健康・病気・薬

2016年3月8日

副作用モニター情報〈454〉 DM治療薬α-グルコシダーゼ阻害剤による腸管嚢胞性気腫症

 ミグリトール(商品名セイブル)は、食後の急激な血糖上昇を抑える糖尿病治療薬のα-グルコシダーゼ阻害剤(以下α-GI)です。当副作用モニターに腸管嚢胞性気腫症(以下PCI)が報告されました。
症例)90代女性、糖尿病、合併症は高血圧、認知症、多発性筋炎など。多発性筋炎に対してステロイドが処方されており、インスリンで血糖コントロールしていたが、内服薬としてミグリトールのほか、ビルダグリプチン、ピオグルタゾンを投与開始。服用開始98日目、腹部膨満あり。CTで腸管壁、腸間膜、腹腔に多量のガスが認められた。ミグリトールの副作用を疑い、服薬を中止し入院。絶食管理となる。中止後9日目、症状軽快し食事再開した。

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 PCIは、消化管の粘膜下漿膜下に多房性または直線状の含気性嚢胞を形成する比較的まれな疾患です。しかし近年、α-GI投与患者で発症報告が散見されます。
 ある研究※によれば、α-GIは腸管で二糖類から単糖への分解を担うα-グルコシダーゼを選択的に阻害し、糖質の消化管吸収を遅らせることで食後の過血糖を抑制します。しかし、腸内細菌の働きで腸管内に残った糖質が発酵し、ガスが発生するため、副作用として腹部膨満、鼓腸などが起こる可能性があります。そうして過剰に発生したガスが、糖尿病性神経障害により蠕動障害がある腸管の内圧を高めてしまい、PCIが発症するとされています。
 同文献では本邦報告36例のうち8例(22%)にステロイド内服歴がありました。ステロイド投与で腸管粘膜が脆弱になったり透過性が亢進するため、さらにPCIを発症しやすくなる可能性が指摘されています。当モニターの症例もステロイドの服用歴がありました。
 α-GIの投与例の腸管気腫症は、多くは中止による保存的治療で軽快し、予後は良好と報告されています。しかし、消化管穿孔や腸管壊死など重篤な合併症の可能性もあります。疑われる症例があれば直ちに投与を中止し、慎重に経過観察することが必要です。


引用文献:山本ら「α-グルコシダーゼ阻害剤による腸管気腫症の一例」京都医大誌 123(4)、2014

(民医連新聞 第1615号 2016年3月7日)

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