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2014年10月20日

リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(13) 文・杉山貴士 「仕事と活動のあり方」を考える

 「仕事と(ゲイとしての)活動とのあり方」は、私が今、一番意識していることです。以前は「仕事は仕事」「活動は活動」と分けていました。生活す るために働き、活動は別、という意識。確かに職場ではカミングアウトする必要はないし、ゲイであることで別の問題も起きかねない。
 私が「仕事も活動も」と意識したのは職場での人間的なつながりができてからでした。職場での人間的なつながりがあったからこそ、職場や仕事を通じて活動の位置づけが必要だと思うことができました。
 職場というところは、ゲイから見ると、実はとても異性愛に満ちた空間です。結婚や育児にかかわる結婚休暇や育児休暇など、異性愛を前提に作られた制度ば かり。同性愛者であろうと、同じように働く者として、異性愛と同様の福利厚生の制度がほしいところです。そんな環境を変えてゆくには当事者の勇気が必要で すし、その前提として、職場の人間的つながりが大切になってきます。「人権や差別」というくくりではなく、いかに人間的つながりができるか、です。
 学生時代は、人権や差別を問題提起する活動にとてもアクティブにとりくんでいました。差別等への気づきや告発もイケイケ。しかし外野から人権の大切さや 差別を訴えても内部には響かない。人権研修でコンサルタントや活動家を呼んでも、受け手にはあくまでも「外部」の話で、「人権は大切」という型通りの意見 表明だけになります。
 いかに「身近さ」を感じてもらうか。それは、同じ職場や地域で同じ目標に向かってがんばる共通体験なしには得られない、人間的つながりだと思うのです。 つながりのある身近なところで多様性を尊重し、ゲイをとらえてもらうことが、近道のように思うのです。
 「同性婚の法制化を急げ」と叫ぶ前に、“足元”をみることが大切。これは、ゲイの問題に限らず、人権や差別の問題を発信する当事者に問われているのかな、と思います。
 次回は私が関心を持っている貧困問題から性的マイノリティについて、アプローチしてみようと思います。


すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

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