医療・看護

2016年1月19日

フォーカス 私たちの実践 リンパ浮腫ケア山梨・御坂八代訪問看護 ステーションたんぽぽ カギは「チーム力」 自力歩行、家事も可能に

 リンパ浮腫は完治が難しい病気ですが、正しいケアの継続で症状は和らぎます。山梨・御坂八代訪問看護ステーションたんぽぽでは、リンパ浮腫に悩む患者の症状を改善しADLを向上させました。カギはチーム力の向上でした。専門家から学んだケアの方法を患者に関わる人に広げ、毎日ケアができるよう連携しました。看護師の加藤恵美さんの報告です。

 同ステーションでは、看護師五人で月五〇〇件訪問を行っています。今回、長年リンパ浮腫に悩むAさんを訪問することになったのは、ケアマネジャーから「毎日のケアで浮腫は良くなるのか」と相談があったことがきっかけでした。
 Aさんは、四〇代で子宮がんの手術を受けた七〇代の女性です。術後、徐々に両下肢の浮腫が目立ってきたものの、治らないとあきらめ放置していました。訪問看護を始めた当初は、下肢の浮腫と象皮化して硬くなった皮膚のために、動作が緩慢で転倒しやすく寝返りもできない状態でした。一人で留守番はできるものの、多くの時間をベッド上で過ごしていました。

連携でいつでもケアを

 ステーションがリンパ浮腫の患者の訪問は未経験だったため、法人内のリンパ浮腫セラピストから病状の基礎知識やケアの方法を学習しました。また、初回訪問時にそのセラピストに同行してもらい、状態を確認しケアの方法を一緒に考えました。
 訪問は毎日一時間。限られた時間でリンパドレナージができるようメニューを作成()。両下肢の足浴後にビーソフテンローションを塗布するスキンケアも。訪問のない休日には、介護者の娘さんが足浴やマッサージをすることに。四カ月で下肢は非常に柔らかくなり、皮膚トラブルを起こすこともなくなりました。しかし、目に見えるような改善やADLの向上はありませんでした。
 そこで、市内の病院のリンパ浮腫専門外来へつなげました。治療の継続が必要で、週一度の外来受診と訪問看護でのケアとなりました。訪問看護師も必要時に病院に同行し弾性包帯の巻き方やリンパマッサージの指導を受けました。同じ方法で全員がケアできるよう、ステーション内で伝達学習も行いました。
 さらに改善をすすめるため、Aさんの通うデイケアでも弾性包帯を巻いてもらうことを提案。利用日に看護師がAさんに同行し、弾性包帯の巻き方を伝えました。
 娘さんも、「自分にも方法を教えてほしい」と希望。娘さんの休日に合わせて訪問し、自宅で指導しました。その結果、Aさんに関わる全員が弾性包帯を巻けるようになり、いつでもどこでもケアができるようになりました。
 関わり始めから八カ月で、両膝下が一〇cm細くなり七〇kgあった体重が八kg減りました。歩行時に使っていた歩行器は不要になり、ひとりでスムーズに散歩できるまでにADLが改善。今では、仕事から帰ってくる娘さんの夕食の支度がAさんの日課です。

図

チームの力を高める

 浮腫が改善しADLが向上した要因は、まずリンパ浮腫専門外来やセラピストと連携し適切な治療をしたこと。さらに、訪問看護師を中心にAさんに関わる全員がケア方法を共有し、切れ目なく関わったことでした。
 また、多職種が関わったことでAさん自身も治療に前向きになり、体操や足の運動など積極的にとりくむようになったのも大きな要因でした。訪問時に看護師がAさんの気持ちを傾聴することで精神的に安定し、セルフケアの継続もささえました。
 訪問看護師に求められることは、在宅でその人らしく生活ができるようケアし、ささえること。疾病に対する正しい知識を身につけケア技術を向上させるだけでなく、多職種と連携しチームの力を高め、患者に関わる全体の質を上げる大切さを実感しています。

(民医連新聞 第1612号 2016年1月18日)

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