MIN-IRENトピックス

2016年4月5日

被ばく相談窓口をつくろう 民医連のセミナーから(3) 放射線の健康への影響

 昨年九月の「被ばく相談員セミナー」で被ばく問題委員の雪田慎二医師が行った講演の連載。三回目は放射線が健康に及ぼす影響について。未解明な点は多い一方、世界的な共通認識になっている知見もあります。理解を深めたいのは、低線量被ばく、内部被ばく、子どもへの影響、の三点です。帰還を推進する国の主張のひどさも理解しておくべき点です。

影響受けやすい人を基準に

 知っておきたいのは、被ばく線量が低くてもリスクがあることです。国際的な合意で、「LNT仮説」といいます。被ばく線量が低いほど、ガンなどになるリスクは低くなりますがゼロにはなりません。だからこそ、外部、内部共に被ばく量をできる限り少なくすることです。除染や食品安全性チェックなどの継続が重要です。
 一般的には、子どもの方が放射線の影響を受けやすいと言われています。ですから、大人も子どももひとくくりにして放射線の基準値を決める国のやり方は、かなり乱暴といえるでしょう。また、内部被ばくで最も大きな問題は小児の甲状腺がんで、これは長期にわたり甲状腺検診を行う必要があります。やはり帰還などは、被害を最も受けやすい子どもを基準にして考えなければいけません。
 ところが国が採用しているのは「年間二〇ミリシーベルト以下」という基準です。これは、乳幼児や妊婦なども含め、安心して日常生活を送れるとは言えない数値です。ここには、「帰還を促進したい」という国の考えがあります。
 福島第一原発は、今も事故で漏れた放射性物質をコントロールできず、収束していません。その上で、被害者に十分な補償をしないまま帰還だけがすすめられているのです。避難指示を解除すれば、帰還してもしなくても補償を打ち切るという政府の意図を、理解しておく必要があります。

グラフ

日常業務の延長線で

 そうはいっても、相談活動は「したことがないし、どうしたらいいのか」と不安に感じる皆さんもいると思います。そうだとしても日常的には患者さんや共同組織の人たちと接し、相談を受け、きちんと対応できていると思います。被ばく相談活動も大きな変わりはありません。
 相手の話を聞き、どんなことで困っているのかを把握する。何が問題なのかを相談者と共有し、何か一つ対応策を提案する。私たちが普段していることを、自信を持って行うことが重要です。

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 放射線の健康影響については、「原発パンフ」四~九ページで詳しく解説しています。次号は相談活動の「安全性」をとりあげます。

※LNT仮説…「線形しきい値なし仮説」。低線量被ばくでも被ばく線量と健康影響の間にはしきい値が無く、被ばく線量に応じたリスクがある、とする考え

(民医連新聞 第1617号 2016年4月4日)

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