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2017年2月21日

知る 見る “安保社会保障解体” (6)生活保護 今年、検討されている さらなる「見直し」とは――

 安倍政権の社会保障解体政策を知る連載、今回は「生活保護」分野について。安倍政権の社会保障制度改悪の中で真っ先に大ナタをふるわれたのが生活保護でした。ところが、さらなる改悪が。五年に一度の生活扶助基準の検証が行われる今年、同時に「制度全般の見直し」の検討も政府から提起されています。(木下直子記者)

■この間行われた改悪

 生活保護世帯の食費や被服費、光熱費などにあてる「生活扶助」の基準額が引き下げられたのは二〇一三年から(三年で段階的に)。九六%の受給世帯が対象になり、平均六・五%、最大一〇%という大幅削減でした。続けて一五年には住宅扶助の基準額が見直され、数千円~一万円の減額に。暖房費などに充てる冬季加算も同年、削減されました。改正生活保護法も二〇一四年に施行され、申請のハードルも上がりました。
 これらの連続改悪が受給者の生活に与えた打撃は小さくありません。「“生かさず、殺さず”だ」。先日、長野県民医連が改悪後に初めて行った生活保護患者さんへの実態調査(本紙二月六日付既報)でも、こんな声があがりました。

■稼働層や医療扶助が標的

 今年は五年に一度の生活扶助基準の検証が行われます。これとあわせ「制度全般の見直し」の検討と、検討結果に基づく必要な措置(二〇一八年の通常国会への法案提出)も指示されています。二〇一五年に安倍内閣が決定した「骨太方針」に沿い、社会保障関係費の伸びを徹底して抑える目的です。
 具体的にあがっているのは、「就労支援の促進」や「医療扶助の適正化」です。財務省資料の論点には、「就労支援策を拡充したのに就労による保護脱却が四割にとどまっている」「生活保護受給母子世帯の就労率は一般母子世帯より低い」などの記述があり、稼働年齢層や母子世帯が標的になることがうかがえます。
 医療扶助に関する検討課題については「頻回受診の抑制」と「後発薬品の使用促進」とされています。論点には「国保と生活保護の入院外レセプトを比較すると生活保護の方が受診日数が多い」ことと、「後発品は院内処方では使用率が低い」というデータが出されています。

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 生活保護基準は、最低賃金や税制など、あらゆる基準に反映するナショナルミニマムです。社会保障予算の抑制を最優先するあまり、国民の生存権を保障するという国の責務を捨てた議論には、当事者の実態を示しながら、反論するしかありません。

(民医連新聞 第1638号 2017年2月20日)

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