副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2017年12月5日

副作用モニター情報〈489〉 抗結核剤エタンブトールによる視神経障害

 エタンブトール(EB)は結核症や非結核性抗酸菌症治療におけるキードラッグの1つとして位置づけられています。一方で、重篤な有害事象として視神経障害を発生することが知られており、投与期間中は十分な観察が必要です。透析患者に投与した結果、中毒性視神経障害が発生した症例が報告されました。
症例)70代女性。ANCA関連血管炎症候群に伴う腎不全により週3回維持透析を実施。肺MAC症治療のためクラリスロマイシン(CAM)800mg、リファンピシン(REF)450mg、エタンブトール(EB)750mgの投与を開始。41日目に食思不振を訴えCAM600mg、REF300mg、EB500mgに減量。開始以降、2度の眼科受診で異常は見られなかったが、50日目に視力低下を自覚し、55日目の受診時には眼前手動弁(眼前で手を動かし、動きの方向が分かる)まで低下していた。EBによる視神経障害と診断しEB中止。さらに60日目には光覚弁(暗室で照明を点滅させて明暗が分かる)まで低下。ビタミンB12、亜鉛補充を行うも明らかな改善みられず。
 透析患者へのEB投与量は、『CKD診療ガイド2012』に「血液透析後、250~500mg/回に減量」と記載されていますが、添付文書には「慎重投与」とあるのみで減量の規定はありません。今回の症例は添付文書に減量記載が無かったことから疑義照会につながらず、結果、過量投与となり、有害事象が発生していました。

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 EBによる視神経障害は用量が増えるほど発生しやすくなり、さらに代謝障害や栄養障害、腎機能障害、糖尿病、貧血、アルコール中毒、高齢などの条件があれば発生リスクは高まります。治療手段はEB中止のほか、ビタミンB12、亜鉛投与がありますが、治療開始が遅くなるほど回復に時間を要し、最悪の場合は回復しません。
 早期発見のため、定期的な眼科受診とともに、十分な服薬指導はもちろん、「新聞を片目で読み視力低下を判断する」などのアドバイスで、患者の気づきを促すことも有効です。

(民医連新聞 第1657号 2017年12月4日)

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