アスベスト対策

2006年6月5日

20年後にピーク 日常に潜む石綿(アスベスト)被害見逃さない体制を

 全日本民医連は、五月二〇~二一日、東京でアスベスト対策全国交流集会を開催しました。二七県連から八二人が参加。問題提起、指定報告、地協別分散会で、アスベスト新法実施後の対応を検討し、全県連でとりくみの体制をつくろうと、意思統一しました。

 小西恭司副会長が「アスベストの被害者は二〇年後にピークを迎え、四〇年以上続く国民的問題になります。専門医だけでなく、すべての医師の対応が求められる」とあいさつ。
 長谷川吉則全日本民医連アスベスト対策委員長が、アスベスト新法の問題点(左下)を示し、「アスベスト問題は、国・企業の責任であり、全国に広がる労 災・環境公害問題です。日常の診療で見逃さないとりくみが必要です」と問題提起。今後とりくむべき点として(1)県連対策委員会の設置、(2)問診・診断 のスキルアップと集団的とりくみ、(3)専門医との相談体制、(4)他団体との連携などポイントをあげました。

六つの指定報告

 指定報告は、(1)北海道・札幌病院・細川誉至雄医師の「中皮腫・肺がん症例」、(2)静岡・三島共立病院・佐藤永SWの「専門医がいない県連のとりく み」、(3)大阪・西淀病院・穐久英明医師の「大阪民医連のとりくみと泉南地域の状況」、(4)兵庫・アスベスト被害からいのちと健康を守る尼崎の会・井 上潔事務局次長の「地元の状況とクボタ救済基金」、(5)宮城・仙台錦町診療所産業医学センター・日本産業衛生学会理事・広瀬俊雄医師の「アスベスト問題 に対する日本産業衛生学会の動向」、(6)福岡・九州社会医学研究所・田村昭彦医師の「九州の医師団のとりくみ」でした。以下は田村医師の報告要旨です。

新たな「国民病」全医療機関の課題

 いち早く、アスベスト問題の相談、労災申請支援を行う中で、被害者に医療機関から適切なアドバイスがなかったことがわかりました。これまでもアスベスト の被害者はいましたが、社会問題化しなかった背景には、医療従事者のアスベストに対する認識不足もありました。
 そこで、対策の柱を(1)医師の教育と集団化、(2)看護師・SWなど職員育成、(3)対策委員会設置と組織的対応、(4)共同組織等との共同としました。
 労災申請の手引きと医師用の教育スライドを作成し、対策委員会を設置し、医師・職員向けの学習会、事例を通したSWの教育などを行いました。また、地協 単位で診断技術取得のセミナーを一日かけて実施し、新法に対応して手引きも改訂しました。これにより、肺ガンの再読影など症例の見直しが行われ、カルテの 職歴記載も改善されるなど日常診療に変化が現れました。また、共同組織や行政などの紹介で、アスベスト健診も増加しています。
 アスベスト問題は、「肺結核」「メタボリックシンドローム」と並ぶ、新たな「国民病」です。すべての医療機関・医師の課題であり、専門家の育成が急務で す。今後の課題は、(1)すべての医師がアスベストの知識を身につける、(2)専門医の集団化とコンサルタント、(3)若手医師の育成と医学生へのフィー ルド提供など。また、相談・健診活動の強化、共同組織・他団体との協力が必要です。

(民医連新聞 第1381号 2006年6月5日)

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