民医連新聞

2002年9月21日

5時間未満では透析時間短いほど死亡リスク高い/「診療報酬改悪は医学的事実に反する」/東京・すながわ相互診療所 小泉博史所長に聞く

 慢性腎不全のため人工透析を実施している患者は20万人を超えています。「透析」はその命をささえ、生 活を維持するために欠くことができません。4月の診療報酬改悪では、「外来患者食事加算」が廃止され、透析時間による報酬区分が取りはらわれました。これ は患者さんと医療機関に経済的に負の影響を及ぼすばかりで医学的に見ても大問題。透析時間を短くすることは「命を縮める」ことにつながりかねません。東 京・すながわ相互診療所の小泉博史所長に聞きました。

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3時間より4時間4時間より5時間が良い
 「透析時間が長いほうが長生きできることは明らかなのです。体液中の老廃物や塩分、水分を十分に除去することができますから。血圧が正常値に近くなり、 多くの人が降圧剤を飲まなくてよくなります。また合併症が減少します」と、小泉医師は、日本透析医学会が毎年出している資料を示しました。
 「わが国の慢性透析療法の現状(日本透析医学会)・2002年度版」は、同学会が全国の透析施設の99%、3485施設にアンケート調査をしてまとめた、信頼性の高い資料集です。
 この「透析時間と一年間の死亡リスク」(表1)は、9万323人の対象患者について解析した結果「透析時間が5時間未満では時間が短いほど死亡リスクが高い」ことを示します。
 小泉医師は「3時間より4時間の方が良く、さらに4時間よりは5時間の方が良い。6時間以上必要かどうかは見解が分かれます。5時間とは、大差がない」と説明。「もちろん、なかには体力がなくて短時間しか透析ができない人もいます。

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この表は、長い時間の透析に耐えられない人ほど、予後が悪いことを物語っている側面もあります」。
 国際的なデータもあります。「フランスのタサン中央透析センターで八時間透析を行って良い成績を上げています」とのこと。

「適正な診療報酬」透析医の共通の思い
 透析学会の別の資料を見てみました。しかし、八時間透析は日本では少数です(表2)。なぜでしょうか。
 小泉医師は「透析時間の長さは、患者さんのQOL(生活の質)に関係するから」と説明。「たいていの患者さんは長時間の透析を敬遠し、五時間以上の透析 を提案しても断わられます。八時間の透析は辛いと思います。拘束が長くなると疲れます。また、日常の生活時間が削られます。家族との生活を大切にしたいと か、透析以外の時間を楽しみたい。こうした患者さんの生活や仕事の設計、要望も重視しなければなりません」。
 小泉医師は「透析の効率を良くすることによって、ある程度は、長期の生存が達成できると考えています。でも多くの患者さんは四時間未満では短すぎる。私は五時間前後が適切だと思います」。
 だから、今回の診療報酬改定は「間違いなく医学的な常識に逆行」と言い切ります。「透析時間の評価を均一にしてしまうのは、医学的事実に対する無理解」とも。
 透析をする診療所では、普通一日に1つのベッドを2回使い、2人の患者さんの透析をします。短い時間にすれば1日にベッドを3回転させることができます。こうした経営主義に走る医療機関が出てくる心配があります。
 医療機関が透析時間を長くするには、当然スタッフをそろえ、態勢を整えるのですから、評価があって当然。「診療報酬上で透析時間を適切に評価してほしいというのは、透析に関わる医師の大多数の共通の思いでしょう」と小泉医師。

食事は生きがいにつながっている
 透析中の食事支給が自費になった問題では?。
 「透析時の食事は食事指導の上で大事な意味がありました。透析時に食べた献立や味付けを覚えて、家でも実践してもらう。経済的に大変な患者に対する支援 でもありました。患者さんは『透析中に食べる食事が一番美味しい』と言うんです。食事は生きがいにつながっています。こんなことをして透析患者のQOLを 低下させてしまった」と問題視します。

(民医連新聞2002年09月21日/1287号)

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