副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2010年11月1日

副作用モニター情報〈342〉 クラビットR(抗菌剤・レボフロキサシン)高用量1回服用の副作用

レボフロキサシンはニューキノロン系(NQ)に属する抗菌剤です。NQは幅広い抗菌スペクトルをもちますが、近年その耐性化が深刻になっています。NQ は薬剤と菌が接する時間を長くするよりも、菌と接する薬剤の濃度を高くする方が、耐性菌の発生を抑え、殺菌作用が増強することがわかってきました。この理論に基づき1日1回高用量を処方する方法が一般化しています。一方、レボフロキサシンは腎排泄率が約80%で、腎機能が低下している患者では、半減期が大 幅に伸び、CCR20mL/分以下ではCCR80mL/分以上の約4倍で、血中濃度が長期間上がり続けるので注意が必要です。
 当副作用モニターには、本剤に関して、今年度32件の報告が寄せられました。高用量製剤の発売直後という時期でもあり、うち高用量1回投与による副作用 は15件でした。

【症例1】40 代女性。糖尿病、慢性腎不全で透析中の患者。腰の痛みでロキソプロフェンを服用中WBC16000、CRP25.4、CT所見から椎間板炎が疑われ、クラ ビットR500mg、CMZ1gを開始。1日目、肩のぴくつきが出現し、クラビットRを中止。4日目、肩から腕にかけてのぴくつき、口も回りづらくなり、 ろれつが不良に。5日目夜ごろから症状すっと消えていった。
【症例2】50 代男性。血清クレアチニン値0.96。2年前に脳出血を発症。リハビリ中に寒気があり外来受診。38度台の発熱あり、レボフロキサシンを処方された。帰宅 後1回分300mgを服用し、その30分後、頭部の右回旋と右共同偏視(眼球が右に寄る)に始まる全身けいれんが起きた。30秒~1分でけいれんは収まっ たが意識レベルが低下。救急搬入され、フェニトインで治療。2週間後に退院し外来フォローとなる。

 2症例ともに1回の服用でけいれんが出現しています。NQによるけいれんの発現は、血中濃度や中枢内濃度の異常な上昇による急性中毒症状と考えられ、 NSAID(非ステロイド消炎鎮痛剤)との併用で増強されることが報告されています(厚労省重篤副作用疾患別対応マニュアル)。透析での除去率は 36.9%です。本剤はNQの中では、けいれんの副作用が起こりにくいとされていますが、患者の背景を考慮し、きめ細かく投与量を調節する必要がありま す。

(民医連新聞 第1487号 2010年11月1日)

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