民医連新聞

2007年7月16日

医療倫理の深め方(終) 寄せられた意見に答えて 全日本民医連医療倫理委員会〔編〕

 全日本民医連の医療倫理委員会では、医療や介護の現場で倫理問題を深め、職場で日常的に話し合えるよう、『民医連新聞』で「医療倫理の深め方」を、七回連載してきました。
 とくに、四分割表を使った医療倫理問題の整理法を中心にしたのは、「四分割法について知りたい」という希望がアンケートなどで多かったためです。委員が 持ち寄った事例を題材に担当者が書いた原稿を、委員会で確認しながら掲載しました。
 記事について多くの感想や意見が寄せられました。多くの職員が読んでくれたことに委員一同励まされています。最終回にあたり、寄せられた意見で、重要な二件に答えます。

なぜ四分割法なのか?

 一件目は二つの内容を含みます。その一つは「『臨床倫理四分割法』は科学的根拠のある方法なのか? ほかのアプローチの仕方があってもよいのに、なぜ四分割法に固執しているのか?」という疑問です。
 「臨床倫理四分割法」はアメリカの倫理学者ジョンセンらが考案し広めたもので、日本では白浜雅司氏らが中心に紹介し(「白浜雅司のホームページ」 http://square.umin.ac.jp/masashi/)、多くの本に紹介されるようになりました。
 臨床現場の事例検討で、特に現状分析する上で見落としが少ないこと、誰でもいつでも参加できるなどの利点があり普及しています。
 しかし、これはあくまで一つの整理法であり、手段です。大事なことは、多くのスタッフで事例を多方面から検討していくことです。

地球資源や医療格差は?

 もう一つの指摘は「医療現場で高価な、また地球資源の無駄遣いともいえるディスポ製品などを、たくさん使っていることの倫理的な問題は考えないのか? 高価なディスポ器具に使うお金で、発展途上国の未来ある若者の命をもっと救えるのではないか?」という主旨でした。
 地球資源の問題、地域、国により受けられる医療に格差があるという認識は大変重要だと思います。社会資源の公平分配、同じ病気なら同じ治療を受けられる社会的公平は医療倫理の原則のひとつです。
 当委員会では、今の日本社会の中で、医療機関や介護施設が共通に抱える問題を主に取り上げて活動しています。今回の連載も身近な事例をテーマにしまし た。指摘された発展途上国に対する医療をはじめとした援助や資源消費の問題についても、私たちはいろいろなところで機会を持って、考えていけるとよいと思 います。

検討が不十分では?

 二件目は、二月一九日号の事例について。四分割法の各枠への事項の割り振り方と、家族の考えの とらえ方についての意見で、委員会の検討では不十分ではないかという内容でした。まさに「多くの人が参加することで事例検討が深められる」ことを意見から 学ぶことができ、大切に受け止めたいと思います。
 これからも職員同士が意見をのべ、活動を呼びかける場として、『民医連新聞』や『民医連医療』も活用していただきたいと思います。

(民医連新聞 第1408号 2007年7月16日)

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