民医連新聞

2009年5月4日

水俣病 まやかしの救済法案 加害企業チッソを免罪 被害者団体、民医連など抗議

 与党は今国会に「特別措置法」案を提出し、水俣病被害者の救済に幕を引こうとしています。患者団体はあい次いで批判。全日本民医連も抗議声明を出しました(三月二五日)。熊本民医連は、多数いる未救済患者のための検診に力をいれています。

被害者を切り捨て

 自民・公明両党は三月一三日、水俣病の「最終解決」をはかるとして「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案」を提出しました。
 法案の内容は「救済」からほど遠く、名称自体、まやかし色が濃いものです。
 大きな問題の一つが、水俣病被害者の切り捨てです。国のいう「救済措置」終了後は、「補償法に基づく水俣病に係る新規認定等を終了する(第六条の四)」 とし、公害健康被害補償法にもとづく水俣病発生地域の指定も解除します。
 きわめて狭い範囲の患者に低い補償をして、「最終解決」にしてしまう意図があけすけな法案です。

加害企業を消滅させる

 さらに大問題は、加害企業チッソの「分社化」です。「補償のための親会社」と「収益を上げる子会社」に分け、親会社はいずれ「清算」つまり解散させてしまいます。公害の原因をつくった企業を消滅させ「免罪」し、賠償責任を免除するものです。
 これでは、被害者がチッソに損害賠償請求裁判などを起こすことができなくなります。

多様な症状を無視

shinbun_1451_02 法案では、水俣病患者として救済対象とする人を「過去に通常起こりうる程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性があり、かつ、四肢末梢優位の感覚障害を有する者」と限定しています。
 しかし、熊本民医連などの医師たちが明らかにした「水俣病の病像」は、そんな狭いものでありません。こむらがえりや皮膚感覚の異常、視力、聴力、味覚の 異常、筋力の低下、歩行のふらつき、もの忘れ、頭痛など部位の痛み、倦怠感など多彩な症状が出現するのが水俣病です。
 法案の基準では、いま認定を求めている人の約三分の二が切り捨てられてしまいます。

医学や臨床の知見生かせ

 この五〇余年、国は責任をもって地域住民の健康調査や被害実態の把握を行っていません。法案も、水俣病がどんな疾病か、医学や臨床の正しい理解に立脚していないのです。
 抗議声明は「民医連の医師たちは、長年にわたって検診・診療・研究を重ね、水俣病患者に寄り添い、被害者の治療・援護にあたってきた。水俣病患者の苦し みは法案のような救済策では決して救われないことは、臨床の現場からみれば明らか」と批判しました。

(民医連新聞 第1451号 2009年5月4日)

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