いつでも元気

2005年1月1日

特集2 「かぜ」とインフルエンザ 子どもには、ここに気をつけて 安静と十分な水分、室内は加湿して

genki159_03_01  冬の病気といえば、子どもにかぎらず「かぜ」とインフルエンザが主役です。かぜは発熱、鼻水、咳などを主な症状とし、子どもがかかる病気で最も多いものです。かぜの原因の90%以上は、さまざまなウイルスによる感染です(表1)。
 発熱、咳、鼻水以外にも嘔吐、下痢を主な症状とするウイルス性の胃腸炎を、おなかのかぜと表現することもあります。また、高熱、関節痛や筋肉痛などの全 身症状を伴うインフルエンザもかぜのひとつとされています。
 今回は、冬のかぜの主な原因となるインフルエンザ、RSウイルス感染症と細気管支炎、喘息性気管支炎、急性胃腸炎について、子どもには、どんなことに気をつけたらよいかをお話しします。

インフルエンザ

 ■かぜとの区別つきにくい
 毎年冬に流行するインフルエンザですが、大流行した年には死亡者数が上昇し、特に高齢者の死亡率が高くなります(表2)。
 このように、症状が強く重症化しやすいため、かぜと同じに考えないようにという人もいます。しかし、普通のかぜとインフルエンザとの区別はそれほど簡単 ではありません。特に乳幼児では典型的な症状を示さないことも多いからです。
 最近流行しているインフルエンザはAソ連型、Aホンコン型、B型の3種類が知られています。症状はいずれも通常1~3日の潜伏期をおいて発症します。急 に高い熱が出て、悪寒、のどの痛み、頭痛、関節痛ではじまり、嘔吐、下痢などの症状を認めることもあります。
 40度前後の高熱が2~4日続き、咳、鼻水がみられ、ほぼ一週間で軽快します。しかし、肺炎や中耳炎を合併することや、熱性けいれん(ひきつけ)をおこすこともあります。
 頻度は低いのですが、大きな問題となるものに脳症があります。5歳以下の乳幼児に多く、死亡率や後遺症を残す率が高いため、発熱から1~2日でけいれん や意識障害、異常行動(意味不明な言動や幻視など)が現われたら、速やかに受診するようにしてください。
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 いずれにせよインフルエンザにかかったと思ったらできるだけ早く受診して、診断をしてもらいましょう。15分くらいで診断ができる迅速検査(100%診断できるわけではありませんが)があります。
 ■解熱剤の使用はひかえる
 治療は、新しい抗ウイルス作用のある薬(タミフル、シンメトレル)があり、発症から48時間以内に内服すると発熱期間を1~2日短くするとされていま す。インフルエンザは、初期の安静が大切です。十分に水分を取り、室内を暖かく加湿して、静かに休ませます。
 発熱自体は、ウイルスが体内で増殖するのを防いでいるといわれていますので解熱剤の使用は控えます。回復後に保育園に登園させる場合も元気さや食欲が 戻ってからにして、決して無理をさせないことです。
 インフルエンザの予防の基本は、流行前に予防接種を受けることですが、それ以外は、普通のかぜの予防と同じです。

RSウイルス感染症

 ■かぜの原因でもっとも多い
 冬のかぜの中で最も多いのはRSウイルス感染症です。RSウイルスは、3歳未満でかぜ症状のある子どもの鼻水や咽頭から40%以上検出されています。他 の多くのウイルスと異なり乳児期早期にもかかりやすいことが特徴です。乳幼児の約半数は、はじめての冬を越す間に感染し、2歳までにほぼすべての子どもが かかるといわれています。
 症状は鼻水、咳の症状で始まります。熱はあまり高く出ませんが2~3日続きます。3歳以上だとこのように比較的軽症で終わります。
 しかし、2歳以下の乳幼児、特に6カ月前後の乳児では、咳などの呼吸器症状がひどくなり重症化することがあります。鼻水や咳だけでなく、ゼロゼロという のどの音(喘鳴)が聞こえ、苦しそうになります。
 この状態を細気管支炎といい肺炎の一種です。ひどくなると、鼻をひくひくさせ、胸やおなかをペコペコへこませながら息をする(陥没呼吸)などの呼吸困難の症状が現われます。
 ゼロゼロいう症状は喘息と似ていますが、喘息とは違います。しかし、RSウイルスによる細気管支炎にかかったあと、気道が過敏になり約30%の子どもが 気管支喘息になったという欧米の研究もあります。
 また、幼児でも肺炎になることがあります。高熱が続く、ゼロゼロいう、咳がひどいなどの症状のときは、早めに受診してください。
 ■安静と栄養、十分な水分で
 治療は、このウイルスに効く薬はないので、安静と栄養をとること、咳止めなどの対症療法です。とくに水分が十分に取れていないと、痰が粘っこくなり呼吸 が苦しくなります。少しずつでも水分補給を心がけてください。

喘息性気管支炎

 ■長く続く咳、ゼロゼロいう
 喘息といわれていないけれど、ほかの子どもに比べてかぜのときの咳がひどく、熱が下がってもいつまでも咳が続く、元気で食欲もあるのにいつまでもゼロゼ ロとのどから聞こえてくる、喘息ではないかと心配になることがあります。
 このような状態を喘息性気管支炎といいます。原因ウイルスとしては、乳児期にはRSウイルス、幼児期以降はライノウイルスとパラインフルエンザウイルスが多くなっています。
 咳とゼロゼロの原因は痰です。痰は健康なときでも気管支から分泌されているものですが、空気の乾燥や細菌・ウイルスの感染、脱水、アレルギーなどの原因で、痰の量が増えてきます。
 乳児は特に上気道(咽頭、喉頭)が狭いため、感染や浮腫をおこしやすくなっています。また痰がからんでもなかなか上手に出すことができません。このため 本人は熱も下がって元気なのにゼロゼロいったり、夜や朝方の咳が続いたりするのです。
 喘息性気管支炎は乳児期後半から幼児にみられ、成長とともに軽快していきますが、アレルギー体質の子どもは後に気管支喘息に移行することがあります。し かし今のところ、将来喘息になるかどうか予測する明確な方法はありません。かぜをひくたびに咳がひどく、夜や朝方にゼイゼイいう、咳止めがあまり効かない ということを繰り返し、家族に気管支喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症のある場合は、気管支喘息の始まりと考えられます。
 ■タバコ厳禁、煙が気道刺激
 咳が続くときは、まず部屋の空気が乾燥しないように気をつけましょう。空気が乾燥するとのどを刺激します。加湿器を使う、お湯を沸かすなどして湿度を上 げます。ぬれたタオルを部屋にかけておくのも効果があります。
 ほこりやペットの毛、線香やタバコの煙は気道を刺激して咳をひどくします。特にタバコの煙は強い刺激となります。また水分をこまめに与えるとのどの乾燥 を防いで咳やのどの痛みが和らぎ、痰の水分も増えて排出しやすくなります。

ウイルス性胃腸炎

 ■突然の嘔吐、白っぽい便
 秋から冬にかけて下痢と嘔吐を主症状とするかぜが流行します。初めて冬を迎える乳児は、まずかかると思って対策を考えておきましょう。それに、もしか かったらどうすればよいか知っておくことが大切です。
 症状は突然の嘔吐で始まり、水のような下痢便を1日10回以上もするようになります。ロタウイルスが原因のものが有名で、独特のにおいのする白っぽい便 が特徴です。ほかにカキによる食中毒の原因でもあるカリシウイルス(ノロウイルス)によるものも多くあります。
 ■お粥を与え、腸を休ませて
 下痢の症状として最も注意をしなければいけないのは脱水症です。脱水症の予防と治療は、おなかを休ませることと水分の補給が基本です。
 腸を休ませるためには、消化吸収がよく、あまりおなかに停滞しないものを与える必要があります。最も適しているのが炭水化物で、昔から下痢をするとお粥 を食べるのは、そのためです。ミルクは消化も吸収もよく作られていますが、下痢のときには決してよいとはいえません。
 下痢が重症になると、完全に腸を休ませるために、何も与えないこともあります。重症の下痢では、腸から体内の水分がどんどん失われていきます。そんな時 には、塩分を含んだ水分を補給することが大切です。
 ■果汁、乳製品は与えない
 初期に何を与えても吐いてしまうときは、2~3時間何も与えずにようすを見ます。ぬるめの番茶や少し甘くした湯冷まし、乳児用のイオン飲料水などをス プーンで一さじ一さじ根気よく与えます。
 果汁や乳製品は吐き気や下痢を誘発しやすいのでやめます。吐き気がおさまったら、うすい味噌汁などの少し塩分を含むもの、お粥やうどんなどのでんぷん質へと進めます。
 小さな子どもほど脱水症状になりやすいので、顔つきがおかしい、吐いてばかりで飲めない、半日以上尿が出ないというときは受診してください。吐いた回 数、どれだけ水分を取ったか、最後に尿が出た時間などをメモしておくと受診時に役立ちます。ふだんの体重も知っておくと脱水の程度を知る目安になります。
 このかぜは感染力が大変強いので、吐いたものや、便の始末のあとには必ずせっけんで手を洗いましょう。そうしないと、子どもが治ったあとで、今度は親が 嘔吐と下痢に苦しむことになります。

予防の基本は

 ■かぜをひくことで抵抗力がつく
 生後4~5カ月までは母親からの免疫(抵抗力)が残っているためかぜにかかることは少なく、乳児期後半はその免疫がなくなってくるためかぜにかかること も多くなります。特に、保育所ではひとりがかぜにかかると次々にうつっていくこともよく経験します。子どもにかぜをまったくひかせないようにすることは不 可能なことで、かぜをひくことによって一つずつ抵抗力をつけていくのだと考えてください。
 一部を除いてウイルスに確実に効く薬がないので、かぜの治療は症状をやわらげることが主体になり、予防が大切となります。
 ■体内にウイルスを入れない
 かぜの予防の基本は、ウイルスを体内にいれないことと、体調を整えてウイルスのつけいる「スキ」を与えないことです。
 ウイルスを体内にいれないためには、どうしたらよいのでしょうか。
 冬にかぜが多くなるのは寒さのせいだけではありません。空気が乾燥していることが大きな原因となるのです。ウイルスは空気中に散らばっています。冷たく 乾燥した空気ではウイルスが増えるだけでなく、のどや鼻の気道粘膜が異物を排除する働きも弱くなり、ウイルスがつきやすくなるのです。
 昔から予防法として、うがいが奨励されているのもその理由からです。今でも、たいへん効果的な予防法です。外出先から帰ったらうがいと手洗いを励行しましょう。
 ■厚着をさせない
 乳幼児は暑さや寒さを訴えることがなかなかできません。暖房の効いている部屋で、厚着をして真っ赤な顔をしている乳児を時々見かけます。あまり着せすぎ ず、汗をかいたら1枚脱げる服装にして、身体をきたえていくことも大切なことです。
 ふだんからおとなも子どもも睡眠や栄養を十分にとって、規則正しい生活をするよう心がけてください。睡眠不足や疲れているときはウイルスの多い人ごみは避けるようにすることも大切です。
イラスト・小松美香

いつでも元気 2005.1 No.159

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