くすりの話

2003年8月1日

くすりの話 65 不眠症の人が飲んではいけない睡眠改善剤? パート2

 前回、睡眠改善剤「ドリエル」は不眠症の改善にはならない薬であることをお話ししました。

Q:いま「ドリエル」が登場した背景は?

A:塩酸ジフェンヒドラミンを睡眠改善剤として市販薬で使用することは、米国では80年代から認めら れ、日本の製薬会社も日本で売れるように90年ごろから申請していました。それが急に承認されたのは、最近、厚生労働省が「セルフメディケーション」の考 え方をおしすすめているからです。
 セルフメディケーションとは「自分の健康に責任をもって、軽い病気は自分で治せ」ということです。そのために、医師の処方がないと出せない薬(医療用医 薬品)を市販薬として売れるように、その範囲をもっとひろげようというのです。医療用から一般用に転用することを認められた薬を「OTC」といいます。 OTCとは「オーバー・ザ・カウンター」、「薬局のカウンター越しに」買える一般薬という意味です。

Q:なぜ値段がこんなに高いのでしょう?

A:25mg6錠いり、1回2錠が通常量ですから3回分で千円。塩酸ジフェンヒドラミンとしてはとんでもなく高い値段です。
 かゆみ・アレルギー用として市販されている塩酸ジフェンヒドラミンは、10mg80錠が500円程度ですから、同じ成分なのに適応症表示の違いだけで 10倍以上高くなっています。
 米国の市販価格は、50mg1錠で約1ドル(120円程度)ですから、日本は3倍近い値段になります。さらに、医療用医薬品の保険価格は、10mg1錠 が6円40銭ですから10倍高いことになります。
 一般薬の価格は、メーカー申請のままに認められる自由価格です。このため、製薬会社は売れるとなればもうけ放題です。「ドリエル」は、発売1カ月で、年 間売上げ目標の6億円を超えたといいます。
 山陽新幹線で運転士が居眠りをした事件があり「睡眠時無呼吸症候群」が話題になって睡眠障害への関心が高まったことも追い風になったかもしれません。

Q:OTC薬の使用で注意することは?

A:自己責任で飲まなければいけないOTCは、とくに飲み方や副作用の情報を知ることが求められます。しかし、宣伝情報などでは正確に判断できる情報はなかなか得られません。
 不用不急の医薬品は買わないことです。そしてなんでも相談できる医師・薬剤師を、必ず身近につくりましょう。民医連の医師・薬剤師は必ずその期待に応え てくれると思います。

いつでも元気 2003.8 No.142

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