いつでも元気

2004年8月1日

おかしいぞマスコミ「九条の会」なぜ報道しない

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「9条の会」の記者会見を行なう(左から)加藤周一さん、大江健三郎さん、小田実さん=写真・森住卓

戦前にも同じようなことが…

 評論家の加藤周一さん、作家の大江健三郎さんら、日本の代表的知識人九人が、「改憲をやめさせる一点で手をつなごう」と、六月一〇日、「九条の会」を発足させました。

 記者会見には、二人のほか憲法学者の奥平康弘さん、作家の小田実さん、評論家の鶴見俊輔さんが出席。会場は、八〇人の取材陣でいっぱいでしたが、結局ほ とんどのマスコミが黙殺。全国紙では「朝日」が第三社会面に囲みで、「毎日」が情報欄にベタ記事で載せただけでした。

多国籍軍参加は批判せず

 この前日、六月九日には、訪米した小泉首相が国会にもはからずに、「イラクに派兵した自衛隊を多国籍軍に参加させる」とブッシュ大統領に約束。「武力行使をともなう多国籍軍への参加は憲法違反」と政府自らがいってきたことをいとも軽々と踏み破りました。

 その首相にたいし、各紙の社説は「朝日」が「なし崩しで派遣を続けようという小泉政権の判断は認めるわけにはいかない」と批判した以外、「読売」「産 経」は積極的に評価、「毎日」「日経」もきちんと説明をというだけで、批判していません。

 「九条の会」記者会見場で、「なぜいま、この会をつくるのか」という記者の質問に、「それだけ憲法が危機ということだ」と小田さんが答えていましたが、そのとおりの事態です。

“いまこそ憲法九条が旬”

 大江さんはこう語りました。

 「憲法が言葉として書き換えられる危機がかつてなく強い。これまでは、解釈改憲はされても、明文では書き換えられないだろうと、楽観していた。憲法の空 洞化というのは現実にあると思うが、文字として存在することと、それがなくなることとは根本的に違う。憲法は、世界に対する自分の態度、モラルの支えだ。 その柱が倒されようとしている。じっとしていられない」

 奥平さんは「“憲法改正問題”といういい方で、九条改正という争点がぼやけてきている。九条を、外交でも経済でも、世界に向けて積極的に押し出していくことが必要だ」。

 小田さんは「テロや紛争が武力で解決できないことが世界ではっきりした。いまこそ憲法九条が旬。第二次世界大戦後、国連は世界人権宣言は出したが、世界 平和宣言は出せなかった。日本国憲法は、いってみれば世界平和宣言だ。その価値が、いま出てきた。いまこそ使わないと、世界がダメになる」。

 鶴見さんは「“論憲・加憲”の自由はもちろんある。しかしいまは九条をまもれの一点だ」ときっぱり。

 加藤さんは「戦後六〇年、自衛隊発足から有事法制まで、手の混んだごまかしで、解釈改憲と事実を積み重ね、自衛隊を拡大してきた。なしくずしの軍国化も 限界にきて、いよいよ憲法条文を変えようという動きになってきた。しかし日本国内の常識は国外の常識とずれている。一九三〇年代にも同じようなことがおき て、戦争になった。日本の常識は世界の非常識」と喝破。「九条をまもろうというさまざまな運動がつながっていくために、われわれの会が役立ちたい」と発足 の思いを述べました。 

米軍と自衛隊の一体化が

 「九条改悪の背景には、米軍とともに自衛隊をいつでも海外に投入できるような戦争体制づくりがあります」という日本平和委員会事務局長の千坂純さん。

 「米国防総省は、世界規模の米軍再編をすすめるなかで、在日米軍基地を“アジアの最重要出撃拠点”として強化しようとしています。報道では、東アジアや 中東地域に部隊を即応展開する米陸軍第一司令部を、米軍座間基地(神奈川)に移転させ、『東北アジア統合司令部』を創設する構想が検討されています。これ にともない、米軍横田基地(東京)に航空自衛隊司令部を統合し、陸上自衛隊矢臼別演習場(北海道)などに沖縄の米海兵隊砲兵部隊を移転するというとんでも ない計画もすすんでいいます。これを許さないために『九条の会』発足を歓迎します」

 全日本民医連も、「九条の会」アピールを支持する「医療人の会」をつくろうと、幅広く呼びかけていくことにしています。
 西原博子記者

いつでも元気 2004.8 No.154

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