医療・福祉関係者のみなさま

2010年7月19日

フォーカス 私たちの実践 入院患者に集団レクリエーション 島根・出雲市民リハビリテーション病院 豊富な内容、毎日実施 ADLも大きく向上

 島根・出雲市民リハビリテーション病院の回復期リハ病棟では、通常のリハビリ以外に毎日、集団レクリエーションを実施し、患者のADLを大きく向上させています。〇九年秋に行われた学術・運動交流集会で、今岡志津枝さん(看護師)が発表しました。

 当院では、セラピストがリハビリ室で患者にかかわる訓練は一日のうち二~三時間程度です。そのため 患者は病室で過ごす時間が多くなりがちでした。そこで、楽しく入院生活を過ごしてもらえ、患者の趣味・特技などを披露する場の提供にもなる、集団レクリ エーションを考えました。そこに参加を促し、日常生活にメリハリをつけ、精神的な安定や身体機能の維持・向上をはかるのが目的です。
 集団レクリエーションは、月~土曜は一日一回、日曜・祝日は一日二回。実施時間は一時間程度で、担当職員は二~三人。人手のある時は、二~三グループに分かれて行うこともあります。
 参加対象は、希望者、離床の機会が少ない人、認知症や高次脳機能障害の患者などです。一回の参加者は一〇人程度です。
 内容はさまざまで、具体的には、身体的活動(輪投げ、ボール投げ、魚釣り、風船バレー、出雲弁かるた)、知的精神的活動(歌、カラオケ、しりとり、クイ ズ)、創作活動(カレンダーづくり、貼り絵、折り紙)などです。実施して反応の良かったものや交流ができるもの、担当者が自信をもってすすめられるものな どがわかってきました。終了後は記録に残しています。
 患者の評価にはFIM(機能的自立度評価表)を活用し、定期的に測定しています。介護量をもとにADLを測定する評価法で、食事やトイレ、社会的交流など一八項目について、一~七点の七段階で採点します。

寝たきりから改善

 Aさん(八〇代男性)の事例を紹介します。脳梗塞、失語症、高次脳機能障害(行動失調)で、当院を退院するまでの入院期間は六カ月でした。入院時は寝たきり、排泄全介助状態でした。
 Aさんは、最初は見学程度で参加は拒否することが多かったのですが、入院一カ月後から積極的に作業や歌、ゲームに参加するようになり、日常の会話やレク リエーションの場で笑顔が多く見られるようになりました。また、職員の問いかけに答えられるようになり、言葉の理解ができるようになりました。
 徐じょに車椅子やポータブルトイレへの移乗、車椅子の駆動が自立レベルにまで回復。退院までにFIMは四一点から八七点に向上しました。

退院後の療養生活も視野に

 レクリエーションとは、休養や娯楽によって精神的・肉体的な疲れを回復させることやその内容を指します。治療や介護を要する高齢者には、その人らしさの回復にもつながります。
 患者の生活史や聞き取った情報をもとに、興味が持てそうなレクリエーションを取り入れ、積極的にかかわることで、職員との信頼関係が生まれました。Aさ んの場合も、そうして集団レクリエーションに関心を持ち始め、参加するようになりました。また集団活動の中で、他の患者との交流が広がり、お互いに気遣い 合ったりするなど、コミュニケーションも豊かになっています。
 その結果、残存機能をきたえ、集中力の向上など精神活動の活性化へとつながり、落ち着いてきました。生活意欲も向上し、情緒が安定するなど良い影響も見られています。「自分はまだやれる」という自信も生まれました。
 交流の楽しさも感じたことで、退院して在宅療養に入ったあとも通所サービスなどの利用につながり、活気ある生活を送る手助けとなっています。
 今後も集団レクリエーションを継続することで、日常生活動作の維持向上、退院後の患者の生活向上につなげていきたいです。

(民医連新聞 第1480号 2010年7月19日)

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