健康・病気・薬

2016年4月19日

相談室日誌 連載409 受療権を守る国保法44条の原則的な適応を求めて(神奈川)

 Aさんは「まじめに働いてきた年金で自立した生活をしたい」と、風呂無しのアパートでつましく暮らしている六〇代の独身男性です。以前から多血症や高血圧などで当法人の診療所や他の専門機関に通院しています。医療費の支払いが高額になる月は、生活保護基準を下回ってしまう年金収入です。そのつど国保一部負担金減免(国保法四四条)や生活保護などを使い、何とか切り抜けてきました。
 そんなAさんを年金額の引き下げが直撃し、困窮から仕方なく受給していた生活保護も基準引き下げで昨春廃止に。保険料や医療費が大変だとAさんはSWに相談していました。滞納していた国保料二期分を払った月に腹膜炎に。入院費を払うとAさんは「医療費支出の増加による一時的困窮状態」となります。そこで国保一部負担金免除を申請することに。Aさんの自治体の一部負担金免除の要件は「生活保護基準の一・一五倍の収入」。適用されるはずでした。
 ところが、Aさんが退院後に申請に行くと、役所は「保険料減免はする。収入は減っていないから一部負担金免除はできない」と、病院に分割払いを相談するよう勧めました。再度、診療所と病院のSWが役所に同行しても申請書を出す気配もなく、交渉が一時間続いた時点でAさんは意識を失い、救急搬送に。申請書はかろうじて出しましたが、申請結果は却下でした。
 Aさんの多血症は多発性骨髄腫のためと分かり、長期に定期通院が必要になりました。医療費が高額になった月はたちまち困窮するため生活保護を受給中です。しかし、一部負担金減免制度が適切に活用されれば、Aさんのような医療支出による生活困窮は生活保護を使わなくても救えます。
 今回の国保一部負担金減免に関する役所の対応の問題は、当該自治体との交渉でとりあげ、「事案に応じた個別の対応を行う」と回答させました。再申請すると、三カ月間の医療費のうち、二カ月分が免除という対応に。結果は十分ではありませんが、個別の事例から、国保法四四条の本来的な役割を伸ばし広げていけるよう働きかけを続ける必要性を感じました。

(民医連新聞 第1618号 2016年4月18日)

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