副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2013年10月21日

副作用モニター情報〈404〉 ランソプラゾールによる下痢

 ランソプラゾール(商品名:タケプロン)による下痢については、当モニター321回(2009年11月2日付)で報告していますが、その後も報告症例は 多いようです。過去1年間の同剤による副作用報告41件のうち、半数が消化器症状で、下痢・軟便が16件、内視鏡検査により「コラーゲン層形成大腸炎 (collagenous colitis)」が確定された症例も1件ありました。多くは逆流性食道炎に対する処方でした。
 今回とりあげたランソプラゾールのほか、アスピリン、NSAIDs、チクロピジンなどの服用あるいは併用による、水様性下痢が主症状の「コラーゲン層形 成大腸炎」がよく知られるようになりました。基本的な定義は、大腸内視鏡検査と生検により、大腸粘膜上皮直下に10μm以上のコラーゲン・バンドが認めら れるものとされています。
 ほかにも、ラベプラゾール(商品名:パリエット)以外のPPI(プロトンポンプインヒビター)は添付文書に同様の症状について記載がありますが(頻度不明)、報告が多いのはやはりランソプラゾールのようです。
  PPIの薬物代謝酵素であるCYP2C19やCYP3A4の関わりが疑われています。発生機序について解明はされていませんが、PPIが大腸粘膜に存在す るプロトンポンプに作用することで、免疫反応に影響しているとの説があります。高齢女性で多いとの報告があり、当モニターでの下痢は男性6例、女性10例 でした。
 いずれの症例も、薬剤中止や他のPPIへの変更などで改善されており、軽微な副作用ではありますが、慢性的な下痢症状については注意が必要です。
 今回、報告はありませんでしたが、PPI服用による消化管pH上昇による腸内細菌叢の乱れが関与しているとされる、「Clostridium  difficile関連下痢症(CDAD)」については、2012年に添付文書「その他の注意」に追加記載されています。

(民医連新聞 第1558号 2013年10月21日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ