くすりの話
1997年12月1日
くすりの話 12 スイッチされた胃の薬
Q:「医療用医薬品からスイッチされた」という胃薬が宣伝されています。「使用にあたっては医師・薬剤師にご相談ください」と強調していますが、これまでの胃薬とどう違うのですか?
A:「H2ブロッカー」と呼ばれる薬で、胃痛、胸やけ、胃もたれ、むかつきに強い効果があるとされます。これまでは医師の処方箋がなければ使用できな かった薬が、97年9月から薬局・薬店で売られるようになりました。これを、医療用医薬品から一般用医薬品にスイッチされたといっています(スイッチ OTC=オーバー・ザ・カウンターといいます。カウンター越しに売られる薬のこと)。
H2ブロッカーは本来、消化性潰瘍治療剤です。
潰瘍は通常、粘膜などで保護されている胃や十二指腸が、自らの胃酸によってとかされてできます。従来の市販の胃薬は、出すぎた胃酸を中和するものが主でし たが、H2ブロッカーは胃酸の分泌をブロックして治療します。
劇的な効き方で、胃や十二指腸潰瘍の手術の大半を不要にしてしまったほどの実績をもっています。
しかし、市販されたH2ブロッカーは、医療用医薬品のときより成分が控えめにされ、たとえばザッツブロックはシメチジンが医療用1錠200㎎に対し1錠 50㎎で1回2錠服用します。潰瘍の治療ではなく、胃酸過多にともなう胃炎の治療に使います。
非常によい薬ではありますが、問題もあります。ただの胃痛やむかつきだと思ってH2ブロッカーを飲み、治ったと思っても、じつは胃がんや難治性胃潰瘍の初 期症状であった、という可能性があるからです。気づいたときに手遅れでは取り返しがつきません。
また、よく効く反面、副作用にも注意しなければなりません。使用後、高熱や発疹などの副作用があらわれたら、ただちに服用をやめて医師や薬剤師に相談する必要があります。
H2ブロッカーのスイッチOTC
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Q:H2ブロッカーが出てきたのには、何か意味があるのですか?
A:厚生省は、国や医療費負担を減らすために、胃腸薬やかぜ薬を保険からはずすことをねらっています。同じように、一般用医薬品と同じ効能の医療用医薬品については、病院・診療所であつかわず、まちの薬局で全額患者負担で買わせようとしています。薬の保険はずしへの道です。
薬は医師、薬剤師の指示にしたがって正しく使うことが大事です。このような保険はずしの道を警戒しなくてはなりません。
いつでも元気 1997.12 No.74
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