解消策として医行為を、認証を受けた看護師のみならず、一般の看護師にまで波及させ、現場の混乱を招く可能性のある制度の創設に全日本民医連は反対です。日本医師会など多くの医療関係団体も反対しています。地域の看護職との懇談や他団体などに申し入れ、共同をすすめましょう。
五月に薬局法人代表者・専務合同会議を開き、薬局の非営利一般法人化と薬局での無料低額診療実施にむけての運動、保険薬局での医療の質評価(QI)活動を行う意思統一を行いました。六月より事務幹部学校第四期(五八人)を開始しました。

〈医師分野での前進と課題〉

 「アンダー三〇〇〇件」問題を含む臨床研修制度の見直しは、中小病院を臨床研修制度から閉め出し、新制度発足時にめざした「総合的な臨床能力を有する医師の養成」の方針を大きく後退させるものでした。民医連は多くの医療団体とともに、本来の趣旨を貫く医師養成制度を存続・発展させるためにたたかってきました。その結果、「研修内容が充実していると認められる施設」について年間入院三〇〇〇件以下であっても引き続き認めさせました。四万筆の署名を集めた「オール宮崎」のとりくみなどに象徴される地域ぐるみの運動の成果であり、民医連の研修が評価された結果でもあります。
地協・各県連が協力しあい、フルマッチめざして連携を強めましょう。今年度、一四二人の新入医師を迎え入れました。新一年生の奨学生は四六人、民医連奨学生は四二一人となりました。新一年生奨学生は大分六人、群馬五人、兵庫四人、北海道・埼玉・宮崎・福岡三人など大きな変化を生み出しています。奨学生が生まれていない県連も、この夏、大きな飛躍を勝ちとりましょう。今年で三回目となる新卒医師統一オリエンテーションや二年目の研修医を対象とするセカンドミーティングを開催しました。これらのとりくみは“民医連はひとつ”を実感できる機会となっています。八月の医学生のつどいも大きく成功しました。民医連の活動が内外から注目を集めている今、医学生対策も、医学生運動への援助と民医連を正面から語る本道を貫き前進させましょう。

〈利根中央病院への医師支援と到達点〉

 一年間に及ぶ利根保健生協・利根中央病院支援の終了を確認しました。一年間の支援医師は九七人に及びました。利根中央病院はその後、新しい医師の確保や初期研修医の受け入れなどの変化をつくりだし、医局朝礼や科を越えた連携、総合医養成方針の確立、地域の医療機関との連携の模索、さらには病院建設を含む新たな医療構想、医師養成の成功に向かって着実に歩み始めています。また今回の支援を通じて、県連内の医師の交流と団結も強まっています。今後、総合医養成などの課題で全日本民医連・地協として援助を行います。

〈福島連帯支援委員会の発足とその目的〉

 福島県民医連からの要請に基づき、全日本民医連「福島連帯支援委員会」を発足させました。わたり病院、桑野協立病院への医師、看護師支援を強め、さらに薬剤師やリハビリ支援なども行い、支援を通じて県連医師集団の交流など県連機能の確立強化を援助していきます。支援連帯の目的は、(1)核害に立ち向かう民医連の事業所への支援、(2)そこで奮闘する職員への支援連帯、(3)わたり病院が引き続き臨床研修病院としての役割を果たすことができ、地域医療を守る病院として存続発展すること、(4)こうしたとりくみを通じて県連機能を強化すること、にあります。
全日本民医連は、これまでの北海道・東北地協からの支援に続き、四月から三カ月間、前副会長の大山美宏医師をわたり病院の医療・管理支援として派遣しました。これを受けてわたり病院では新体制が確立し、新たな医療構想に着手する動きが生まれています。これらの内容と医学対、医師養成の前進などを期して六月、全日本民医連医師委員長会議を福島で開催しました。現地で奮闘している医師をはじめ看護師、専務、組合員からの率直な訴えに応えて支援の意義を確認しあい、全国で支援にとりくむことを意思統一し具体的な支援が始まっています。六月、来春卒の医学生一人と五年生一人がわたり病院での研修を決意しました。

〈核害と震災被災者支援にとりくむ〉

 東日本大震災と原発事故では死者一万五八六八人、行方不明者二八四八人にのぼり、今なお多くの人々が不安定な生活を余儀なくされているにもかかわらず、国の支援は無策に等しいものです。むしろ除染、がれき処理、復興などが利権の対象となっています。さらに、この機会に乗じて、医療や農業、漁業「経済特区」構想や医療機関の大規模集約化など住民の意向を無視した成長戦略をすすめようとしています。がれき処理問題は、国の責任で正確で必要な情報を提供させるとともに、国が責任を持って処理するよう強く求めます。
一年五カ月を経ても、福島の困難な現状はなに一つ変わっていません。また、県内でも地域で新たな線引きを行い、県民を分断しようとしています。民医連は被ばく対策本部のもと、とりわけ福島原発事故核害対策として、(1)現地の民医連事業所への支援・連帯、(2)東電や国への責任と賠償を求める行動、(3)避難者や健康不安を訴える人々への健康相談活動(埼玉、北海道、京都、東京、兵庫など)にとりくんでいます。全日本民医連は昨年九月の理事会決定に基づき、現地で残って奮闘する住民の健康権を守ること、避難した人たちの健康権を守ることを両面で追求しています。全国に避難されている方々と懇談し、生活・健康管理を強めましょう。
四月、ピースボートの要請を受け、チェルノブイリの視察と懇談・調査に小西恭司被ばく対策本部長と雪田慎二医師が参加し、また、ドイツ環境問題活動家を招いた学習講演会(東京・大阪)を行いました。今後、全県連に総会方針で提起した「被ばく対策委員会(仮称)」の設置を呼びかけ、具体的な計画を持ち活動をすすめましょう。その中で、被災者に寄りそう活動を貫き、被ばく医療の担い手を意識的に育てましょう。健康・生活不安を抱える核害被害者に真摯(し)に寄り添う活動を強めましょう。
広島、長崎さらには水俣の経験などを踏まえ、全国組織としての優位性を発揮して、全国の民医連の医療機関が協力し、全国的な被災者の健康管理や子どもの健康調査などを実施していく予定です。
仮設住宅への避難を余儀なくされた人の孤独死が急増しています。宮城、岩手では仮設住宅への生活支援・健康相談活動などが地道に続けられ、三県に発足した復旧・復興住民センターの中心的な役割を担って活動していきます。復興に当たっては地域社会や医療・介護供給体制のあり方が問われました。住民が主人公の復興めざした提案や提言を現地の仲間、関係団体とともにすすめていきます。秋、医師会などの参加も得て宮城でドクターズ・デモンストレーション実行委員会が地域医療再生シンポを開催します。

〈健康権保障の到達と課題〉

 健康権保障の実践の一つとして、五月、台湾で行われたHPH国際カンファレンス(四四カ国三〇〇組織一三〇〇人が参加)へ民医連から一七人が参加しました。国際HPHネットワーク事務局長や世界医師会長などからは、民医連の理念、保健・予防から治療、介護との連携、共同組織の参加など活動が高く評価されました。世界の経験を学び、また民医連の活動をいっそう高めるために、九月に行うHPHの公開セミナーなどに積極的に参加し、HPHに挑戦しましょう。医療の質向上評価(QI)事業は、昨年度に引き続き今年度も厚生労働省の指定事業として認可されました。「本とりくみにおける労力は並々ならぬものである」、「団体の意思と熱意が良く伝わり活用・改善に期待できる」、「中小病院が多く、団体外の病院の参考になる」と高く評価されています。
水俣病特措法に基づく近畿、関東、東海、新潟現地での検診とともに、六月二四日には天草、出水、水俣で全国の民医連や保険医協会の援助(八三八人)も得て一三九四人が受診する大検診を開催しました。民医連医師団と朝日新聞の共同分析では、国が年齢や地域で救済から除外している方々も含め八七%の方に水俣病の症状がありました。未だ、差別と偏見の中で受診に躊躇している方々がたくさんおられます。地域や年齢で救済策の線引きも行われています。十数万人とも言われる未救済の潜在患者がいるにも関わらず、国は七月末で認定申請を締め切りました。これにはなんの道理もありません。打ち切りの最大の理由は企業と国の補償を少なくすることと「水俣」を過去の問題として処理することと言われています。全日本民医連は認定申請打ち切りを中止させる活動を患者会・弁護団とともに強めます。当該県の熊本、鹿児島、新潟のみならず全国にまだ多くいる被害者が申請、認定されるよう全力を尽くします。
「四〇歳以下のII型糖尿病患者の実態調査」を全国の一一四事業所一七一九人を対象に行います。このとりくみは、生活と労働が健康の本質的な決定要因であることを明らかにして健康の自己責任論を打ち破り、貧困と格差社会の解決に迫る民医連の存在意義をいかんなく示すものです。六月には第二弾歯科酷書を発行し、記者会見しました。貧困による健康格差・生命格差が歴然とする結果で、口腔の健康が破壊しつくされてもなお受診できない事態がすすんでいることを明らかにしました。
三月、六回目となる国保など手遅れ死亡をまとめ(六七人が死亡・無保険者の増大が特徴)、記者会見を行いました。四月の介護保険制度改定によって多くの利用者の権利が奪われ、良心的な介護事業所がますます経営困難に陥る状況が続いています。総会以後、民医連の無料低額診療事業所は三〇〇カ所を超えました。

〈二〇一一年度の経営成績〉

 診療・介護報酬の同時改定を踏まえて、六月二〇〜二一日に約四〇〇人の参加で「対応・対策」交流会を開催しました。二〇一一年度決算は、医科法人の経常利益率二・一%(前年とほぼ同様)、歯科事業所一・六%(前年より二%改善)、六四%の事業所が黒字となりました。
経営困難支援規定に基づいて高知民医連・高知医療生協対策委員会を設置しました。
今期、民医連法人の実態に近い状況を把握するためにモニター法人の見直しを行いました。今後、医療機関が発行する協力債などの扱いについて国が出したガイドラインとの関連性について専門家の力も借りて検討、整備をすすめます。一一月に経営委員長会議を行います。

III.第2回評議員会までの重点課題

 来年二月に行われる第二回評議員会は第四〇期の折り返しとなります。私たちはこれからの半年間、総会で掲げた方針の確実な具体化、実践をすすめていきます。
その上で、特に強調すべき点を提起します。

〈いのち守る共同〉

 第一には、たたかいを通じて原発ゼロへの政治決断を求めるとともに、国民生活をより困難なものとする悪政の転換をはかるために全力を尽くしましょう。国民の声と行動が国を動かします。職員や共同組織をはじめ多くの人びとが声を上げ、行動に参加することができるよう「気づき」の学習や体験を重視しましょう。
これまで以上に多くの団体、個人との連携・共同を中央レベルですすめます。全国各地で「いのち」をキーワードに共同の条件が広がっています。決してこちらから「壁」を作らず、申し入れや懇談、地域シンポジウムなど、これまでの各ウエーブの経験も生かして「いのちを守る」共同行動を広げましょう。そのために県連会長・事務局長が役割を果たしましょう。法人・事業所幹部の役割も重要です。地域での医師、看護師など専門職能における共同行動を追求しましょう。
政局は流動的です。私たちは、いつ国会解散、総選挙となっても、総会方針で掲げた重要課題である、「原発をなくす」、「TPP参加阻止」、「消費税増税と社会保障切り捨て反対」、「米軍の再編強化反対」の立場を明確に、今度こそ民意を反映する国会を作り出しましょう。そのために「なぜ、脱原発を急ぐ必要があるのか」、「なぜTPPは国を滅ぼすのか」、「なぜ消費税は経済を破壊するのか」、「なぜ米軍再編は危険なのか」をわかりやすくかみ砕いた情報を発信し、「九九%の国民」の権利を守ることを強く主張します。そしてこれらの問題で全ての政党及び政治家の態度を公表します。職員、共同組織の仲間の中で、よく議論し、政治を変えるために奮闘します。学習資料も準備します。一〇月七日には、「いのちを守る」共同行動の皮切りとなるシンポジウムを長野市で開催します。全国の力で成功させましょう。

〈健康権・生存権守る〉

 第二に、「地域を主戦場」に健康権・生存権を守る運動をすすめることを重視します。最新の国民生活基礎調査では「生活が苦しい」との回答が六一・五%を超えています。一回あたりの抗ガン剤が七万円、インシュリン三万円といった実情があり、治療を中断する患者さんが後を絶ちません。まだ無料低額診療を実施していない医療機関は積極的に挑戦し、薬局での非営利一般法人化や薬局での無料低額診療取得を追求しましょう。薬局での高負担の解消めざし行政の独自施策をかちとる運動を強めましょう。無料低額診療事業への国や行政の具体的助成を実現させるために奮闘しましょう。訪問介護の時間短縮によって利用者の権利侵害が生まれています。全日本民医連は影響調査をまとめ、国がどんなひどいことをしているのか告発していきます。同時に、どんな条件にあっても利用者の権利擁護のために知恵と力を集め助け合いの活動や居場所づくりなどのとりくみをすすめましょう。
アスベストや職業起因性の胆管がんの多発に見られるように「生活と労働」の視点で疾病を捉える民医連の医療観をより確かなものとして、日常の医療・看護・介護の質を高めるとともに、「健康の社会的決定要因(SDH)」に基づく地域分析を行い、全ての人が健康で安心して住み続けられるまちづくり運動の一環として総合的な医療・福祉連携を追求していきましょう。全県で「働くもののいのちと健康を守る地方センター」づくりをすすめ、できているところは役割を強めましょう。

〈共同組織と共に〉

 第三に、これらの活動を地域でともにすすめる共同組織の役割を重視しましょう。
現在、七万人の職員と三五〇万人を超える共同組織は民医連の特徴であり、地域でなくてはならない存在として役割を高めています。一方、介護者と障害者・高齢者の二人以上の世帯で相次いで病死・餓死する例に見られるように、各地で、孤立し、社会的に排除される人が増え続けています。新たな地域コミュニティーを創造するには困難がたくさんあります。そうした地域で共同組織と職員が力を合わせ、認知症・介護予防活動、生活をささえる助け合い活動や健診・健康づくり、住まい・たまり場づくりなど「医・職(食)・住・環境」を充実させる運動と事業を大いにすすめましょう。そのためには、法人幹部が共同組織に対して、今後の高齢化のすすみ具合など今、地域がどうなっているのか、これからどうなっていくのか、それらを踏まえてどんな地域づくりをすすめるのか、共同組織への期待などについて、具体的な提起といっしょになった政策づくりが重要です。
今度の月間は、第二回評議員会までに全国で三六〇万を超える仲間増やしと『いつでも元気』の大幅増誌を目標に、重要課題でたたかいつつ、地域で安心して住み続けられるまちづくりを具体的に一歩すすめる月間として重視しましょう。
第一一回共同組織活動交流集会は、九月二日〜三日、「いま、いのち輝く新しい福祉の国づくり 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、震災ニマケナイ、原発ノナイ、誰もが安心して住み続けられるまちづくりを」をテーマに被災県であり、沢内村の実践を生んだ地、岩手県・花巻市で行われます。法人幹部や研修医、医師など職員も「あらゆる活動を共同組織とともに」の立場から積極的に参加しましょう。全県連から全国連絡会委員の選出をすすめましょう。あと九県連です。全国連絡会は組織形態の違いを越え、学び交流し、全国集会を準備する場であり、民医連運動の大きな一翼を担う場です。

〈中小病院〉

 第四に、高度急性期医療と診療所から介護、在宅、保健予防活動を結ぶ接点としての中小病院の役割がクローズアップされています。厚生労働省は、亜急性期、慢性期を担い地域包括ケアを推進する役割を中小病院に求めています。日本医師会は、今年二月「超高齢社会における中小病院の機能と役割について」を発表しました。中小病院の「質(機能)」が、真の「地域包括ケア」の質を決めると言っても過言でありません。差額ベッド料を取らず、無低診など無差別・平等の医療と福祉を貫く民医連の中小病院は、他の医療機関、介護施設・事業所、地域住民、行政機関にとっても、なくてはならない病院です。すでに医師養成の場としても、医療の質評価事業やHPHの活動、連携面でも高い評価を受けています。ネットワークの拠点・ハブとなることのできる存在であり、それを目標にしなければなりません。そのためには、これまでの延長線上ではない役割を獲得するたたかいと具体的に練り上げられたとりくみが必要であり、中長期の戦略を持つ必要があります。
一一月に予定している中小病院交流集会には、問題意識や実践を集約し、全日本民医連として今日の情勢に見合う踏み込んだ提起を準備します。

〈「医療・介護再生プラン」〉

 第五に、現在、全日本民医連は「医療・介護再生プラン」のバージョンアップを準備しています。二〇〇八年の発表時は、医師不足、医療・介護崩壊の顕在化や後期高齢者医療制度創設を許さないたたかいの最中でした。私たちは、これらの運動の力として再生プランを持って全国や各地で集会、シンポジウムを行いました。また、ドクターウエーブはじめナース、介護、歯科、ファーマウエーブを起こし、多くの団体や個人と共同して医師増員や診療・介護報酬の引き上げ、介護職員処遇改善交付金など社会保障費削減の撤回などを実現させました。
しかし、医療・介護崩壊はむしろ民主党の全面的な政策後退(新自由主義的構造改革への回帰と深化)によって、いっそう進行しています。民医連が新たに提案する再生プランでは、全日本民医連としてどんな医療や介護が求められているのか、そのために私たちは何をするのか、その財源を消費税に求めない状況をどのようにつくるのかについて、現状からの告発にとどまらず積極的な提案を行います。その基本的視座は憲法理念であり、民医連綱領であり、「権利としての社会保障」の理念です。災害対策のあり方については早い時期に提案する予定で作業をすすめています。

おわりに

 この夏から秋には、第一一回看護介護活動研究交流集会や第一一回共同組織活動交流集会、社保委員長・共同組織委員長会議、教育委員長会議、全日本民医連中小病院交流集会、経営委員長会議、トップ管理者研修会などの重要な会議や研修会が開催されます。たたかいを強めつつ、いずれも成功させていきましょう。

 

ページのトップ

 

全日本民医連
〒113-8465 東京都文京区湯島2-4-4 平和と労働センター7F
tel.03-5842-6451 fax.03-5842-6460
 
copyright (c) 2006 全日本民医連 All right reserved